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Please speak!  作者: 長野原春
34/113

夏央、復活

 まさか退院早々疲れる目に合うとは思わなかった。

 原因はこの隣にいる人。

「ようしなつおくん!今度お姉さんと出かけるぞ!撮影会!」

 このままだと休日に紗由さんに外に連れ出される。

 しかも列車の撮影となるとどこか少し遠いところまで行かされる!

 前に春姉は中崎まで行ってたし、どこまで連れてかれるかわからねえ!

 これは断った方がよさそうかもしれない。

「だから彼女がですね。」

「先輩に連れ出されたって言いなさい。」

 にっこりとした笑顔で威圧してくる。

 何で威圧するんや。

「別にやましい理由があるわけでもないんだしいいんじゃない?じゃああれだ。彼女に許可取ってきてよ。まあ、彼女ちゃんにダメって言われたら諦めるさ。」

「まあ、それならいいですけど。」

 ミー子が許可を出すだろうか。

 んーあの子微妙に独占欲強いところあるからなあ。

 ただ、列車の撮影となると本当にやましいことなんて一つもないんだよなあ。

 ・・・いや、紗由さんのその2つの果実は、やましいと思うんですけどねえ。


「ただいまー。退院した息子様のお帰りだぞー。」

 と言っても、母さんからの返事はない。

 まあまだ午後3時ですし。

 母さんも仕事から帰ってきていないはずだ。

「おっじゃまっしまあぁすっ!!」

 紗由さんは家に上がると、ダッシュで階段を駆け上がっていった。

『わああぁああぁぁああっ!?紗由!?えぇ!?』

 2階からは春姉の驚きの声が聞こえる。

 さっき返事がなかったのを考えると何かに集中していたのかもしれない。

 そういえば春姉は木曜日は家にいたんだった。

 ということは紗由さんも木曜日は大学に行ってないのか。

「この家もなんだか久しぶりな気がする・・・。」

 だからというってどうということはないんだけど。

 とりあえず上がうるさいので、春姉への挨拶は後でにしよう。

 まずはミー子だな。


 家に入ると、那空なあさんがソファで眠っていた。

 スーツを着ているので、仕事から帰ってきてそのまま眠ってしまったのかもしれない。

 仏壇の前まで来て、挨拶をする。

 昭さん、俺戻ってきました。

 長い間、ミー子を守ってやれなくてすいません。

 でもこれからは安心してください。

 そばにいてやりますから。

 風羽ちゃん、俺のかっこいいところ、見ててくれよな。

 いや、いつ見せられるかは、分からないんだけど。

 ミー子の部屋の扉はしまっている。

 部屋の中からは、パラロスの音が聞こえてくる。

「ミー子ただいま!」

「・・・(びくっ)!!!」

 ザシュッ!!ザシュッ!!ズガアアァァァァンッ!!

『YOU LOSE』

『おいコラ夏央テメエ何してくれてんだコラ。』

「驚かせて本当に申し訳ありませんでしたこの通りです許してください。」

 入って10秒、夏央の土下座の図が完成した。

『まあいいや、お帰り。』

 さっきのことをさらりと流すと、ミー子は両手を広げた。

『ほら、飛び込んできていいんだぞ。』

「・・・それミー子が抱き合いたいだけじゃ」

「・・・(ぎゅっ)。」

 俺が言い終える前に、ミー子が俺に抱きついてきた。

 そのまま俺の胸に顔をうずめた。

『まったく、一緒にゲームできなくて寂しかったぞこのやろ。』

「すまんな。これからするか?」

『いや、やることある。』

「やること?」

「・・・(こくり)。」

 ミー子は頷くと、そのままベッドにころん、と転がった。

 そのまま、何かを期待するかのように見つめてくる。

「えーと、ミー子さん?」

『約束したじゃないか。』

「いや、約束はしてないと思うけど・・・。」

『ほらほら。』

 ミー子は、俺の手を持ち、そのまま引いた。

 俺の手はミー子に引っ張られ・・・、ミー子の胸の上に着地した。

 ふよっとした気がしたが、全体的にはぺたっとした感じだ。

 ・・・いやいやいや、なに冷静に分析してるんですか。

「なにやってんの!?」

『退院したらやらせてあげるっていったでしょ。』

「いや俺退院したばっかりだから!しかもリビングで那空さん寝てるからね!?というか手離して!?」

「・・・(ふるふる)!」

 ミー子が離してくれないため、俺の手がミー子の胸から離れない。

 この状況・・・どうする!?

 このままだと俺はミー子に押し切られてどこぞの名曲のように大人の階段を上ってしまうことになる。

 いや、それ自体悪いことではないんだけど、状況がね、あまりよろしくないんですよ。

 例えばもしもこの状況で隣に那空さんがいなかったらどうなっているかわからない。

 ただ今は那空さんがリビングで寝ている。

 もし今事を起こせば、瞬時にばれるだろう。

 それは・・・やだ!!

 ・・・そうだ!離してくれないのなら、逆のことをすればいい!

 心の中でミー子に謝りながら、手に力を込める。

 ふよっ・・・。

「・・・(びくっ)!?」

 ミー子の身体が跳ねる。

 どうやらそうとう驚いたらしい。

 普段から俺はこういう事に積極的じゃないし、まさか揉んでくるとは思わなかったんだろう。

 顔を赤くしたミー子が、俺の手を両手でぎゅっと握る。

 ・・・まずい!ミー子を本気にさせてしまった!!

 逆効果だ!!

「・・・えーとあんたたち、そういう事は私のいないところでやりなさい・・・。」

「「・・・(びくうっ)!!」」

 二人して肩が跳ねた。

 扉の外に、那空さんがいた。

「いや、まあ別にいいんだけどね?ただ・・・避妊はしてね?」

「い、いや、違う!那空さん!誤解!」

『なっち、大胆。』

「ミー子ぉ!?」

 思わず声が裏返る。

「とりあえず、いつまで私の娘の胸を触っているのかな?」

 言われて気づく。

 俺の手はまだ、ミー子の胸の上だった。

 ・・・いや、別にミー子に胸が薄いから気づかなかったとかじゃなくてね?

「・・・(じと)。」

「い、いや、あの、ごめんなさい。」

『謝った!!確信犯だこいつ!!』

「違うんだ!別にミー子の胸が薄いから手を置いてても気づかなかったとかじゃない!断じて!」

『なんだお前殴られたいのか。』

「滅相もございません。」

「なんだかものすごくアホなものを見ている気がするわ・・・。」

 那空さんが頭を抱える。

「もういいわ、私これから秋穂と約束あるし、出かけてくるわ。どうせ秋穂ももうすぐ帰ってくるでしょう。あとは二人で好きにしなさい。あ、でも高校生だからそこらへん弁えてね?」

 そういうと、那空さんはさっさと家を出て行った。

 まさかの親公認というこの状況。

 俺自身やる気はなかったのでそういう雰囲気でなくなったのはうれしいが。

『ほんと、なっちは臆病だよね。』

「すまんな。まだ責任とれるような年じゃないんでね。」

『じゃあお母さんが言ってたようにつければいいでしょ、ゴム。』

「むしろなんでミー子はそんなに積極的なんですかねえ・・・。」

 不思議でしょうがない。

 付き合っているんだから、当たり前と言えば当たり前なんだけど。

『クラスメイトの子とか、もう結構経験してる子もいるみたいなのよ。』

「んなこと聞きたくなかった・・・。」

 衝撃の事実。

 まだ高校2年生ですよ・・・。

『私、そういう話について行けないし、他の子にも聞かれたのよ。「絢駒君とはしてないの」って。』

「女子ってそういう会話するんですか・・・。」

 男子はよくエロ方面での会話をする。

 女子もしてたんですね・・・。

 ってか、誰かは知らないけど、ミー子に何てこと聞いてるんだ。

『んで私は微妙に焦ってるわけですよ。』

「ほう。」

『まだ、私は処女ですし。陽花はどうか知らないけどさ。』

「うんその話題聞きたくない。」

 だって祈木の相手って確実に京介だろ?

 その京介が・・・抜け駆けとな。

『私はさ、なっちのこと大好きだし、触れてもらいたいと思うよ。そういう、あまりよろしくない感情も持ってるよ。これが高校生ってやつなのかな?』

 どっちかっていうと高校生っていうよりは思春期って言った方が正しい気がするけど・・・。

 俺は、そういう事に関してはどうも臆病だ。

 まだ責任が取れないとか、ちゃんとしてあげられる自信がないとか、多分そういうところからきているんだろう。

 一番は、傷つけたくないっていうのもあるんだろうけど。

 前に、京介にも聞かれたことがある。

 ミー子とそういう事、したくないのかと。

 興味はある。

 ただ、どうしても今やってしまっていいのだろうかという考えが浮かんでしまう。

『私はなっちとしたいよ。なっちは、どう思ってるの?こんな私に幻滅した?』

 ミー子が、こちらを見上げながら聞く。

 下手なことは言えない。

「幻滅なんて、してないよ。むしろ、きっと正しい感情なんだろう、って思うよ。でも、リスクだってないわけじゃない。できればミー子のことは大切にしたいし」

「・・・(ちゅっ)。」

 言い終わる前に、ミー子に口を塞がれた。

 突然のことに考えていた言葉が飛ぶ。

『やっぱり、なっちは優しいよ。でも、私から忠告。その優しさで、他の人は傷つけちゃだめだよ?慎重になって、なにもしないのは優しさじゃないと思うから。』

「ミー子・・・。」

『ね、なっち。今、すごくドキドキしてるんだ。確認してみて?』

 ミー子はそういうと、もう一度俺の手を引っ張った。

 そのまま、俺の手はミー子の左胸に置かれた。

 ミー子の言うとおり、どくんどくんという鼓動が手を通して伝わる。

 ミー子が、片方の手を俺の胸に置く。

『なっちも、ドキドキしてる。なんか、今までこういう事になったことないから、変な気持ち、だね。』

「い、いや、あの。」

『今までさ、なっちと一緒にいるのに、なっちに触ってもらえなくて、私寂しかったんだよ?誘っても、なっちは絶対に拒否するし・・・。』

「その、ミー子を大切にしたいっていうのと、俺もそういう雰囲気に慣れてなくて・・・。」

『最初から慣れてる人なんていないよ。多分、みんな最初はすごく緊張するんだと思う。でも、その恥ずかしさを乗り越えたら、もっと、今まで以上に親密になれるんじゃないかな。』

 ミー子がさらに近づいてくる。

 もうすでにゼロ距離だ。

『なっち、私、なっちのこと大好き。私のこと守ってくれるところも、一緒にゲームしてくれるところも・・・。』

 そこまで打って、ケータイで文字を打つのがめんどくさくなったのか、手話に変わる。

『おかし作ってる時の真剣ななっちも、私の事第一に気遣ってくれるところも、全部、大好き。』

 そのまま、ミー子の手が服の中に侵入してくる。

 ・・・なんだか、ミー子に襲われているみたいだ。

「・・・!」

 俺の体に触れ、ミー子が何かに気付いたようだ。

『あの時、危なかったのはなっちなのに、私の事を先に考えてくれて・・・、もう、絶対に無理はしないで・・・。』

 ミー子が、俺の腹部の縫い跡を触る。

「無理はしない、か。この傷が教訓みたいなもんだな。」

『もし、今しちゃったら、傷は痛む?』

「まあ、激しい運動はしばらく控えろって言われてるし・・・、痛むかもしれないな。」

 ミー子が、少し悲しそうな顔をした。

『そうなんだね。じゃあ、今日はやめておくよ。でも、なっちとはずっと一緒にいたい。だから、いつか受け入れてくれると嬉しいな。』

「ああ、俺もミー子とずっと一緒にいたい。だから、ミー子の気持ちに応えてあげたいと思う。えっと、ただ、まだ時間が少しかかると思うから・・・。もうちょっと待っててくれるか?」

『うん、待ってるよ。なっち、男の子!頑張って。』

「頑張るって、何を頑張るんだろうなあ。」

 ミー子が微笑む。

『なっちは少し優しすぎるな!もし私以外の彼女だったら、そこからすれ違いができちゃって破局まである。』

「まじか・・・。」

『私を選んでよかったね!こんないい女、他にはいないよ。』

「違いない。」

 もう一度、ミー子とキスをした。

 男として少し情けないけど、今日はそれまで。

 その後は、2人でゲーム。

 いつもより、なんだかミー子が敵を倒すペースが早い気がした。


「あ、なつくんお帰り。退院おめでとう!」

「うんありがとう春姉。まあ、ほんとは紗由さんと一緒に帰ってきてたんだけどね・・・。」

「まあ、あの子はね・・・。」

 春姉が机に肘をついた瞬間、上からドドドッという音が聞こえてきた。

「呼ばれた気がしたよ!!!」

「呼んでねえ!!」

 何でまだいるんだこの人!!

「起きてきたのね・・・。」

「春姉の部屋で寝てたのか・・・。」

「眠かったからさっきまではるさめと一緒に寝てたんだよ!」

 そういわれて、一緒のベッドで寝る春姉と紗由さんの図が浮かぶ。

 ・・・フム、悪くない。

「お、なつおくんがエッチな顔してるよ?」

「なつくん、何想像してるの?」

「いや別に?特に何も?」

 春姉と紗由さんが密着して寝てることくらいだよ?

 悪いのかい?

「紗由、もう6時半だけど、夕飯はどうするの?」

「んーどうしよっかなー。今から帰って作る気もなれないしなー。」

 そういって、俺の方をチラチラ見てくる。

 ・・・作れってか。

「なつおくん、夕飯作って?」

「結局口に出すのかよ!まあしばらく作ってないから作ろうかとは思ってたけど。」

 紗由さんが右手をぐっと握った。

「よっし!やったぜ。お姉ちゃんは生姜焼きが食べたいよ?」

「指定アリかよ!!さすがに材料が・・・。」

「あるよ?今日の夜生姜焼きの予定だったし・・・。」

「あるのかよ!!」

 ものすごい確率だな!!

 冷蔵庫を確認すると、本当に豚肉が入っている。

「作るんでちょっと待っててください。」

「やたー!お姉ちゃん待ってるよ!」

「じゃあ、私も待ってるよ!・・・というか紗由、お姉ちゃんってどういう・・・?」

 早速調理に取り掛かる。

 しばらく料理をせずに、このまま腕を鈍らせるのはまずい。

 モンブランも作らないとだし。

「あ、なつおくん!私たち今から買い物に行ってくる!んじゃ!」

「え、紗由!?私も行くの!?」

「そう!」

 俺の返事も聞かずに、紗由さんは春姉の手を引っ張り外へ出て行った。

 いったい何を買ってくるつもりだろうか。

「まあいいか、作ろう。」

 生姜焼きの味は・・・タレで決まるッ!!


「たーだいまー!うおーいい匂い!」

 ハイテンションでうるさいのが帰ってきた。

「おおー、なつくんが作る生姜焼きの匂い、久しぶりだね。」

「お帰り。まあ、俺と春姉の生姜焼きは味付け違うからね。」

 どっちかというと俺の生姜焼きの方が味が濃い。

 白米が進みますよ!

「この匂い・・・飲みがいがあるね!」

「えっ。」

 紗由さんが買ってきた袋の中には、酒が入っていた。

 ビールと、梅酒。

 春姉はビールが飲めないはずなので、おそらく紗由さんの物だろう。

「紗由さん・・・帰るつもりある?」

「今日は泊まっていくよ!明日は午後から授業だし、朝帰ればへーき!」

 紗由さんがいい笑顔で言う。

 泊まっていくのか・・・。

「夜うるさくするのは勘弁ですよ。」

「大丈夫!なつおくんのベッドでなつおくんと一緒に寝るから!」

「何が大丈夫なの!?」

「だ、だめだよ紗由!」

 春姉が焦った顔を見せる。

 俺も困っちゃう。

「私はなつおくんなら平気だと思ってるよ!なつおくん彼女いるし、ヘタレそうだし!」

「うっ・・・。」

 ヘタレという言葉がぐさりと刺さった。

 今日のことが思い出される・・・。

 い、今は料理に集中だ。

「お、なつおくん黙っちゃった。もしかして怒らせちゃったかな・・・?」

 紗由さんが急にしおらしくなった。

 いつものテンションはどうしたんだ。

「いくらなつくんでもいきなりヘタレとか言われたらさすがに怒るでしょ。」

「あ、あう・・・。」

 紗由さんがうつむく。

 なんだこれ、新鮮。

 ちょっとしばらく無視してみよう。

「な、なつおくん・・・?」

 紗由さんがおずおずと、こちらの機嫌を探るように声をかけてくる。

 無視。

「う、うぅ・・・。」

 紗由さんがソファで丸くなった。

 俺が完全に怒っていると思ったみたいだ。

 春姉はそんな紗由さんを妹を見るような目で見ている。

 ・・・あ、そういえば、春姉は紗由さんより年上なのか。

 順調に大学を進級していると考えると、大学2回生の紗由さんは20歳になる。

 まあ、酒も持ってきてるわけだし。

 春姉の誕生日は12月なので、今は21歳だが、紗由さんとは2つ離れてることになるのか。

「紗由、怒らせたなら言う事あるでしょ?紗由はその言葉がすぐに出てこないのがよくないところだよ。」

 春姉の言い方は、まるで娘に対する母親のようだ。

 それを聞くと、紗由さんはがばっと起き上った。

「な、なつおくん、ごめんなさい!失礼なこと言って、気分悪くさせちゃったよね・・・?何でもするから許して!」

 ん、今何でもするって言った?

 じゃあそのおっきなおっぱいをだな。

 ・・・と言うのはまあネタとして、そろそろ許してあげよう。

 というか、もともと怒ってないし。

「・・・紗由さん。」

 わざと声に力を込める。

「ひゃい!?」

 紗由さんは体をびくっと揺らし、変な声を出した。

 そんな紗由さんに、俺は優しく声をかける。

「・・・今、料理に集中してるだけなので。」

「・・・えっ?あ、あぁ~・・・。」

 紗由さんがその場にへたり込んだ。

 春姉はそれを見て、俺の方向を向く。

 その表情には、「絶対嘘でしょ」と書いてある。

「ニヒヒ。」

 嫌な笑顔で返してやった。

「さ、そろそろできますよ。」

「もう!なつおくんひどい!お姉ちゃんをいじめるとかひどい弟だ!」

「いや紗由はなつくんのお姉ちゃんじゃ・・・。」

「いや私はなつおくんの姉だから。」

 紗由さんがきっぱりという。

 あんた俺の姉じゃないでしょうが・・・。

「紗由、ご飯持ってって。」

「あいあーい!」

 元気になった紗由さんが元気にご飯を持っていく。

「うわわっ!」

 バランスを崩して落としそうになる。

 怖いのでやめてください。

「あ、そうだそうだコップも持っていかないとね。」

 春姉がちょっと嬉しそうにコップを持っていく。

 そういえば春姉がお酒を飲むのはあまり見ない気がする。

 普段寄り道して帰ってくることも少ないし、友達と飲めるのがうれしいんだろう。

「ジョッキはないの?」

「うちにはないね。というかそんなに飲まないで?」

「ええー。」

「じゃあ次は紗由の家で飲もうね。」

「うん!」

 やっぱ子供に話しているように見える。

 会話の内容は全然子どもじゃないけど。

「よし、なつおくんもコップ出して。」

「飲みませんよ。」

「お酒じゃないよ。ほらほら。」

 コップを出すと、オレンジソーダが注がれた。

「乾杯っ!」

「かんぱーい!」

「か、かんぱーい。」

 コップがチン、となる。

 そのままソーダを飲む。

 うん、久しぶりのオレンジソーダ、うまい。

「ぷはーっ!たまんねー!」

「うん、おいしいね。」

 紗由さんがおっさんみたいな声を出し、春姉の表情が和らぐ。

 お酒ってこんな力が・・・?

「さ!肉食べるよ!肉ぅ!」

 紗由さんが生姜焼きを一口。

「うめえ!」

 そのままご飯をかき込む。

 うんうん、おいしそうに食べてもらえると俺もうれしい。

 どれ、俺も食べようか。

 ・・・さすが俺、味付け完璧だぜ。

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