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Please speak!  作者: 長野原春
20/113

休み中はちょっと遠出したくなる

『でー、えー、夏休みというものは、学生らしく、適度に遊び、しっかりと勉学に励む、これこそが、真の鳶ヶ谷高校生というものであり―――』

 真のってなんだよ真のって。

 まるで俺たちが高校生ではないと言ってるかのようだ。

 後ろを見ると、祈木とミー子が寝ているのが分かった。

 まあ、そりゃあ眠くなるよな・・・。

 俺は一番前だから寝れませんが。

 だから嫌なんだよ出席番号一番。

『以上をもちまして、平成27年度、鳶ヶ谷高校終業式を終了いたします。』

 あ、終わった。

 さー、あとは通知表もらって帰るだけだ。

 夏休み、旅行に行く以外特に何も決まってないけど、まあ、宿題は先に終わらせておくか。


「んじゃ、今から通知表渡すぞー。絢駒。」

「はーい。」

 受け取って席に戻り、通知表を開く。

 ほうほう、なかなか。

 元から高かった国語と日本史は9だ。10じゃないのが惜しいな。

 数学はまあ、4だ。

 授業態度はよくないしテストの成績も補習ギリギリだったしな。

 英語と化学は7。一年のころから比べるとかなり上がった。

 2つとも4だったし。

「んっふっふ~♪アヤとかがみんのおかげで成績が上がってる!」

「それはよかったな。」

『私も、日本史と英語が上がってた!』

「おお、おめでとう。」

 ・・・あれ、国語はどうしたんだ。

「なあミー子、国語の成績は?」

「・・・(ぱー)。」

 ・・・あ、5か。

『授業ほとんど寝てたから。』

 たしかに、国語の先生は授業態度ちょっと厳しかった気がする。

「なあなあ、見ろよ夏央。」

 京介がなんだか自慢げに近寄ってくる。

「お前の成績はもう大分わかってるんだけどな・・・。」

 京介の通知表を開くと、見慣れた光景が広がっていた。

 化学、日本史は9。そして、それ以外はすべて8。

 こうも8がそろっているってのはすごい。

 これなら進路も安定だろうなあ・・・。


「んじゃ、また夏休み明けにでも。」

「え?何言ってんの?」

 祈木がきょとんとした顔をした。

 なんだ、どっかで会うのか。

 あんまり外に出たくないんだけど。

「夏休み中、どっかでプールか海に行くよ!予定、開けといてね!」

「そうだぞ夏央!開けとけよな!」

 あ、京介も行くのか。

 てっきりまた俺とミー子と祈木の3人で行くのかと。

「んじゃ、そういうことだからよろしくね!」

「ああ、分かったよ。」

「じゃ、またね、アヤ、かがみん!」

「おう、じゃーな。」

「・・・(ひらひら)。」

 それぞれ反対方向に歩き出した。

 次に会うのはいつになるだろうな。

 ・・・あれ、そういえば、京介の家って祈木の家の方面だっけ。




「ただいまー。」

 ・・・といっても誰もいない。

 まあそりゃそうだ。

 春姉の夏休みはまだ先だし、母さんは今日も仕事だし。

「準備してバイトに行くか・・・。」

 また暑い中外に出るのかと思うと、ちょっとテンションが下がった。


「こんにちはー。」

 Grace dropに入ると、店長がお客さんと話していた。

 普段ホールで話す店長はあまり見ないんだが。

 そのまま厨房に入ろうとしたら、お客さんから声がかかった。

「おーい、夏央。」

 ・・・ん、この声、なんだか聞き覚えが。

 振り返って確認すると、席に座っていたのは・・・冬姉だった。

「え、冬姉、仕事は?」

「なんと今日はお休みなんだよ。んで、懐かしのここに足を運んだってわけ。」

「本当に懐かしいねー!冬ちゃん、何年振り?」

「そうねー、大学行ってから来てないから、6年振り?」

「んもー、たまには顔だしてくれたっていいのに。」

「すいませんって。」

 店長が苦笑した。

「じゃあ、俺着替えてきますね。」

「あ、うん。よろしくねー。」

 

「え、じゃあアレ、結構売れてるんですか。」

「うん、そうだねー。なかなかいい売れ行きですな。うんうん。」

「おおー、夏央、やるじゃん。」

 アレ、とは以前俺が夏のメニューとして考案した、ライチカンパーニュだ。

 もちもちしていてコーヒーにも合うらしく、売れてる、らしい。

 これはうれしいな。

「まあ、絢駒君はいつも通りモンブランをよろしくね。もう結構なくなってるから。」

 いつになってもモンブランは本当に安定して売れていくな。

 みんなが好きなのか、それとも俺の腕がいいのか。

 ・・・うん、まあ、みんなモンブラン好きなんだな、きっと。

 モンブランを作り終えるころには、冬姉はもう帰っていた。

 そういえば、最近冬姉がうちにこないな。

 前なら1か月に一回は来てたんだけど。

「そう言えば絢駒君、なんか前より手際よくなったね。」

「え?そうですか?」

 突然の褒めに、ちょっとびっくりした。

 そんなに早くなった気はしないけど・・・。

「うん、なんか、作り終えるのが少し早くなった気がするよ。まあ、絢駒君はもともと早いけどね。」

「あ、ありがとうございます。」

 よし、それならもっと早くなるように頑張るぞ。

 やることは何も変わらないけどね。


「うんうん、夏限定メニュー、いい売れ行きだね~。」

「そんなにいいんですか?」

「うん!前のキウイタルトにはちょっと負けるけど、それでも十分黒字だよ!」

 黒字か。

 つまり、しっかり売れているということだ。

「いやー、限定メニューを出すたびに黒字だね。絢駒君、来月、ボーナス入れとくね。」

「え、いいんですか!?」

 ぼぼぼ、ボーナスだとぉ!?

 まじか!

 やった!うれしいいいいぃぃぃぃ!!

 そもそも旅行は日帰りの予定だし、結構金が入ることになるかな?

 毎月俺は給料が4万だから、来月がすごく楽しみだ。

 夏休みだからいつより働くしな!




「ただいま~。」

「あら夏央。お帰り。」

「あらー、夏央くん、お仕事お疲れ様。」

「あれ、那空なあさん、こんばんわ。」

 家に帰ると、なぜか那空さんがいた。

 ミー子と春姉はいない。

「春姉はまだ帰ってきてないの?」

「春女なら今ミーちゃんと一緒に遊んでるわよ。」

「え?」

 春姉とミー子が2人で遊んでるのか。

 あ、でもあの2人たまに出かけてたりすることもあったな。

 普段は3人でいるからよく分からなかったけど、あの二人結構仲良いんだよな。

「そういえば、二人で何してるの?」

「そりゃあんた、夏休みに旅行行くところ決めてるのよ。」

「毎年行ってるものねー。」

 テーブルには大量の旅行雑誌が並んでいた。

「あ、そういえば、あんたもミーちゃんと旅行に行くんでしょ?」

「ん、ああ、そうだね。まあ、俺たちは日帰りだけどね。」

 日帰り、といった瞬間に母さんの顔が変わった。

「ええ?日帰り?ダメよそんなの!旅行の楽しみが半減だわ!私もお金を出すから、どっか泊りでいいところ行ってきなさい。」

「え、ええ!?」

 と、泊まり!?

 い、いやいや、それは困っちゃう!

 というか、那空さんは大丈夫なのか!?

「あらあら、私はいいわよー?それ以前に、夏央くんはちょっと前まで美衣と一緒に寝てたでしょ?今さらだわ。」

 あ、あー・・・。

 たしかにそうだな。

「私からもお金を出してあげるわ。美衣を楽しませてあげて。」

「あ、はい!わかりました!」

 そうだ。

 この旅行は、ミー子が行きたいと言い出したんだ。

 だったら、俺にはミー子を楽しませてあげる義務がある。

 そうだよ。それが、俺のやることだ。


「んで、どこにするの?」

「ん~・・・。」

「んじゃあ、あんたとミーちゃんでよく話し合って決めな。」

 母さんに大量の旅行雑誌を押し付けられ、リビングを追い出された。

「ああ、決まったらあたしに言いなね。」

「あ、ああ。分かったよ。」

 きっと母さんのことだから、おすすめのところとか教えてくれるんだろう。

 それに関してはうちの母さんは心強いな。

 とりあえず、自分の部屋に行こう。

 多分ミー子は今春姉とゲームをやってるだろうし。

 ライン入れておけば後で来るだろうし。

『ちょっと夏の旅行のことで話があるから、あとで俺の部屋に来てくれ。』

 既読が瞬時に付いた。

 どういうことだ。

『b』

 そして返事も一瞬で帰ってきた。

 ああ、多分返事するのめんどくさかったんだな。

 もしくは器用にゲーム中に返したか。

 ちょっと押し付けられた雑誌でも見てみるか。

 ・・・よさそうなところが多すぎて、どこ行けばいいかわからねえな。

 ミー子に希望を聞こうか。

「ミー子が来るまで寝るか・・・。」

 バイトでまあそれなりに疲れたし。

 寝っころがると、眠気はすぐに襲ってきた。


「・・・(つんつん)。」

「・・・ん。」

 ああ、ミー子が来たのか。

 どれくらい寝てたんだろ。

 あんま頭が働かないことを考えると、結構寝ちゃってたかも。

「・・・ミー子、おは―――」

 その先の言葉が出てこなかった。

 そこにいたのは、ミー子ではなかった。

 目の前にあったのは、般若の面。

「どぅおうわああぁぁぁ!?」

 意識が一気に覚醒し、俺はベッドから飛び起きた。

 こんなん誰だってびっくりするわ!

 あー、心臓がバクバク言ってるよ。

 俺の事を見下ろしていた般若は笑いをこらえるかのように、肩を震わせていた。

 とりあえずむかついたので面を引っぺがす。

 出てきたのは、笑いをこらえて変な顔になったミー子だった。

「もうちょっと心臓に悪くない起こし方にしてくれ・・・。」

『wwwwwwwwwwwwww』

 バカにしてやがるこいつ。

『目、覚めた?』

「身の危険を感じて覚めたわ。」

 というかあれで動じない人はいるんだろうか。

 いるものならぜひ見てみたい。

『んで、旅行の話とは?』

「あ、ああ、それなんだが、せっかくの旅行だから泊まりでって話になってさ・・・。」

「・・・。」

 そういうと、ミー子はさっと肩を抱いた。

「そういう目的じゃねーよ!母さんと那空さんが足りない分の金を出すから泊まりで楽しんで来いって言ってさ。」

『むしろ私がなっちを襲わないか。』

「そっち方向の話から離れてください。」

 話が進まないでしょーが。

「で、どうせならどっかちょっと遠いところまで行こうかなー、なんて。」

『いいね。』

「どっか、行きたいところとかある?」

『夏だけど温泉街に行きたい。』

 温泉か・・・。

 あんまりそういうのは詳しくないから、どこがいいとかはわからないな。

「温泉街でお勧めなとこ、母さんに聞いてみようか。」

「・・・(こくり)。」

 早速訊きに行くために、俺たちはリビングに向かった。


「あら、早いじゃない。もう決まったの?」

「・・・(ふるふる)。」

「ええ?じゃあ、どうしたの?」

「母さんさ、温泉街でお勧めなところってある?」

「ああ、温泉に行きたいのね。それならいっぱいあるわよ。」

 やっぱ旅行系は頼りになるな母さん。

 旅行雑誌を作るために、出張の多い人だからなあ。

 家にいない日もままあって、時々さびしいと感じることもある。

 うちは父さんがほとんど家にいないからな。

 母さんも出張で、両親家にいないときは割とやりたい放題だけど、たまーに寂しくなる。

 最近ではそんなこともなくなったが。

「私のお勧めはあれね。九州の大分の、別府や湯布院よね!なんといっても温泉郷の多さが売りよね。露天風呂なんか大自然を一望しながら入れるのよ!それに、温泉郷ならではの蒸しグルメっていうのがあって、特にプリンなんかがおいしいわ。あと湯布院にはとくに有名な3つの旅館があって、湯布院御三家なんて呼ばれ方をしているのよ。」

 矢継ぎ早のお勧めに、頭がついて行かなくなった。

 と、とりあえず別府か湯布院がお勧めだということは分かった。

「どっちがいいかな?」

「うーん、本当はどっちも行ってほしいところだけど、観光地も多いし、2人で行くのならおすすめは湯布院ね。観光しながら、いくつか温泉巡りをするといいわ。おすすめのところはあたしがピックアップしておくから。」

「分かった、ありがとう。ミー子、ここでいいか?」

『秋穂さんのお勧め、すごく期待できる。』

 確かにそうだ。

 母さんがお勧めするってことはつまりプロがお勧めするということ。

 期待も高まるよな。

「そういえば、お金はどのくらいあるの?もちろん2人分で。」

「うーん、日帰りの予定だったからなあ。多く見積もっても2人で8万くらいかな。」

 日帰りで涼海か伊豆辺りまで行ければいいかなと思ってたし。

「んー、それじゃ全然ね。でも、旅館だけなら2泊3日までなら8万で足りるから、他はあたしたちで出してあげるわ。楽しんできなさい。」

「い、いいの?」

「当たり前でしょ?それに、今回は夏央もミーちゃんも、テストの成績だいぶ上がったからね。ご褒美も兼ねて、よね。」

 その時、俺は思った。

 ボーナスも入るし、足りない分は母さんたちが出してくれる。

 なんて運がいいんだ。

 悪いことの前触れじゃなきゃいいけどな・・・。


「で、あんたたちはいつ行くの?」

「んー、8月に行こうかと思ったんだけど・・・。」

『意外とお金に余裕があるので来週にでも。』

「あら、そうなの。じゃあ、1週間後の予約でいいのね?」

「ああ、それでいいかな。」

 8月はボーナス入るから金銭面でも問題なさそうだし。

「じゃああれね。せっかくの旅行なんだし、向かう途中も楽しまないとね。夏央、ミーちゃん、あんたたちは博多で降りなさい。」

 え?博多?

 大分空港じゃないのか・・・。

「博多から湯布院へ向かう電車があってね。それがとってもいい電車だから、それに乗って来ちゃいなさい。あんまり高いわけでもないから。」

「なんかいろいろ教えてもらっちゃって、なにからなにまでありがとう、母さん。」

「いいのよ、息子が旅行行くって言ってるし、ミーちゃんもあたしにとっては娘みたいなものだからね。」

「・・・(ぺこり)。」

「さー、ミー子。」

「・・・?」

「旅行行くまでに、できる分の夏休みの宿題終わらせちゃおう。」

「・・・(ふるふる)。」

「いややれよ!ほら行くぞ曳航~。」

 ミー子をずるずると引きずり、俺の部屋にいれた。

『男の部屋に連れ込んで私に何をするつもり!?』

「勉強です。」

『やめて!私に乱暴する気でしょう?エロ同人みたいに!エロ同人みたいに!』

「しねーよ。とっととやれ。」

 さっそく学校で配られた冊子を開く。

 確か夏休み明けにテストがあったよな。

 なら、今やると夏休み明けにはほとんど覚えていないだろう。

 だったら、今やることは!

「・・・(かきかき)。」

「よーし早く終わらせよう。」

 答えを書き写すことだった。


「うん、だいぶ進んだな。」

『答えがあるやつはほとんど終わったね。』

「うちの高校の宿題って割とぬるいよな。」

『ヌルヌル。うわあなっち変態。』

「強引だな!つか俺何も言ってねーよ!」

 ひどい押しつけだ。

『ヌルヌルよりしっとりって言う方がえろい気がするのは私だけ?』

「いや知らんけども。」

 なんだかYシャツ透けてそうでエロい気もするけど。

 ・・・というかね。

『どうしたの。』

 俺は、ミー子の穿いている肌を隠すタイプのタイツの方がですね・・・。

 透けて見える脚の肉がいいという人もいるが、見えないエロさって言うのもあると思うんだ。

『ちらっ。』

 ミー子がスカートの裾をつかみ、ちょっと持ち上げた。

 タイツに包まれた太ももがギリギリまで・・・って。

「そういえば、ミー子ってスカート持ってたっけ?」

 今まで学校の制服以外で穿いているのを見たいことがない。

 いつもジーパンとかだったよな・・・?

『この前陽花と一緒に買いに行った。どう?』

「ああ、そういうことか。似合ってるよ。」

 タイツも相まって。

「というか、ミー子の女の子らしい服なんて、いつぶりだろうな?」

『あんまり女の子って感じの服は避けてきたからね。』

 普段はあんまり素肌をさらすことはないミー子だけど、今日は青い半そでのブラウスにスカートといった、かわいらしい服装だった。

 ・・・うん、胸のところに"NS47"と書いてなければ、かわいらしいブラウスなんだけど。

「NSシリーズって本当に何でもあるんだな。」

『いろいろ揃ってるのよ。メンズもレディースもある。』

「まじですか・・・。」

 品揃えいいなNSシリーズ。

 スカートは白い、清楚な感じ。

 そこからすらりと伸びる脚もまた、魅力的だ。

『なっちに足をじろじろ見られてるよ。』

「あ、いや、すまん。」

『ポーズ指定、したい?』

 したい。

 したいけど!

 言ったら変態扱いされる気がする!

 が、何も言わなくても通じたのか、ミー子がその場でポーズを取り始めた。

 ブラウスのボタンを一つ開け、体を少しよじってお姉さん座りをした。

 ボタンの空いたブラウスの隙間から、ミー子の胸のわずかなふくらみが見えそうだ。

 誘ってんのか。

 しかし真顔である。

『なっち、顔赤い。』

「あ、そ、それは、あ、暑いんだよ!」

『部屋クーラーついてるよ。』

「う、うっさい!」

「・・・(にやっ)。」

 そしてそのままミー子が近づいてくる。

「な、なんだよ。」

「・・・(がばっ)。」

 そして突然、ミー子が襲い掛かってきた・・・、と思ったら、そのまま俺の腿の上に頭を乗せた。

『ひざまくら~。』

「男の膝枕って・・・。」

『なっちだからいいんだよ~。』

 そのまま、ミー子はすぐに寝てしまった。

「・・・あのですね。」

 そのまま寝ないでいただきたい。

 ブラウスのボタン、まだ開いたままなんだよ。

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