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Please speak!  作者: 長野原春
38/113

決着です 2

「というわけで!」

『私たちのこのノート!』

「どちらが優秀か!」

『判断していただきたい!』

 3人はなんだかものすごいアホを見ているような目をしている。

 ひどくないですかね。

「ちなみにこのフリは!」

『事前の打ち合わせは一切!』

「『していません!』」

「どうしてこうも息ピッタリなの・・・。」

「わけがわからないわ・・・。」

「幼馴染の彼氏彼女って恐ろしいね・・・。」

 3人のアホを見るような目は一向に変わってくれない。

 なぜだ。

「まあいいわ、見ましょうか。」

「そうね、なんか授業頑張ってたみたいだし?」

「なつくんが授業頑張るって、なんかいいね!」

 3人はノートを開いて品定めを始めた。

「ほー・・・。」

「へえ・・・。」

「わ、すごい・・・。」

 失礼なことに、ノートを見た後俺たちの顔をチラチラ見てくる。

 多分「本当にこの子たちが・・・?」ってことだろう。

「どうだー!」

『私たちの努力の結晶だぞー!』

「誰よこの子たちにお酒飲ませたの。」

 飲んでねーわ。

「でも本当に見違えるようだよ。2人ともよく頑張ってるね!」

 春姉がほめてくれる。

 もっとほめて、俺たちやる気でるから。

「夏央くん、昔からそうだけど字がきれいよね・・・。」

「でも那空なあちゃん、ミーちゃんの字、かなりきれいになってるわよ?」

「え、あ本当だいつの間に。」

「やべえよミー子、俺たちほめられまくりだぜ。」

『たぶん元から評価が下だったからこれ以上下がることもあんまりなかったんでしょう。』

「そういう事言わない。」

 うすうす気づいてたから。

 多分そういう事だろうなっていうのは分かってたよ。

 だってチラチラ見てくるんだもん。

「まとめ方自体はミーちゃんの方がうまいって言うか・・・さすが女の子って感じよね。」

「でも夏央くんは適切なスペースとかのおかげでかなり見やすいわよ?」

「ほえ~、2人ともいい感じの作るね~。」

 3人とも結構見入っている。

 どんどん評価してください、改善点になるかもよ?

「夏央はあれね、ミーちゃんのノートみたいにまとめたところに説明を入れてもいいかもね。」

「美衣、ここさすがに詰め過ぎだと思うわ。ちゃんとスペースも開けないと。」

 ほらこういうね。

「あ、ちなみにね、ノートは一番下まで書かないほうが見やすいよ。全部埋めるとね、詰まって見えちゃう。」

 ありがとうございます。


「じゃあ結果を言うわね。」

 母さんが佇まいを直し、俺らの方を向く。

「『・・・(ごくり)。』」

「勝者は・・・美衣ちゃんね!」

「がーん!」

『完全勝利した美衣ちゃんUC。』

 ミー子がドヤ顔で両手を上げ、勝利のポーズをとった。

「決め手はやっぱりまとめたところに書いてある説明ね。ただまとめるだけじゃ、本当に覚えられるかどうかは怪しいからね。」

「夏央くんのノートはスペースがちゃんと作られていて見やすかったけど、場所ごとの説明がない分、黒板の板書とかをただ写しただけかなーって。」

「美衣ちゃんは、ノートを作るときにスペースをもうちょっと開けるともっと見やすくなると思うよ!」

「二人のノートの特徴をいいとこだけ取ればすごいいいノートになるんだろうけどねえ。」

 なんだと・・・。

 あ、でも「黒板の板書をただ写しただけ」っていうのは少し刺さるかもしれない。

 説明・・・説明か。

 これは、まだまだ俺のノートには改良の余地がありそうだ。

『はい、なっち、ケーキ楽しみにしてるよ。』

「くっ・・・。」

 クリスマスのケーキ担当、俺になってしまったか・・・。

『残念だったねなっち、私のノートを見習ってもっと良いノートを作ってくれたまえ。』

「見習うよ・・・。」

 ちょっとへこんだ。

 結構・・・渾身のノートだったんですがね。

『ケーキ、やっぱり一緒に作る?』

「いや、今回は俺の負けだからな、潔く俺1人で作るよ。」

『おっ、かっこいい。』

「まあ、2人で作った方が楽しいんだけどな。」

『そりゃそうよ。じゃあ私は近くで見ててあげる。』

「そうしてくれ。」

 ミー子が近くにいてくれるなら、それだけでやる気が出る。


「負けちまったよ京介・・・。」

「はは、俺は夏央のノートも割と言いと思ったけどなー!」

 12月22日、大掃除の日だ。

 掃除をすれば家へ帰れる、なんていい日だ。

 俺と京介は2人でトイレ掃除をすることになったので、掃除とは名ばかりのおしゃべりタイムだった。

「というわけで俺が今年のケーキ担当なんだよなー。」

「お、夏央がケーキ!俺も行ってもいいかな!?」

「・・・どうだろ、母さんとか那空さんとかいるからな。」

「あー、俺は問題なさそうだけど陽花は連れて行きづらいなそれ。」

 京介は中学からの友達なわけで、母さんも那空さんも顔見知りだ。

 どっちかというと春姉とあまり話したことがない感じ。

「うーん、仕方ない、俺は陽花とクリスマスの聖夜を満喫することにするぜ。」

「じゃあ、今度4人で何かしらパーティーでもするか。俺とミー子がケーキ作り担当で。」

「おっいいね!じゃあ頼む!」

「おっけおっけ。じゃあ4人で新年会って感じだな。」

「それなら冬休みの宿題終わらせないとな、夏央!」

「そうだな俺だな、京介はすぐに終わらせるからな。」

 先生の足音が聞こえる。

 俺たちはあわててブラシで床をこする。

「あ、そうそう、夏央、知ってるか?」

「知ってるかって聞かれてうん知ってるよって言える奴いないと思うんだ。」

「・・・12月24日って、1年で一番コンドームが売れる日らしいぜ。」

「・・・俺に伝えてどうするんだそんなこと。」

「さあなんだろうねー!」

 その後俺たちは何も言わず、トイレの掃除を続けた。


「はい、明日は休み、明後日は終業式なので、今日通知表返しちゃいまーす席着けお前ら。」

 茎野先生からの突然の報告。

「これはさっき職員会議で決まったことでーす早く席に着け。」

 クラスに一斉に緊張が走る。

 まあ俺は学校をしばらく休んでたし評価が低くても仕方ないけどね。

 入院とかって休学になら・・・あ、俺休学扱いだったんだっけ。

「とりあえず言っておこう、絢駒、成績は期待するな。」

「でしょうね!」

「3学期から頑張れよ。お前最近やる気出してるみたいだしな。」

「推薦取るためにがんばっちゃったりしてるんですよ。」

「今からじゃ遅い気もするけどな。」

「なっ!!」

 クラスから笑いが起きる。

「お前らも推薦とかほしけりゃもっと授業態度よくしておけよー。はい、んじゃ通知表返すぞ。まず絢駒。」

 期待するなとは言われたし、あんまりよくないんだろう。

 ・・・あれ、1学期と全然変わってない。

 期待するなってそういう事ですか。

 ・・・数学が4なのは、平均的に考えてちょっとまずいかね。

「・・・(ぱたぱた)。」

 ミー子がこちらに走って向かってくる。

 いいことがあったんだな。

『国語が5から6に!』

「それだけかいっ!」

 ちゃんと勉強し始めたのは最近のことなので、点数自体はあまり変わっていなかったらしい。

『私たちの戦いは3学期からだ!』

「そうだな!」

「俺は安泰だな!」

「うるせえ黙ってろ京介。」

 こいつの通知表は見なくても分かる。

「ついにっ!キタっ!日本史っ!10っ!!」

 京介がうざいほどのノリで通知表を見せてきやがる。

「あーはいはいおめでとう。」

「夏央くんひっどぉい!」

 京介が体をくねらせる。

「気持ち悪い。」

『でも10って素直にすごいと思う。』

「分かってくれる!?さっすが美衣ちゃん!俺の事よく分かってるぅ!」

『あ、ごめんやっぱ気持ち悪いわ。』

「あっふぅ!?」

 大きく体をのけぞらせる京介。

 後ろには祈木がいた。

「・・・浮気かな?」

 祈木がのけぞったままの京介の頭をがっと掴む。

「ちょっ!?浮気!?俺そんなの考えてないぜ!?」

「かがみんがなーみんのこと分かってるって?」

「それはただ単に付き合いが長いからごめんなさい。」

「・・・ま、許しましょう。」

 祈木が掴んでいた手を離した。

「かがみん、ありがとね。おかげで化学の成績がまた上がったよ。」

『それはなにより。』

 ミー子と祈木が握手をした。

「友情っていいものだな。」

「それだけでいいものと言える夏央は頭がお花畑なのかな?」

「なんだとコラ。」

「お前らうるさいぞー。今からHR始めるんだから終わったらさっさと帰れ。」

 それは教師として正しいセリフなんだろうか。


「よっし勝ちぃ!」

『なっちが最近どんどん強くなってる。』

 放課後、俺たちはミー子の部屋でパラロスをやっていた。

 最近パラロスで実装された機能、オンライン対戦だ。

 自分のキャラを使い、全世界でパラロスをやっている人と1対1で勝負ができる。

 俺が使うキャラはもちろんメタトロン。

 ミー子が使っているのはサンダルフォンだ。

 パラロスの公式サイトには、勝利数で競うランキングが掲載されている。

 同じ相手と戦っても勝利数は増えないので、純粋に何人と戦って何人に勝ったかの勝負だ。

「俺はまだランキング外だけどな。」

『まあランキングは全世界100位までだし、なかなか厳しいでしょ。』

「そう言っておいてランキング32位に見知った名前がいるんだけど?」

「・・・(ぷい)。」

 ミー子がそっぽを向いた。

 世界ランキング32位、KAGA=Mee.

 どのゲームでもミー子は共通でこの名前を使っている。

 ちなみに5文字制限の時はKGMIN。

「どう見たってこの名前はミー子だよね?」

『あたしだよっ!!』

「古いわ!」

 いつのネタだよ。

 ムチ持ったお姉さんが久しぶりに頭に浮かんだわ。

『これヵ゛ぁ、強さの違ぃとぃぅゃっだょ、なっち。』

「うっとおしいからその小文字やめろや。」

『ぅゎょぅι゛ょっょぃ』

「関係ねえだろ。」

 読みづらいし見ててむかつくんだよね、アレ。

『なっちはやっぱりずっとメタトロンでいくの?』

「ああ、前作からずっと使ってるからな。」

「・・・(こくり)。」

 よく分からないがミー子が深く頷いた。

「何の頷きだそれ。」

『確かに、なっちはメタトロン使ってる時が一番強い。』

「慣れてるからな。」

『一緒に100位以内入ろうぜ。』

「まあ、頑張るよ。」

 あとどれくらい勝てばいいかわからないけど。

『ほれ、1回やったら交代でしょ、代わって代わって。』

「ほいほい。」

 コントローラーをミー子に渡す。

 対戦相手が見つかるまでは、割と暇だ。

 この暇な画面は改善の余地があるんじゃないか。

「お、見つかったな。」

『セラフィエルか。大丈夫かな。』

「とかなんとか言ってー、圧勝しちゃうんでしょう?」

 俺の言葉を無視して、ミー子は対戦を始めやがった。

 サンダルフォンは遠距離攻撃を主体とした天使。

 セラフィエルは攻撃範囲を自由に設定できるトリッキーな天使。

 勝負の分は相手の攻撃範囲によって決まるだろう。

「・・・っ!」

 対戦開始と同時に、サンダルフォンがダメージを受けた。

 旋回する刃の軌道は、遠距離の横薙ぎ、斜めの斬り降ろし、上空の横旋回の計3本、あとは近距離攻撃だ。

「対策されてるという事か・・・?」

 サンダルフォンは遠距離攻撃型のため、体力が低く設定されている。

 攻撃され続ければあっさりと倒れてしまう。

「・・・!」

 画面外からの攻撃で、サンダルフォンの体勢が崩れる。

 右斜め上から、刃が飛んできているのが見える。

 このままだと間に合わ・・・。

「ん?」

 サンダルフォンがすさまじい勢いでセラフィエルに突撃し、空中に打ち上げた。

 そのまま飛び道具で体力を削り、コンボ決めで撃墜。

 一瞬の出来事だった。

「・・・何をしてんです?」

『反撃。』

「いやそういう事ではなく。」

『反撃コマンド。』

「あっそういうコマンドがあるんですね・・・。」

 知らなかった。

 瞬時に間合いを詰めるコマンドが存在していたなんて・・・。

 俺も練習しよ。


『はいなっちの負けー。』

「くやしーッ!」

 それからしばらくして、なぜか強い人ばかりと当たり、俺は勝つことがなかなかできなかった。

 とても不本意である。

『爆炎打ち上げはコンボの基本だけど、基本過ぎてやっぱり対策されちゃうよね。違うコンボも視野に入れないと。』

「チャージ6の横薙ぎから体勢を崩す・・・?」

『チャージ6は発生まで時間かかっちゃうからコンボの起爆には向かないと思うけど。』

「だーっ!!」

 俺は子供っぽくジタバタしてみた。

『どうする?』

「スルーッ!?」

 きれいにスルーされました、ハイ。

「あっ!」

『どした!』

「いいことおもちついた!」

『ぺったんぺったん。』

 乗ってくれてありがとうございます。

「チャージ4の衝撃波で崩して、ステップ攻撃で一気に詰め寄る・・・これだ。」

『やってみそ。』

「おうよ!」

 早速対戦相手を探す。

 しかし、対戦相手は見つかることはなく、画面が暗転した。

【サーバーエラーが発生したため、緊急メンテナンスを行っております】

「ナズェ!?」

『これはなっち運ない。』

 いくらなんでもひどすぎる。

「もー、ひどい。やめだやめやめ。」

『じゃあ私といちゃいちゃしようぜっ☆』

 突然すぎる提案。

「何をするんだ何を。」

『そりゃあもちろん(自主規制)とか。』

「しねえよ!?」

『うそうそ。』

 そういって、ミー子が俺に近づいてくる。

 待て、何をするつもりなんだ。

「・・・(ちゅっ)。」

「・・・んっ。」

 キスされた。

 脈絡もクソもない、突然のキス。

 しかも唇だ。

「い、いきなりなんだ。」

 突然のことでちょっと照れてしまった。

『なんかこう、したくなった。ダメかな?』

 そういうミー子も顔が赤い。

「ダメ・・・じゃないけど。」

『じゃあもういっかい。今度はなっちからしてほしい。』

 おいおいさっきまでゲームやってたのになんだこの流れは。

 何でいきなりお互いキスすることになってんの。

 とりあえず、ミー子の肩に手を置く。

「・・・(ぴく)。」

 少し肩が跳ね、ミー子が目を閉じた。

 期待されてる!期待されてるよこれ!

「い・・・いくぞ。」

「・・・(こくり)。」

 顔が近い。

 も、もうちょっとで当たる。

「・・・んっ、ふっ。」

「・・・。」

 少し長めのキス。

 ああくそっ、変な雰囲気に当てられちまった。

 もうちょっと、そばでミー子を感じていたい。

 そのまま、ミー子の背中に手を回し、ぎゅっと抱きしめた。

「・・・ちゅっ。」

「くちゅ・・・ちゅぱ。」

 こんなキスをしたことがあっただろうか。

 いやない。

 あっこれまずい。

 パシャッ

「―――!?!?!?」

「・・・っ!!」

 突然カメラのシャッター音が聞こえ、慌てて離れた。

 ミー子の部屋の扉が少し開いていて、その隙間から、ケータイのカメラがのぞいていた。

「部屋を見てみたら娘が彼氏に手を出されていた件。」

 那空さんの握りしめているケータイの画面には、俺たちが抱き合ってキスをしている写真がばっちり残っている。

「だから私のいないところでやれとあれほど・・・。」

「ち、違う!違くないけど・・・とにかく違う!」

「あの雰囲気は手を離してそのままベッドに直行まであるわね。」

「・・・ぐっ。」

 雰囲気が雰囲気だっただけに、否定しきれない。

 あのままいってたら俺どうなってたかわからない。

「この写真、大事にするわね!じゃあバーイ!」

 那空さんが上機嫌で家を出て行った。

 どこ行ったんだあの人。母さんならまだ帰ってきてないぞ。

『キスなんてなっちの退院以来。なっちが隣にいてくれるって意識したら、したくなった。』

「う、うーん・・・。」

 いや、その、まあ、彼女とキスできるっていうのはとてもうれしいことなんだけどもね。

 それに、俺もミー子が隣にいてくれるのは本当にうれしいし、安心する。

 でもあんなことされたら俺だってたまらない。

 だって男の子だもの。

「・・・って、あ。」

 少し考えたところで、とある答えに行きつく。

 なんでミー子がいきなりこんなことしてきたか。

「なぁミー子よ。」

『なんだい兄者。』

 いつから俺はお前の兄者になったんだ。

「口で言うのは恥ずかしいっつか、男としてはばかられるのでケータイ貸せ。」

『私の写真のフォルダを覗く気!?』

「誰もそんなこと言ってねーよ!」

 ミー子のケータイを引ったくり、メモ帳に伝えたいことを書いてミー子に見せる。

「・・・っ!」

 ミー子は顔を赤くして、カレンダーを確認した。

「・・・(ぽか)。」

 真っ赤な顔のまま、弱めに一発だけ殴られた。

 どうやら正解だったようだ。

 ・・・あっぶねー。まじあっぶねー。

 あのまま手だしてたらどうなってたことか・・・。

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