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Please speak!  作者: 長野原春
56/113

美衣ちゃんの1日

 う、眠い。

 でも着替えないと。日課のランニングだ。

 今日は・・・おおお、結構寒いな。

 春休み入ったとはいえ、まだ3月だからなー。

「・・・(ばしゃばしゃ)。」

 顔を洗って、発声練習。

「・・・!・・・!」

 出ないなあ。

 ・・・あ、お母さん、もう用意してる。

『おはよう。今日は早いんだね。』

「あら美衣おはよう。そうなのよ~今日早くて・・・朝ご飯作れてないんだ、ごめんね。」

『ん、いいよ。私自分で作るし。』

「ごめんね。じゃあ、行ってきます!」

『お仕事頑張って。』

「うん!」

 早いなあ。

 うん、こんな朝早く仕事に出るのは嫌かな。

「・・・ふー。」

 さて、走りに行きますか。


「お!美衣ちゃんおはよう!」

「・・・(ぺこり)。」

 犬を連れて歩いてるおばさんに声をかけられた。

 朝5時から散歩なんて、元気ですね。

 ちょっと寒いけど、逆に目が覚めていい。

 どうせなら、なっちと一緒に走りたいけど。

 今日宿題を終わらせて、明日はなっちとお出かけ。

 久しぶりだなあお出かけ。

 なっちの言う通り、私たちは普段ゲームとかしてばっかりだから、たまにはこういうのもいい。

 普段から出かけないから、なっちが誰かと出かけると嫉妬っぽいものしちゃうんだけどね。

 お出かけかあ・・・楽しみだな。

「おう美衣ちゃん、おはよう!朝から元気だねえ!頑張れよ!」

 スーツを着たおっちゃんに声をかけられた。

 通勤途中だね、お仕事頑張ってください。

「・・・(ぺこり)。」

「お、美衣ちゃんが笑顔だなんて珍しいな。何かいいことでもあった?」

「・・・(ぴく)。」

 うぇ、顔に出てた。

「ははは、赤くなってるよ!おっと、話してる場合じゃなかった!」

 走って駅の方へ向かうおっちゃん。

 スーツで走るのってきつそうね。

 さーて、町内一周頑張るぞー!


「・・・ふー。」

 いい汗かいた後のシャワーは気持ちいい。

 前はシャワー浴びる前になっちが起きてきて驚いちゃったこともあったけど。

 髪を乾かす前に、お気に入りのヘアミスト。

 これで、少しは女の子っぽさが出るといいけど。

 実際のところはどうなんだろ。

 まあいいや髪を乾かしましょう。

 やっぱり、髪が短いと乾かすのが楽でいい。

 陽花とかは髪が長いから大変そう。

 さて、じゃあ朝ご飯でも作りましょうかね。

 ・・・お母さんいないのか。

 そしたら自分で作らずともなっちの家に行けば・・・よし。


「あら美衣ちゃんおはよう。ランニング終わったの?」

 台所で、秋穂さんが朝ご飯を作っていた。

『おはようございます。終わりましたよ。お母さんが朝から仕事でいないので1人で食べるのもなあと思い。』

「あらあら、那空(なあ)ちゃんも大変ねえ。朝ご飯、家で食べてって!」

『ありがとうございます。』

 やった、秋穂さん優しいぜ。

 できればなっちと一緒に食べたいところだけども・・・さすがにこの時間じゃ寝てるか。

 ・・・あ、でも今日は午前中一緒に宿題を進めるって言ってるし、起こしてもいいよね。

『なっち起こしてきます。』

「お願いね。」

 えへへ、朝からなっちの部屋に突撃だ。

 ノックもせずに扉を開ける。

 え?遠慮?そんなものいりませんよ。

 この時間になっちが起きてるってことはほとんどないし。

「・・・ぐう。」

 ほらやっぱり起きてない。

 さて、どう起こそうか。

 ・・・その前に寝顔の写真でもいただこう。

 よし、じゃあ起こそうかな。

「・・・(つんつん)。」

「うーん・・・。」

 起きるはずもなく。

 どうしよっかな。

 飛びついてやろっかな。

 いっつも軽いって言われるけど、飛び乗ったらさすがに重いだろう。

 よーしやろ・・・あっ。

 ・・・うん、やめとこ。

 仕方ないね、朝だもんね。

 普通に起こしてあげよう、それが一番だ。

「・・・(ゆさゆさ)。」

「・・・んー?」

「・・・(ぽんぽん)。」

「・・・おおう、ミー子か。おはよう。」

『おはよう。朝ご飯できてるよ。』

「・・・ん?ミー子が作ったのか?」

『いや秋穂さんだけども。』

「てか、朝早くねえ?どうしてここにいんの?」

『朝からお母さんがいないから朝ご飯もらいに来た。あと、宿題終わらせる約束したでしょ。』

「あ、そっか・・・。そういやそうだ。」

『早く終わらせて、明日出かけようよ。』

「うん、そうだよな。起きよっと。」

『あ、大丈夫?起きれる?』

 なっち低血圧だから、そんなにすぐには動けないかな・・・。

「・・・あー、肩貸してくれ。」

『了解。』

 低血圧のなっちを支えるのは、とっても重かったです。


『よっしゃ今日で終わらせたるでー!』

「この量ならミー子のバイトの時間までには間に合いそうだな。」

『ちゃちゃっと終わらせちゃいましょ。』

「そうだな。」

 このくらいの量位へっちゃらです!

 なんたって、これを終わらせないと明日なっちとお出かけできませんからね!

 なっちのとなりでやろ。

「近くない?」

 おや、さっそく文句が来てしまいました。

『なっちの近くで勉強したいなという私の心の現れ。』

「それはかわいいんだけど、勉強しづらいから、もう少し離れよう?な?」

『仕方ないか。』

 少し離れてやる。少しな。

 ・・・いや、迷惑になるのも避けたいし、反対側に移動しましょうか。

「・・・。」

「・・・。」

 集中しているので、結構静かだ。

『わー!?待って待って!内容消えちゃった!?』

 隣から、ものすごく焦った様子のハルさんの声が聞こえてきた。

 内容消えた、ってことはパソコンでレポートでも書いてたのかな。

 い、いいや、集中集中。

「・・・喉渇いたな。ミー子、飲み物持ってくるけど麦茶でいいか?」

「・・・(こくり)。」

 私への気遣いも忘れないなっち、優しい。

 そうだ、私、昨日寝ちゃったからなっちより遅れてるんだっけ。

 今のうちに少しでも進めないと。

 漢字なんてどうせ書くだけだ。

 おらおらおらおらおらおら。

 ・・・ふう。

 右手が疲れるなあ。

「ミー子、麦茶持ってきたぞーって、手押えてどうした?」

『早書きしてたら右手が疲れた。』

「どれどれ。」

 なっちが私の右手を取った。

 手首と手のひらと、ぐいぐいもんでくれる。

 ・・・気持ちいい。

「少しは楽になったか?」

『気持ちよかった。』

「そりゃよかった。続きやるか。」

「・・・(こくり)。」

 なんか右手が暖かい。

 なんかやる気出てきた。

 これ終わったら少しなっちに甘えよう。

 ちょっと耳がかゆいし、耳掃除でもしてもらおうかな。

 よし、早く終わらせよう。

 集中集中・・・。


「よっし!俺は終わり!ミー子は?」

『あと10ページくらい。』

「よし、じゃあちょっと手伝うよ。」

『あら、いいの?』

「まあ、春休みの宿題って別に成績に入るかどうかも怪しいし、まあ大丈夫だろ。」

『じゃあ、少しだけ頼もっかな。』

 英語の問題だけ、頼んじゃおう。

「・・・あの、苦手なところ俺に押し付けてません?」

『なんのことだろう。』

 ふふ、私は先に進めちゃうよ。

 大丈夫、英語さえなければ大丈夫。

 テスト前にはちゃんと陽花に教えてもらおう。

「お、ミー子それで最後か。」

『うん、なっちも、それだけお願い。』

「お、おう。たぶんできるぜ。」

 なっちなら大丈夫なはず。

 いけるいける。

 にしても、なんで春休みの宿題なんてあるんだろ。

 別にめちゃくちゃ短いんだしさ、いいじゃないのさ、なくても。

 ・・・まあ、なっちと一緒にいれる時間が増えるのは、いいことだけどさ。

 いや、別に宿題とかなくても、一緒にいるけど。

「えーと確かここの文法は・・・。」

 なっちが私のために頑張って英語の問題を解いてくれてるよ。

 私感激。

 っと、いけないいけない、私は自分のやつに集中しないと。

 ・・・早めに終わらせるのはいいんだけど、これ春休み終わるころまで覚えてるのかな。

 絶対覚えてないと思うんだけど。

「よし、これで終わりかな。ミー子はどう?」

『もうちょっとだけ。』

「お、頑張れ。」

 もうすぐ、宿題の悪夢から解放される・・・!

 というか、まだ春休み2日目ですが。

 よーしあと1問。

 ってかこれめっちゃ簡単じゃん。

 ・・・よし。

『終わった!』

「お疲れさん!これでやることは終わったな!」

『よっしゃ!』

「うおっ!?」

 なっちに飛びついた。

「ど、どうしたいきなり。」

『甘えさせろー。』

「直球ですな。」

『そうそう、なんだか耳がかゆいのよ。耳掃除してよ。』

「唐突だな!?いいけど。」

『やったー。』

 1人でできるんだけどさ、見えないからどうも取り残しがあったりするんだよね。

「ちょっと用意するから待っててくれ。」

「・・・(こくり)。」

 用意も何も耳かき棒とティッシュだけでもいいんじゃ。

 ちょっとしてから、なっちが戻ってきた。

 その手にはタオルが握られている。

 なるほど、それを用意してたのね。

 さっそく、なっちの膝に頭をのせる。

「人にやるのはあまりねーからなー。痛かったら言ってくれよ。」

「・・・(こくり)。」

「あ、動かないでくれな。」

 難儀じゃのう。

「まず周りから拭くか。」

 耳に温かいタオルが乗せられた。

 おおう、気持ちいい。

 適度な力加減で耳を拭いてくれる。

「よし、反対。」

『こっちの耳掃除が終わった後でもいいんじゃないの?』

「タオル冷めちゃう。」

『なるほど。』

 素直に従った方がよさそう。

 左耳も、温かいタオルで拭いてくれる。

 ぬーん、温かいと眠くなりますな。

 でも寝てしまったら貴重ななっちの膝枕が堪能できないし。

 少し硬い気もするけど、いい感じ。

「よーし、じゃあやっていきますか。ほんと、痛かったら早めに言えよ。」

「・・・(ぐっ)。」

 動くなと言われてしまうので、右手でサムズアップ。

 棒の先端が、耳の中に入ってくる。

 自分でやるのとは違う感覚に、少しぞわっとする。

「・・・うーん、すげえ汚ねえってわけでもないな。」

 まあ、自分でもやってるしね。

「あー、でもあるかも。奥に入れるのは怖いから見える所だけでやっていくぞ」

「・・・(おっけい)。」

 動くことは許されないので、視線で返事をする。

 伝わったかどうかは、分からないけど。

 耳の中から、カリッという音が聞こえる。

 くっついてたのかな。

「取れた・・・けど、あんまり大きくないな。まあたぶんこんな感じのばっかりだろうけど。」

 とれたものをティッシュに落とすなっち。

 ・・・そういえば、今私はなっちに汚いところを見せているわけですね。

 なんだか恥ずかしいかも。

 いやいや、私は何度かなっちの耳掃除したことあるし、お互いさまよね。

 なるべく、なっちと一緒にいるときはきれいでいたいけどね。

 にしても、人にしてもらうのって気持ちいい。

 ちゃんと見えてるから、的確に取ってくれるし。

 なっちも手際がいいから、見えているところはだいぶきれいになっているはず。

 しばらくは耳掃除しなくていいかもしれない。

「んー、よし、こっちはいいかな。逆向いて。」

 逆を向くと・・・なっちのお腹が目の前に。

 これは・・・いやいや、何でもないです。

「ふー・・・。」

「やめてね!?」

 すまない、つい出来心だったんだ。

「ん、こっちは割ときれいだな。すぐ終わりそうだ」

 あらそう。

 それだとなっちの膝枕を堪能する時間が減っちゃうなあ。

 って、バイトにもいかないといけないんだった。

 んー、時間的にあんまり堪能することはできなさそうだ・・・残念。


『じゃあ、バイト行ってくるね。』

「おう、行ってら。頑張ってな。」

「・・・(こくり)。」

 階段を下りると、秋穂さんがいた。

「あら、美衣ちゃん帰るの?」

『これからバイトなんです。お邪魔しました。』

「いえいえ、また来てね!」

「・・・(こくり)。」

 はあ、返事をちゃんと言葉で返せたらいいのに。

「また来ます」とか、「行ってくるね」とか、ちゃんと伝えたいのに。

 こればっかしは、仕方ないのかなあ。

 ううん、きっといつかは出る・・・はず。

 っと、早く行かなきゃ。


「お、鏡崎か。」

 店に入ると、先輩がいた。

 いつも通りのウエイトレス姿だ。

『おはようございます。』

「おっす、今日は閉めまでか?」

「・・・(こくり)。」

「ほーん、そっか。ま、俺はもう上がりだけどな。」

 外を見ると、もう1人バイトの人が来るのが分かった。

 あの人は、ウエイトレスなはず。

 私は厨房だから、ほとんど顔は合わせないんだよね。

 とりあえず着替えましょう。

「お、美衣ちゃん、おはよう!」

 店長が出てきた。

『おはようございます。休憩終わりですか?』

「違う違う。事務だよー・・・私事務はあんまり得意じゃなくてねー。事務のバイト雇おうかな?」

『余計な出費が出るんじゃないですか?』

「そこなんだよねー。私が事務をやるかちょっとお金を出してバイトにやってもらうか・・・うーん。」

『まず着替えてきますね。』

「あ、うんそうだね。今日もよろしくね。」

「・・・(こくり)。」

 ケータイはいったんロッカーに置きましょう。

 さて、こっからは職人タイム、しゃべらないよ。

 ・・・正確にはしゃべれない、か。

 大丈夫、料理も、お菓子作りも得意。

 なんたって、なっちに料理を教えたのは、私ですから。

 さて、何が足りなくなりそうかな。

 うん、ここの店の人気商品のモンブランかな。

 なっちはモンブラン作るのすごい早かったっけ。

 たぶんここでバイトを続けてるせいだろうな。

「・・・ふー。」

 さあ、作っていきましょうか。

 作るの難しいっていう人も多いけど、お菓子作りは結局は慣れですよ。

 作り続けていれば自然と慣れて、普通に作れるようになる。

 飽きちゃうとよくないけどね。

 さてさて、人気商品の看板を守るためにも、おいしく作らないとね。

 あと見た目もきれいに。

 ・・・パティシエって、見た目も味も、高いクオリティが要求されるのよね。

 私にできるのかな。

 おいしいものを作る自信はある。

 でも、実際私の作るものが、そういう業界で通用するのかなーとか考えると、少し心配になっちゃう。

 ・・・いやいや、なっちと一緒なら、多分大丈夫ですよ。

 2人で力を合わせれば、なんだってできそうな気がする。

「・・・ふー。」

 あとは焼いてクリームを絞って完成かな。

 見た目はきれいに、でも手早くね。

 見た目を気にすると少し難しくなるけど、そこは売り物。

 見栄えがあってなんぼだし、見てくれが悪ければ食べる気も半減ってもん、手を抜くわけにもいきません。

 私はきれいにできますよ、なんたってお菓子作るのは慣れてるし、ここにきてもうすぐ半年くらい経ちそう。

 ここのバイトで、一番作ってるのはモンブランだからね。

 さあ焼けました、やっていきますよ。

 集中集中・・・。

 うん、いい感じ。

 これをあと30個繰り返すよ。

 ・・・。

「おっ!美衣ちゃんありがとう!並べてくるね!」

「・・・(こくり)。」

 モンブランがなくなりかけのショーケースに、新しいモンブランが追加された。

 ふふ、私の判断は正しかったのだ・・・。

 まあ、季節もの以外だと一番なくなるのが早いのがモンブランだしね。

 客を見る限り、リピーターが多いみたいだし。

 さて次は・・・。


「美衣ちゃん、今日は上がっていいよ。お疲れさま」

「・・・(ぺこり)。」

 さすがに立ちっぱなしだと疲れるなあ。

 でも、パティシエもおそらくこういうもんよね。

 弱音なんか吐いてらんない。

 さて、帰りましょう。 

 なんたって明日は、久しぶりになっちとお出かけだ。

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