夏央の苦難な日
突然ですが、どうしましょう。
「なあ、京介・・・。」
「どしたん?悟ったみたいな顔して。」
冬休みも明け、2年最後のテストが近づいてくる中。
俺は―――
「ムラムラする。」
「はい?」
ムラムラしていた。
「ふぁあ~・・・。」
目覚まし時計が鳴る前に起きられた。
俺にしては珍しいな。
寒いけど部屋にいるよりはリビングの方があったかいし、布団から出ましょうかね。
「・・・。」
いや、このままいくのはちょっとまずいな。
寝間着だしこのままいったら笑われるだろ。
もうちょっと待とう。
「おはよう。」
「あらおはよう夏央。どうしたの?緊張してるの?」
「ヴェッ!?そ、そんなことないぞ!?」
この母さんは妖怪か。
おさまったとはいえ、またいつなるかわからない。
今日はなんだかおかしいぞ。
とりあえずこたつに入ろう。
ここなら万が一アタックフォルムになっても出なければいいだけだ。
「お母さんおはよー。あ、なつくんもおはよー。」
春姉が眠そうな顔でリビングに入ってきた。
「おはよう春女。今日は早いの?」
「2限からだから、9時くらいに出るよー。」
「飲み会とか、今日はある?」
「ん?ないよー?どうしたの?」
「いやね、昨日冬華から連絡があってさ、同窓会のビンゴ大会でお肉が当たったんだって。一人じゃ食べきれないから今日皆で食べようってなってね。」
「お肉!」
眠そうだった春姉の目が輝いた。
「お肉だってなつくん!おーさむさむ」
嬉しそうな春姉がこたつに入る。
「あ~、あったかいねえー。」
一気に顔がゆるんだ春姉は、そのまま前のめりになった。
・・・寝間着の襟の部分から、春姉の慎まやかな胸が見えそうになる。
「・・・ッ!!」
お、落ち着け俺。
義理とは言えど、春姉は俺の姉。
落ち着け、落ち着け!
あっダメだ。
これでしばらくこたつからは出られなくなっちゃったよ。
にしても何で今日はこんななんだ。
最近暇がなかったから?
にしたってこれはちょっとまずいだろう。
「ん?どうしたのなつくん、顔が赤いよ?」
「い、いや!?なんでもないよ!?」
慌てて否定する俺。
ますます怪しいじゃねえか!!
「ん~?あ・・・。」
前のめりになった春姉が天板に当たってたるんでる自分の寝巻の襟をみて、気づいてしまったようだ。
「・・・えっち。」
目を逸らして、少し恥ずかしそうに言う春姉。
・・・破壊力高すぎだろ。
正直言って春姉は結構かわいい。
顔の造形はかなりいい方だと思う。
そんな春姉からそんな言葉を頂いちゃいまして俺がさらに落ち着かない状態に。
何で今日はこんなに血液が活発なの?
「あんたたち2人とも顔赤いわよ?そんなに暑いなら、こたつ切っちゃえばいいのに。」
「ち、違う!暑いわけじゃないから!」
「そ、そうだよお母さん!」
「・・・熱があるわけでもないみたいね。あっ、もしかして春女。」
「ちちち、違うよ!?お願いだからもうその話はやめて!?」
顔がさらに赤くなる春姉。
春姉が俺に想いを告げたことがばれて以来、結構いじられている。
その度に春姉は赤くなってうつむくわけだが。
今の俺には、そんな春姉の恥ずかしがる姿でさえ目に毒だ。
「ほら、ご飯できたから早く食べちゃいなさい。私は仕事行ってくるわね。」
「あ、うん、行ってらっしゃい母さん。」
「いってらっしゃい、お仕事がんばってね。」
「うんうん、かわいい息子と娘のために、お母さん仕事がんばっちゃうわね!」
母さんが上機嫌で家から出ていった。
「・・・なつくん?」
春姉がジト目で俺を見てくる。
「やめて!聞かないで!今日なんか俺おかしいから!」
「私が何とかしてあげようか?大学行くまでは時間あるし・・・。」
春姉が真顔でとんでもないことを言いやがった。
「・・・えっ!?」
一瞬でいろいろな想像が巻き起こり、俺の俺がさらに力を持つ。
いやいや、相手は姉だ、相手は姉・・・。
「なんてね!冗談だよ?」
「今の俺には・・・とても、心臓に悪いです・・・。」
おさまりつかないんだけど。
痛いんだけど。
ご飯を食べることに集中すれば、何とかなるかな。
「・・・おう、ミー子、おはよう。」
「・・・?」
ミー子が首をかしげた。
な、何かおかしいかな。
『おはよう。顔赤いよ?』
「なっ!何でもない!」
『熱とか大丈夫?無理そうならちゃんと休まないとダメだよ?』
ミー子が詰め寄ってくる。
いや、あの、その気遣いはとてもうれしいんですが!
「だ、大丈夫だから!とりあえず学校に行こう!」
ミー子が視界に入らないように、早足で移動する。
・・・脚と黒タイツが好きな俺にとって、今のミー子はかなり目に毒だ。
あの、エロく見えちゃう。
「・・・?」
ミー子が俺を訝しむように早足でついてくる。
ミー子には悪いけど、今日はあんまり相手できそうにない!
結局学校にかなり早くついてしまったので寝ることにした。
「・・・(つんつん)。」
ダメなんだミー子、ごめんな。
「・・・(つんつん)。」
ダメなんだって。
「・・・(ゆさゆさ)。」
いや、もう本当に。
「・・・(ぺろっ)。」
耳に突然ぬるっとした感触。
「ひいいいぃぃぃぃぃやあああああぁぁぁぁぁ!?」
クラスに俺の悲鳴が響き渡った。
まだ誰も来ていないのが救い。
「ななななな何すんだ!!」
『なっちこそどうしたのよ。』
勢いよく立ちあがったが、あっちも勢いよく立ち上がっちゃったので勢いよく座る。
「な、なんでもないって!」
『なんでもないわけないでしょうに。』
ミー子が詰め寄ってくる。
「頼む、聞かないでくれ。」
俺はまた机に突っ伏した。
ミー子も諦めてくれたのか、俺に何もしてこなくなった。
ようしようし、俺の心の平静は保たれた。
とりあえずこれを早く何とかしてですね・・・。
「よーう夏央、朝から盛大に寝てやがるな。」
京介が来たみたいだ。
「おい無視かこの野郎。」
頭をはたかれたので顔を上げることにする。
この野郎。
「・・・(じー)。」
超至近距離にミー子の顔。
「どぅわあああぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「・・・(びく)。」
今度こそみんながいる中クラスに俺の声が響き渡った。
「アヤったらどうしたの。」
祈木も近づいてきた。
ああ、ミー子とは違っておっきなおっぱいが・・・。
いや、俺は小さいほうが好きだから。
「・・・(ぱしん)。」
「びっくりした!!」
目の前で猫騙しを食らった。
『おい、今陽花の胸を見てただろ、正直に言え。』
「見てました。」
『ぶっころですわ。』
「Help me.」
色んな意味で。
「いやいや、ムラムラするってどういうことだよ。男なんか年中無休でムラムラしてるだろ?」
屋上に来た俺たちは2人きりで話していた。
いや、女の子がいてこんな話できませんて。
「今日はなんかおかしいんだよ。本当におかしいんだよ。助けてくれよ!!」
「おいおいおい、何がおかしいのか言ってもらわないと助けることだってできないぜ?」
ぐ、言わなきゃいけないのか。
「そのさ?やたら立つんだよ。」
「一応聞こう、何が?」
「・・・ナニが。」
「何があったんだよ?」
「知らねえから困ってんだよ!!」
俺は叫んだ。
「で、脚好きなお前は美衣ちゃんの脚で危ないと。」
「そういうことだ。」
「ヤっちゃえ。」
「ぶっとばすぞお前。」
殴りてえ。
この目の前でにやにやしてる男を殴りてえ。
「いいこと教えてやるよ夏央。」
「なんだ。」
正直あんまり信用ならないんだけど。
「いいか、ムラっちまうのは仕方ねえ。対処を考えるんだ。萎える考えだ。」
「萎える考え・・・。」
「例えばだ、家へ帰ると・・・自分の母親がソファで半裸で寝ていたら。」
俺の母さんソファで・・・。
「・・・うわあ。」
「な?」
確かにこれは萎える。
「そしてあれだ夏央、今日は美衣ちゃんの上半身を見てればいい。特に揺れるものもないんだから胸にグッとくるものもないだろう。」
「・・・ミー子に聞かれてたらお前死んでたぞ。」
でも京介の言うとおりだ。
俺の発情ポイントはミー子に限って言えば脚だ。
あんな暴力的な魅力してるミー子の脚が悪さの元凶だ。
春姉に反応したのは無防備な姿を見せられたのと破壊力高いこと言われたからだ。
ミー子に破壊力高いこと言われなければ平気だ。
それ以外はもう不確定要素だろう。
あとは祈木の胸を見なければいい。
これで完璧だ・・・!
「とりあえず今日の授業は寝るわ。」
「そもそも5限は先生の出張で自習、6限は英語で寝れる暇なんてないだろ。」
「授業に集中すればいいのか・・・!」
『帰ろうか。』
「もう帰ろうよ。」
『誰が続けろって言った。』
授業に集中できたおかげで授業中に雑念が湧くことはなかった。
しかしここからが問題だ。
帰り道はなんとか我慢しよう。
帰ったら体調悪いとか言って寝よう。
「・・・(きゅっ)。」
ミー子が俺の手を握った。
手をつないで帰りたいらしい。
・・・普段はしないくせに。
というか、ミー子も普通に女の子の手だよなあ・・・。
小さいし、やわらかいし。
っといかんいかん。
あんまり変なことは考えないようにしなければ。
『今日、やっぱり体調悪かった?』
「あ、ああ。そうだな。確かに、体は熱いし。」
うん、嘘は言ってない。
体が熱いのは本当。
ただ熱の時とは違う熱さ。
「帰ったら寝るとするよ。」
『私がそばにいてあげる。』
ミー子がそんなことを言う。
うん、気遣いはありがたいんだけどね。
「い、いや、さすがにそれはミー子に迷惑が。」
『彼氏が辛いなら、そばにいてあげなきゃ。』
ミー子が詰め寄ってくる。
あ、だめだこれ。
もうミー子は意志を変えないだろう。
「わ、分かった。でもあれだぞ?俺、すぐ寝ちゃうぞ?」
『大丈夫、なっちが寝ても、ちゃんとそばにいてあげる。」
うん、彼女の心遣いに涙が出そう。
今は違う意味で。
『なっち、やっぱり体調悪かったんだね。』
「た、体調と言いますか・・・。」
うん、多分顔が赤いんだろう。
ズボンには気づかれてないよな・・・。
やっぱりね、ダメだったよ。
ミー子の脚にどうしても目が行ってしまうんだ。
『下向いて歩くと危ないよ?』
「あ、ああそうだよな、すまん。」
そうだ、前向いて歩こう。
前・・・前・・・。
・・・む、誰か見知った人が歩いてるぞ。
茶髪を後ろで一つにまとめている女の人と、巨乳を揺らしながら歩くサイドテールの女。
・・・サイドテール?
あっちも俺たちに気付いたのか、サイドテールの人が手を振りながら近づいてきた。
「なぁぁつぅぅおぉぉくぅぅぅん!!」
「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「・・・(びく)。」
突然大声を出した俺にミー子がびくついた。
茶髪の女の人・・・もとい、春姉のもとから走ってこっちに向かってくる人。
サイドテールの巨乳の人。
ふ、不確定要素がー!!
「ようなつおくん!太郎ちゃん!これからお邪魔するよ!」
「断る!」
「認めん!!」
言い終わる前に光の速さで却下された。
「そんなことを言うひどい弟にはお仕置きだー!」
紗由さんお得意のヘッドロックを食らう。
いや、その、今日はやめて!
本当にまずいから!!
おい春姉、にやにやしてんじゃねえ今日の俺の状況知ってるだろ。
というか街中でこんな恥ずかしいことするの止めて!?
俺の頭があなたのおっぱいに食い込んでるんですよ!!
「・・・(ぐいー)。」
ミー子が紗由さんを押し、俺を助けてくれた。
なんて優しい子。
『紗由さん、なっちは今日体調悪いみたいなんです。そっとしておいてあげてください。』
そういってミー子が頭を下げた。
・・・ミー子、なんかゴメン。
「えっ!?なつおくん、体調悪いんだ!?ごめんね!大丈夫?まっすぐ歩ける?お姉ちゃんでよければ肩貸すよ?」
急に優しくなる紗由さん。
そういえば前に俺が怒ったと勘違いした時も急にしおらしくなってたよな。
「ちゃんと歩けますから。大丈夫です。」
「あ、あう、ちゃんと寝なきゃダメだよ?」
心配をしてくれる紗由さん。
・・・普段からこうなら、友達も彼氏もできそうなんだけどなあ。
たださっきから紗由さんのおっぱいのせいで俺の俺がおさまらない。
「なつくん、体調悪いなら今日の夕飯の当番は代わるよ。」
「あ、ありがとう春姉。」
「朝はびっくりしたけど・・・体調悪いせいだったんだね。」
・・・違うと思う。
だって俺、体調が悪いわけじゃないもん。
体温計が差す温度は37.5℃。
普通に熱があったみたいだ。
普通の熱とは全く違う熱さなんだけども。
ムラムラして体温上がってるとか・・・。
『私がそばにいるから、辛くなったら言ってね。』
ミー子が看病してくれるみたいだ。
病気じゃないんだけど・・・。
罪悪感が湧きあがるぜ。
隣の部屋には紗由さんもいるはずだけど、俺に気を遣ってかまったく声が聞こえない。
・・・やっぱり紗由さん普段からこうならいいんじゃないかな。
多分かなりを気を使える人だと思うんだ。
『ゆっくり休んでね。』
そういって、ミー子が俺の頭を撫でてくる。
ちょっと恥ずかしいけど、これ結構安心感あるな。
これならすぐ眠れそうだ。
多分、寝て起きたら何とかなってるはずだ。
うん、きっとそうだ。
「・・・うあっ。」
目が覚めた。
エロい夢を見た。
結構ガチめのやつ。
おかげで完全に臨戦体勢だ。
「・・・すう。」
隣ではミー子が寝ていた。
いつの間に俺の布団に。
・・・ちょっとくらいなら触ってもばれないかな?
だ、大丈夫だよな。
そうだ、だって普段はミー子から誘ってきてるじゃないか。
ならちょっとくらい平気なはず。
このままだと俺の収まりがつかないし。
どこから触ろうか。
ベッドの外に、脱いだタイツが置かれている。
つまり・・・今のミー子は生足ということか。
・・・ごくり。
「すべすべしてるな・・・。」
触った。
ついに触った。
ミー子の方を見ると、特に変わりなく寝ている。
よし。
制服のまま寝ているミー子のYシャツの下から手を入れる。
そのまま、ミー子のお腹に触れる。
「・・・(ぴくん)。」
寝息が一瞬止まり、わずかに反応を見せるミー子。
・・・お、起きてないよな?
自然と、俺の息が荒くなっていくのが感じられた。
普段、自制をして触らないようにしている。
でも今、俺はミー子に触れている。
その事実が、俺を興奮させていた。
彼女に触れるって、こんなに興奮することだったのか。
もう、俺自身では止められる自信がない。
もっとミー子に触れたい。
もっと、ミー子を知りたい。
ずっと脚や腹回りや腰回りを触れていたが、もう我慢できない。
俺はミー子のYシャツのボタンに手をかけた。
隠されていたミー子の上半身が露わになる。
「きれい・・・。」
思わず言葉が出た。
色白で、華奢で、儚げで。
思いっきり抱きしめたら折れてしまいそうな感じ。
かといってがりがりに痩せているわけでもなく、日ごろの運動のおかげか腹回りは少し締まっている。
スポーツブラなのもかわいらしい。
俺に触られたからか、寝ているミー子の頬には少し赤みが差していた。
「・・・はぁっ、はぁっ・・・!」
俺の興奮は最高潮にまで達していた。
もうこのまま覆いかぶさって、最後までいってしまいたい。
眠っているミー子の胸に手を伸ばし・・・。
「・・・(ぱち)。」
―――ミー子が目を覚ました。
俺は一瞬でその場を飛び退き、即座に土下座の体勢に入った。




