楽しい旅行の時間です 2
「いやー、ここの露天風呂もよかったな。」
『私貸切だった。』
「マジか。」
「・・・(こくり)。」
決して広くはない露天風呂だったが、あれで貸切となると・・・。
「・・・(ぎゅ)。」
ミー子が浴衣で抱きついてきた。
『眺めはよかったけど、ちょっとさびしかったかなーって。』
「なんか今日やけに積極的だな。」
そういうと、ミー子が顔を上げ、微笑んだ。
『今は二人きり。こういう時もあるよ。』
「そ、そうか・・・。」
いつもとだいぶ違うからこっちとしてはちょっと戸惑ってるんだが。
まあ、こう、素直に甘えてこられて悪い気はしないんだけども。
『眠くなってきちゃった。』
「確かに飛行機とか歩き回ったりとかでちょっと疲れたかもな。」
『あったかいし、ちょっと寝ようかな。』
早速ミー子が布団の用意をし始めた。
「掛布団は・・・暑いよな。」
『いらぬ。』
敷布団だけ敷いて、その上に寝転んだ。
と同時に、俺も引き倒された。
「なんですか。」
『寝るよ。』
「俺も?」
「・・・(こくり)。」
勝手に俺の腕に頭を置いてきやがった。
これが腕枕というやつか、重い。
『結構腕は男の子してるのね。』
「まあ一応?」
周りと比べると細いとは思うが。
「すー・・・。すー・・・。」
「だから寝んのはええよ。」
お前はのび太か。
「ってか、ヘアピン外してねえじゃん。」
頭の左側についてる3つのヘアピンと、耳の後ろの髪をまとめている1個のヘアピン。
外そうにも片手って結構不便だな・・・。
上から緑、白、赤のヘアピンだが、どう見てもイタリアにしか見えない。
後のオレンジ色のヘアピンは取りづらいのであきらめた。
「・・・(どんどん)。」
「・・・んー、・・・ん?」
なぜ俺は下方向から攻撃を受けているんだ。
横向いて寝てたはずだし、下方向から攻撃なんてありえないはずだ。
となると・・・。
目を開けると、ものすごく近いところにミー子の顔があった。
はい、どういう状況か理解できました。
俺がミー子に覆いかぶさっていた。
「わ、す、すまん。」
『さすがに襲われたかと思った。』
「しねーよ。」
『死ねよ?』
「言ってねーよ!」
子どもかっ!
『まあ別にここ離れだし・・・、私声でないし、気づかれないね?』
ミー子が何かを期待するような目でこちらを見てくる。
「そういう目的で来たんじゃねえ。」
『そだね。』
布団を片付け、横にしていたテーブルを戻す。
『結構寝てたね。』
「・・・そのようで。」
時計を見ると、もう6時半になっていた。
「これこそ時間の無駄遣い・・・ッ!」
『明日いろんなとこ回ろうね。』
「そうだな・・・。」
なんだか悲しくなった。
そろそろ夕飯の時間だ。
「うおお、牛しゃぶ。」
『食べよう。』
ミー子が待ちきれない様子で肉を見ている。
いろいろなコースはあったが、ステーキだとなんだかたくさん食える気がしなかったので牛しゃぶにしてもらった。
ミー子もそれでいいと言ってくれたしまあいいだろう。
とはいえ、食事中はとても静かになる。
ミー子は食事中にケータイをいじるようなやつじゃないし、箸をおかないので手話も使わない。
つまり、
「いただきます。」
「・・・。」
「タレ、どっちにする?」
「・・・(ぽんず)。」
ミー子がポン酢を指さした。
早速肉をだし汁にくぐらせ、一口。
「うーん、普段しゃぶしゃぶなんて食わないし、うまいな!」
「・・・(こくり)。」
こうなる。
「・・・(もぐもぐ)。」
ただ箸を動かす音と、自分が食べ物を噛む音だけが聞こえる。
というか、食事中はミー子が食べることに集中するので、あまりこっちも見てくれない。
二人とも黙々と食べていた。
「たまに食うしゃぶしゃぶはうまいな。」
『余は満足じゃ。』
ミー子が腹をさすり、ふぅと息を吐き出す。
息が通る音だけで、声らしきものは聞こえない。
・・・仮にミー子が喋れるようになったとして、どんな声をしているんだろう?
高いだろうか、低いだろうか。
長らく声を出していないし、かすれている可能性だってある。
まあ、どんな声であれ、出てくれたら俺はいいんだけど。
「・・・?」
俺の視線に気づいたのか、ミー子が首をかしげる。
そして、
「・・・(!)。」
何かいいこと思いついたかのように、ミー子が近づいてきた。
そして、ちょこん、と隣に座った。
「・・・どした?」
『私が隣にいなくて、さびしかったんでしょ?』
「なぜそうなる。」
『少し悲しそうな顔してた?』
「え、俺そんな顔してた?」
『分からないけど、なんとなく。』
そういって、ミー子が頭を俺の肩に預けてくる。
しかしすぐに頭を離し、ケータイをいじる。
『あつい。』
「いやあんたがくっついてきたんでしょーが。」
俺何も悪くないよね?
『もう一回、露天風呂に行ってくるよ。』
「あ、ああ。分かった。」
ミー子が部屋を出て行った。
一人になってしまったので、布団を敷いて横になる。
そして、目を閉じてちょっと考えてみる。
ミー子は、楽しんでくれてるだろうか。
那空さんにあの子を楽しませてやってくれと言われたが、実際のところどうなのかはわからない。
いつもより笑顔は多い気がするけども。
それに、なんだか今日はいつも以上にミー子がくっついてきた。
人懐っこい子犬を見ている気分だった。
「・・・ま、あいつは犬ってよりは猫だよな。」
割と手のひら返しとかが多かったりするミー子。
自分からくっついてくるくせして、撫でたりすると赤くなって逃げたり。
手握ってくるくせに汗でベタベタするとか言い出したり。
まあ、かわいくはあるんだが。
Side 美衣
おやおや、お風呂から上がってきたら、なっちが寝ていますね。
旅館に着いてすぐ寝たというのに、やっぱり疲れてたのね。
・・・今なら何しても平気だよね。
とりあえずいつものお返しをしないと。
「・・・。」
なっちって結構髪の毛硬いよね。
撫で心地はあまりよくなかった。
「・・・ん。」
触れたのが刺激になったのか、なっちが寝返りを打った。
・・・浴衣がはだけ、なっちの胸が見える。
ぽ、ポロリもあるよ!!(男)
まあ、陽花とか冬華さんあたりはだけたら喜ばれそうなんだけど。
だからってこんなのないよ!
誰も得しないのでとりあえず隠した。
さて、どうしようか。
はっきりいってなっちが起きてくれてないとやることないんだよなあ。
家ならパラロスを起動するところなんだけど、ここは旅行先だ。
二人で来てるからね。
じゃあ、隣で横になろうか。
「くー・・・、かー・・・。」
近い、近いぞこれは。
ちょっとすっぽりおさまってみようとしたら抱きしめられてしまった。
すっぽりどころじゃないよこれ。
ぎゅっとされちゃったよ。
え、っと、ど、ど、どうしよう。
てか、こうしてみるとなっちでかいな。
ああこれ抜け出せねえ。
もういいや寝よう。
Side 夏央
「・・・。」
どうしてこうなった。
ちょっと待って待って。
なんでミー子が俺の胸の中で寝てるの。
というか何で俺ミー子を抱いてるの。
なんでなんで。
というか浴衣はだけてますよ。
ものすごくささやかなふくらみがちらっと見える。
「・・・えーと。」
とりあえず、ずっと抱きしめてるわけにもいかないので、ミー子を離して、浴衣を直す。
「・・・ふぁ。」
あくびを一つして、ミー子が起きた。
「・・・。」
そして、ミー子が自分の置かれてる状態を見て、
「・・・!?」
さっと、肩を抱いた。
「ご、誤解!違う!俺は何もしてない!」
「・・・(ふるふる)!」
「違うって!」
『まだ早いと思う!』
「・・・だからちがあぁぁぁぁぁう!!」
静かな夜の宿に、俺の絶叫がこだました。
『もとはといえばなっちのせいなので。』
「俺が何をしたって言うんだ。」
『急に抱きすくめられました。』
「・・・え?」
抱きすくめた?
『寝ぼけてたね完全に。』
・・・えーっ、と。
『近づいたら急に抱きつかれて、びっくり。』
俺が寝てる間に近づいてきたミー子を、俺が寝ぼけて抱きしめたと?
・・・何してんの俺。
「というか、さっき寝ちゃったせいで眠くないんだけど。」
『これから寝れる気がしないね。』
「どうしようか。」
『夜戦?』
「しねーよ。」
なんつーこと言いやがるんだこいつは。
『旅館の敷地内を散策しますか。』
「お、散歩か?」
「・・・(こくり)。」
静かな旅館の敷地内は涼しくて、歩いているだけでも楽しかった。
「さあ今日から湯布院観光だ。」
『楽しみ。』
「どこ行こうか。」
『神秘の泉。』
「何言ってんのミー子。」
神秘の泉って・・・、ド○クエ?
あのHPとMPが全回復するところ?
『いやいや、実際にあるらしい。』
「へえ?」
それは聞いたことないな。
母さんのお勧めのところには神秘の泉なんてないし。
『男池湧水群っていうらしい。』
あ、ごめん書いてあったわ。
どうやら水がすごくきれいで、喫茶店などに持って帰る人もいるそうだ。
まろやかできれいな水、と書いてある。
日本名水百選にも選ばれてるそうだ。
幸いここからは遠くないみたいだ。
『あと寄りたいところがあるのよ。』
「ほう。」
『お土産買うよ。』
「ああ、そういえばお土産買わないとなあ。」
そうだな、家族の分、冬姉の分、あと、バイト先の分。
祈木の分はミー子に任せるとして、京介の分は俺が買おう。
紗由さんは・・・、あの写真があるからいいか。
「じゃあ、行こうか。」
「・・・(こくり)。」
男池湧水群にいざ参らん!
・・・カッコよく言いたかっただけです、はい。
「おー。」
『おおおー。』
思わず感嘆の声が漏れる。
森の中にひっそりと、池が佇んでいる。
青く澄んだ水が、湧き出ている。
確かに、これは神秘の泉と言われてもおかしくない。
それくらいきれいだった。
『すごいね。』
「ああ、こりゃすげえ。」
二人とも表現力が乏しくて、ただただすげえとしか言いようがなかった。
水の湧き出る森を歩き、森林浴を楽しんでいると、目の前に滝が現れた。
『あれだね、なっち。マイナスイオン。』
「ああ、確かにそれ聞くよな。」
実際マイナスイオンの何たるかなんて知らないのだけど。
「・・・(ちゃぷ)。」
ミー子が水に手を入れ、
「・・・(ぶるっ)。」
震えた。
何やってるんですか。
『けっこう冷たいね。気持ちいい。』
「震えてたよな?」
『予想以上に冷たくてちょっとびっくりした。』
手を入れて確かめてみると、確かに冷たい。
水をすくって、一口。
冷たい水が、体に染みわたった。
「んー!あぁ・・・。」
『ようおっさん。』
「うっせ。」
「・・・(ごくり)。」
俺に倣って、ミー子も一口飲んだ。
「・・・ぷはー。」
「な?おっさんになっても仕方ないだろ?」
「・・・(こくり)。」
ここに来るまで、俺たちは水を飲んでいなかった。
夏の暑い中、道中水を飲まずにたどり着いた、神秘の泉。
その水を一口、うまくないわけがない。
「大きいペットボトルで持って帰ろう。バイト先に。」
『おお、コーヒー入れるのね。』
「もちろん。」
大きめのペットボトルを買って、水をくむ。
少し重いが、こんなのどうってことない。
「店長が喜びそうだな。」
『お店では出さないの?』
「まあ、量に限りがあるからな。仕方ない。」
『店長を喜ばせたいの?』
「ん?いや別にそういうことじゃ。」
『浮気?』
「なんでそうなる。」
話がぶっ飛んだぞ。
浮気ってそもそも付き合ってねーし。
『私を喜ばせてください。』
「じゃあ今回の旅行は楽しくないと。」
『嘘だよ。』
そういって、ミー子が俺に腕をからませてきた。
『私は、なっちと一緒にいれればうれしいからね。』
「そっか。」
『なんか冷たくない?』
「そんなことはないぞ。」
ミー子が疑惑の目でこちらを見てくる。
疑われちゃあ仕方ないな。
ミー子の頭を、撫でてやった。
「俺も、一緒に旅行できてうれしいよ。楽しいしな。」
「・・・(ぷいっ)。」
ミー子が顔を赤くして、顔をそらした。
そうそう、こういう反応がかわいいんだよな。
『いつまで頭撫でてるし。』
ミー子が俺をにらみつけてきた。
「ちょうどいい位置になるんだから仕方ないな。」
『そう。』
「なんか冷たくない?」
「・・・(ふるふる)。」
ミー子が首を振り、俺の手を握って、
「・・・(にこっ)。」
笑った。
いつものほほえみじゃなくて、笑顔。
「そうか、じゃあ、次のところ行くか。」
「・・・(こくり)。」
また、次の目的地を目指して歩き始めた。
亀の井別荘という旅館の敷地内に、ミー子の目的の場所があった。
『雑貨 鍵屋』という雑貨屋だ。
母さんのメモにも書いてあったし、いいところなんだろう。
というか、行きたかったって言うことはミー子も調べてきてたのかな?
「ほー、雑貨っつーだけあって色々あるな。」
『大体食べ物だね。』
「調味料とかもいっぱいあるな。いくつか買って行こう。」
『それで何か作ったら食べさせてね。』
「ああ、いいぜ。」
みー子が店内をうろうろして回る。
うーん、柚子胡椒、ハーブ塩、あと何買おう。
・・・南蛮糖?へえ、サトウキビの搾汁から作ったやつか。
何に使えるかな。
よしこの3つかな。
ジャムもいろいろありますね。
ちょっと値は張るけど、野苺のジャムとかうまそうだ。
あとはイチジクもよさそうだ。お、梅のジャムもあるのか。
やべえ、結構買うことになるなコレ。
「あいつそば買ってやがる・・・。」
まあ今は夏だし、冷たいそばを食うのもいいか。
『うっしゃーお菓子も買うぜー。』
へえ、水菓子もあるのか。
『梅のお菓子もある。』
「よっしゃ買いだな。」
うん、1万超えそう。
まあいいよな、たまには。
「・・・(くいくい)。」
財布の中を確認していると、ミー子に袖を引っ張られた。
「どうした?」
『あれ。』
「ん?」
ミー子が指差した先には、ここ限定のコップがあった。
『あれさ、お揃いの、買わない?』
お揃いのか、うん、二人で来てることだし、自分たちのお土産にはちょうどいいかもしれない。
「おう、いいぜ。何色にする?」
『赤で。』
「赤か。じゃあ俺は青にしよう。」
『思い出残るね。』
「たしかにな。」
なかなか値は張ったけど。
ちょっぴり軽くなった財布を見て、まあ旅行ってこんなもんだよなと思った。
「さーじゃあ次はどこに・・・。」
「あれ・・・?敷島?」
「・・・え?」
なんだか懐かしい名前で呼ばれた気がした。
振り返るとそこには・・・、なんというか、全身でイケメンを表しているかのようなイケメンがいた。
顔だちもイケメン、服装もなんかファッションセンスよさそうでイケメン、周りにまとっているオーラがイケメン。
なんだこいつ。
そして何で俺の旧姓を知ってやがる。
ということは・・・、小学校のころのやつか?
しかし誰だかわからない。
ミー子も首をかしげている。
というわけでとりあえず、
「ごめんなさい、どちら様ですか?」
「えええ!?覚えてないの!?」
一気にイケメンの雰囲気が崩れた。
「ひどい!二人ともひどい!そっちは美衣ちゃんだよね!?」
イケメンが両手を振り上げて悲しさを表現する。
ミー子のことも知っているとすれば、小学校の時に俺と仲が良かったやつだ。
でも俺の友達にこんなイケメンなやつはいなかったはず・・・。
しかしなんだろう、俺はこの両手を振り上げて悲しむこいつを知っているような気がする。
確かあんな子供みてえな悲しみ方するのは・・・。
「・・・紫垂?」
「おおお!!思い出した!?」
「・・・マジか。だいぶ変わったな。」
「え、そう!?俺そんなに変わった!?」
ああ、このうるせー所は全然変わってなかった。
『ああ、紫垂くんか。』
ミー子も思い出したみたいだ。
こいつの名は桜柳紫垂。
確かどっかの企業の社長の息子だとかなんとか・・・。
まあそんなことはどうでもいい。
「いやー、久しぶりだね!敷島!」
・・・そういえば、母さんが再婚したのは高校上がる前だったから、中学で離れたこいつとかは俺の今の名字を知らないのか。
「えー、すまん、紫垂。俺の名字は今敷島じゃないんだ。」
「ええ・・・?どうしたの?美衣ちゃんの家に婿養子入りして名字鏡崎になったの?」
「どうしてそうなった!?」
考え方がぶっ飛んでやがる!
というか何で婿養子!?
「いやちげえよ!?母さんが再婚しただけだからね!?」
「ああなんだ。そうだったのかー。」
紫垂がへらへらしていやがる。
「今の名字は絢駒だ、絢駒。」
「変な名字だね。」
「お前には言われたくねえよっ!?」
桜柳なんてこいつ以外知らねえよ!!
『久しぶりだよね。』
「え、ちょっと待って美衣ちゃんどうしたの。」
まあさすがにこれは驚くよな。
久しぶりに会った子にいきなりケータイを突き出されたら。
『とある事情で、声が出なくなりまして。』
「ふむふむ・・・ってえええ!?大丈夫なの美衣ちゃん!」
『特に体が悪いとかはないよ。』
「そっかそっか、早く治るといいね。」
『はやくなっちとおしゃべりがしたいよ。』
「その呼び方も懐かしいね!」
紫垂が笑う。
と、そこへ、
「しーだれー!」
また誰か来たみたいだ。
走ってきたのは、黒髪ツインテの女子。
あ、この子しってる。
ミー子の友達だった子だ。
「ごめんね、遅くなって・・・、あれ?もしや、敷島くん!?」
「ああ久しぶり、今は敷島じゃなくて絢駒だ。時羽。」
「・・・!」
ミー子があわてて俺の後ろに隠れた。
「いやー、久しぶりだね!」
「確かに久しぶりだな。」
こいつは時羽奏。小学校の時のミー子の友達、のはずなんだが・・・。
「・・・(ふるふる)!」
ミー子は今俺の後で震えている。
「あ・・・。」
時羽が、後ろのミー子の気づいたみたいだ。
「・・・(びくっ)!」
ミー子が大きく体を震わせた。
「え、えっと、ミーちゃん。」
『話すことなんて何もないよ。』
ミー子がケータイだけ出して時羽を突き放した。
もしかして、こいつもミー子を・・・?
でも仲良かったはずじゃ・・・?
唯一の女友だちとか言ってたような・・・。
「聞い、て、ほしいんだけど・・・。」
『嫌だと言ったら?』
「き、聞いて!」
「・・・。」
ミー子が俺の後ろから出てきた。
『謝罪ならいらないけど?許すつもりないし。』
「えっ・・・。」
『今さら何よ。自分の前で後悔を言われたって私になにしろと?』
「あ、あの・・・。」
『一人しかいなかった女友達に裏切られて、いまさら信じると思う?奏。』
「し、信じない・・・。」
『だよね。で、そこを踏まえて私に何を言うことがあるの?』
ミー子が明らかに怒っている。
ケータイをタップする速度も以上に早い。
・・・せっかくの旅行でこれは・・・。
「な、なあミー子。」
『ん、奏も言うことないみたいだし、行こうか。』
「ま、待って!私脅されたの!ミーちゃんのこと無視しないと、私のこと無視するって!」
「・・・。」
そこで、ミー子の動きが止まった。




