表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Please speak!  作者: 長野原春
28/113

修学旅行です 3

『キレイ。』

「すげーなこれ。」

 3日目、みんなで美ら海水族館へ来ていた。

 自由行動ということで、ミー子と2人で移動している。

『修学旅行だけどデート気分。』

「ああ周りにうちの生徒がこんなにいなければな。」

『いいじゃないの。』

 3階は、熱帯魚のエリアだ。

 色鮮やかな魚たちが群れになって泳いでいる。

『あの黄色いのキレイ。』

「俺はあの赤いのが好きだな。」

 水槽を見ていると、いきなり光が差した。

 水槽にライトが付いているのかと思ったが、どうやら太陽の光らしい。

 光は柱となって魚を照らしている。

 光を浴びてキラキラと輝く魚はとてもきれいだ。

 そこにいた生徒に頼んで、写真を撮ってもらった。

『お、とってもいい写真。』

「だな。」

 水槽の光は、魚たちだけでなく、俺たち2人のことも照らしてくれた。


「お、こんな小さい水槽でよく飼えるなあ。」

『普段は見つけることもできないんだってさ。』

「そうなのか。」

『短期間で珍しい生き物が展示されてることもあるらしいよ。』

「へー、見れたらラッキーだな。」

「・・・(それ)。」

 ミー子が指差した。

 レアな生き物とは、今俺たちが見ている、ミズクラゲのようだ。

「あ、こいつらレアなのね。」

『クラゲって何か考えながら泳いでんのかな。』

「いや、脳もないし、なんも考えてないんじゃないの?」

『んー』

 ミー子がクラゲをまじまじと見つめる。

 そんなこと気にせずにふよふよと泳ぐクラゲ。

『何も考えずに生きていけたら、楽かもね。』

「・・・どうだろうな。」

 ミー子は、過去のことをもう考えたくないんだろう。

 どうしても思い出してしまうとは言っていたけれど。

 たしかに、そんなこと一気にすべて忘れることができたら、楽なんだろうな。

 でも、

「・・・(ぽふっ)。」

 ちょっと考えていたら、ミー子は抱きついてきた。

 何事かと思うと、ミー子はまたケータイを見せてくる。

『でも、なんも考えられなくなったら、なっちのことも認識できなくなっちゃうよね。それはやだね?』

 ミー子が微笑んだ。

「あ、当たり前だろ?俺だって、ミー子がいなくなるとかは嫌なんだからな?」

 頭もなでてやろうかと思ったが、ここは水族館。

 ほかの人だっていっぱいいる。

「そろそろ違うところ行こうか。」

『2階行こう。サメが見たいよ。』

「おっけー。」


 2階の、黒潮への旅というエリアに、その部屋はあった。

 危険ザメの海というエリアにサメたちはいた。

「サメ類は意外と小食・・・へえ、そうなのか。」

『でもやっぱり人を襲う危険ザメはいるのね。』

「まあいないとニュースとかで事故の報告がされないもんな。」

『そうだね。』

 水槽を見ると、サメと目があった。

 別に危険なサメではないけど、やっぱサメってなると少し怖いな。

『・・・(んがー)。』

「ねえ待ってコイツ俺の事食おうとしてない?」

『あくびなんじゃない?』

 大きく口を開けたサメはそのままそっぽを向き、ふらふらと泳いで行った。

 確かにミー子の言うとおり、眠いのかもしれない。

「なんだか急にサメがかわいく見えてきたぞ。」

『本来めちゃくちゃ臆病だからねサメ。』

 そしてとなりには、危険なサメとして代表的な、タイガーシャークが泳いでいる。

「これが危険なやつなのか。」

『好奇心旺盛、何でも食べる性質・・・。』

 水槽の前まで行くと、サメが寄ってきた。

 ガラス一枚先には危険なサメがいる。

 こんなに近くでサメを見るのは初めてだ。

 よく見ると、目の前でサメがグネグネしている。

「ははっ、なにしてんだこいつ。」

『威嚇行動。』

「・・・え?」

『・・・(がー)!!』

 ゴン、ゴンと、サメがガラスに突撃している。

 俺に攻撃して食う気満々だった。

「つまり立ち去った方がよい?」

『よい』

 なんか危ないみたいなので、その場を立ち去る。

 獰猛すぎやしませんかね危険ザメ・・・。

 次に目に留まった・・・というより、最初から目には入っていたとても目立つもの。

 絶滅したサメの復元標本があった。

 メガロドンというらしい。

 全長は16メートルにもなるらしい。

 化物かお前は。

 化物か。

『こんなのに食われたら一巻の終わりだよね。』

「いやサメに襲われた時点でほぼ終わりだと思うんだけどな・・・。」

 目の前にあるメガロドンの口の標本があまりにも大きすぎた。

「何でこんな強そうなのが絶滅したんだろうな。」

『なんか知らないけどやられたんだよ、分からないけど。』

「うん、分からないことは分かった。」

 言ってることがおかしい。

 なんだかソクラテスの気分が分かりそうだ。

 私は・・・知らないということを知っている!!!

「・・・あ、置いて行かないでくださいミー子さん。」


 そのあとも2人でいろいろと回った。

 ミー子と水族館に行ったのは初めてだったからとても楽しかった。

「さあて夏央、この状況が分かるか?」

「むむっ。」

「いやむむっじゃねえよ。見ろこの青く透き通った海!そして女子生徒たちの水着ッ!!!」

「ああ、すげえな。」

「あんまりすげえと思ってねえだろ!?うちの学校にはプールがないから夏に授業がないんだぜ!?」

「んまあこんだけ水着がいるのは珍しいよな・・・。」

「だろ!?ちょっと水着を堪能していこうぜ?」

「祈木に言いつけていいか?」

「それは反則だろ、夏央。」

 京介があわてだした。

 まあ祈木のことだし見るくらいなら何も言わないとは思うが。

「陽花と美衣ちゃん、遅いなあ。」

「多分ミー子が嫌がってるかも。」

 外に出たくないとか、肌見せたくないとか。

 ちょっと前まで女の子っぽい格好なんて一切しなかったし。

「あ、きた。」

「ほら、祈木の後ろに隠れてる。」

 堂々とした祈木の後ろに縮こまってひょこひょこついてきてるやつがいる。

「どう!?なーみん!」

 バーン、と効果音がしそうなくらいの堂々とした立ち振る舞い。

 祈木が着ているのはビキニ。

 黒と赤のビキニだ。

「はいっ!素晴らしいです!!」

「よろしい!!」

 黒に赤い線が入ったトップスが祈木の大きな胸を強調する。

「なーみん!鼻の下が伸びておるぞ!!」

「はっ!?申し訳ありません!」

 京介が敬礼をしたまま頭を下げる。

「おーい、いい加減前に出てきなよ、かがみん。」

「・・・(ぷるぷる)。」

「でえぃ!」

「・・・!?」

 祈木によって、ミー子が前に出された。

 見るな、と言わんばかりにミー子が体をよじる。

 ・・・風呂はいいのに水着はダメなんか。

『陽花なんてことするの。』

 ケータイが使えないので手話で話すミー子。

「あたし手話は分からないよ?」

『なっち翻訳。』

「祈木なんてことするんだ、だって。」

「いやー、せっかくだし?水着、アヤに見せてあげなって。」

『セパレートだしそんな見せるもんじゃないよ!』

「セパレートだからそんな見せるもんじゃねえ、と。」

「じゃあほら、アヤ、水着の評価を。」

「す、スポーティでいいと思う。」

『絶対評価に困ってるでしょ!?』

「いや、似合ってると思うよ。」

 体系的に。

『憐れむな!私の胸と陽花の胸を交互に見て憐れむな!!』

「別に憐れんじゃいねえよ?」

『私はどうせ胸ないよ!!』

 ミー子が海に向けて全力でダッシュして、海水に浸かった。

「・・・俺たちも遊ぶか。」

「そうだね!なーみん!行くよ!!」

「おう!」

 ミー子に続いて、俺たちも海に入った。


 海の水は冷たくて気持ちがよかった。

 結構深いところまで行くと、なお気持ちいい。

 胸のあたりまで浸かっている。

「ミー子は・・・すげー、あいつ泳げたんだ。」

 普段プールとか海とか絶対行きたがらないから分からなかったけど、めっちゃ泳いでる。

 ばっしゃばっしゃいってる。

「俺はあんま泳げないからなあ・・・ってか、そんなに泳げるならあの水着も映えるな。」

 などと考えているうちにミー子の姿が消えた。

「うおおっ!?」

 きょろきょろしていたら、急に後ろから足を掴まれ、海中に引きずり込まれた。

「ちょ、まっ!ごふぁっ!!」

 全身をバタバタさせてもがく。

 すると、足に何か当たった。

「うおお!?」

 また何かに引っ張られ、体勢が直った。

 どうやら助けてくれたようだ。

「ありが・・・ごめん。」

 目の前には頭を押さえたミー子が立っていた。

『痛かったんだけど。蹴られたんだけど。』

「まじでごめん。」

『いたずらしたのはこっちだけど蹴ることないじゃんさ。』

「いやまじこの通り。」

『土下座。』

「いやここ海・・・。」

『土下座。』

「・・・はい。」

 なかなか底の方まで土下座で進めなくて大変だった。


「てか、ミー子この深さ怖くないの?」

 俺が胸のところまで浸かっているから、ミー子はほぼ首のあたりまで浸かっている。

 そう考えると俺とミー子って結構身長差があるな。

「・・・(ふるふる)。」

「水は全然怖くないんだな。」

『人は怖いけどね。』

「今そういう話は無し!いいね?」

「・・・(こくり)。」

 冗談でも俺のテンションが下がる。

「あ、そうだ。」

『どうしたの?』

 思い出したことがあった。

 旅行前に行った約束。

 ちょっと話したいことがあったんだ。

「今日の夜、ちょっとホテル抜け出しちゃおうぜ。」

「・・・。」

 ミー子が固まった。

「ど、どうした?」

『突然でびっくりだよ。私にも心の準備ってものが。』

 ・・・やっぱりばれているみたいだ。

 でも、ちゃんと聞き届けてくれるみたい。

 まあ、いう前に断られたりしたら再起不能になりそうだし・・・。

『じゃあ、夜10時で。』

「ん、分かった。」

『楽しみにしてるからね。』

「・・・おう。」

『でもとりあえず!』

「お、おう?」

『海で遊ぼうか。ちょっと浮きボート借りてくる。』

「分かった。」

 ミー子が浅いところまで泳いでいく。

 早いなー泳ぐの。

「・・・なんて言おうかな。」

 あとで決めよう。

 でもどうせ、決めてもうまく言えないに違いない。

 その場に合わせて言っちゃうほうがいいな。

 ミー子が浮きボートをビート板のように使って泳いできた。

「ミー子、そんなに泳げたんだな。」

『実は得意。でも私はこれに乗る!』

 器用にジャンプして水から出る。

 そして浮きボートにごろんと寝た。

『なっち、動かして。手動ボート。』

「まじかよ。」

「・・・(こくり)。」

 ボートを押すと、すーっと進んでいく。

『リゾート気分。』

「まあ沖縄だからな。」

『さすがにこの深さだとここまで来てる人少ないね。』

「ああ俺らくらいだな。」

 遠くに祈木と京介が見える。

 浜辺には結構男女のカップルがいる。

 この学年はこんなにカップルがいたのか。

 それはそれは楽しいんだろう。

 まあこっちも楽しいけど。

『海の中さ、潜ってて楽しかったよ。』

 上を向いてのペットしていたミー子がこちらを向いて話しかけてきた。

 潜るの、楽しいのか。

「俺はほぼ泳げないからなあ・・・。」

『なんかね、すーっと、どこまでも潜っていけるような感じがするんだよね。』

「ほうほう。」

『そのまま、息をせずにどこまでも沈んでいけるような気がしてさ。』

「・・・死にたいのかミー子。」

『そんなわけないじゃん。でも、死んだらどうなるんだろうね。』

「・・・そんなのわからねえよ。」

『そりゃそうだよね。ごめんこんな話して。』

 なんだかミー子がさびしそうな顔をした。

 せっかく海に来たのだから、あまりこういう話はしたくなかったんだけどな。

 でも、ちょっと心配かな。

「なんかあったのか?」

『いや最近さ、夢に出てきたり、いきなり思い出しちゃったりしちゃうんだよね。なんでだろ?』

「・・・なんか嫌な事とかあったら、いつでも聞くからな。」

『ありがとう。でも特に嫌なことはないよ。』

「それならいいけどさ。ミー子が死ぬとか、俺絶対嫌だからな。」

「・・・(にこっ)。」

 ミー子が笑う。

 絶対に、無理だけはするなよな。


「結構深いところまで行ってたなあ夏央たち。」

「あそこらへんも楽しかったぜ?」

『二人占めの空間だったよ鈴波くん。』

「二人占めの空間だったってよ。」

「いや、俺は夏央に教えてもらってるから翻訳されなくても手話分かるから。にしても二人きりねー。だから美衣ちゃんの機嫌がいいのか。夏央のことホント好きだなー。」

 そういうと、ミー子がいきなり肩を組んできた。

 ああ、この先が容易に想像できる。

『家族。』

「ホントいつまで引っ張るつもりなんだこれ・・・。」

『無論、いつまでも?』

「ああそのうち飽きが来ることを祈ってるよ・・・。」

「陽花がもう着替えに行っちゃったけど、美衣ちゃんはいかなくていいのか?」

『じゃあ着替えてくる。2人とも待っててね。』

「おう。」

 そのあと、海で泳いで予想以上に疲れたことに気付き、ちょっと早いがホテルに戻った。

「いやー、結構体力削られたなー。俺たちもおじいちゃんへの階段昇ってるな?夏央?」

「ああ多分高校生過ぎたらジジイなんだぜきっと・・・。」

 2人してベッドに大の字になる。

 なんか気持ちいい・・・。

「そういえば、今夜が男の見せ場ですな夏央さんよ。」

「・・・そうだなあ。」

「ってか、どう告白するのよ。」

「夜にホテルを抜け出す。まあ消灯前に帰ってくれば大丈夫だろ。」

「ほうほう、散歩しながらってやつ?」

「まあそんな感じ。」

 まだ全然決まってはいないけど。

「まあ今までずっと一緒だからな、夏央と美衣ちゃんは。なるようになるだろ。」

「そうだといいけどな。」

「ずっと一緒にいたから男として見れないとか言われたら・・・。」

「その時はまあ・・・んまあ、そういうのにはならずにずっと一緒にいてやるさ。治るまでな。」

「頑張れよ、夏央。」

「ああ。」

 ミー子に告白する。

 いざ考えるとやっぱりなにも浮かんでこない。

 俺はいつからあいつのことが好きだったんだろう。

 ・・・俺がミー子を守るって言ったのは、本当に自分の罪悪感だけだったのだろうか。

 ずっと一緒にいたから、意識したことはなかった。

 でも、ずっと一緒にいるのも、好きじゃなきゃ無理な話。

 守るって言ったのも、ミー子が好きだから守りたかったんだ、きっと。

 自分が、大好きな女の子の心の拠り所になれたら、と思ったんだ。

 あの時、ミー子は一度にたくさんのものを失い過ぎた。

 それで心が壊れたミー子を、どうしても守ってあげたかった。

 一緒にいてあげたかった。

 そうだ、あのころから、好きだったんだ。


 夕飯を食べた。

 味は全然覚えていない。

 風呂に入った。

 景色も全然覚えていない。

 なんだろう、このドキドキする感じ。

 あと、微妙にお腹が痛い感じ。

 こんなんで俺大丈夫か。

 時間は21時。

 そろそろ、行こうかな。

「・・・んじゃ、俺、行ってくるよ。」

「おお行ってこい行ってこい。いい結果を期待してるぜ。」

「ああ、ありがとう。」

 部屋を出て、ホテルのエントランスまで下りる。

 ラインを起動して、ミー子を呼ぶ。

 メッセージを送ると、既読が一瞬でついた。

『今から行くね』

 すぐに返信が来た。

 胸のドキドキは収まらない。

 これが告白前の心境か・・・。

「・・・(ぽんぽん)。」

 肩を叩かれた。

「あ、ミー・・・。」

 振り返ってみて固まった。

 ミー子の服装は、旅行前に、京介と2人で出かけた日、冬姉と春姉がミー子と一緒に買ってきた服。

 ミー子はこの服を持ってきていないと言っていたのに・・・。

『似合う?』

 ミー子が黒いフレアスカートの裾をちょっとつまんだ。

「・・・前に言ったろ?すげー似合ってるよ。」

『よかった。』

 ミー子が微笑む。

「タイツは履かなくていいのか。」

『今は夜だからね。』

 2人でホテルの外へ出る。

「あれ、お前ら外出か。」

 ホテルの外には、茎野先生が立っていた。

「ええ、まあ、この辺歩きたいなって。」

『お散歩です。』

「ほー、そうか。涼しくて気持ちいいぞー。あ、ちゃんと消灯前には戻ってこいよな。」

「分かってます。」

「・・・(こくり)。」

 特に止められることもなく、外に出られた。

『なんか、雰囲気あるね。』

「・・・そうだな。」

 二人で歩くのにも、なぜだかドキドキする。

 今までこんなこと、一度もなかったのに。

「か、風が気持ちいいな。」

「・・・(こくり)。」

 しばらく歩いて、砂浜まで来た。

 夜の海は、黒く、どこまでも吸い込まれそうな感じ。

 ちょうどいいところに流木があったので、それに2人で座る。

『それで、なっちの話したいことって?』

 ミー子の方から聞かれてしまった。

「・・・あ」

 ・・・あれ?

 さっきまで何を言うか考えていたのに。

 いざ、いうとなると何も出てこない。

 言おうとしていたこともさっぱり頭から消えてしまった。

 どうする、どうする。

「・・・?」

 何も言わないことを不審がったのか、ミー子がこちらを覗いてきた。

 そして、背中に手を当て、ゆっくりと、さすってくれた。

『焦らなくても大丈夫だよ。私、待ってるよ。』

 ミー子が笑ってそういってくれる。

 ・・・ああ、やっぱり俺はダメだなあ。

 女の子に気を遣わせてしまうなんて。

「ふぅー・・・。」

 大きく息を吐き出す。

 よし、もう覚悟は決めた。

 今から、俺のこの気持ちを、伝えるんだ。

「・・・ミー子。」

『はい。』

 ミー子がこちらに向き直り、まっすぐ俺を見つめる。

「・・・俺さ、今までずっと、意識しないようにしてた。」

「・・・?」

「変な理由つけて、守るためだから、そんな資格無いから、なんて言ってずっと逃げてきた。」

「・・・。」

「でもさ、その守りたいと思ったのだって、ずっと一緒にいたのだって全部・・・、ミー子が大好きだからだ。」

「・・・!」

「だから、その・・・、俺はこれからもずっと、ミー子が大好きだよ。これからは、幼なじみってだけじゃなくて、俺の彼女としても、一緒にいてください。」

 言いたいことをすべて吐き出す。

 これで俺は言い切った。

 この後、どうなってもあとは流れに任せるだけだ。

 ミー子がどう受け止めてくれるかだ。

 ミー子はちらっとこっちを見て、顔を赤らめ、俺から目を逸らした。

 そしてもう一度向きなおる。

『えっと、私の答えはね。』

「ああ。」

『目、閉じてもらえるかな。』

「・・・わかった。」

 言われたとおり、目を閉じる。

 このまま、何かが起きるのか、それとも、逃げられてしまうのか。

 ミー子の答えをじっと待つことにする。

「・・・?」

 しかし、いくら待っても何も起きない。

 ただ、足音もしないし、目を閉じててもミー子が前にいるのは分かる。

 というか、だんだん近づいてきている。

 ミー子の息遣いが聞こえるくらいに。

「・・・えーと。」

 俺は耐えかねて、目を開けてしまった。

 眼前一杯に、ミー子の顔があった。

 そして、ミー子がそのまま近づいてきて・・・。

 ―――そのまま、2人の唇が触れ合った。

「・・・!」

 ミー子が俺の目が開いていることに気付いたらしい。

 それでも、顔は離さない。

 なんだろう、この幸せな気分は。

 お互い自然と顔を離す。

 ミー子が照れ笑いのような表情を浮かべ、ケータイを見せる。

『これが私の答えだよ。』

「ミー子・・・!」

『でも!』

「ん!?」

 思わず抱きしめそうになったところでミー子に遮られた。

 なんだろう。

『きちんとした答えは、ちゃんと私の言葉で言いたいから、もしまた話せるようになったら、その時はちゃんと言わせてね。』

「ああ、分かったよ・・・!」

 ミー子を抱きしめる。

 そっとではなく、ちょっと強めに。

 もう絶対に、離さないから。

『あつい。』

「雰囲気ぶち壊しだなあオイ。」

『夜とはいえ夏だよ。』

「いやまあ確かにそうだけど、いいじゃないこういう時くらい。」

『んーじゃあ、うん。』

 今度はミー子から俺に抱きついてきた。

 それをやさしく受け止める。

 なんだかあったかいなあ・・・。

「って、今何時だミー子。」

『はい。』

 ケータイに表示されている時刻は、10時18分。

 消灯は10時半。

 まずい。

「も、戻るぞミー子!」

「・・・(こくり)。」

 ミー子の手を引き、走ろうとする。

 と、ミー子に少し引っ張られた。

「どした?」

『言い忘れてたことがあった。』

「お?おう。」

『今まで一緒にいてくれてありがとう。これからも、ずっとよろしくね。』

「ああ、ずっと、一緒だからな。」

 帰り道、追い風がとても気持ち良かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ