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Please speak!  作者: 長野原春
19/113

テスト返しも憂鬱だよね

『なっち、学校行こう。』

「今日からまた学校か・・・。」

『大丈夫、あと3日行けば夏休み。』

 先生たちの採点が終わり、今日はテスト返却日だ。

 今回は結構勉強したし、先生が手抜いたのかは知らないけどだいぶゆるい感じのテストだった気もするから、まあ大丈夫だろう。

『勝負する?』

「いや、俺とミー子だと得意分野が違いすぎるから勝負にはならないと思う。」

『じゃあ、英語。』

 英語のテストか・・・。

 確かに2人とも苦手だし、テスト直前にパラロス起動しちゃったし、どっこいどっこいだろう。

「よし、受けて立とう。」

『なに賭ける?』

「んじゃあ俺が勝ったら―――」

『貞操はあげられない。』

「そんな話してねえよっ!?」

『冗談。』

「まったく・・・、じゃあ、俺が勝ったら出雲でなんかおごってもらおうかな。」

『じゃあ私が勝ったらサーティーンアイスに行こう。2人でね。』

「ああいいぜ。勝負な。」

『まあもう勝負は決まってるんだよね。』

「そういうこと言うなよ。あれだ、シュレディンガーだ。」

 うん、テストの点数を確認するまではどっちが勝ってるとかはわからないからな。

 

「おっはよー!アヤ、かがみん、補習頑張れ!」

「何で赤点の前提なんだよ。」

『ふざけんなよ。』

「かがみん怖いっ!?」

 いや祈木がいきなり失礼なこと言うからだろ。

「え、なに?夏央と美衣ちゃん補習なの?ご愁傷さま・・・。」

「京介までてめえ何のつもりだ。」

『ぶっとばす。』

「美衣ちゃん暴力反対!」

 手をグーに握ったミー子を見て京介が後ずさった。

 別にミー子の力は強くない・・・と言いたいところだが、前の右ストレートを思い出すと何とも言えない。

 というか、あれやったの本当にミー子か・・・?

「なあミー子。」

「・・・?」

「ちょっと俺にパンチしてみてくれ。」

 ざわっ・・・!

 なんだかクラスの空気が変わった気がする。

「ちょっと、アヤ、どうしたの?何かに目覚めたの?」

『なっち、ドM?』

「へ、変態だな夏央・・・。」

 引く3人。

 それ以外にも。

「なんか絢駒が鏡崎さんに俺を殴れとか言ってるぞ・・・。」

「仲いいって言っても、そういう感じの仲いいなの・・・?」

「おいおい、祈木さんも鈴波も引いてるぞ・・・?」

 なんか言うタイミングを間違えた気がする。

「ち、違うんだミー子。俺は別にそういう性癖を持ってるわけじゃ。」

『私、なっちを理解してあげられなかったね。これからは・・・、うん、私どうしたらいいかわからないや。』

「そういうことじゃねええええぇぇぇぇぇ!!」

 校舎の3階に俺の絶叫が響いた、らしい。


「・・・(ぺちっ)。」

「うん、やっぱあんま力強くねーな。」

「え、これだったら俺ぶっとばされても平気?」

『じゃあメリケンサックで。』

「死ぬ、美衣ちゃん俺死んじゃう。」

 冗談で言っているのだろう、ミー子が楽しそうだ。

 若干笑顔にもなっている。

「はーいお前ら。先生の登場だぞ席着けー。」

 HRの始まる時間の前に先生が来た。

 みんなはあわてて席に着いたが、別にまだチャイムは鳴っていない。

「今日はテスト返却、明日は大掃除、んで明後日は終業式だ。夏休みはあれだ、ハメ外しちゃだめだからなー。頼むぞー。職員会議でいろいろ言われるのは俺だからなー。」

 保身かよ。

 まあ、夏休みはな、舞い上がっちゃう人もいるしな。

 麻薬とか手出しちゃったらハメ外すどころの話じゃないしな。

「んじゃ、今日は一気にテスト返しちゃうからなー。解説はプリントに書いてあるので復習するように。」

 あ、なに実際の解説はないの。

 先生も忙しいんだろうか。

 それとも面倒なんだろうか。

 いいのかそれで。

「んじゃまず国語から。絢駒ー。」

 あ、そうだ俺1番だ。

 去年は前に青山(あおやま)旭川(あさひかわ)ってのがいたからな。

 俺3番だったんだよな。

「うーん、よく頑張ったな。次は満点目指せな。」

「あ、はい。」

 満点じゃなかったんですね・・・。

 テストを開くと、98点と書いてあった。

 どこだぁ!?どこを間違えたァ!

 簡単なことだ。漢字を間違えた。

 にんべんがさんずいになっている。

 誰がどう見たってケアレスミスだった。

「う、うわあああぁぁぁ・・・。」

 思わず頭を抱えてしまった。

『なっちうるさい。』

「気にしないでくれ・・・。」

『どしたの。』

「ケアレスミスで満点逃した・・・。」

「・・・(なでなで)。」

 慰めてくれているんだろうか。

 ミー子の小さい手が俺の頭に乗った。

「鏡崎ー。」

「・・・(てくてく)。」

「うん、このまま点数アップさせていこうな。」

「・・・(こくり)。」

 ミー子がテストを確認して、小さくガッツポーズをした。

 点数は、55点。

 そうだよな、前回は34点だったもんな。

「よく頑張ったな。」

 さっきはミー子に撫でられたので、今度は俺が撫で返した。

 するとミー子はとたんに顔を赤くした。

『あの、公共の場だから、恥ずかしい。』

「照れてる?」

『うっせーな。』

 ああ、これ照れてるな。

「あー、アヤがかがみんを困らせてるー。」

「別にそんなつもりは。」

「というか、教室でいちゃつくんじゃないよこのリア充幼なじみが。」

「別にいちゃついてるつもりは―――」

 と、先を言いかけたところで、ミー子に肩を組まれた。

『家族。』

「いつまで続くんだそのネタは。」

 何か月だ。

 3か月か。

「あ、私78点だったよ!」

「普通だな。」

『普通だね。』

「ああそうだよ普通だよ!!!」

 ちなみに、京介は88点だった。


「んじゃ数学を返すぞー。絢駒ー。」

 あああ数学だ。

 これだけはマジで危ない可能性がある。

 大丈夫か。

 補習じゃないだろうか。

 ちょっと待ってちょっと待って。

 補習だけは、補習だけは―――!!!

「お前ギリギリだなー。次は頑張れよ。」

 ・・・ん?

 ギリギリ?

 つまり・・・。

 テストを開いて、そこに書いてあった点は・・・42点。

「う、うおおおおおよかったああああああ!!!」

「アヤうるさいよ。」

「いやだって!この点数!危険!」

「分かったから。アヤが頭よくないってことは分かったから。」

 失敬な。

「私は61点だったよ~?」

 祈木がドヤ顔で見せてくる。

 くっ、別に高い点数でもねーのに俺の点数が低いから何も言えねえ・・・!

「・・・(ドヤァァァ)。」

 祈木の後ろに音もなく立ったミー子が見せてきた点数は、99点。

「よかったな鏡崎。お前が1位だ。」

「・・・(ばんざーい)。」

 何があった1点。

 まあ1点なんて問題は大問1をミスるかケアレスくらいのものだから多分ケアレアスミスしたんだろう。

 ほんと、ケアレスミスって嫌だよなあ・・・。

 ちなみに、京介は90点だった。


「じゃあ次は英語だ。絢駒ー。」

 この点数でミー子との勝負が決まる。

 直前にパラロスを起動しちゃったとはいえ、祈木の家で結構勉強させてもらった。

 文型とかは頭の中に入ってるから、スペルのミスをしていなければ・・・!

「うん、1年の英語より上がってるな?よく頑張ったな。これからもがんばれよ。」

「え、何で1年のテストの点数知ってるんですか。」

「そりゃおめー、みんなのデータってもんがあるからだろ。」

 あ、1年のころの点数って先生に筒抜けなんだな・・・。

 そうだよな、さっきの国語でもミー子にこのまま点数上げてこうみたいなこと言ってたし。

「・・・おお。」

 点数は、74点。

 前回の32点と比べると大きな進歩。

 やったぜ。

「ふっふっふ、やはり英語など朝飯前・・・。」

 なんか変なテンションの祈木が来た。

「ああ、良かったんだろ?知ってる知ってる。」

「軽く流さないでよひどい!見よこれを!」

 祈木がテストを見せてくる。

 そこに書いてあった点数は、100点。

 誰がどう見たって満点だ。

「うん、おめでとう。」

「軽いっ!?」

 まあ、できてない俺からすると実際めっちゃすごいけどな。

 100点とか俺の手が届かない領域ですよ。

「鏡崎、お前もだいぶ点数上がったな。えらいぞ。」

「・・・(こくり)。」

 さあ、この点数でどっちの財布が口を開けるか決まる。

「俺が勝ったかな?」

『寝言は寝て言うものだよ、なっち。』

「じゃあせーので見せよう。」

「・・・(こくり)。」

「いくぞー、せーのッ!」

 ばっ!

 結果は!

「はーいアヤの勝ちー。」

 ミー子の点数は68点だった。

「・・・(ずーん)。」

 ミー子が床に手をついた。

「残念だったな、出雲の団子、いただきだ。」

 ミー子が若干悔しそうな顔をした。

 今回は俺の勝ちだな。

 ちなみに京介は84点だった。


「次は日本史なー。絢駒ー。」

 よし来た日本史。

 これは俺自信あるぞ。

 覚えなおしをしてミー子と祈木に教えたからな。

 人に教えると自分が一番覚えるそうだ。

 いける!いけるぞ!

「うん、まあわかってたよ。このまま維持しろよー。」

「わっかりましたー!」

 維持しろ、これの意味することはつまり。

「・・・へへっ。」

「・・・(ぺちん)。」

「いたっ!?」

 ミー子にひっぱたかれた。

 あんま痛くなかったけど。

『はたきたくなるドヤ顔だった。』

「なにそれひどい。」

『×守りたい、この笑顔。 ○殴りたい、この笑顔。』

 これはひどい。

「アヤのおかげで、だいぶ点数上がったよ!」

 祈木の点数は、77点だった。

「おお、よかったな!じゃあ次は80の壁を越えよう。」

「そうね!頑張る!」

 うん、こう言われると教えた甲斐があったな。

「・・・(くいくい)。」

「ん?ミー子、どした?」

「・・・(にこっ)。」

 ミー子が笑顔で見せてきたテストの点数は、86点だった。

「おおお!やったじゃんミー子!頑張ったな!」

 思わず頭を撫でた。

 いや、あのね?

 弁明させてもらうとね?

 俺の身長が174cmで、ミー子は確か151㎝。

 なんというか、こう、撫でやすいところにミー子の頭がある。

 そしてミー子を撫でるといつも照れるわけで・・・。

『だから、困るって。』

 ミー子が顔を赤くした。

「くたばれリア充ども。」

 祈木が冷たい目でそう言った。

 ちなみに、京介は95点だった。


「次は化学だ。絢駒ー。」

 化学、前は全然だったけど、今回は頑張った。

 ミー子にも、春姉にも教わった。

 特に、春姉の時は大変だったよな・・・。

 実際倒れたし。

「うん、頑張った。次は点上がるか?」

 どういうことだ?

 テストの点数は・・・87点だった。

 ああ、ここから点数を上げるのはちょっと難しいということか。

 というかそれよりも。

「ミー子!やったぜ!」

 87点のテストをミー子に見せて、ミー子とハイタッチ。

 いやあ、教えてもらってよかった。

 春姉にも報告しないと。

「かがみん!私も点数上がったよ!ありがとう!」

 そういう祈木の点数は、79点だった。

「鏡崎、本当に惜しかった。次、頑張ってくれ。」

「・・・(びくっ)。」

 ミー子が肩を跳ねさせた。

 何があったんだ。

「・・・(ずーん)。」

 ミー子の化学の点数は、またも99点。

 残念なことに、記述問題の漢字が間違っていた。

 -1点で99点。

「・・・次、頑張ろう。」

「・・・(こくり)。」

 2教科で99点を取ったミー子は、がっくりと肩を落とした。

 ちなみに、京介は89点だった。


「結局京介が一番点数高いじゃねえか!!!」

『やってないとか言いながら勉強してるタイプ。』

「いやいや、俺勉強してないよ?天才だから。」

「・・・(どすっ)。」

「ふぎゃっ!?」

 おーっとミー子の鋭い右ストレートが京介のボディを貫いたー!

 前ほどの力ではないが、俺は確信した。

 あのパンチ、やっぱりミー子がやったものだったんだ・・・。

 ちなみに、威力は高いが的確に腹筋のあたりを狙ってくるので実際あんま痛くない。




「ただいまー。」

「ん、おかえり、夏央。ミーちゃん。」

 家に帰ると、誰もいないと思っていたが、母さんがいた。

「あれ、仕事は?」

「休暇取った。」

「なんでまた。」

「朝電車が止まったからね。遅刻するよりは休んじゃったほうが良いのよ。」

「そうなんだ・・・。」

 楽でいいなそれ。

 学校も遅刻するくらいなら休みたいね。

『なっち、そういえばちょいとお話が。』

「え、お話?」

「・・・(こくり)。」

 帰ってきていきなり話ってなんだ。

「あらあら、じゃあ私邪魔かしら?」

『お気になさらず。なっちの部屋で話します。』

「あらそう。」

「・・・(くいっ)。」

 そしてそのまま袖をつかまれ、俺の部屋に連れていかれた。


『お話があります。』

「聞こうじゃないか。」

 正直、何の話だかまったく分からない。

 特に何かした覚えもないし・・・。

 ミー子がケータイ打ってる間に何か謝罪の言葉でも考えておこうか。

 というか怒っていらっしゃるんだろうか。

 笑うようになったとはいえ相変わらず表情は硬いから感情はあまり読めない。

「なあ、俺なんか―――」

『私、今日から自分の家で寝ます。』

「・・・ああ、そういうことか。」

 そういえばそうだ。

 そろそろ一緒に寝るのやめさせようと思っていたんだった。

 ミー子からその話が出たのは意外だったが。

『一緒に寝始めてから1か月半ぐらい経ちました。』

「おう。」

『さすがに、これ以上は迷惑だよね。』

 ミー子が微妙に肩を落とした。

 甘えてる自分を責めているのかもしれない。

 別に迷惑ってことでもないが・・・、いや、精神衛生上よろしくない。

 よく考えたら、幼なじみとはいえ高校生の男女が同じ布団で寝てるのは異常だ。

 よく持った、俺の理性。

『パラロスは持って帰るから、また、私の部屋にやりに来てね。』

「ああもちろん。」

 パラロスは俺も好きだし。

 メタトロンの操作極めたいし。

『今日までありがとう。そしてこれからもよろしくね。』

「なんかあらためて言われると照れくさいな。」

「・・・(ひしっ)。」

 突然、ミー子に抱きつかれた。

 思わず抱き返すと、女の子らしい、すっぽりと収まる感覚。

 体温の高いミー子はあたたかいを通り越して・・・暑かった。

『なっち、あつい。』

「ミー子の体温だよ!」

 別に俺の体温はそんな高くねーし。


『じゃあ、また。いつでもきてね。』

「ああ、言われなくても行くよ。」

『家族だもんね。』

「そんな覚えはない。」

「・・・(ひらひら)。」

 俺に手を振って、ミー子は家に帰った。

 一人になった部屋を見回す。

「・・・なんか、広くなったな。」

 部屋にはいつもミー子がいた。

 テレビの近くにはGS3が置いてあって、何度もパラロスをやった。

 一度、夜通しでやった時は次の日が大変だったよな。

 部屋に入ったらミー子がカーペットに寝っころがっている時もあった。

 危うく踏みそうになってミー子に怒られたけど。

 ベッドに寝っころがってみると、さらに広いという感覚が強くなった。

 このベッドで、二人で寝てたんだよな・・・。

 いまさら思うがやっぱり変だよな。

 ただの幼なじみで、付き合ってもいない2人が、1か月半近く同じベッドで寝るなんて。

 間違いがあったとしてもなんらおかしくない。

「ホント、俺よく耐えられたよなあ・・・。」

 ちょっとだけ、安心するような気持ちと―――あいつが近くにいない、寂しさがあった。

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