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Please speak!  作者: 長野原春
45/113

夏央の苦難な日 2

 無言で土下座をする俺。

「・・・(おろおろ)。」

 突然の出来事に驚くミー子。

 ミー子は動いているが、静寂の空間の出来上がりだ。

「・・・?」

 首をかしげながらミー子が近づいてきた。

 ・・・ような気配がする。

 土下座してるから頭上げられないし。

「・・・(つんつん)。」

 ミー子は俺の肩をつついた。

 顔を上げろという事かな?

 ゆっくり顔を上げると、目の前にはケータイの画面が広がっていた。

『私もいきなりのことで混乱してるんだけど、どしたの?』

 とりあえずYシャツのボタンは閉めてくれないかな。

 とか言ってる場合じゃなく。

「その!本当にごめん!魔が差した、というか・・・。」

 ああくそっ、なんて言えばいいんだ。

『いやそりゃまあ驚いたけれどもさ。どうしたのよ、いつもと違うじゃん?』

 いつもと違う、か。

 まあ、いつもだったらこんなこと絶対にしないもんな。

 こんな、寝込みを襲うようなこと。

『なっちのことだし、理由があったんでしょ?さすがにムラッときたから襲ったって言うわけではなさそうだし。』

 いや、ムラッときたから襲ったんです。

 素直に話そう。

「ムラッときたから襲ったんです。」

「・・・。」

 固まるミー子。

 そりゃそうだ。

『なっち、変わったね?』

「ごめんなさいちゃんと話すのでまず聞いてください。」

 俺はミー子に今日のことを全て話した。


『なるほどね。朝から常に発情状態と。』

「その言い方はどうかと思うんだ。」

『この状態にもかかわらず臨戦態勢ななっちの方がどうかと思うのですが。』

 はいごもっともです。

 でもね、ミー子にも理由があるんだよ?

 タイツ履いてないのに俺の目の前であぐらなんてかくからだよ?

 どうしても見えそうなスカートの中に目がいっちゃうでしょ?

『見たければ見ればいいとは思うけど、なっち抑えられる?さすがにこの状況だと私も不本意よ?』

 さっとミー子のスカートから目を逸らした。

「どうしたらいいのかわからなくてさ。だから、あまり周りを見ないようにしてさ。」

『あー、だから今日私とあまり目を合わせてくれなかったのね。』

 そういって、ミー子が俺の片方の手を握り、おでこをくっつけてきた。

『さびしかったぞばかやろー。』

 ・・・あのですね。

 思わず抱きしめてしまった。

「・・・(びく)!!」

 ミー子が大きく体を震わせ、すごい勢いで後ずさった。

 身の危険を感じさせてしまったか。

『さすがにそれは高度なプレイだと思う!』

 何を言ってるんだミー子は。

 ・・・そういえば立て膝で抱きしめたな。

 確かに俺にも何かが当たった感じはした。

 俺の俺との位置関係を考えると当たったのは―――

「まじでごめんなさい。」

 もう一度土下座するハメになった。

『うん、さすがの私でもこれにはびっくりした。』

 少し顔の赤いミー子が近づいてきた。

『大丈夫かな?』

 そういって、頭を撫でてくれるミー子。

「ミー子ぉ・・・。」

『情けない声出さないのー。男の子でしょ?』

 俺のこの3大欲求の暴走はどうすればいいんだ。

『ちなみになっちはどうしたいの?』

「さっきまではミー子に触れたかった。」

『今は?』

「・・・冷静になった。」

 ミー子の脚を見つめる。

 スカートが微妙にめくれていて、見えそうなこともない。

 ・・・けども、俺の俺が臨戦態勢になることもなかった。

『いつものなっちに戻ったのね。さっき当たった時はもしやこのままと思ったけど。』

「いや、あれはさすがに・・・。」

『まあそのままいってたら暴走状態のなっちに何回抱かれるかわかったもんじゃないし。』

「・・・何でミー子はそんなに直球なんですかね。」

 俺はもうちょっとソフトにしてたよ?

 俺の俺とかさ。

『だってまあ、とどのつまりはセックスなわけじゃないですか。』

「う、うーん、まあ、そうなんだけども。ってこら、女の子がんな事言うんじゃありません。」

『もっと適した表現があるならどうぞ。』

「・・・ないけども。」

 そりゃあそこまで直球に来られたらもうそれ以上適した表現はないさ。

『私は別にいいんだけどさ、なっちがどう思うかよね。』

「俺が?」

『例えばなっちが今ここで私を抱いたとしよう。』

「・・・お、おう。」

 なんとなく想像してしまった。

 ・・・あ、ちょっと、鎮まれ。

『終わった後、なっちは何を考えるだろうね?』

「俺が何を考える、か・・・。」

 おそらく今後のことだ。

 やるってことはつまりこれからの責任やら何やら・・・。

 てことは多分一番最初に考えるのは。

「やっちまった、だな。」

『まあなっちならそうだろうよ。私はそんな後悔するようなのはイヤ。だって、セックスってお互いを愛するためにすることでしょ?後悔したくないじゃない。』

 後悔。

 多分俺ならするんだろう。

 今の俺なら。

 だって今の俺に責任とか、無理だもん。

 金だって、多分一般的な高校生と変わらないだろうし。

『だから、まあちょっと寂しいけどさ、私はなっちが自信持って私を抱けるようになるまで待つよ。』

 なんて優しいんだこの子は。

 衝動に任せようとしていた俺がバカらしくなってくる。

 この子を守るって言ったのはいつの俺だったか。

 今の俺は、本当にミー子を守れているんだろうか。

『まあまあ焦らずにね。でも、私はよくばりだから、あんまり長くは待ちたくないな。』

「分かった、ありがとう。・・・その、今日は本当にゴメンな、ミー子。」

『いいってことよ。』

 ミー子がまた俺の頭を撫でてくれた。

「ちょっと恥ずかしいって言ってたミー子の気持ち、なんだかわかる気がするな。」

『だろ。』

 しかしミー子は撫でるのをやめなかった。


 Side 美衣

 私はなんてはしたないことを口走った(?)のでしょう。

 花の女子高生(?)がド直球に何言ってるんだ。

 いやまあなっちに伝えたいことは伝えられたけれども。

 今まではなっちともっと大きなつながりがほしくて、なっちに抱いてもらいたいとか思ってたけど、今は前よりはそうは思わなくなったな。

 なっちは優しいからね。

 もしいい感じに進んで事を成したとしても、たぶん心のどこかで後悔すると思うのよね。

 本当に私とやっちゃった、よかったんだろうか、とかね。

 ・・・さっき、当たったのは本当にびっくりしたけども。

 今回は当たっただけで済んだけども実際は・・・。

 どうしよう、私に務まるかな。

 ちゃんと、なっちに愛してもらえるかな。

 実際痛いらしいし。

 陽花も言ってた。

 痛かったって言ってた。

 まだなっちには言ってないけども。

 なっちが知ったらどうなるかな。

 あなたの友達の京介君はもう君の知らない京介君なんだよ、ってね、ふふふ。

 にしてもなっち、あれは体調が悪いのかな。

 風邪で何かが刺激されたとか・・・実際熱あったし。

 えーと、どうしよう。

 ちゃんと看病してあげるべきだよね?

 私からだ強いから多分風邪うつることはないですし。

 ・・・そういえばいつだったか風邪引いたな。

 夏風邪だったような気がする。

 だんだん余計なことを思い出してきた。

 あの時、バスタオル一枚だった私はなっちに裸を見せようとした。

 ・・・うん、なっちは風邪だな。

 部屋に戻ろう。


『まあ今日は風邪引いてるみたいだし、ゆっくり休んだほうがいいと思うよ。』

 部屋に戻ってきたミー子がいきなりそんなことを言い出した。

 なんだなんだ。

 俺のおでこに冷えピタを貼り、布団をかけてくれた。

 その表情は、なんだかすごくやさしげ。

 何があったんだ。

『寒くない?もう一枚掛布団いる?』

「お、おう。」

 寒いことには寒いのでもう一枚かけてもらった。

 身体は熱いはずなんだけど、なんだか寒い感じがする。

 やっぱり風邪だったのか。

 でも風邪にムラムラさせる効力なんてあったっけ。

 よく分からないけど何かがおかしくなっちまったんだな。

 本当になんだかわからないけど。

『喉渇いてない?』

「あー・・・確かに喉渇いたかも。」

『何飲みたい?お茶?ポカリ?生理食塩水?』

「その選択肢はおかしい。」

 確かに水分の補給効率はいいらしいね生理食塩水。

 でもね。

 あの水、クッッッッッッッッソまずいから。

「ポカリは甘いからな・・・。」

『んじゃそこらへんでイオンウォーターでも買ってこよう。』

 そういってミー子は部屋を飛び出していった。

 ・・・手間かけさせちゃったな。


『ただいま。』

「そこら辺って言ってなかったか。」

 ミー子が帰ってくるまで10分かかった。

 そこらへんにしては時間がかかり過ぎだ。

『いやあ、イオンウォーターってさ、自販機であまり売ってないのよね。』

「どこまで行ってきたんだ・・・?」

『ちょっとチャリ漕いでスーパーまで。』

「・・・なんかごめん。」

『気にしないでよ。私がなっちのためを思っての行動だから。』

「ありがとな。」

 ミー子が笑顔を見せてくれた。

「今日の初笑顔いただきました。」

『顔合わせてくれなかっただけでしょうが。』

「ごめんなさい。」

 イオンウォーターをもらい、飲む。

 うん、やっぱり甘すぎないっていいと思うんだ。

 飲みすぎると血糖値上がるけど。

「寝ようかな。」

『体調が悪い時は休むに限るからね、ゆっくりおやすみなさい?』

「おう、おやすみ。」

 目を閉じて身体の力を抜く。

 寝かしつけるためか、ミー子が俺の腹に手を置いてぽんぽんしてきた。

 これなら、すぐに眠れそうだ。


 Side 美衣

 なっちが寝てしまったのでやることがなくなりました。

「太郎ちゃんいらっしゃい!」

「私の部屋だよここ・・・。」

 というわけで、ハルさんの部屋に来ました。

『女子トークってどうやってするものなんだろう。』

 私は年上のお姉さん方に質問してみることにした。

「と、唐突だね。うーん・・・。」

「女子トーク・・・。」

 年上のお姉さん方は黙ってしまった。

 この人たちに聞いた私が間違いだったのかもしれない。

「女子っぽい話題って何があるかな・・・。」

「じゃ、じゃあなつおくんについて話し合うとか!」

「あ、何かそれ女子っぽいかも!」

「・・・。」

 女子トークって言ったのに、なっちの話が始まりそうです。

「なつおくんってさ・・・結婚とかしたら奥さんに代わって家事とかやっちゃいそうだよね!」

 分かる。

 料理は特に上手だけど、なっちは一応家事全般は一通りできる。

 掃除がちょっと苦手な私とは違って。

「確かに、なつくんは女の子に甘いところあるから、自分だけでやっちゃいそうな感じあるよね。」

 ・・・そういえば、いっしょに私の部屋を片付けることになった時。

 私が掃除機を取りに行く間に片付けを半分くらい終わらせていた気がする。

 脱いだ下着がまとめられてて恥ずかしかったな。

 あの時からだったな、脱いだものは絶対に部屋に置かなくなったの。

 今はまあ、なっちのお手伝いもあって部屋はきれいに保たれてるけど。

「料理上手だし、嫁さんが料理とかまったくできなくても平気だよね!そういえば太郎ちゃんって料理はできるの?」

 紗由さんが私に聞いてきた。

 そうか、この人は私が料理してるところ見たことないんだっけ。

 フッ・・・。

『何を隠そう、なっちの料理の基本を教えたのはこの私です。もっとも今ではなっちに抜かれてしまいましたが。』

「えっそうなの!?てっきり私太郎ちゃんは料理苦手なのかと思ってた!」

『おい。』

 失敬な。

 まあ確かに料理得意そうとかは言われたことないけど。

 紗由さんには言わないけど、引きこもるためには必要なスキルだったんだよ。

 お母さんは日中いないし。

 なっちも学校に行ってたから家にいたの私だけだし。

 そう、食材さえあれば自分で作ればよかったのよ。

「そういえばなつくんってさ・・・性欲強いよね。」

「・・・ぶふっ。」

 ハルさんあんたそんなこと言うキャラでしたか。

 思わず噴き出したじゃないの。

『どうしてそう思った。』

「うーん、なつくん、結構私の胸や足を見てくるというか・・・。」

『それはたまにあなたがお風呂上りにバスタオルでうろつくからじゃないですか。』

 ハルさん、部屋に寝間着忘れたとか言ってたまにバスタオル一枚で出てくるからね。

 その時なっちがハルさんの太ももを見ているってことは知ってる。

 なんたってなっちは脚が好きだからね。

「私もなつおくんに『あ、おっぱい見られてるなー』って思うときあるよ!」

『それあなたがでかいからです。』

 凶暴なもんぶら下げやがって。

 そりゃなっちだって見るわ。

『まあ私もよく脚を見られてるよ。なっちは脚フェチ。』

「そ、そうなんだね。」

「見る目が他の男の子とは違うんだねなつおくん。」

 ハルさんも紗由さんも、微妙な反応を見せた。

『でも、いうほどなっちって性欲強いかな?』

「美衣ちゃんに対してはつよーい自制をかけてるみたいだからねえ・・・。」

「彼女想いのいい子だねなつおくんは!さすが私の弟だ!」

 そういえばなっちはいつからこの人に弟と呼ばれるようになったんだろう。

 多分この人のことだから唐突に呼び始めたんだろうけど。

「なつくんと買い物に行くときとかさ、けっこう道行く人の脚に目が行ってたりするし、強いのかなーって。」

 なっち、私以外にはエロい目線を向けてることがあるのね。

 ・・・んー、私、結構なっちに足を見られている気がするんだけど。

 なっちは黒タイツも好きだし。

 やっぱり私の事は大切にしてくれてるってことなのかな。

「ただ一つ言えそうなのは・・・なつくん、どちらかというと受けに回りそうよね」

「分かる!なんならお姉さんが手取り足取り教えちゃうよ!」

 おい待てこら巨乳。

 いや、うん、なっちが積極的なのもあんまり想像できないけど!

 ・・・いや、今日はかなり積極的だったけど。

 ムラムラしたから襲いましたなんて言われちゃったし。

 いやいやいや、今は関係ない。

「手取り足取りって、紗由はまだ・・・。」

「そんなこといったらはるさめだってそうでしょ!?」

「うぐっ。」

 あっ、ここにいる人たちはまだ未経験なのね。

 私の勝手な決めつけだけど、大学に入ったらもう誰かとやってるもんだと思ってた。

 考えを改めないと。

「太郎ちゃんはそこんとこどう考える?」

 私か。

 私がなっちの上になる?

 ・・・いや。

 なんというか、私は王道系がいいというか・・・。

『えっと、下がいいです。』

「美衣ちゃん、かわいい!」

 ハルさんが私の事を撫でてきた。

 っておい、何で話題がシモ方向にシフトしてるんだ。

 ハルさんがなっちの性欲とか言うからぁー!


 Side 夏央

「・・・聞こえてるんですが。」

 隣から春姉たちの声が聞こえてきた。

 部屋にミー子がいないのと、紗由さんの声で太郎ちゃんと聞こえたことを考えると、おそらくミー子は春姉の部屋にいるんだろう。

 えっと、そんなに俺受けっぽい?

 そ、そうだな、もしミー子を抱くことになったら・・・俺が抱きたいし。

 それはいいとして。

 考えるのはやめよう。

 また俺の俺が元気になってしばらく眠れなくなっちゃうかもしれないし。

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