その強さは愛の証です
「やべえよミー子、3月になっちまった。」
『いきなりなんなのよ。』
大変だ!3月だ!
これはいけない!
「だって3月だぞ!これは悲しみを生む可能性がある!」
『悲しみって何よ。』
わかっていないのかこいつは!
だって、もう今月は終了式。
そうすれば、2年生のこのクラスは終わりを迎える。
つまり、それが意味することは―――
「4月になったら、俺たちは別のクラスかもしれない・・・!」
『あ、大丈夫もしそうなったら3年担当の先生全員殺す。』
「おおおおおうえええぇぇぇ!?」
いきなり超過激発言!?
『そもそもなっちと私が離れるとかありえないし私たちはそういう星のもとに生まれてると信じてるから私的には絶対の自信があるけど万が一っていう可能性もあってそういうときは私となっちと離したらいかに恐ろしいことが起こるかって先生に思い知らせてあげないといけないけど私は慈悲深い聖女だから普段こんなことしたくないんだけどやむ負えない場合は私のダークネスエンペラーアイを開放して奴ら不届き者に裁きの鉄槌を下さねばならないなーと思って準備をしてるんだけどそもそもそういう準備ってどこからしたらいいのかよくわからないんだよね。とりあえず先生の個人情報を探ればいいのかな?殺すって言ってもいろんな殺し方があると思うの。ほら、物理的と社会的?それなら先生たちの闇を探るかもしくは鈍器的なものを』
俺は途中で読むのをやめた。
というか、ここまで読んだだけいいと思う。
「やたら打つのに時間かかってると思ったら、そんなこと書いてやがったのか。」
『私のなっちへの愛が証明された、そう思わないかい?』
「碇シ・・・ちょっと待て。」
『私そこまで求めてない。』
「うるせえ。」
『いいんだな私が黙っても。今日一日ケータイ使わなくてもいいんだな。』
「やれるもんならやってみやがれ。」
『言ったな!?やるからな!?やるぞ!はい今日はケータイ終了!』
そういって、ケータイを机に置くミー子。
「つかクラス替えの話しててなんでこうなった・・・。」
「・・・。」
ミー子からの反応はない。
こちらをじっと見つめるだけだ。
「つーかさっき離れることはありえないって言ったけど、俺ら1年の時はクラス別だよな?」
「・・・(びく)。」
あ、反応した。
「ん?んー?どうなんですかミー子さん。」
「・・・。」
しかし反応はない。
こいつ本気だ。
「よーし、ミー子がそういう態度取るなら分かった。勝負だミー子。」
「・・・。」
「俺がもし黙れって言ってごめんなさいってなったら俺の負け。んでミー子が会話したくなったらミー子の負け。いいな?負けた方はスイーツおごりで。」
「・・・(こくり)。」
「ぜってえまけねえ。」
勝負の火ぶたが切って落とされた!
・・・って、本当に何でこんなことに・・・?
「あっ。」
消しゴムを落としてしまった。
落ちた消しゴムは転がり、ミー子の足元で止まった。
それに気づいたミー子が、消しゴムを取ってくれた。
「すまんミー子。ありがとな。」
「・・・。」
特に反応は見せず、黒板の方へ向き直った。
「・・・アヤ?」
後ろから、祈木が話しかけてきた。
「なんだ?授業中だぞ。」
「いや、かがみんとケンカでもしたの?」
祈木が不思議そうに聞いてきた。
ケンカ・・・ケンカね・・・。
ケンカじゃないだろうけど・・・。
「実はだな・・・。」
今日の朝起きたことを祈木に伝えた。
「アヤってばアホだね。」
「即答ですか。」
祈木にバッサリ切られてしまった。
「だめだよーアヤ、かがみんを大切にしてあげなきゃ。」
「え、どうしてそうなる。」
「あとね、これだけは絶対に言えることだけど、アヤはかがみんに勝てないよ。」
「なんだとう。」
俺がミー子に勝てない?
上等だ、絶対勝ってやろうじゃん。
「大丈夫大丈夫。勝てない理由はすぐにわかるよ。まあ、そん時はもうアヤは負けてるんだけどね。」
「絶対負けねえ。」
「ははっ、はいはい。」
祈木に笑われてしまった。
なぜ笑われなきゃならんのだ。
ケータイが使えない以上、ミー子は感情の表現がかなり制限されてしまうだろう。
そんなの、俺が有利に決まってる!
悪いがミー子、この勝負は俺が勝たせてもらうぜ。
・・・ミー子から反応がないのは、予想以上につらかった。
話しかけても何も反応しないし、ただこっちをじっと見つめてくるだけ。
でも離れようとしてもついてくる。
「・・・。」
「・・・。」
というわけで昼休み。
いつもは向かい合って食うミー子が、なぜか隣にいます。
しかもすごい近くで。
周りからの視線が痛いんだけど。
なんだこれ、ミー子からの精神攻撃か?
「・・・(もぐもぐ)。」
ミー子が食べてる間に、少し離れてやろう。
「・・・(すすすっ)。」
ダメだ近づいてきやがる。
こら、寄り添ってくるんじゃない。
「な、何のつもりだ。」
「・・・。」
しかし反応はなかった。
あれからずっとこの調子なんだけども。
「・・・ん、ごちそうさま。」
「・・・(ごちそうさまでした)。」
俺が食い終わるのと同時に、ミー子も食い終わった。
・・・なんか居心地悪いからトイレへ行こう。
あ、なんかちょうど尿意が。
「ちょっと、トイレ行ってくる。」
教室を出て、廊下を歩く。
すぐ後ろに感じるミー子の気配。
「・・・なんでついてくる。」
「・・・。」
しかし反応はなかった。
む、無視するか?
でもさすがにミー子を無視ってしたくないんだよな・・・。
クラスから無視されるっていういじめにあってたっていうのもあるし。
「さ、さすがにトイレまではついてこないよな?」
「・・・。」
ミー子が女子トイレに向かった。
そういうことかよ!
「お、アヤってばまだ続けてるんだ。てっきり音を上げてもう終わってるかと。」
後ろから祈木がにやにやしながらつついてくる。
「そんなすぐ負けてたまっかよ。俺は負けねえぜ。」
「あっはは、でもでも、アヤとしてはちょっと寂しいとかあるんじゃないの?」
「寂しいとかは・・・いや、普段から会話はしてるけどしゃべってるわけじゃねえからな・・・。」
「しゃべってるかしゃべってないかじゃなくて、寂しいか寂しくないか、だよ。」
「うーん・・・。」
「悩む時点で、アヤの負けだよ。」
切り捨てられた。
な、悩んだ時点で負け・・・?
「アヤが勝てない理由は、アヤが負けてからわかるもんだと思うから、今は考えなくていいと思うよ。」
「いやそういわれたら気になるでしょうよ・・・。」
「ふふふ、まあ、考え方の違い、とだけ言っておくよ!ね、なーみん!」
「うえっ!?あ、ああ!そうそう!お前と美衣ちゃんじゃあ考え方が違うからよ!」
ぜってえこいつ分かってねえだろ。
「あとね、かがみんはアヤが負けるまで絶対に何もしゃべらないと思うよ。」
「は、鋼の意思かよ。」
「そんな感じかね。でも、かがみんはそれを苦としない。アヤとは違ってね?」
「な、なんだってんだ。」
「それはー、やっぱりアヤが負けを認めてかがみんにスイーツをおごればいいんじゃないかな?」
「負け・・・負け・・・。」
負けは、なんとなくいやだ。
こんな子供じみた考えしかないけど。
そもそも、俺とミー子の何が違うってんだ。
なんで、そんなに俺が負けると言い切れるんだよ。
そういうんなら、俺が勝って祈木に一泡吹かせてやるのが一番いいはず。
大丈夫だ、俺だったらミー子にだって勝てるはず。
つ、辛い。
ミー子と話せないのが辛い。
話しかけても、無視をされるか、反応せずにこちらを見つめるだけか。
どちらにしろ、反応は全くない。
後ろをついてくるくせに、話しかけても何も話してくれない。
なんで、なんでなんで。
おかしい、学校は終わったばっかりだ。
ということは、まだ8時間とちょっとくらいしか経っていない。
ミー子と話さないってだけでなんだってこんなに。
もう、ミー子と話がしたい。
ここで俺が素直に負けを認めれば。
・・・負け?
ミー子はずっと涼しい顔で俺を見つめている。
俺はこんなに苦しんでるっていうのに。
なんだってそんな、平気そうな顔なんだよ。
その理由を聞きたい。
教えてもらうにはどうしたらいいんだ。
・・・そんなの、もうすでに分かり切っていることだ。
俺がミー子と話せなくて辛いのに、ミー子は俺と話せなくても辛そうにはしていない。
その理由を、聞きたいんだ。
なんとなく、最悪な答えが頭に浮かぶ。
『いやあ、話せないとつらいって思うほどなっちのこと好きじゃないし。』
そ、そんな風に思われていたら・・・。
辛い、辛すぎる。
ああもうだめだ、ミー子とどうしても話がしたい。
「なあミー子、これから出雲に行こうか。」
「・・・。」
しかし反応はなかった。
「今日は俺のおごりだ。好きなもん食べてくれよ。」
「・・・!」
ミー子の方がピクリと動いた。
ミー子が、俺の言葉にようやく反応してくれた。
『ふふふ、いつ来るかなーって思ってたけど、案外長かったね。』
「なんだよ、絶対勝つ自信あったのかよ。」
『まあね。なっちは絶対に私には勝てないって思ってたよ。』
「なんだと。」
やっぱり、俺とミー子だと何か違うらしい。
その違いを知りたい。
本当に、何が違うっていうんだろ。
『ちょっ、なっちちょっと待って。』
ミー子と、何が・・・。
自分でも気づかないうちに、だいぶ早足で歩いてしまっていた。
『もー!少しは彼女を気遣ってくれたまえよ!ぶーぶー!』
「す、すまん。」
「おっ!いらっしゃいませ!こちらの席へどーぞ!」
店に入った俺たちを、白奈先輩が案内してくれた。
「んむ、なんか美衣ちゃんむすっとしてない?ケンカでもしたの?」
「ああいえ、ケンカじゃないんです。ただ、ちょっと俺が早足で歩いてきちゃってですね。」
「あっ!そりゃダメだよ!ちゃんと彼女に合わせてあげなきゃ!」
白奈先輩にも言われてしまった。
次から気を付けることにしよう。
『そんで、なんで私がなっちとしゃべならくても平気でいたか、聞きたいんだよね?』
「ああそうだ、それが聞きたい。」
『んー、なんでしゃべらなくても平気かねえ・・・陽花がそれ聞いてアヤってバカねーって言ってたよ。』
「あの野郎・・・いや、今はいいや。」
『じゃあそんなに理由が知りたいなっちに問おうじゃないか。なっち、今私と一緒にいれて幸せ?』
ミー子と一緒にいれて幸せか?
「そんなの、幸せに決まってるだろ。そりゃ、大好きだからな。」
『おおう、大胆ね。』
「ご注文はお決まりですかー?」
ミー子から話を聞こうとした矢先、白奈先輩がやってきた。
そ、そうだよな、ここ喫茶店だし、先に注文しないと。
『抹茶最中で。』
「それでいいのか?」
今日は俺のおごりだし、別にもうちょっと高くても。
「・・・(こくり)。」
いいみたいだ。
「じゃあ、俺はようかんと抹茶のセットで。」
「かしこまりましたー!」
白奈先輩が席を離れていった。
・・・さて。
『大好きって言ってくれてありがとね。私も大好き。私も、なっちと一緒にいれて幸せだよ。そんで、これが私の答え。』
「それが答えって・・・えっ?」
『よーく、考えて。』
幸せだから・・・、話さなくてもいい?
えっとつまり・・・。
「一緒にいられるだけでも、ミー子は幸せ・・・と。」
『ふふふ。』
ミー子が笑顔を浮かべた。
・・・反則だろ、その表情も、答えも。
『そしてどうしてこうなった。』
帰ってくるなり、ミー子を部屋に上げた。
そんですぐ、俺はミー子に抱き着いた。
『こら、胸に顔をうずめても肋骨の感触しかしないだろやめろ。』
「いやーほら、今日全然しゃべってなかったから。」
『そこでしゃべるなくすぐったい!』
頭を押し返されてしまった。
『まったく、なっちは私といるだけじゃダメというのか。』
「一緒にいる以上、おしゃべりだってしたいしゲームだってしたいしなんだってしたい。これ俺の素直な願望。」
『それはうれしいんだけども。』
そういって、今度はミー子が俺の頭を抱きしめた。
「な、なんすか。」
「・・・(なでなで)。」
頭に優しい感触。
撫でられてますね。
『甘えんぼなっち、かわいい。』
「う、うっせ。彼女には甘えたいんだよ。」
『甘えさせてくれる人ならいっぱいいると思うけど。私でもいいのかね?』
「はい?」
『いやほら、冬華さんとか紗由さんとか、おっぱいの大きい人なら包容力抜群じゃないっすかね。もちろんハルさんも甘えさせてくれるだろうよ。』
「いや俺おっぱいとか気にしないんで。ミー子が一番いいんで。」
即答した。
そりゃそうだよ、好きなんだから。
『うれしいこと言ってくれるじゃないの。私は周りに魅力的な女性が多いのでなっちが盗られないかひやひやだよ。』
俺が盗られる、ねえ。
周りに魅力的な女性といっても、俺にとっては・・・。
「俺にとっては一番魅力的なのってミー子なんだよな。」
『やめろ照れる。』
ミー子が俺から離れてしまった。
その顔は、ほんのり赤い。
「褒められることに対して弱い?」
『照れちゃうから。やめて、お願い。』
「何それめっちゃ可愛い。」
「・・・っ!!」
ミー子が近づいてくる。
あ、怒らせちゃ
「・・・(ちゅっ)。」
突然唇を奪われた。
あんまりにいきなりだったので、理解にちょっと時間がかかった。
「あ、あの、ミー子さん?」
『これで恥ずかしさもおあいこじゃないですかね。』
そういうミー子の顔は、なんだかゆでだこのよう。
『ごめんやっぱめっちゃ恥ずかしいこっち見ないで。』
ヤダもう何この子。
「結局勝てなかったよ。あんなの、勝てっこねえや。」
『あっははは、だから言ったじゃん、アヤじゃ勝てないって。』
「身に沁みてわかったわ。」
電話から楽しそうな声が聞こえてくる。
今日のことを祈木に話しているところだ。
「面と向かって言われちゃったよ。一緒にいるだけで幸せなんだから、言葉なんてなくても平気ってな。」
『やだかがみんったら大胆。彼氏としてはうれしい言葉だねえ?』
「ああ、めっちゃうれしいわ。」
『そんな素敵な彼女、なかなかいるもんじゃないと思うよ。大事にしてあげなよね?』
「もちろんだっつーの。今日でもっと好きになったわ。てか、お前たちはどうなんだよ?」
『あたしたち?』
「ああ、付き合ってるってわりにはそんなに京介も話そうとしないからさ。」
『そうだねえ、ノロケ話でもしてくれるかなあって思ったんだけど、なーみんは案外しゃべらないよね。まあ心配しなくてもあたしたちはラブラブよ、ラブラブ。』
「ラブラブねえ。」
『まあ学校じゃそんなでもないんだけどね。お互いの家に行ったりすればあたしとか結構甘えちゃうからね。』
「なんか似合わねえな。」
『うっさいんだけど!』
祈木が甘えるって・・・。
うん、似合わねえ。
てか、お互いの家に行ったりしてんのね。
「学校ではそんなでもない・・・となると、京介の独占欲かな?」
『おおー、さすが親友、分かってるんだね。』
「いや、それくらいしかなくない?」
『んまあそうかもね。陽花のかわいいところは、俺だけが見ていたいって言われちゃったし。』
「ブフォッ!?ハッハハハハハ!!くっさ京介くっさ!!」
『あはは、確かにクサいセリフだよね。あー、でもね、アヤ。』
「うん?」
『言われる身としてはね、すっごい、うれしいんだよ?』
突然のマジトーン。
ああ、祈木も本気で京介のこと大好きなのね。
今までそんな風には見えなかったし、気づかなかったよ。
『というわけで、アヤもかがみんにクサいセリフの一つや二つ言ってみたら?喜ぶと思うよ。』
「喜ぶ前に顔を真っ赤にして逃げられそうだ。」
『あー、かがみん照れ屋さんだからなー、それもあるね。』
照れて逃げるミー子が容易に想像できる。
まあ、そんなところもかわいいんですけどね。




