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Please speak!  作者: 長野原春
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ドキドキです

「・・・なんというか、普通の状態で一緒に寝るの、久しぶりだな。」

『そうね。普通じゃない時は何度もこのベッドとなっちに助けられたけどね。』

 ミー子が、俺の横にぴったりとくっつく。

 部屋の電気は消したので、ミー子のケータイも、明るさを抑えてある。

 少しすれば暗闇に目が慣れて、ミー子の顔が分かるようになる。

「そういえば、すごいこと教えてくれるって言ってたけど、アレなんだったんだ?」

『そういえば言ってなかったね。今聞いちゃう?』

「あ、今聞くとまずいやつ?」

『まずくはないけども。』

「じゃあ、聞かせてくれよ。」

『お、おう。』

 ミー子が俺に背を向けてケータイを打ち始めた。

 何かあるのかな?

 長文なのか、それとも迷ってるのか。

 ケータイを打つ時間がいつもよりかなり長い。

 ミー子がこっちに向き直った。

 その表情を見ると、ちょっと緊張してるのが分かる。

 今電気をつけたら、ミー子の顔は赤いかもしれない。

『鈴波くんと陽花のことなんだけどもさ。』

「京介たちか。もしかして春休みで別れちゃいましたってか?」

『私たちより大人の階段を上っているみたいです。』

 ・・・はい?

 理解するまでに時間がかかった。

 ケータイの画面をまじまじと見つめてしまう。

「つ、つまり?」

『♂+♀』

「え、まじで?」

「・・・(こくり)。」

 ミー子が小さくうなずいた。

 え・・・京介と、祈木が!?

 は、まじで!?

 あいつら・・・まじかよ。

 語彙力が少ないせいでまじかという言葉しか出てこない。

 まじですか・・・。

『別に教えたからって私もしてほしいとかじゃなくて、鈴波くんと陽花はこうだよって話でね、その』

 ミー子が明らかに緊張している。

 そうか、だから今聞くのかって言ったのか。

 こんな一緒の布団の中で。

 もしかしたら、俺を本気にするかもしれないし。

『私も、なっちのこと大好きだし、いつかこうなるのかなあとか、思ったりして。ちょっと想像とか、してみちゃったり、とか・・・。』

 ・・・なんだろう、この感じ。

 前にも、感じたことがあるような・・・。

 今、俺はミー子に対して何を思ってる?

 この、急な衝動は、なんだ。

「ごめん、ミー子。」

 急に、ミー子を抱きしめたくなった。

 何に対して謝っているのかはわからないけど、とりあえず謝った。

「・・・んっ。」

「・・・!」

 衝動的に、ミー子の唇を奪った。

 この衝動は・・・。

 ミー子を抱き寄せ、頭をなでる。

 髪の毛、さらさらだ。

 緊張した面持ちで、多分、赤い顔をしているだろう。

 そんなしおらしい表情、反則だ。

「今のミー子、すごくかわいい。」

「・・・(びく)。」

 ベッドの中が、温かいを通り越して熱い。

 俺が興奮しているからなのか、はたまたミー子か。

 ・・・今は、そんなことどうだっていい。

 至近距離にいるミー子が、恥ずかしそうに目を閉じた。

 普段は積極的なくせに、本番には弱いタイプなのか。

 ああもう、自分を抑えられない。

「ミー子、好きだ。大好きだ。ミー子はどうだ?」

『もちろん、大好きに決まってるじゃないですか。今までも、これからも、私が好きなのはなっちだけなんだから。』

「・・・くっ!」

 なにか、ストッパーが外れたような気がした。

 体を起こし、ミー子に覆いかぶさった。

『今、やばい状態?』

「そうだな・・・相当やばい。前よりも、やばい。」

『それ、私もやばいなあ。』

 ミー子が少し笑った。

「・・・いいかな?」

『緊張するなあ。』

 その返事は、OKのサインだろう。

 ミー子のパジャマのボタンを外す。

「・・・寝るときも着けてるのか。」

『ナイトブラというやつですよ。』

「そりゃ知らなかった。」

 そのナイトブラの上から、ミー子の胸に触れた。

 ものすごく恥ずかしそうに、目を閉じて顔をそらすミー子。

『なっち!!』

「な、なんだい。」

 突然のケータイ画面。

 なんだかお預けを食らった気分だ。

『やばいよこれ。私、恥ずかしくて頭おかしくなりそうだよ。』

 頭がおかしくなりそうなのはこっちだ。

 かわいいミー子と、興奮で、正直さっきからやばい。

 たぶん血圧測ったら大変なことになってると思う。

「じゃあそのミ・・・美衣。」

「・・・(びく)。」

 突然呼ばれた名前に、ミー子が大きく反応した。

 本気だと、受け取ってもらえたかな。

『私だけ恥ずかしいのはあれだから、なっちも服脱いでよね!』

「・・・分かった。お前にだけ恥ずかしい思いはさせないからな。」

 上半身の服を脱いだ。

 そしてミー子のブラジャーに手をかけ―――


『え!?紗由、それ本当!?うわあああぁぁぁぁぁぁ!!!』


「・・・っ!!!」

「・・・(びく)!!!」

 春姉がなんかものすごい声を上げながら階段を駆け上がってきた。

 そのまま部屋に直行したみたいだ。

 なんだったんだ今の。

 というか、今の春姉の絶叫でちょっと冷静になってしまった。

 これ完全にミー子に手をかけようとしてましたよね、俺。

 というかもう襲い掛かる超寸前だったよね。

『びっくりしたね。』

 そういうミー子の胸が、荒く上下しているのが分かった。

 どうやら相当緊張していたらしい。

 ・・・が、さっきまで期待のまなざしだったミー子の視線は、今や諦めモードになってしまっている。

「・・・今日はもう無理そうだな。というか、なんつーか暴走しちまった。すまん。」

『今回こそは本気だなって思ったよ。私もだいぶ焦ってしまいましたん。』

「普段は誘ってくるくせに、こういう時は弱いんだな。」

『経験ないからね!緊張するし恥ずかしくもなるさ!』

「ちょっと頭冷やしてくる。」

『うん、行ってらっしゃい。戻ってきたら、もう寝よっか。』

「そうだな。」

 リビングに行って、水を飲む。

 俺、流されやすいんだろうか。

 京介と祈木の話を聞いて、衝動的にミー子に襲い掛かろうとしたし。

 でももし本当に流されやすかったら普段から耐えられてないか・・・。

 それに、俺はまだ責任を取れる年でもない。

 万が一だってあるわけだし、なによりミー子を傷つけたくないし・・・。

 こんなこと言ったら、京介にヘタレとか言われそうだな。


 Side 美衣

 正直覚悟した。

 たぶん今日がその日になるんだろうなあ、と。

 結果は邪魔が入ってならなかったけど。

 というか、すごく緊張した。

 すごく焦った。

 すごく、恥ずかしかった。

 胸を触られたときは、少し怖かった。

 だって知らないんだもん。

 これから何をするか、何をされるのか。

 知識はあるかもしれないけど、本当のことなんてやってみないとわからないもん。

 なっち、本当に本気だったんだろうなあ。

 下の名前で、あだ名なしで呼ばれたのっていつぶりなんだろう。

 小学校の時以来だったかな。

 修学旅行で告白されたときもあだ名だったし。

 たしかミー子っていうあだ名がついたのって・・・いつからだっけ。


『ずいぶんと久しぶりに名前で呼んでくれたね。』

 部屋に戻るなりミー子にそんなことを言われた。

 ・・・そういえばちゃんと名前で呼ぶのって久しぶりだな。

「えと、まあ、それだけ本気だったってことだ。」

『それはなんとなく伝わってきたよ。だいぶ焦ったけどね。』

「困らせちゃったか。」

『いやいや、そんなことないよ。ある程度は、予想してた。』

「そうか・・・。」

 それって俺が本気になることを予想してたってことだよな。

 だから今聞いちゃうって言ったんだよな。

 そりゃ、男の部屋で、しかも2人きりで。

 そんな話始めたら、その気になるのも無理はない。

 というかならない方がおかしいだろう。

『ところでちょっと気になったことがあったんだけど。』

「なんだい?」

『私のこと、あだ名で呼ぶようになったのっていつからだっけ。』

 ・・・覚えて、ないのか。

 まあ、仕方ないか。

 あの時のミー子は・・・。

『なっち、どうしたの?』

「えっ、ああいやいや、なんでもない。」

 いかんいかん、また過去のことを思い出しそうだった。

 あんな、心の凍ったミー子はもう、見たくない。

『中学のころには呼ばれてたと思うんだけど、いつからかとかは思い出せないのよね。』

「・・・まあ、小学校の頃は普通に名前で呼んでたもんな。」

『だね。私はずっとなっちって呼んでるけど。』

「それこそいつからだよ。」

 確かこの前見たビデオテープだとミー子は俺のことをなっちゃんと呼んでいたはず。

『小学校上がる前くらいかな?幼稚園の頃はなっちゃんだったし。』

「そんなに前かあ・・・。」

『んで、結局いつからなのよ。』

 正直、あんまり聞いて楽しい話じゃないと思う。

 俺がミー子って呼んでる理由も。

 言っても、いいのかな。

『もしかして、あまり話したくないとか?』

 さすがというべきか、こういう時のミー子は鋭い。

「聞いてくれるか?」

『もちろん、何でも聞きますよ。』

「・・・だったら、ちゃんと言わなきゃな。」

『・・・え、もしかして重い?』

「まあ、な。」

『ああ、そういうことね。』

 なんとなく、ミー子も察してくれたらしい。

 そう、あれは・・・。


 (あきら)さんと風羽(ふう)ちゃんが亡くなったと聞かされた次の日。

 ミー子がおかしくなった。

 話しかけても、何もしゃべらなくなった。

 ぼーっと、どこを見ているのかすらも分からない。

 変わってしまった幼なじみに、訳もわからず俺は泣いた。

 小学校の頃のミー子は、男子の輪に混じって一緒に遊ぶような、明るくて元気な子だった。

 一晩で変わってしまったミー子が、怖かったのかもしれない。

 家の中で、暴れた。

 あれはみいじゃない、あれはみいじゃない・・・って。

 母さんは必死になって俺を止めた。

 冬姉は、俺をかわいそうなものを見るような目で見ていた。

 そういえば、あの時から冬姉は俺に優しくしてくれるようになったのかもしれない。

 昔は、お姉ちゃんのいうことは絶対!みたいな姉だったし。

 それでもたまに優しいから、好きだったけど。

 医者からミー子の話を聞かせてもらった。

 ショックで声を出せなくなってしまったらしい。

 それでも、君の幼なじみの美衣ちゃんだよ、と言ってくれた。

 でも、俺にはそれが信じられなかった。

 ミー子が、違うミー子になってしまったと、俺は思った。

 今までの美衣とは違う、俺の知らない子だ。

 だから、俺は美衣が前の明るい美衣に戻るまで、あだ名をつけることにした。

「―――なあ、ミー子、俺がついてるからな!」


『そういうことだったのね。』

「今じゃすっかり明るくなって、普通にあだ名になってるけどな。」

『もし、私の声が戻ったら・・・。』

「その時は・・・どっちがいい?」

『また、美衣って呼んでほしい。』


「・・・明るい。俺どんだけ寝てたんだろう。」

 カーテンを開けて寝ていたせいか、太陽の光がもろに顔に当たっている。

『おはよう。』

 目の前には、まだ眠そうだが笑顔のミー子がいた。

 って、珍しいな。

「今日は朝起きなかったのか。」

『へへへ、寝坊しちゃいましたよ。』

 笑顔が照れ笑いに変わる。

『いわゆる朝チュンってやつだね。』

「違うね。」

 残念ながら昨日は未遂に終わり、俺たちは何もしていない。

『やだもう、昨日の夜はあんなに情熱的だったくせに。』

「俺の知らないところで何かが起きている。」

『まあ、うそなんだけどね。』

「知ってた。」

 ミー子がベッドから起き上がった。

『遅くなっちゃったけど、ちょっと走ってこようかな。』

「たくましいな。」

『もちろんなっちも同伴でね。』

「そんなことだと思ったよチクショウ。」

 抵抗むなしく、着替えさせられてしまった。

『そうそう、ジャージの下。どうなってるか知ってる?』

「普通にパンツじゃないのか。」

『ふふふ、残念、パンツの上にスパッツを履いておるのだ。』

「なん・・・だと?」

 スパッツだと!?

 普段学校ではスカートから伸びるすらっとした足そしてその足を包む黒タイツにちょっとばかり興奮している俺だが!

 スパッツというまた違うアプローチ!

 健康的な魅力!

『なっちがとんでもないド変態の顔をしていらっしゃる。』

「ごめん正気に戻った。」

『本当にそういうの好きよね。』

「ええ、まあ。」

『否定しないんだもんね、すごいわ。』

 自分の欲望に我慢をかけてはいけません。

『さて、走りますよ。ついてきてね。』

「あんまり早いとついてけないからね。」

『了解。』

 やっぱりミー子は早かった。

「ついていけねえ!」

『減速してるつもりなんだけどなあ。』

 走りながら器用にケータイを遣わずに手話で話すミー子。

 これで減速しているとおっしゃいますか。

 あれ、俺が遅いだけ?

「よし決めた!頑張ってついていくぜ!」

『よしこい!』

 ついていけませんでした。


『そういえば、腕立て伏せとかはできるようになったのかい?』

 走り終わった後、ミー子がいきなりそんなことを言った。

「そういえば忘れてたな。さすがに傷ももう痛くないし、できるかな?」

『やってみようよ。』

「帰ったらな。」

 ミー子に走りでついていけなかったし、筋トレでもして体力つけた方がいいよな・・・。

 パティシエって厨房にずっと立ってることも多いし、意外と体力勝負だったりもするからな。

『最近寒くなくなってきたし、走るにはちょうどいい気温かもね。』

「まだ寒くない?」

『全然?』

「そうですか・・・。」

 俺は5月の気温が一番好きなんだけどなあ。

『なっちは8月の気温が一番好きなんじゃないの?』

「名前で判断しないでね?」

 確かに俺は夏央だけども。

 名前に夏がつくからって夏が好きだと思わないことだな!

 冬姉だって寒いの苦手だからな!

『というか、一緒に出掛けて、一緒に宿題やって、もうやることなくなっちゃったけどどうしようか?』

 どうするかねえ・・・。

 今年はもう高校3年か。

 夏から忙しくなるんだろうなあ。

「・・・よし、全国対戦で相手をぼっこぼこにしようか!」

『いいね!楽しそう!』

 帰って風呂入ってミー子の部屋に行き、即行でゲームを起動しました。

『その前になっち、やることありません?』

「・・・腕立てだよね。やってみるよ。」

 まあ予想はできていたが・・・前よりも全然できなくなっていた。

『こりゃ毎日やらないとね。』

「そうだよな・・・。全然やってないとこんなにきついもんなんだな・・・。」

 いやでも体力の低下を思い知らされる。

 ダメですね、ちゃんと毎日やっていかないと。

『さて切り替えましょう。ぶっ倒すよー!』

「OK!」

 たまにはこんなにゲームをやっていても、いいだろう。

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