友達のお誘いです
「え?昔のビデオテープ?あるけど・・・。」
「ちっちゃい頃の俺らが見たいんです・見せてください那空さん。」
「・・・(じたばた)。」
「えっと、それは・・・?」
俺に抱えられてずっとジタバタしているミー子を見て首をかしげている那空さん。
「これですか?気にしないでください。」
『おいてめえら彼女と娘をそれとかこれとか言うんじゃねえ。』
「テープ持ってくるから、ちょっと待っててね!」
『話聞けやあああああああああ!!』
「暴れるミー子が子供っぽくてかわいい。」
「・・・。」
ミー子が動かなくなった。
「せっかくだから私も見るわ!」
『見たくないんだけど。』
「諦めろ。」
テレビの前のソファに3人で座る。
ちょうど、俺がミー子と那空さんに挟まれた。
「それじゃあスタート!」
テープが再生された。
そこには・・・。
「本当に俺かコレ。」
多分若かりし頃の俺が映っていた。
「夏央くん、ちっちゃいころはかわいかったからね~!」
「・・・(こくこく)。」
そして、ミー子も出てきた。
「・・・なんかちっちゃい頃とあまり変わってないような気がするんだけど。」
「そうねえ、美衣ったら結構童顔なのね。」
『なっちゃーん!ちゅー!』
動画の中のミー子は、かわいらしい声を出していきなり俺にキ―――
「何やってんのチビミー子!?」
「・・・。」
どうやら小さい頃のミー子は情熱的だったらしい。
てかこんなことあったのかよ。
小学生の時にふざけてしたキスが初めてじゃなかったのかよ。
「こいつは驚きだぜ。」
そういえばなっちゃんって呼ばれてたな。
『ほんとに、美衣と夏央くんは仲がいいわね!』
『うん!俺たち、仲良しだもんな!』
今の声よりもだいぶ高い声。
俺こんな声だったっけ。
『あのねー、みーとねー、なっちゃんはねー、大きくなったらねー、けっこんするのー!』
「おぅえええぇぇぇ!?」
『そー!俺とみーはずーっと一緒!』
「・・・(ぼんっ)。」
ミー子が真っ赤になって下を向いた。
かわいらしい声からとんでもない発言が続く。
小さいながら、俺たちはずいぶんいちゃついていた。
ピッ
「あらーっ。」
ミー子が動画を停止した。
『ごめん、私の心が持たねえ。』
「すまんミー子。俺も持ちそうにない。」
「あらあら、じゃああとは私が見ておくわね!」
俺たちはダッシュで家を出た。
Side 美衣
だから見たくなかったのに。
・・・覚えてるもん。
私がどんな声だったかも。
ちっちゃいころ、なっちにキスしたことも。
結婚するって言ったことも。
忘れるわけないじゃん、なっちとの思い出だもん。
さすがにあんな風に見せられるとすっごい恥ずかしい。
確かあのビデオの後は・・・そう、遊び疲れて、一緒にお風呂に入って、一緒に寝たんだ。
2人とも裸でキャッキャしながら遊んでた。
そんなもんなっちに見せられるか。
今でこそよく一緒に寝てるけど、それがおかしいことだってのは私だってよくわかってる。
でも、なっちの隣にいたくて、隣にいないと、怖くて。
なっちに、迷惑なんてかけたくないのに。
だってなっち、頑張りすぎちゃうんだもん。
なっち、朝弱いのに最近私が夜中起きるまで私のこと見てるの、知ってる。
でもそんなこと続けてたらなっち倒れちゃうよ。
早く、そう、早く治さなきゃ。
なっちの、ためだもん。
「よし、夕飯でも作るか。」
『家帰ってちょっと作ってくる。』
「ん、了解。」
『また、あとでね。』
「おう、またあとで。」
ミー子が家を出て行った。
最近はうちでよく夕飯を済ませているし、たまには自分の家で食ってもいいんじゃないかな。
那空さんだって心配するかもしれないし。
「あっ、なつくん、手伝うよ。」
春姉がキッチンに立った。
「お、いいの?じゃあジャガイモの皮剥いておいてくれない?」
「うん!わかった!」
今日の夕飯はカレー。
俺が玉ねぎを切っている間に春姉がジャガイモを剥く。
豚肉は高いから鶏肉で。
鶏肉でも結構イケるんだよね。
俺は鶏肉のほうが好き。
「あ、そうそう、なつくん。」
「ん?どうした?」
「今度の土曜、紗由がなつくんと出かけたいって言ってるんだけど、どうかな?」
「・・・えっ。」
紗由さんとお出かけ・・・?
嫌な予感しかしないんだけど・・・。
「出かけるってどこに・・・?買い物とか?俺振り回される予感しかしないんだけど。」
「頑張って。」
「どこに行くか教えて!?あと何しに行くのかも!」
「・・・てっきり断るかと思ってたんだけどな。美衣ちゃんいるし。」
「前紗由さんに彼女を説得してでも来いと言われましてね・・・。」
果たしてミー子はなんというか。
そういえば思い出した。
出かけるって電車の撮影会か。
「紗由はけっこうなつくんのこと気に入ってるけど、なつくんも紗由のこと気に入ってるよね。」
「え?あのうるさい人が?」
「だって普通に行く気じゃない?」
「・・・ほら、行かないならいかないで後がめんどくさそうだし・・・。」
何で来なかった!我が弟よ!
・・・とか言って突撃してきそう。
おしとやかバージョンならいいのに。
「あっ!なつくん、女の子をそんな悪く言っちゃだめなんだよ?紗由だって、とってもかわいい子なんだから。」
「いや顔とかはいいと思うんですけどね・・・?」
中身に問題がありましてね?
ベクトル的には酔った春姉みたいな感じ。
「あんまり紗由の悪口言ったら、なつくんと2人きりでいっぱいお酒飲んじゃうんだから!」
「斬新な脅しだな!?」
でもそれすっごく嫌だ。
「というわけでなつくん、行くんだよね?紗由に言っておくね!」
「まっ、待って!ミー子に聞いてからで!」
とりあえず確認とらせて!
ミー子がダメって言わない保証もないから!
『紗由さんと出かけるの?別にいいよ?』
「軽いな!?」
夕飯を食べ終え、ミー子とゲームの時間。
俺と紗由さんが出かけるのをあっさりと認めてくれた。
『さすがに友だちとのお出かけを制限するほど束縛系彼女でもないよ。なっちは私が独占欲強いとか思ってるでしょ?』
「うん思ってる。」
それに関しては間違いないと思う。
ただ俺はあまり仲のいい女の子が多いというわけでもないから助かってるけど。
俺がモテてたら危なかった。
『即答なのはあれだけど、まあそれに関しては否定しないかな。できればずっとなっちと一緒にいたいし。でもだからといってなっちの交友関係を制限してまでとは思わないよ。だって彼女のために友達との関係を絶ったら、絶対幸せじゃないだろうし。』
ミー子、よく考えてるんだなあ。
俺だったら・・・例えば、ミー子が京介と2人で出かけるとか言い出したら、あまりいい顔をしないかもしれない。
・・・あれ、独占欲強いの、俺?
『ちなみにやましいことしたら言うんだぞ。紗由さんの家まで行って『ここがあの女のハウスね』って言ってやる。』
「しないしない。絶対しない。これだけは誓って言える。」
『なっちなら絶対ないってのは分かってるけどね。いつ行くのよ?』
「来週の土曜だけど・・・その言い方だとついてきそうだな。」
『だーかーらー、友だちとのお出かけは邪魔しないって。じゃあハルさんと出かけてこようかなー、それか陽花か、鈴波くんか?』
「っ。」
『反応した。もしかして私が鈴波くんと出かけるのはお嫌で?』
「や、その・・・。」
『いいのいいの。愛されてるとも取れるもんね。私はなっちの言葉に従うよ?』
「聖女かよ・・・。」
『もっと褒めてもいいのよ?』
「いやまじほんと優しさであふれかえってますよミー子様。」
『だろだろ。でもね。』
ミー子が俺に寄りかかってきた。
そんで俺を下から見上げ、ケータイを向けてくる。
『優しいのはなっちだから、だよ?』
・・・あざとい。
でもかわいい。
「というわけでミー子からOKが出ました。」
「分かった!紗由に伝えるね!」
鉄道の撮影をするというのは分かってるけど、どこまで連れてかれるのかは分からない。
あんまり、遠くないといいんだけどなあ。
「わ、もう返信来た。」
「早いな!?」
「既読速かったよー、紗由、暇なんだね。」
友達いないとかいうし、家で一人さみしく何かしてるんだろう。
家で・・・一人・・・。
・・・っておい、俺は何を考えているんだ。
「なつくん、なんか変なこと考えてない?」
なんだか鋭い春姉が聞いてきた。
へ、変なこと?
「そ、そんなこと考えていませんとも。ええ。」
「なつくん、えっちな顔してるよ?」
「ちょっと待ってそれどんな顔だ。」
顔がえっちって言われたらそれもうどうしようもなくねえ?
俺は変態っぽい顔で一生生きていくことになるんだよね?
「まったく、なつくんは紗由のことえっちな目で見過ぎだよ。女の子をそんな風に見ちゃいけないんだよ?」
「俺が紗由さんを四六時中エロい目で見てるような言い方はやめてもらおうか。」
あの巨乳が視界に入った時くらいだよ。
「だってほら・・・紗由、私と違って大きいし。」
春姉が目に見えて落ち込んだ。
春姉、気にしてるんですね。
大丈夫、前も言ったけどミー子よりはでかいから。
・・・やっぱりミー子と比べるのはよくないかな。
「横から見れば普通に分かるしあんまり気にすることでもないと思うんだけど・・・。」
「分かってないなあ!大きいのが隣にいると比べられるんだよ!?」
・・・まあ、紗由さんと春姉が隣に並んだら紗由さんの方が目立つよな。
だって大きいんだもん。
前から見ても分かるんだもん。
『その、なっち、お願いがあるんだけども。』
寝る時間になって、ミー子が俺の部屋に来た。
「いいとも、お願いとはなんだい?」
割とどんなお願いでもOKしちゃうぜ。
俺のできる範囲でなら。
『寝る時さ、私の方を向いて、私と手をつないでほしい。いいかな?』
「そんくらい、お安い御用だろ?」
『本当に、ごめんね、あと、ありがとう。』
そういって、ミー子がなんだか泣きそうな顔をした。
「お、おい、どうした?どっか痛いのか?」
「・・・(ふるふる)。」
ミー子が首を横に振った。
お、俺、何かやっちゃったかな。
「ほんとにどうしたんだ?俺でよければ話聞くぞ。」
『辛いなあって。』
「つ、辛い?何がだ?」
ミー子は、何に苦しんでるんだ。
『今までね、ずっと思ってたんだけど、声が出ないの、やっぱり辛いよ。文字でしか、伝えられなくて。ありがとうって、ちゃんと、声で伝えたい。』
ミー子が、涙を流した。
それは、ずっと溜めてきたミー子の思い。
そう、普段明るくて、ノリがいいミー子だけど、やっぱり辛いものは辛いんだ。
『ありがとうって、好きって、なっちに伝えたい。文字じゃなくて、ちゃんと喋ってさ。ほんとに私、いつになったらなっちとお話しできるの。』
ミー子が俺にすがりつく。
そんな姿は、とても弱弱しくて。
ミー子の頭を、優しくなでてやる。
「ミー子、寝ようか。」
確信の持てない言葉なんか、今はいらない。
いつになったらは分からないけれど、いつか喋れるようになると、それだけは信じてる。
ミー子のお願いの通り、ミー子と向き合って、手をつなぐ。
「大丈夫、ミー子の声を、楽しみに待ってる。」
ミー子に布団を掛ける。
ミー子の表情は、いまだに辛そうな顔をしている。
もう一度頭を撫でて、部屋の電気を消した。
じゃあ、今日は、特別。
「・・・!」
ミー子の頭を両手で寄せて、俺の胸に抱いた。
まあ、俺にはこれくらいしかできないから。
「・・・(ぽんぽん)。」
「・・・ん、うう。」
「・・・(べし)。」
「やめろ。」
なんだか嫌な予感がする。
だって、この感じ、まだミー子が俺の隣にいるということだ。
ということはつまり、ミー子はまだ起きたばかり。
それが意味することは。
『ゴーなっち。』
「全力で断りたい。ぼーっとする。」
『走っているうちに何とかなるさ。』
「いーやーだー・・・。」
抵抗むなしく、ミー子に体を起こされてしまった。
「うー・・・。」
『なっちなっち、こっちみて。』
こっち、と言われてもどっちなのかわからないが、とりあえずミー子のほうを見る。
おはよう。
ミー子が、そうしゃべった気がした。
・・・ああ、口パクか。
「一緒に声がついてきたような気がした。」
『ほう。』
「ビデオで聞いたロリボイスがむぐっ。」
ミー子に口を押えられた。
その顔は少し赤い。
『やめてくれ、その声は私に効く。』
「知らんがな。」
『ほらー、早く着替えてよ。』
「だから俺は走りたくないと。」
「・・・(ばさあっ)。」
「脱がされた!」
「ぜえ・・・これから学校だってのに。」
『いいだろこんないやんなイベントが待ってるんだから。』
「しれっと風呂に入ってくんな。」
口ではそういいつつも、抵抗する気力はない。
久しぶりにミー子と一緒に風呂に入ってしまった。
「頼むから隠せ。」
『風呂にタオルを入れるのはよくない。』
「俺が許すから。いやならこっち向くな。」
『なっちが逆向けばいいんじゃない?』
「何が悲しくて俺は風呂の操作ボタンとにらめっこせにゃならんのだ。」
『別に私のおっぱいなんてほぼ胸板と同じだし、見てもつまらんよ。』
確かにほとんど膨らんではいないけども・・・。
『ガン見するなっち素敵。』
「・・・わああ、すまん。」
『いいって言ってるじゃない。』
なんでこいつこんなに堂々としてるんだよ・・・。
普通、胸って見られたら恥ずかしがるもんじゃないのか。
前は小さいこと気にしてませんでしたっけ。
『ちなみにですが。』
「なんでしょう。」
『今、この状況で甘えてもいいのかな?』
・・・。
「えー・・・っと、やめていただきたい。」
「・・・(むー)。」
ミー子が不服そうな顔をした。
『昨日はごめんね。』
「なんだいきなり。」
『その、みっともない姿をお見せいたしまして?』
・・・昨日、泣いたこと気にしてんのか。
「バカ、俺がああいう話聞いてやれなくてどうする。むしろ、話してくれてありがとうよ。そうだよな、普通、辛くて当たり前だよな。」
『まあね。』
「その、まあ、あれだ。無理して明るくしなくてもいいんだからな。辛かったら話聞いてやるし、そばにだっていてやる。」
『いいのかいそんなこと言って。明るくするのやめたら一日中沈んでるぞ私。』
「そこまで辛かったのか!?」
『冗談。ありがとうなっち、大好きよ。』
・・・いつか、ちゃんと、ミー子の口から言ってもらえるんだよな。
その時まで待ってやろうじゃないか。
俺だってミー子の声は聴きたいんだ。
もし声出るようになったら録音してやるからな。
『辛いときは頼ってもいいのよね?』
「いつもそういってるだろ?ミー子は俺に遠慮しすぎ。幼馴染で彼氏だぞ、何を遠慮することがある。」
『ほんとに、いつもありがとね。』
「そんな、感謝されるようなことでもねーさ。俺はミー子のそばにいて、ミー子がしゃべれるようになるのをいつまでも待ってやるんだ。一番先にミー子の声を聴くのは俺だからな。」
「・・・(こくり)。」




