3年生になりました
がちゃっ。
っと、俺の部屋の扉が開く音がした。
俺はまだ寝ていたんだけども・・・。
気配で、すぐ近くに誰かが立っていることがわかる。
どうやら俺を起こしに来たらしい。
・・・つんつん。
指先で、背中をつつかれた。
去年はすぐに起きなかったせいで時間がやばかったが、今回はそうもいかねえぜ!
「おっはようミー子!いい朝だ!」
ベッドから飛び上がった。
さて、新たな1年の始まり、かわいい彼女の面を拝んでやろうじゃないの!
振り返るとそこには・・・。
「ぎゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
能面があった。
『なっち、朝から面白いね。』
「前も俺の寝起きにドッキリ仕掛けなかたっけ!?」
『あの時はなっちの近くにいただけだよ。』
「そうだね!」
さて、起きたことだし学校の準備・・・っと。
「そうだ!俺学校の準備昨日から済ませてるんだった!俺って有能!」
『調子に乗ってんじゃねえぞボケ。』
「俺の彼女がひどすぎる。」
『ほら、早くご飯食べて行こうよ。クラス発表見たいんだし。』
俺のことをせかすミー子。
クラス発表ねえ・・・。
ミー子が同じクラスじゃなきゃ死刑宣告も同然なんだけども・・・。
「母さんおはよう。」
「おはよう!美衣ちゃんもおはよう!ご飯できてるから適当に食べちゃって!仕事行ってくるわね!」
「ああ、行ってらっしゃい。」
『頑張ってください。』
バタバタと家を出ていく母さん。
忙しそうだなあ。
「おはよう夏央!父さんは今日大学で講師として呼ばれることになったぞ!というわけで行ってくる!」
「はいはい行ってらっしゃい!」
『頑張ってください。』
同じ言葉を返すミー子。
父さんも母さんも、朝からずいぶん忙しそうだ。
『ハルさんは?』
「大学の授業が午後からだからまだ寝てるよ。」
『あらうらやましい。』
確かに、大学生のうらやましいところだ。
さて、ちゃっちゃと食べちゃいましょうかね。
「行ってきまーす!」
『行ってらっしゃーい・・・。』
上の階から気の抜けた声が聞こえてきた。
春姉が起きたらしい。
『なっちと登校、久しぶりだね。』
「そうだな。」
『さて、卒業まであと1年切っちゃったわけですが。』
「そうだな・・・。」
卒業したら、どうなるんだろう。
行きたいところに行けているんだろうか。
そんで、みんなと会えなくなるんだろうな。
クラスのやつらも、京介にも、祈木にも。
そうなったら・・・少し寂しいな。
『私、また声を出せるようになるかな。』
「・・・そうだった。」
前に、病院で二五市先生に高校卒業までにはしゃべれるようになるかもと言われた。
本当に、ミー子はしゃべれるようになるんだろうか。
その言葉がプレッシャーにならなければいいけど・・・。
『クラス発表、楽しみ。』
「俺ら、クラス違うかもよ?」
『先生たち殺す。』
「ちょっと気が早いかな!?」
とんでもなく物騒な彼女だ。
「さて!」
『クラス分けはどうなってるかなあああぁぁぁぁぁぁ!!!』
「テンション高え!?」
走ってクラスを確認しに行くミー子。
1組の名簿を確認したミー子が、両手を上げた。
そして、走ってこちらに近づいてくる。
「廊下は走っちゃいけません。」
『うるせえよ。』
怖い。
『そんなことよりも!やったね!また同じクラス!』
「おおお!」
よかった!
これで1年安泰だ!
『今年もよろしくね!』
「オーケー!」
「なん・・・だと・・・。」
喜びをかみしめる中、1組のクラスの名簿の前でしなびているやつがいた。
京介だ。
「どうした?」
「おう、夏央か・・・見ろこれ。」
京介に言われ、クラスの名簿を見る。
「ん?京介いるじゃん。また今年もよろしくな。」
「そこじゃねえよ!よく見ろよ!」
男子は特に何もないので女子の方を見てみる。
えーと、相沢則子、秋島花乃子、五十嵐開耶、初島由恵・・・あれ。
「祈木がいない。」
「そうなんだよ!陽花がいないんだよ!」
『なんですと。』
ミー子も名簿を覗き込んだ。
いくらみんなで名簿を覗き込んでも祈木陽花の名前は現れない。
「おはよ、残念ながらあたしは4組だったよ。」
本当に残念そうに、祈木が現れた。
「陽花ぁ~。」
「はいはい、男の子でしょー。昼休み、一緒にお昼ごはん食べようね?」
「分かった!」
『陽花、私も。』
「かがみんはアヤと食べればいいんじゃないかな~。」
『なんですと・・・!?』
ミー子がショックを受ける。
2人の時間を大切にしたいのかもしれない。
『陽花にフラれちゃったからお昼ごはん一緒に食べてね、なっち。』
「もし祈木がOKしてたら俺は昼ぼっち飯だったのか。」
『そ、そういうことではありませんぞ!』
ミー子が焦りの表情を見せた。
こんのやろ。
「じゃ、あたしは4組の人たちと仲良くなってくるね~。」
「陽花~、悪い男に引っかからないでくれよ~!」
「大丈夫~!あたしはなーみんしか見えてないからねー!」
「大好きだぁぁぁ!!」
熱いラブコールを廊下で盛大にやってのけた京介。
注目浴びてるぞ・・・。
「担任、誰だろうな。」
『できれば茎野先生がいいんだけど。』
「確かに、めんどくさがりだけど悪い先生じゃないよな。」
「俺も茎野先生がいいなー!」
このクラスで俺の席はまあ、例によって一番右の一番前。
・・・かと思いきや、今年は前に女子が2人いた。
クラス番号1番の相沢と、2番の秋島だ。
『あら、今回はとなりとはいかなかったね。』
そしてミー子は俺の左斜め前。
2年の時は俺とミー子が2人して一番前だったけど、今回は違うみたいだ。
『そんでもって、なっちは後ろも女の子なのね。』
「そうみたいだな。」
後ろはクラス番号4番の五十嵐だ。
やたら女に囲まれてるな・・・。
『私、後ろが男の人みたいなんだけど。』
「お、まじか。」
ミー子は出席番号9番だ。
えーと10番は・・・。
「鎌谷録助か・・・どんなやつだろ。」
『変な人じゃないといいけど・・・。』
「ミー子、人見知り結構するもんな。」
『そうね、だからあまり話しかけないでもらえるとありがたいんだけどね。』
どうせ最初は周りの人に挨拶しろとか言われるんだろうな。
席を見ると、その鎌谷ってやつはまだ来ていないようだ。
「ここが俺の席か・・・前よりは寝やすいかな。」
『基準が睡眠というね。でも、1学期は寝ないほうがいいよね。』
「確かに・・・。」
1学期までの成績が進路にかかわるって聞いた、
だから、1年の時の成績で足を引っ張っている俺たちは頑張れと・・・あの教師余計なこと言いやがって。
「お、キミが絢駒くんかあ、あたしは秋島花乃子。これからよろしくね~。」
「ああ、よろしく。絢駒夏央って言います。」
「なんで敬語になったし。」
「しょ、初対面だし?」
初対面ってどんな口調で話せばいいかわからなくない?
「あなたは?」
秋島がミー子の方を向く。
『今日から隣に来ました鏡崎美衣です。』
「引っ越しかな?」
どうやら秋島はツッコミ属性持ちらしい。
『そこにいる乙女系男子の幼なじみ兼彼女です。』
「乙女系男子?絢駒くん、オナベなの?」
「なんでそういう方向に考えるかな?」
どうやらボケることもできるらしい。
『お菓子作りとか、結構上手いんですよ。』
「というかなんでそっちも敬語なのよ。ってかそもそも鏡崎ちゃんは話してすらいないし?」
『私、人見知り、激しいの。』
「片言かな?人見知り激しいからケータイで筆談なの?」
『あ、そういうことではなく。こっちに関しては私の身体的な問題なのでお気になさらず。』
「ああ、この学年で1人しゃべれない人がいるって聞いたけど、鏡崎ちゃんだったのね。」
『そういうことになります。』
「もう、どうせこれから1年間一緒なんだから敬語じゃなくていいからね?」
『善処します。』
どんどん文が固くなってるのは俺の気のせいかな?
「おいーっす。お、目の前に男がいる。」
俺の後ろの席に、ショートカットの女子が座った。
目はぱちっとしていて、なんだかスポーティな印象。
「あ、開耶おはよう~。またおんなじクラスだね、よろしくねー。」
秋島が後ろの女子に話しかける。
開耶っていう名前ってことは、俺の次の出席番号の五十嵐開耶か。
「出席番号3番の絢駒だ。よろしく。」
「ほいほい、絢駒くんねー、あたしは4番の五十嵐開耶。1年間よろしくね。」
なんかテンションがあまり高くない女の子だな。
ゆるゆるだ。
『なっち、いきなり話しかけるとかコミュ力高いね。』
「いやほら、俺らの学校は席替えないし、1年間一緒なわけじゃん?」
『いやそうなんだけどさ、私は話しかけるタイミングをかなり伺っちゃうからさ。』
「じゃあ今話しかけちゃえよ。」
『私にも心の準備を言うものがありましてね。』
どうやら新しいクラスメイトに緊張しているみたいだ。
「あ、開耶、紹介するね。ここにおわすはこの絢駒くんの彼女の鏡崎ちゃん。」
『そんな仰々しい言い方やめて。』
「あれ、口を開けてしゃべらないね。ということはもしかして?」
「ああうん、そういうこと。うちの学年でしゃべれない人。」
「そうだったのね。鏡崎ちゃん、よろしくね~。」
「・・・(ぺこり)。」
ミー子がお辞儀をした。
とりあえず、悪い子ではなさそうだ。
「てか、絢駒くん彼女いたんだね。くそう。」
無表情のまま悔しがっている五十嵐。
・・・いや、正直悔しがってるかどうかは分からない。
・・・くそう?
「開耶、絢駒くんのこと狙ってたの?」
聞こうと思ったことを先に聞かれてしまった。
この2人は友達ということか。
「ほら、あたし彼氏いたことないからね。目の前だから話す機会多いだろうし、狙い目かなと思って。」
どうやら俺は狙われていたらしい。
『なっちは私の彼氏だぞ!』
俺の目の前に飛び込んでくるミー子。
「・・・あ、鏡崎ちゃん、敬語なくなったねえ。」
ミー子の変化にいち早く気づく秋島。
こいつは周りを見れる女の子だな。
『そういえば。』
「敬語?」
「そう、鏡崎ちゃん、初対面で私に緊張して敬語使ってきたんだよ。」
「へー。あたしも敬語とかいらないからねー。」
『お、おう。』
おお、ミー子が女子と話してる。
祈木以外でミー子と他の女子が話してる後継ってあんまり見たことないんだよな。
にしても、また俺の周りに女の子が増えた。
「夏央!お前の周りに女子が増えてるぞ!もっと手を出すつもりか!?」
京介が飛び込んできた。
「人聞き悪いこと言うんじゃねえ!」
「お、また男が現れた。」
『五十嵐ちゃん、この男も彼女おるよ。』
「このリア充どもめ。」
五十嵐がジト目になった。
「というか誰ー?」
五十嵐が京介の方に向き直った。
第一印象でスポーティな印象だったんだが、目がぱっちりしてるくせに無表情だからなんだか変な気分だ。
「俺は鈴波京介!ここにいる絢駒夏央と美衣ちゃんの友達だぜ!」
「・・・ということは、絢駒くんと鈴波くんと鏡崎ちゃんが仲良しということね?」
京介に聞く秋島。
うん、飲み込みの早いやつだ。
「そういうこと!俺のことはきょーちゃんって呼んでくれて構わないよ!」
「よろしくね、鈴波くん。」
「うん、鈴波くん、よろしく。」
華麗にスルーされる京介。
彼女いるくせに。
「俺の扱いってもしかして変わらない?」
「変わらないと思うぞ。俺の中で京介は京介だ。」
「・・・そりゃそうだよなー。」
『私の中でも鈴波くんは鈴波くんのままだよ。』
ミー子が強くうなずいた。
「あ、これは周りに愛されてるタイプだよ開耶。」
「あたしも今それを思ったよ花乃子。」
秋島と五十嵐が向かい合ってうなずいた。
「こいつはただアホなだけなんだ。」
「そうなの?」
「そういうことなんだ。」
こいつはアホだと断言できてしまう。
「と、というわけで、俺も1年間よろしく!」
「私たちに手を出そうとしたら彼女に報告しようねえ。」
「しないからね!?」
「あたしは手出されちゃったら今の彼女はあきらめてもらいましょうかねえ。」
「しないっつの!」
早速京介がいじられ始めた。
『鈴波くんのあるべき姿だよこれ。』
「俺もそう思う。」
安定の扱いっていいと思うんだ。
「そろそろ朝のHRか・・・先生は誰が来るだろうな。」
『誰だろね。』
クラス名簿には、先生の名前は書いていない。
先生に関しては完全にお楽しみとなっている。
俺はやっぱりなんだかんだ茎野先生がいいかな・・・。
「そういえばミー子の後ろこねえな。」
『私の後ろってかなっちの隣よね。』
「お、確かにそうだな。」
確か鎌谷だっけか。
ほんとどんな奴だろう。
どういうやつかによって1年間決まっちゃうんだけど。
ミー子に危険が及ばないとも限らないし。
「はぁはぁ、ちっ、遅刻ギリギリだぁ・・・!」
男が大急ぎで教室に入ってきた。
髪はぼさぼさで小太りといった印象。
4月が始まったばっかりだというのにYシャツには脇汗がにじみ出ている。
なんだこいつ・・・。
まさか・・・。
そいつはどんどんこっちに近づいてきて・・・俺の隣に座った。
鎌谷ってこいつなのか・・・。
あ、よかった、めっちゃ汗臭いとかそういうわけではないらしい。
夏はどうか知らんが。
「あっ、き、君、絢駒くんだよね?」
こちらに向き、話しかけてきた。
顔には汗が滴っている。
とりあえず汗拭いてくれねえかな。
「ああ、そうだけど・・・鎌谷、でいいんだよな?」
「あっ、そうそう!僕は鎌谷禄助!い、一年間よろしくね!」
手を伸ばしてきたのでまあ一応握手に応じる。
・・・手汗きついぜ、この野郎。
というか、こいつあんな大急ぎで入ってきてぱっと見でなんで俺のこと分かったんだ?
急いでる割にちゃんと名簿を確認してきたのか?
「え、えっと、君は鏡崎さんだよね?よ、よろしくぅ。」
「・・・(びく)。」
ミー子の肩がはねた。
いきなり後ろから話しかけられるとは思ってなかったらしい。
鎌谷が手を伸ばしてミー子に握手を求めた。
・・・その汚ねえ手でミー子に触るんじゃねえ!
『あの、汗すごいんでいろいろ拭いてからお願いします。私はあなたに触りたくありません。』
・・・わお、辛辣ゥ。
「あっ!ご、ごめんね!僕汚いよねえ!ふへっへっへへ・・・。」
何こいつ怖いんだけど。
もしかしてあれか、女と絡みがないから話せるだけで照れちゃう的なやつか?
「ふ、ふぅ~。」
汗を拭く鎌谷。
だがしかし脇汗の跡が非常に汚らしい。
・・・あれ。
なんかおかしいような気が・・・。
あれ?なんでこいつミー子の名前知ってんだ?
俺もミー子も、こいつのことは知らないはずなんだけど・・・。




