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Please speak!  作者: 長野原春
57/113

久しぶりのお出かけです

 電車っていうのは、あんまり好きじゃなかったりする。

 いや、紗由さんと行ったような、電車の写真を撮ったりするのは嫌いじゃない。

 俺が嫌いなのは、乗る方だ。

 別に昼とかなら空いてるだろうしまだいい。

 問題は朝だよ朝。

「なんで朝9時になっても人が多いんですかねえ・・・。」

 普通通勤ラッシュって朝7時台のことを言うんじゃねえの?

 こんな時間でも人多いんだね?

『なっちはフレックスタイム制を知らないらしい。』

「ああそれのせいか・・・。」

 考えてなかったよ。

 最近では労働時間を選べるんだってね。

 いい時代になった・・・かどうかは分からないけど、通勤ラッシュの解消にはなってないと思う。

『ちなみにパティシエは通勤ラッシュも何もないからね。』

「知ってるわそんなこと。」

 まあどこで働くかにもよるだろうけど。

『なっち、せっかくのお出かけだったのになんか疲れた顔してない?』

 ミー子が俺の顔を覗き込んでくる。

「ああ、それは・・・昨日のことなんだけどな・・・。」


「春女と、なにかあったの?」

 ついに聞かれた。

 まあ確かに俺たちの態度を見ていたら怪しいことこの上ないだろう。

 ちょうど春姉もいないし、聞くにはいい機会か・・・。

「んー、まあ、あったことにはあったよ。ただ、俺の口から言っていいことかというと、そうでもない。」

「この前は春女と夏央が真っ赤になって顔をそらしたよな。」

「・・・まあ確かにね。」

 いまだ恥ずかしい気持ちはある。

 春姉も、どっちかっていうとなんで言ってしまったんだろうという思いが強いだろうし。

「すまん、息子を疑いたくはないんだけどまさか春女のことだい・・・」

「彼女いるって言ったよねえ!!!」

 そんなわけあるかっ!!

「お、おう・・・。すまん。」

「勘弁してくれ。はー・・・、春姉に好きって言われたんだよ。」

「・・・ええ!?春女が!?」

「そうなの。」

 ごめん春姉、言ってしまいました。

「そ、そうかー・・・春女が夏央のことを・・・ほー。」

 開いた口が塞がらない父さん。

 まあ、娘が義理とはいえ弟のことを好きになっちゃったって話だし、仕方ないと言えば仕方ない・・・のかな?

 まあ、どこぞにブラコンの姉がいたような気もしなくもないけど。

 そういえば最近帰ってこねーな。

「そ、それでどうなったんだ?」

「想いは聞いた。まあ、ちゃんとかまってくれとだけ言われたよ。」

「そ、そうか。いやあ、夏央は二股を決意してたらひっぱたいてるところだった。」

「俺そんな風に見えるかね・・・。」

「ああいや、冗談冗談。」

 目が冗談っぽくなかったのは、よく覚えている。


『それは笑える。』

「俺としては笑えない状況だったんですがね。」

 一瞬父さんがキレるかと思ってひやひやしてたんだから。

『でもなっち女の人に告白されてよく揺らがなかったね。』

「そりゃあ当たり前でしょうよ。こんなに可愛い彼女がいるのに。」

『そう思ってくれるのはうれしいけど、ハルさん結構美人じゃない?私とハルさんで比べられちゃったらあんまり自信ないんだよね。』

「俺にはずーっといっしょにいたミー子が一番かわいく見えるんだけどね。」

『そりゃフィルターってもんだ。』

 まあ確かに春姉は美人だけど・・・だからといって自分を卑下するほどミー子が可愛くないわけじゃない。

 というか、表情には乏しいけど、顔立ちは整っているし、結構かわいい顔をしてると思う。

 そういえば、思春期の女子にありがちだとは思ったけど、ミー子の顔にニキビとかできたのって見たことねーな。

「ミー子って、肌の手入れとか結構ちゃんとしてる?」

『なにいきなり。ふつうに顔洗ってるだけだよ?』

「いい体質してますね・・・。」

 うらやましがられそうだ。

『ちなみに日課のランニングですが、さぼると太ります。』

「それこそ見たことねーわ。」

『まあ始めてから欠かしたことはないしね。』

「それ本当に太るかどうかわからないじゃん。」

『確かに。でも私結構ガリガリよね。』

「ん、そんなことないとは思うけど・・・。」

 たしかにすげえ軽いけど。

「というか、細くても腹とか太ももとか、適度に締まってるし問題ないと思うけど。」

『しかしこちらはぷにっとしているんですよ。』

 ミー子が俺の手を引き、二の腕を触らせた。

 うん、確かに少し・・・。

『でもこのままお腹とか太ももとか筋肉質になったらどうしよう。』

「俺は・・・今のミー子の脚はやばいと思う。」

『変態。』

 ごめんなさい、変態です。

「というか、それスカートか?新しく買ったの?」

 今日のミー子は下半身だけいつもと違う格好だ。

 上はNSシリーズだけど。

『残念ながらスカートではありません。』

「キュロットか。」

『知ってるのね、男なのに。』

「知ってちゃ悪いかな!?」

 前からミー子にキュロットとか似合いそうだなーとか思ってただけで。

 実際似合ってる。

 NSシリーズがシュールだけど。

『あと、やっぱりなっちはこれ好きよね。』

「もちろん、最高だぜ。」

『変態。』

 ミー子が太ももをぴったり合わせ、脚を閉じた。

 ちょっと恥ずかしそうな顔をしている。

「すまんな、黒タイツ好きは俺のアイデンティティ。」

『どへんたい。』

「でもいつも俺に合わせて黒タイツはいてきてくれるよね。」

「・・・(ぷい)。」

 ミー子がそっぽを向いた。

 そのまま、ケータイを打つのが見える。

 文字を打ち終えたらしいミー子が、こちらを見ずにケータイだけ見せてきた。

『できればなっちの好きな姿でいたいだけだし。』

「ツンデレいただきました。」

「・・・!」

 ミー子の顔が一瞬にして赤くなった。

「・・・(ぽか)。」

 肩をグーで殴られました。


『江ノ島ってこんなに遠かったっけ。』

 早くもミー子が電車に飽きたっぽい。

「まだ半分も来てないんだけど。」

 まだ、某オタクの聖地の駅なんだけど。

「まだ乗り換えすらしてないぞ。」

『家にいることが多いから案外長い間電車とか乗るの嫌かもしれない。』

「ゆふいんの森に乗ったときは飽きてなくなかったか?」

『あれは観光列車じゃない。ワクワクよ。』

「そういうもん?」

『そういうもん。』

 普通列車と観光列車じゃ大違い・・・って、まあ、そりゃそうか。

 あんなん、なかなかできる経験じゃないもんな。

『でもここより先ってあんまり行ったことないかも。』

「あれ、ミー子は江ノ島は行ったことない?」

『1回だけ。』

「すくなっ。」

『アキバは何度かあるけど、ここらへんまでかな?』

「そうだったのか・・・。」

『でも、久しぶりのデートだし、いきますよ。』

「いやここまで来てむしろ行きたくないとか言い出したらびっくりだよ。」

 だんだん、電車の中の人が少なくなってきた。

 まあ、あそこらへん過ぎればこんなもんか。

 あとはもうちょっと先まで行きそうな会社員たちと、なんか学生みたいなやつら。

 男同士もいれば女同士もいるし、カップルもいる。

 もちろん、5人くらいでどっか行くやつらも。

 もしかしたら、行先は同じかもしれない。

「・・・(くいくい)。」

「ん、どうした?」

 ミー子が、俺の袖の裾を引っ張った。

『あの男女2人組はカップルかな。』

「まあ、そうじゃない?」

『ああいうの見てると、以前はリア充爆発しろとか言ってた気がするよ。』

「それ前にも話さなかったっけ。」

『結構何回でも思っちゃうのよね。でも私の隣にはなっちがいるし、私もリア充よね。』

「充実してる、って思うんならミー子だって十分リア充だろうな。」

『なっちが隣にいてくれて、友達もいて、バイトもできて、とっても充実してるよ。』

「はは、俺もだ。」

「・・・(きゅっ)。」

 ミー子が控えめに、俺の手を握った。

 まったく、かわいい奴め。

 周りの人になんだか見られているような気がするけども気にしない。

 いいじゃねえか、俺らもリア充なんですよ。


『こっから乗り換えるの。』

「そういうことだ。」

『終点まで来て乗り換えるの。』

「そういうことだ。」

『遠いのね。』

「そういうもんだ。」

 というわけで、乗り換えの電車を待つ。

 そんで鎌倉まで行ければ、そっからは江ノ電だ。

 やっぱりなんというか、久しぶりのデートだ。

 楽しみだなあ。


「さあ着きましたよ鎌倉駅。」

『こっからさらに電車に乗るという。』

「大丈夫、こっからはいい景色だぜ。」

 本当に、江ノ電沿線は景色いいからさ。

『そういえば、江の島行く前に寄りたいところあるよ。』

「ほう、それは?」

『極楽寺駅。』

「・・・なんかあるのか?」

『アニメには聖地というものがありましてですね。』

「あの、舞台になってるところってやつか。」

 ミー子がうなずいた。

『中学生のころに見てたアニメなんだけどね、極楽寺が主人公の家の近くなんだ。まあ、江ノ島展望台とかも舞台になってたけど。』

「ちなみにどんなアニメなんだ?」

『グロい。』

「オーケーそれ以上言わなくていいぜ。」

 グロいのはダメ。

「・・・そうだ、せっかく江ノ電に乗るんだし、写真撮っておこう。」

『なっち、デート中にほかの女のことを考えるのはNGだぜ?』

「ごめん、一瞬考えた。」

 電車の写真を送ったらあの巨乳サイドテールが喜びそうだなとか、少し思ってしまった。

『友達のことを考えるのは悪くないけど、今は私とのデートだぜ。』

「そうだよな、ごめんな。」

『わかればよろしい。』

 そういって、ミー子が俺の腕に自身の腕を絡めてきた。

 ・・・もしかして妬いてる?

 なんて、口に出したらパンチされるんだろうな。

『まったく、私だって、独占欲がないわけじゃないんだから。』

「むしろミー子って割と独占欲ある方だろ。」

『わかってるわそんなこと。でも、なっちの仲いい人は女の人が多いから我慢してるだけ。なっちの交友関係まで邪魔するわけにはいかないし。』

 まったく、俺のことをよく考えてくれてやがる。

 そっか、我慢させちゃってたか。

「・・・ありがとうな、ミー子。」

「・・・?」

 不思議そうに、首を傾げられた。


『来ましたよ極楽寺。』

「ほーここが・・・。」

『アニメだと確か桜が咲いてたはずなんだけど、時期が早かったか。』

「まあ、そりゃ仕方ないだろうよ。4月って出かけられるような日はかなり少ないだろうし。」

「・・・(むー)。」

 写真を撮ろうとしたが、駅のすぐそばに人だかりができていた。

「なんだあれ。」

『わからぬ。でも写真を撮りたいから邪魔なんですがねえ。』

 確かにこんなに人がいる状況で写真を撮ってもなあ。

「これ、何の人だかりですか?」

 仕方ないので何があったのか聞いてみることにした。

「ああ、今、ドラマの撮影をやってるらしいんですよ。そんで、撮影が休憩中だから、芸能人を一目見ようと人だかりができてるといった状況で・・・。」

 そういうことか。

 休憩中ってことは、まだ撮影は終わってないっていうことだよな。

 まだ写真は撮れなさそうだ。

「ありがとうございます。」

「いえいえ。」

「だ、そうだ。」

『ドラマの撮影まじファ○キン。』

「女の子がそんな言葉使っちゃいけません。」

 ある意味珍しいことが起きてるような気がするんだけどね。

『まあいいや、行こう。』

「俺はどこ行くかわからないから、ミー子についていくよ。」

『後ろついてくる気?』

「んっ?」

 ミー子が俺の真横まで移動してきて、右手をつかんだ。

『今日はこれで。』

「・・・そうだな、デートだもんな。」

 しばらく歩くと、ミー子がいきなり立ち止まった。

 よかった、階段が長かったから少し疲れてたんだよ。

『ここが主人公の家があったところ。』

「壁だけど。」

『主人公の家はこっちに家が追加されてるのよ。』

「そういうことか。」

 いきなり何言いだすんだとか思っちゃった。

 そして次はお墓。

『ここで壮絶なバトルが・・・。』

「墓で何やってんだ。」

『バトル。』

 絶対たたられそう。


『海だああああああああああ!!』

「入る?」

『3月だぞもうちょっと考えてからしゃべれバカヤロウ。』

 厳しい。

『そう、ここであの子を拾うんだよ!』

「どんな子?」

『角が生えたピンク髪ロングの裸の女の子。』

「わけわからねえ。」

『そこはほら、二次元だから。』

「まあ確かにね。」

 二次元ってあり得ない髪色のキャラクター多いよね。

 まあ、パラロスで使える天使たちも、面白い髪色してるからな。

 メタトロンは赤色だし、サンダルフォンは銀色だし。

 セラフィエルは金髪だからあり得る色はしてるけども。

 尻が汚れるのは嫌なので、立ちながら海を眺める。

『やだ、2人で海を眺めるとかちょっとロマンチック。』

「見ようによっては危ない人たちに見えるだろうけどな。」

『どういうこと?』

「いやほら・・・カップル、2人きり、冬の海・・・。」

『おいやめろ。』

 気づいてくれたみたい。

『それとも行っちゃう?』

「行かない。」

『私はなっちについていくよ。』

「行かねっつの。」

 誰が幸せ絶頂期に彼女と心中するんだよ。

『ま、それもそーよね。まだまだ私はいきたいところあるよ。』

「ほう、どこかね。」

『神社。佐助稲荷神社だよ。』

「ほう・・・どこかね?」

『案内するよ、手を出しな。』

 といいながら、ミー子から手を出してきた。

 まったく、言ってることとやってることが違うっつの。

 まあ、いいや。

「ちなみにアニメでは何をしてたところなんだ?またバトルか?」

「・・・(ふるふる)。」

 ミー子は首を振ったが、何も答えてくれない。

 つくまでのお楽しみ、ということかな?


「長い階段は嫌いだ・・・。」

『ようじじい。』

「うるせーやい。」

 神社の階段長いっすわ・・・。

 やっと上まで登ったところで、ミー子が石の狛犬に近づく。

『アニメだと壊れているところまで再現されてるんだよねー。』

「よく作りこまれたアニメだこと。」

『実際に、アニメの景色は極楽寺~江ノ島のほぼそれだからね。』

「そうなのか。」

『なっちも見てみる?』

「グロイのはダメ。」

 神社の本殿の横の建物には、ジャグが置いてあった。

 ご自由にお飲みくださいって書いてあるし、いただこう。

「あ゛ぁ~冷たい麦茶がしみる~。」

『何の真似をしてるのかはわからないけど気持ち悪い。』

「ひっど。」

 ミー子が俺から離れ、本殿横の縁側に腰かけた。

 そして、こっちに手招きをしてきた。

「そっち行けばいいのか?」

「・・・(こくり)。」

 ミー子の隣に座ると、ミー子がくっついてきた。

 というか、めちゃくちゃ近い。

 右腕に、ミー子の左胸が当たるくらいに近い。

「ど、どした。」

『アニメでは、ここで主人公と幼なじみがイチャイチャするところなの。』

「ほ、ほー。」

 少し体を離そうとするが、それ以上にミー子が近づいてくる。

「・・・んっ。」

「・・・。」

 キスされた。

 と、唐突だな・・・しかも外ですよここ。

『主人公の幼なじみになった気分だよ。』

「気分じゃなくて、ミー子は俺の幼なじみだろ?」

『残念ながら、なっちはなっちでありそのアニメの主人公ではないのだよ。』

「そーでっか・・・。」

 ミー子が俺から離れ、腰を上げた。

『さあさあ、次に行きましょう。』

「もういいのか?」

『うん、次に行くのは・・・江ノ島だよ!』

 ミー子が笑った。

 くそっ、かわいい顔しやがって。

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