表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Please speak!  作者: 長野原春
55/113

春休みに入りました

「どうするんさ。」

『そんなこと言われましても。』

 ミー子が困ったような顔をして首を傾げた。

「どっか行こうとか言ってなかった?」

『言ってたね。』

「どうするんさ。」

『そんなこと言われましても。』

 戻ってしまった。

「つか、何でこんな状況なの。」

『何でって?』

 ミー子の息遣いがよく聞こえる。

 顔がめちゃくちゃ近い。

 横を向けばほっぺが当たりそうだ。

 つか当たる。

「ひっつきすぎじゃねえ?」

『私は独占欲強いからね、仕方ないね。』

 背中には胸が当たり、すげえ近くに顔がある。

『いやほら、考えてみたらさ、なっちって結構いろいろな女性と一緒にいるじゃない?冬華さんはお姉ちゃんだからいいとして、ハルさんは血がつながってないから危険だし、紗由さんだって、一緒に出掛けるくらいの仲だし、おっぱい大きいし?』

「胸は関係なくないか。」

『それにほら、店長とも仲いいし、白奈先輩だって侮れねえ。私、彼女ながらなんか危険じゃない?』

「何にも危険じゃない。」

 その皆さんはそういう対象から外れています。

『なんか私とべたべたしてなくない?』

「すっごいしてると思うんだよね。」

 昨日一緒に寝たよね。

『もう超甘々な感じでさ、なっちがメロっちゃうくらいの。』

「ずいぶん甘えたがりだな?」

 指摘すると、ミー子の顔が赤くなった。

『ほら、今日誰もいないじゃん?なにしてても、だれにもばれないよ。』

「まあそうだな。」

 確かに母さんも春姉もいない。

 父さんは考古学者として、大学で講義だそうだ。

『あともう一つ。』

「なんだ。」

『私、今生理前なの。』

 ・・・。

「それが大体の理由だろ。ってかあっさり教えるんじゃねえ。」

『私の周期くらい把握してるくせに。』

 いやしてるけども。

『キスしていい?』

「あんま欲望に任せて動くんじゃねえ。」

『するわ。』

「話聞け。」

『じゃあ今からクイズね。』

「唐突すぎる。」

 ものすごい唐突だ。

 何の話の流れでクイズになったんだ。

『今からなっちに3ヶ所キスします。そんでもってキスした場所の意味を当ててください。』

「え、えー・・・何その恥ずかしいクイズ。」

 春休みしょっぱなからいちゃつきすぎでは・・・?

 それとも一般的なカップルでは普通なの?

 てか、改めて考えると結構恥ずかしいぞ!?

『私の思いがどんなもんだか思い知らせてやる。』

「ほ、ほほー。」

『前にも言ったもんね。なっちには私一人だけでいいんだってー。』

「あれ、冗談だったんじゃ。」

『言ったじゃん、2割は冗談って。』

 本気だったかー・・・。


 Side 美衣

 うおおおおおおおおおおやべえどうしよう私何してるんだろう!?

 ゆ、勇気振り絞ってここまで来たよ!

 ・・・文字に起こすのって、結構楽なのかもしれないなあ。

 や、やるぞお。

 私の想い、受け止めてくれえ!


「・・・(ちゅっ)。」

 顔を真っ赤にしたミー子が、俺の首筋にキスをした。

 あんたも恥ずかしいんじゃないですか。

 俺もものすごく恥ずかしい。

 えーと、首筋か・・・、どういう意味だっけ。

「・・・(ぐるぐる)。」

 ミー子が目を泳がせて、今度は体を落とした。

 ど、どこにするつもりなんだ・・・?

「・・・(ちゅっ)。」

「ひっ。」

 す、(すね)ですか!?

「やめなさいばっちい。」

 というか、脛ってどんな意味なんだ!?

「・・・(ふるふる)。」

 ミー子が首を横に振った。

『なっちのなら、汚くなんかない。』

 そういって、ミー子の顔がだんだん近づいてきた。

 この軌道は、確実に・・・。

「・・・(ちゅっ)。」

 最後は、唇。

 柔らかい感触が唇に伝わってくる。

 ・・・でも俺、今自分の脛と間接キスしてるんだよなあ・・・。

「・・・(くちゅっ)。」

「んうっ!?」

 驚いて思わず頭を引いてしまった。

 キスを中断され、ミー子は不満そうな顔をした。

 唇は知ってるぞ、愛情だ。

『なんで逃げた。』

「び、びっくりして。」

『ちゃんとそこまでも意味として取ってほしいのに。』

 知ってるよ・・・舌まで入れてくるのは、欲求だろ。

 なんて恥ずかしいクイズだ。

『そんで、答えは分かった?』

「すまん、唇しかわからん。」

『まあそこは簡単よね。分からないなら他は教えない。』

「なんでやねん。」

『ふふ、グーグル先生に聞けばいいんじゃない?』

 ミー子が微笑んだ。

 な、なんか調べたらものすごいのが出てきそうな気がする・・・脛とか。

『まあ、今日はまだ一緒にいるつもりだから、まだ調べないでね?』


 Side 美衣

 うわあああやっちまったやっちまった。

 勢いでやっちまったよ。

 すっごいドキドキしたし、なんかなっちいい匂いがした!

 調子に乗って脛の方までやっちまった。

 私、もしかしておかしいんだろうか・・・?

 い、いやいや!相手は私が一番大好きな彼氏だ。

 それなら脛へのキスも問題ないはず。

 それに、そこにだってちゃんと意味はあるし・・・。

 とっ!とにかくすっごく恥ずかしいな!

 私には刺激が強すぎた!


「あの、すっごい顔赤いけど大丈夫か?」

「・・・(ふるふる)。」

「顔赤くないじゃねえよ真っ赤だよ。」

『私はいたって普通だよ?変ななっちだね?』

「お前これ今この世界が二次元になったらミー子はゆでだこのような顔の色になっててしかも目はぐるぐるになってると思うぞ。」

「・・・(ぶんぶん)。」

 頭を振って必死に否定するミー子。

 ・・・たまには、反撃に出てやろうか。

 普段積極的なくせに、その実かなりの恥ずかしがり屋のミー子。

 すぐ照れるし、ひどいときにはその場から逃げたりする。

 でも、自分からはこんな風にキスを迫ってきたり。

 普段は俺からするようなことはしないけども・・・俺とて男だ。

 やらない、こともない。

 ミー子の両肩に手を置いた。

「・・・(びく)。」

 俺と目を合わせず、横目で見てくるミー子。

 その体は、かすかにふるえている。

「・・・あんまからかうと、俺も男だかんな。」

「・・・(ぷるぷる)。」

 ミー子の細い体を抱きしめ、顔がどんどん近づいていく。

 ミー子が、ぎゅっと目をつむった。


 みーこは ほうしんじょうたいに なった!


 顔を真っ赤にしてフリーズするミー子をとりあえずベッドに寝かせた。

 先に春休みの宿題でもやっちまおっかな。

 先に終わらせればミー子に教えることもできるし。

 そうだ、甘いものを食べながらやろう。

「冷蔵庫に何かあったかな・・・。」

 チョコレートがありました。

「・・・ホワイトチョコレートは甘え。」

 どっちかっつーとあまり甘くないほうが好きなんだよね、俺。

「さて、やりますか。」

 春休みの宿題を机に広げる。

 うん、この量なら今日明日で終わりそうだ。

「・・・すぅ。」

 あ、ミー子寝てる・・・。

 タオルケットでもかけてあげようか。

 なんというか、いろいろあったしな。

「よいしょ、っと。」

 よし、これでいいか。

「なんというか、さっきキスしたんだよなあ・・・。」

 ミー子の唇が目に入る。

 ・・・いやいや、今は宿題に集中せねば。

「やろうやろう。」

 音楽プレイヤーを起動し、耳にイヤホンをつける。

 早めに終わらるぞー。


「うーん、今日だけでは終わらなそうだな・・・。」

 さすがに量が多かった。

 春休みはそんなに長いわけじゃないし、早く終わらせたいけど・・・。

「・・・(つんつん)。」

「ん、起きたか。」

「・・・(こくり)。」

 まだ眠そうな目をしているが、起きたみたいだ。

 ・・・おおう、あれから3時間も経ってるのか。

 というか、3時間使って終わったのは現国と数学だけかー。

『宿題、やっちゃってるの?』

「ん、まあな。先に終わらせときたかったし。」

「・・・(ぷー)。」

 ミー子がいきなり頬を膨らませた。

「な、なんだ?」

『なっちと一緒にやりたかったのに。』

「ああ、そういうことか。いやー、先に終わらせといたほうが、あとでミー子に教えられるし、それに・・・。」

『なんですか。』

「あれだ、春休み、一緒に遊べる時間が増えるだろ?」

『お、おう、せやな。仕方ない、今回は許しちゃる。』

「おう、よかったぜ。」

『宿題終わったらさ、どっか出かけようよ。私行きたいところできたんだ。』

「お、そりゃよかった。いいぜ、どこ行く?」

『江の島に観光といきやしょう。』

「お、江の島か。そういや行ったことないな!」

『決め。明後日バイトないし、宿題終わらせちゃって一緒に行こうよ。』

「よし決まりだな。んじゃ、今から一緒に宿題やるか。」

『うん、家から持ってくるからちょっと待ってて。』

 春休みの予定が一つ決まった。

 久しぶりのお出かけか、楽しみだな。

『今確認して気づいたんだけど、なんか宿題の量多くない?』

「ああ、まあ、1日で終わらせないためだろ。たぶん、一般受験のやつらはそれこそ受験までずっと勉強漬けだろうし。」

『できれば指定校とかAOとか、そこらへんで受かりたいよね。』

「ああ、そうだな。とりあえず、一般じゃなきゃなんでもいいや。」

『ちなみに、なっちはどこに進もうかってのは決まってるの?』

「俺は・・・まあ、一応。ミー子は?」

『実は、私も決まりつつあります。』

 おう、それは初耳だ。

 お互い、やることが決まっちゃったら、行くところが離れちゃうのかな。

 できれば一緒のところがいいけど、さすがに進路までは決められないしな。

『ちなみに、どこを目指してるの?』

 お、聞かれましたか。

「実は・・・、バイトやってて思ったんだけど、パティシエ、目指してみようかなって。前に、先輩に好きなもんってのは意外と仕事にならないって言われはしたんだけどさ。俺、お菓子作るの好きだしさ。ほら、モンブランとか、大量に作ってるし。でもたまには自分で何か作りたいなーとか・・・そう考えてたら、やっぱパティシエ目指すのがいいかなあってな。」

 それを聞いて、ミー子が笑顔になった。

 ど、どうしたんだろう。

 それから、ミー子が下を向いて長文を打ち始めた。

 何を言われるんだろう。

『なっちならそういってくれると思ってたよ。そっちの道に進むんだろうなあってさ。実はね、私もそっちの方、目指そうと思って。私もバイトでお菓子作るの楽しいなあって思ったし、なにより、なっちと一緒に作るの、すごく楽しいんだ。』

 なんと、ミー子も目指すところが一緒だったとは。

 正直・・・これ以上うれしいことはない。

『だからさ!』

「お、な、なんだ。」

『一緒にパティシエになって、同じ店で働いて・・・私と一緒に、お菓子を作り続けませんか!』

 ミー子が顔を赤くしてケータイをこちらに向けてきた。

 なんというか、すごく突然な展開。

 でも・・・。

「そりゃ楽しそうだ。一緒に目指すか!パティシエってやつをさ!」

『なんかかっこつけてませんか。』

「ムード壊すんじゃねえよ。」

 大事っぽいところでのこの発言。

 ミー子はやっぱりミー子でした。


『やっぱり宿題の量多いな……。』

「ま、今日中には終わらないだろ。」

『明日は?』

「バイトだけど・・・、まあ、今日頑張れば午前中くらいには終わるんじゃない?」

『オールわんちゃんある?』

「そんな話してなかった。」

 むしろそんなことしたら眠くてバイトに力入らない。

『そういえば、夕飯はどうするのかね。』

「あ、そういえば今日俺だ。なんか作らねえと。」

『手伝いましょうか。』

「んー、いや、ミー子は俺がやった部分のところ写しておくといいよ。ミー子だけ宿題終わりませんでしたとか、嫌だし。」

『わかった、そうしとくよ。』

 というか、ミー子は今日は家で晩御飯じゃないのかな。

 那空(なあ)さん、家にいると思うんだけど。

「冷蔵庫の中は・・・野菜炒めでいいか。」

 いつの間にかもう6時。

 今から買い物に行くのも面倒だし、楽に済ませちゃおう。

「たっだいまー!」

 元気な声が聞こえてきた。

 父さんだ。

「お帰り、父さん。」

「おう!父さんは今帰ったぞ!お、今日は夏央の夕飯か。」

「まあ、野菜炒めだけどね。」

「いいんだいいんだ!男が料理できるってだけでも素晴らしい!」

「そんなもんかね。」

「ああそんなもんだとも。なんたって、俺の父さんは台所には一回も立たなかった人だからな!」

「それいわゆる亭主関白ってやつだよね。」

 今の時代まで残ってるんだろうか、それ。

 料理する男ってのも増えてきたような気がするけど。

「家事は全て母さんに任せていたからな。まあ俺は父さんを見習わないで料理できるようになったけどな!」

「それでいいと思う。」

 なんでも助け合いが重要じゃないかな。

 まあ、おじいちゃんとかの時代なら、男は仕事、女は家庭っていうのが当たり前なんだろうけど。

 というか、今でもそういう風潮はまだまだ残ってるんだろうけど。

「腹が減る匂いだなあ。ご飯は大盛りで頼む!」

「オーケー。」

 俺も腹減ってたし、大盛りで食う予定だ。

 ・・・ご飯あったよな。

「お、あるある、よかった。」

「大盛りでも平気な量か?」

「ああ、全然平気。」

「そりゃよかった!」

「じゃあ、これで完成かな。」

「・・・。」

 完成の瞬間、ミー子がリビングに入ってきた。

 突然のことで、父さんがぎょっとしている。

「お、どうした?」

『お母さんがご飯できたから帰って来いって連絡来たから、いったん帰る。』

「勉強道具は?」

『またあとで来るから、また一緒にやろ。』

「ん、オーケー。」

「・・・(ひらひら)。」

 手を振って、リビングから出ていくミー子。

 驚いている父さんに気付いたようだ。

「・・・(ぺこり)。」

 お辞儀をして、今度こそ出て行った。

 ちゃんと家の鍵を閉める音が聞こえた。

「・・・なあ、夏央、あれ驚かないのか?」

 父さんがいまだに驚いた顔のまま俺に聞いてきた。

「まあ、いつものことだしな。」

「てか、うちの鍵持ってるんだ?」

「ああ、よく一緒にいるからな。」

「いろいろと大丈夫なのか、それ?」

「ああ大丈夫大丈夫。父さんが心配してるようなことは起きないと思うよ。」

 というか、まだ疑ってたのか。

「父さん、ご飯どれくらいにする?」

「日本昔話くらい。」

「本当にやるからな。」

 何も言わないので本当にやってやった。

「ほれ。」

「・・・おかず乗せられなくない?」

「それくらい盛れって言ったの父さんでしょうよ。」

「はえーすっごい・・・。」

 日本昔話盛りをまじまじと見る父さん。

 これ盛るの大変だったんだけど。

「夏央と2人で飯ってのも珍しいなあ。」

「春姉が帰ってきてないからな。友達と食べに行ったりしてるんじゃないか?」

「そうかもなあ・・・。まあいいか、いただきます!」

「いただきます。」

 うん、自分で作ったからあれだけど、うまい。

「さすが夏央!ご飯が進むいい味付けだ!」

 父さんがご飯を掻き込んでいく。

 わーすごい食べるんですね・・・。

 毎日その調子で食べられたらご飯がすぐになくなるな。

「夏央おかわり!」

「早すぎねえ!?」

 俺まだ半分も食ってないんだけど!?

「ほい。」

「オウケイありがとうありがとう。あ、そうだ。夏央に聞きたいことがあったんだった。」

「お?どうしたの?」

 そういうと、父さんは上を向いて一度深呼吸をした。

 そして、まっすぐに俺を見て言う。

「・・・春女と、なにかあったの?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ