新年あけました
「・・・何か一年早かったな。」
「・・・(こくり)。」
あと数分もすれば今年が終わる。
年越しそばはもう食べた。
来年は受験やらが本格的に忙しくなってくるわけか・・・。
進路とか決めてないんですけど。
『多分、今年色々あったからだよ。』
「ああー・・・確かにいろいろあったよな。いや、ありすぎたよな。」
本当に、今年はいろいろ、いいことも、悪い子ともいろいろあった。
ミー子と一緒のクラスになれて、祈木や京介とも同じクラスになれて。
吉田とかいう先生が来て、ミー子が大変な目にあって。
ミー子と一緒に寝たり、同居みたいな生活をして。
春姉の過去を知って。
ミー子が笑えるようになって。
一緒に旅行に行って。
いつのまにか祈木と京介が付き合ってて。
京介が、事故に遭って。
修学旅行に行って、想いを打ち明けて、ミー子が俺の彼女になって。
ストーカー被害に遭って、大怪我を負って、入院して。
ミー子とノートの対決をして、今まであんまり聞いてなかった授業をちゃんと聞いて。
・・・あと、バイトで俺のメニューが認められたり、ミー子がバイト始めたり。
本当にこの一年、かなり濃かった気がする。
「ミー子、今年一年、本当にありがとうな。」
そういうと、ミー子が驚いたような顔をした。
驚く要素ありましたかね。
するとミー子は慌てたように手をバタバタさせながら俺に言った。
『この一年、なっちが隣にいてくれて本当によかったと思ってるよ。むしろ、私の方がお礼をするべきで。』
「嫌なこともいっぱいあったけど、旅行とか、本当に楽しかったよ、ミー子のおかげだよ。」
『私なんかじゃなく・・・。あの、本当に、迷惑かけてごめんね。』
「迷惑なんかかかっちゃいないさ。かわいい幼馴染兼彼女を助けないって彼氏としてどうなのよ。」
『私、なっちには感謝の気持ちでいっぱいなんだよ。なっちは今年私にいろんなことをしてくれた。だから、次は私がなっちに何かをする番。』
なんかミー子の勢いが強いな。
『ちゃんと話せるようになって、なっちに私の想いを伝えるから。だから、待っててほしい。』
「・・・分かった。じゃあ、待ってる。」
「・・・(こくり)!」
ミー子の目には、なんだか決意のようなものが見えた気がした。
「・・・(ちゅっ)。」
そして突然頬にキスをされた。
「った、うえええ!?なんだ!?」
『今は何も渡せるものがないから、私の感謝の気持ち。』
「お、おう・・・。」
だからってリビングでやらんでも。
その、俺の部屋とかでよかったんじゃないですかね。
ほら、母さんたちがにやにやしてるから・・・。
『では、カウントダウンに入ります!』
テレビで、年越しのカウントダウンが始まった。
これで、本当に今年が終わる。
『3!』
うん、来年はもうちょっと穏やかに過ごしたいかな。
もうミー子が傷ついたり、痛い思いをするのはゴメンだ。
『2!』
あ、でも3年生になれば違う意味で穏やかには過ごせないか。
まあ何はともあれ。
『1!』
願わくば来年も、この隣にいてくれる女の子と、ずっと一緒にいられますように。
『0!』
「あけましておめでとうございます。」
「・・・(すっ)。」
俺もミー子も年明け瞬間に向かい合って三つ指ついて礼をした。
「・・・ふふ。」
「・・・(にこ)。」
そんな息ピッタリな行動に、どちらからともなく笑いが漏れた。
あっこら、母さん写真撮るんじゃない。
ってこら、皆して写真撮るんじゃない。
「え、今日も一緒に寝んの?」
「・・・(こくり)。」
「まじか。」
「・・・(こくり)。」
まあ明日みんなでもちとか食ったり初詣行ったりするしいいか。
「明日どうせもち焼くのとか手伝わされるだろうし、早めに寝ようか。」
「・・・(こくり)。」
布団に入ると、ミー子も潜ってきた。
「俺の腕をどうするつもりだ。」
「・・・(にこ)。」
腕枕にするつもりか。
あれってなんかしびれそうだよね。
ってか、もし朝までやってたら絶対しびれるよね。
だって、人間の頭って結構重いもん。
うん、ミー子だとしてもやっぱり重いものは重い。
これが男子としての正直な意見なんじゃないかな。
「・・・(すすすっ)。」
ミー子がさらにくっついてくる。
というか、しがみついてきやがった。
いくら冬とはいえ、毛布と掛布団使ってるんだからさすがに暑いんですが。
・・・まあ、密着って言うのも悪くないか。
「・・・(じー)。」
まるで『なんにもしないの?』とでもいうような視線を向けてくる。
明日は絶対朝起こされるから早く寝ちゃったほうがいいと思うんだ。
「・・・(ぎゅっ)。」
・・・うん、俺だって男の子だかんね?
黙ってると追撃してきそうだな。
身動きとれなくしてやろう。
腕枕している腕とは反対の腕でミー子を抱きとめ、ちょっと力を込める。
・・・ただイチャついてるだけじゃねーか。
「・・・ほー、ほー。」
「あっつっ!?あっつ!!」
ミー子が俺の寝巻に口つけて息吐きやがった。
なんだこら抵抗しやがって。
「・・・(すっ)。」
ミー子が腕から頭を退けた。
「ん?もういいのか?」
「・・・(こくり)。」
もういいみたい。
「・・・(ぎゅー)。」
どうしてもそうしたいのかね、ミー子よ。
恥ずかしいし俺はあんまりいいとは思わないんだけどね?
でもミー子が抱きついてくるなら仕方ないよね?
こんな寝姿絶対見られたくないけど。
「夏央ー!起きなさーい!!!」
母さんのめっちゃうるさい声が部屋に響く。
おかしいな、母さんは下の階から声を出してるはずなのに。
抱き合ってそのまま寝ていた俺たちはビックリして起きた。
というか、ミー子もまだ寝てたのか。
珍しいこともあるもんだ。
「ミー子、おはよう。」
「・・・(こくり)。」
ミー子が眠そうにうなずいた。
この眠そうな顔も珍しいな。
「起きろっての!!」
「起きてるよ!!」
返事をしなかったからってなにも部屋に突撃することないでしょうよ。
そして一緒の布団で寝ている俺たちを見て一言。
「・・・邪魔だったかしら?」
「よこしまな妄想しないでくんないかな!?」
なんてこと言いやがるこのバ・・・母さんは。
「お雑煮できたわよ。」
「食べます。」
『いただききまふ。』
寝起きだからか、字が間違えている。
俺たちは寝間着のまま下へ降りた。
「・・・みんな起きてやがる。」
「夏央おはよう。みんな元応援団の人に起こされたよ。」
「声おっきかったねえ・・・。」
春姉が半笑いで言った。
みんな寝間着なあたり、今起きたばかりか。
「夏央くんおはよう、美衣も今起きたの?」
「那空さんおはようございます。」
『珍しくさっき起きたよ。』
そういうミー子はまだ眠そうだ。
「ミー子、どうかしたのか?」
「・・・(ふるふる)。」
首を横に振るミー子。
いや、何もないならいいんけど。
「・・・(かーっ)。」
・・・うん、何もないならいいんだけど。
「何で顔が赤いんだ・・・?」
『言えない。』
言えないときたか。
まあ言いたくないなら聞かないけど。
・・・もしや、抱き合って寝てたら思いのほか恥ずかしくて寝れなかった・・・とか?
・・・ないか。
「いただきまーす。」
新年一発目のお雑煮。
まずは汁を一口。
「あぁ~・・・しみる。」
「おっさんか。」
冬姉からの鋭いツッコミいただきました。
「母さんこれ美味しい。」
「私が作ったんだから、当たり前でしょう?」
「秋穂のお雑煮はとってもおいしいものね~、私も大好きよ。」
「那空ちゃん、嬉しいこと言ってくれるわね!」
母さんが上機嫌だ。
あー、お雑煮本当にうめえ。
「もちってさ・・・。」
「・・・(もぐもぐ)?」
ミー子が口をもぐもぐさせながらこっちを向いた。
「正月中ってほとんど食うから、最後の方飽きてくるよな・・・。」
「・・・(もぐもぐ)。」
そのまま前に向き直った。
どうやら賛同してくれないらしい。
「飽きないためにいろいろ味変えてるんでしょーが。」
「いやいや、そうは言うけどもよ母さんよ、もち自体に飽きちゃう。」
「もうもち食わなくていいべあんた。」
「あ、いや、食います食います。」
腹持ちいいしね、もちだけに。
・・・くっそつまんねんなこれ。
「さあて、初詣にでも行きましょうか。」
寝間着から普段着に着替え、出かける準備をする。
女子組の着物に期待・・・なんてしません。
わざわざ着づらいだろうし。
そもそも女子組って言ったって2人は親で2人は姉だし。
『成人式は晴れ着で行ってやるから我慢しろ。』
「成人式・・・晴れ着・・・。」
あれかな、ミー子もめっちゃ髪盛るのかな。
『盛らないから安心しろ。』
「読まれた!?」
『なっちの視線が思いっきり私の頭を見ていました。』
俺、視線でばれる。
『着物は体のラインが出ないから貧乳でも映えるよなー、とか思ってる?』
ミー子の目がすっと細くなる。
いや確かに今胸は見ましたが。
「思ってない。思ってないよ。」
『じゃあ今なっちが思っていることを当ててあげようか。』
「・・・いや、ミー子の身体は全体的にバランスが取れていてスタイル的には結構良い方だなあと。」
身長も別にあんまり大きくないし。
「・・・(じー)。」
何も言わず見つめるミー子。
それにね?
俺は胸よりもね?
ミー子の脚が素晴らしいと思ってるからさ。
胸なんて関係ないのサ。
「てか今日はずいぶんと男みたいな格好してるな。」
『だろう?』
ミー子の服装はパーカーにTシャツにジーパン。
多分下に何かまだ着てるんだろうけど。
慎まやかだし髪の毛も長くないから、男と間違えられるかもしれない。
「・・・って、あれ?ミー子そんなTシャツ持ってたっけ?」
パーカーはいつものNSシリーズ。
でもTシャツは見たことないやつだ。
水色の生地にでっかくSPLASHと書いてある。
はっきり言おう、何だこれ。
NSシリーズと合わせてよく分からん。
『ビビッときたのでポチった。』
「そ、そうですか・・・。」
やっぱりミー子のセンスは分からん・・・。
「今日はNS34か。・・・てかさ、NSシリーズの服を除外すると他にどんな服があるんだ?」
ミー子の私服ってほとんどがNSシリーズだからほかにどんな服を持ってるのかが分からない。
『やめて!そんなことしたら私の私服の9割がなくなっちゃう!』
「―――。」
なんて言えばいいんですかね。
よく考えたらNSシリーズってミー子が小学校の時から愛用してるシリーズなんだよな。
年齢層とか服の種類とかどんだけ幅広いんだよNSシリーズ。
「うっわ人多いなー。」
うへえ、と冬姉が嫌そうな声を上げた。
まあ初詣に人が多いのなんて毎年だし・・・。
「木通神社ってこんなに人多かったっけ?」
「あんた毎年来てるでしょうが。今さら何言ってるのよ。」
「人ごみは・・・あたしきらい。」
冬姉がめんどくさそうに並んだ。
「夏コミは並ぶくせに。」
「あれは目的がはっきりしてるからいいのよー!」
冬姉がうがあっと声を上げる。うるさい。
「春ちゃん、これいる?」
「わ!ホッカイロ!いいんですか?」
「いいのよー。だって春ちゃん、手袋もしてないし、とっても寒そうよ。」
「ありがとうございます!」
春姉は那空さんからホッカイロを受け取っていた。
持ってきてなかったのかよ。
俺とミー子はコートに手袋とネックウォーマーとホッカイロ完備だぜ。
ミー子にいたっては耳当てもしてる。
・・・というか、ミー子はネックウォーマーじゃなくてマフラーの方がかわいいと思うんですが。
「寒くないか?」
「・・・(こくり)。」
俺と手をつないだまま、ミー子が頷いた。
「はぐれるなよー。」
「・・・(ふるふる)。」
はぐれないよとでも言いたいんだろう。
手袋をしているためケータイは使えない。
それなら手話でもいいが、今は俺と手をつないだ状態。
頭の素振りだけでもちゃんと伝わるって素晴らしい。
「那空ちゃん那空ちゃん、あの2人が手つないでるわよ。」
「あらあら、写真撮りましょうか!」
「撮るな!」
何でもかんでも撮るのやめろ。
朝見せてもらったぞ!
なんかこの前一緒に肩寄せ合って寝てた写真があったな!
「いつまで並ぶだろうなコレ。」
「・・・?」
去年は1時間近く並んだ。
ただなんか今年の人数が去年よりも多い気がする。
「俺ちゃんと5円玉投げて今年こそいい縁があるように神様にお願いするわ。」
前に並んでいる人がそんなことを言っている。
神様に良縁をお願いするのか。
俺何をお願いしよう。
「ミー子は何をお願いするんだ?」
「・・・(ふるふる)。」
まだ決まってないのか、それとも教えてくれないのか。
「結局1時間半待ったな。」
「帰りたい・・・。」
冬姉がげっそりしている。
「甘酒おいしいねー。」
と柔らかな笑顔で言う春姉。
・・・まさか甘酒で酔ったりしないよね?
ただ語尾が伸びてるところを見るによっていないとは断言できない。
「・・・(こくり)。」
ミー子もちびちびと甘酒を飲んでいる。
結局、進路がうまくいきますようにとだけお願いした。
何がうまくなのかはよく分からないが。
まだ進路決めてもいないし。
「いきなりご縁きたー!!」
近くで、さっきの前にいた人が叫んだ。
びっくりして後ろを向くと、別に女性らしきものは見つからない。
いったい何のご縁が・・・?
「見ろよ見ろよ!今日追加されたばっかりの限定キャラゲット!!」
・・・あっ、そういうご縁ね。
「・・・(どべーん)。」
帰ってきて早々、ミー子が俺のベッドにダイブした。
「何してんだコラ。」
『余は足が疲れたのじゃ。』
「ほう。」
『揉んでたも。』
「いいんですか!?」
『あっちょっと待ってイタズラとかそういうのはやめてね?本当に足が疲れてるんだからね?』
・・・あっ、そうだ、今日はミー子スカートじゃないじゃん。
ミー子がスカート穿いてる時はタイツを穿いてるんだけども。
『ちなみになっちの大好きな黒いタイツはそのジーパンの下よ。』
「えっ?脱がせていい?」
『何でこういうときだけ積極的なんですかねえ。癪だから脱がせちゃダメよ。』
NGいただきました。
「んな殺生な。」
『はやくー。』
仕方ないからミー子の仰せのままに。
ダメって言われたらできませんもん。
『お上手ね。』
「そう言ってもらえて何よりですぜ旦那。」
『いつから私が男になった。』
「それはほら、言葉のあやってやつよ。」
『自己紹介?』
「・・・・・・いきなり言われてもわかんねーよ!?あとそれ祈木にしか通じないだろ!」
アヤって俺のニックネームじゃねえか。
『あんまり揉むと揉み返し来るから気を付けてね。』
「へーへー。」
まあ、できる限り優しくするんですがね。
『優しくし過ぎるとくすぐったいぞ。』
「注文多いですなあ。」
『いいじゃない?なっちだし。』
なぜか勝ち誇ったような顔を見せるミー子。
ドヤ顔ですね、はたきたい。
「ついでにいろいろしてやろうか。」
『じゃあなっちに耳掃除でもしてもらおうかしら。』
「任せろ。」
久しぶりだから怖いけども。
「・・・(じー)。」
横目でじっと見てくるミー子。
何のつもりだ、やりづらいんですが。
『優しく入れてね。』
「当ったり前よ。」
傷つけちゃいけないからな。
「そっちこそ動くなよ。」
「・・・(こくり)。」
「動くなって。」
・・・特に汚れてるってわけでもないな。
じゃああれだ、棒で耳の壁をこすって、マッサージみたいな感じで行きましょうか。
こう、くりっと。
ミー子が気持ちよさそうに目を細めた。
横になってるし、なんか猫みたいだな。
「・・・(びく)。」
「おっ、痛かったか?」
「・・・(ふるふる)。」
「続けて大丈夫か?」
「・・・(こくり)。」
なんだったんだろ。
うーん、まあ、もうきれいだし後はこのふわふわのやつでいいか。
「ほーれほれ。」
「・・・。」
特に反応はない。
こういう時、ちょっと声でも漏れてくれればな。
「・・・ふっ。」
うん、息だけね。
「よっしおっけー。じゃあ、反対向いてくれ。」
「・・・(こくり)。」
こちらも特に汚れているわけではなかったので、マッサージをした。
終わった後、ミー子はなんだか満足げだった。




