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Please speak!  作者: 長野原春
15/113

勉強はしっかりしましょう

「朝からあちいな・・・。」

『7月なんだから当然。学校行くよ?』

「おう・・・。」

 ミー子と同居(?)し始めてからだいたい半月過ぎ。

 最近、ミー子が夜中起きることが少なくなった。

 もうそろそろ、別々に寝ても平気かね。

『はやくはやく。』

「わかったよ。」

 せかすので急いで支度をする。

 まだ起きてからあまり時間立ってはいないし、動きたくないんだが。

『ギリギリまで寝てるのが悪い。』

「へいへい・・・。」

 これに関しては正論なので、返す言葉もない。

 家の中から、陽の当たる外へ出た。

「あ、やだ。暑い。帰ろう。」

『だめ。』

「帰ろう、帰ればまた来られるから。」

『どこの海軍の人だよ。そのまま家から出てこなくなるからだめ。』

 ミー子に腕をつかまれ、家に戻ることができなくなった。

 強引ですね・・・。

 外の陽は半そでの俺たちに容赦なく照りつける。

 今日の最高気温は35度らしい。

 まだ7月入ったばかりなんだけど・・・。

 8月どうなるんだよ。

 40度超えるの?

「・・・(ぽむぽむ)。」

 グダグダ歩いていると、突然ミー子に後頭部をなでられた。

「なんだ?」

『寝癖。』

 寝癖を直そうとしてくれているらしい。

 ただ、なでられてすぐ、ぴょんと戻る感覚がある。

「どのくらい立ってる?」

『サイヤ人。』

「嘘だろ!?」

『嘘。』

 楽しそうに、ミー子はほんの少しだけ、本当にちょっとだが、笑った。

 最近、ミー子が少し変わった。

 前に突然、『表情の練習をする。』といったミー子は、表情を変える練習を始めた。

 最初は頑張っても全く表情が変わらなかったが、最近、微妙に変わるようになった。

 ほんのちょっと、口角が上がるだけだけど。

 ほんのちょっと、眉が下がるだけだけど。

 けれど確実に、ミー子の表情に変化が訪れた。

 それは俺にとっても、ミー子にとっても、嬉しいことだ。

 思わず抱き合っちゃった。

「ミー子さ、やっぱ笑顔可愛いよな。」

「・・・。」

 そういうとミー子が立ち止った。

 後ろを振り返ると、ミー子は無表情のまま固まっていた。

 頬には微妙に朱が差している。

 どうやら照れているみたいだ。

「・・・(むにっ)。」

「いでっ。」

 ミー子は俺の頬に指を突き刺し、無理やり顔の向きを変えた。

『恥ずかしい。見ないで。』

 ミー子がそういう。

 照れている顔を見られるのが恥ずかしいみたいだ。

「じゃ、先行くからな。」

 俺が少し早足で歩くと、

『なっち、置いてかないで。』

 ミー子が早足でついてきた。

 腕をつかまれて、強制的に手をつながれた。

 手汗かくから嫌なんだけど・・・。


「さあ、諸君、そろそろテストだが、準備はできているかね?」

 朝のHRでいきなり、茎野先生はそんなことを言った。

「まあ前はどっかのバカのせいでテストが中止になったからな、しかたないな。」

 そうだね、吉なんとかのせいで、テストできなかったもんね。

 まあでも、このテストを乗り切れば、夏休みなわけであって。

 つまり、ミー子と旅行に行けるということだ、

 がんばらねば。

「アヤは対策してる?」

「ああもちろん。追試とかマジで嫌だし。」

「追試は確かにやりたくないよね。」

「時間の無駄だしな。」

 追試受けるくらいなら今頑張って勉強する。

 そして暇な時間バイトする。

『最近一緒に勉強したりしてるもんね。』

「そうだな。」

 寝る前にちょっとやったりな。

「え!何であたしには教えてくれないのー!?」

『夜やってるから?』

「まあ、呼ぶのには悪い時間だよなあ。」

「あんたらはほんとにいつでも一緒だよね・・・。」

 そういうと、ミー子がいきなり俺と肩を組んだ。

『家族。』

「いや違うだろ。」

 否定したら、ミー子が手に力を入れやがって、なかなか引きはがせなかった。


「じゃあ絢駒。ここ分かるか?」

 英語の時間、不覚にもうとうとしてしまって、先生に指されてしまった。

 えーと、この場合のVは・・・。

「え・・・と、pullです。」

「正解。勉強してるのか?前だったら答えられなかったのに。」

 失礼だな。

 まあ、本当のことだから何も言えないけど。

「まあ、ちょっと。」

「そうか。寝ないようにな?」

「すんません。」

 なんだか、前より進歩したぞ。

 ちょっと見て答えられた。

 やった。

「おおー、アヤ、確かに勉強されているようで。」

「まあな。」

 まあVを答えられたくらいじゃ全然だろうけど。


「ミー子、英語は大丈夫か?」

『指されたら答えられる自信ない。』

「ないんかい。」

 ちょっと危険じゃないかそれ。

『40点以下にはならないように気を付ける。』

「また祈木に教えてもらうか。」

『そうだね。』

「話は聞かせてもらった!!」

 といいながら祈木がこちらに向かってダッシュしてくる。

「こらあ祈木!廊下は走るな!」

「すんませーん!」

 といいながらまったく減速しなかった。

「ぜえ・・・、英語・・・、教えるよ・・・!はあっ・・・!」

『怖い。』

「髪が乱れまくってるな。」

 膝をついている姿はなんか貞子を思い出させる。

「ぜえ・・・、教えてあげるから、そのかわり・・・、日本史と、化学を・・・!」

「分かった分かった。とりあえず落ち着け。」

 いったん貞子を黙らせる。

『日本史と化学なら教えられるね。』

「そうだな。」

 一緒に勉強するのなら京介も呼びたいが、あいつはそこそこできるしそれで満足してるから勉強しないんだよな。

 多分ちゃんとやればもっと頭よくなるだろうに、残念だ。

「じゃあ今日勉強会しようか!あたしんちで!」

「えっ。」

『え。』

 突然の申し出だった。




「へーここが祈木の家か・・・。」

『大きいね。』

 高校から歩いて10分のところに、祈木の家はあった。

 豪邸というほどでもないが、それなりに結構大きい家だった。

 金持ちなんだろうか。

「さ、入って入って。」

「お邪魔します。」

「・・・。」

 返事はない。

「ああ、今多分お母さん寝てるから、あんまりうるさくしないほうが良いかも。」

「ん、了解。」

『分かった。』

 あまり音をたてないように階段を上がっていく。

 廊下を進むと、ドアプレートに【陽花】と書かれた扉があった。

「ここが私の部屋。飲み物取ってくるから、中入って待ってて。」

「わかった。」

 祈木が階段を下りて行った。

『入ろう。』

「そうだな。」

 ドアを開けようとして―――開かなかった。

 ドアには、鍵がかかっていた。


「いやーごめんごめん!そういえば鍵かかってんの忘れてた!」

「自分の家のこと忘れるなよ・・・。」

『まあまあ。』

 祈木が出してくれた麦茶を飲む。

「あ゛ぁ~。」

『なっちおっさんくさい。』

 暑い中来たのだから仕方ない。

 あれだ。風呂から上がってコーヒー牛乳を飲むのと同じだ。

「んま、さっさとやっちゃおうか。」

「それもそうだな。」

「・・・(こくり)。」

 教科書と参考書を広げ、3人の勉強会が始まった。


「アヤ、そこスペル間違ってる。」

「えっ。」

「あーかがみん、そのwhichは説明だから、文頭には持ってこないよ。」

「・・・(えっ)。」

 ミー子が顔をあげて、説明を求める。

「んとね、whichは物とかの説明で、whoは人の説明をするのね。んで、それを置いた後に、前の分の説明をするんだ。分かった?」

「・・・(こくり)。」

「じゃ、やってみて!」

 ミー子が問題を解き始める。

 その間に祈木が俺の回答を覗いてきた。

「んー、アヤは文型とかはちゃんとしてるのにスペルミスが多いなあ。もったいない。」

「え、文型とかはあってるの?」

「うん、あってる。」

 なんだと・・・。

 正直言って、まったく自信はなかった。

 あれから少し勉強して、俺はパワーアップしていたのか!

「アヤって、覚えたら忘れないよね。」

「そうかな?」

「うん、前教えたことも覚えてるし、ほら、お姉さんに教えてもらった化学も忘れてなかったでしょ?」

「たしかに。」

 日本史が得意なのは、記憶力がいいからだ。

 その記憶力が、他のところにも活きているようだ。

「・・・(くいくい)。」

「お、かがみん終わった?」

「・・・(こくり)。」

「それじゃ見るね、どれどれ・・・。」

 ミー子も、暗記が得意だ。

 化学や数学の公式とか覚えるのは簡単とか言ってた。

 俺からしたら嘘だろって言いたくなるが、もしかしたら俺も案外イケるかもしれない。

 ちょっと自信出てきたぞ。

「うん、ここはオッケーだね。じゃあ2人とも次のページで。」

「りょーかい。」

「・・・(こくり)。」

 早速次の問題にとりかかる。

 おお、解ける!解けるぞ!

「これでどうだ祈木。」

「おお、早くなってきたね。・・・だからスペル違うって。」

「がーん!!」

 どんだけスペル間違えるんだよ俺!

「あれだね、文法じゃなくて、アヤは単語帳使って単語を覚えてなさい。」

「へーい・・・。」

 教科書の範囲の単語帳を渡され、それをぱらぱらめくり始める。

 こいつ、毎回単語帳作ってるのか、すごい。けど。

「なあ祈木、これ字がきたな―――」

「うるさい。読めればいいでしょ。」

 いやまあ読めるけども。

「それに、かがみんだって字のきれいさで言えば私とどっこいどっこいだし・・・。」

『陽花と一緒にされたくない。』

「ひどっ!?」

 いや、実際どっこいどっこいだ。

「アヤは字きれいだよね。」

「普通じゃない?」

『たぶん私たちがあまりきれいじゃないからなっちの字がきれいに見えるだけだと思う。』

 ごもっともだ。

 問題集の問題を解き終え、英語の勉強は終わり。

 さて、次は化学だ。


「・・・(ふるふる)。」

「あ、間違ってる?」

「・・・(こくり)。」

「教えてもらえるか?」

「・・・(こくり)。」

 ミー子はカバンの中から紙束を出した。

 紙には、化学の説明がびっしり書いてあった。

 いつの間にこんなの作ってたんだ。

『ここ。』

 ミー子が指差したところに、俺が間違ったところの説明が書いてあった。

 喋れない代わりに、結構分かりやすい説明が書いてある。

『できそう?』

「できそう。」

「かーがーみーんっ!あたしにも教えてっ!」

 横から祈木がミー子にとびかかった。

『あつい。』

 そのままミー子が祈木に押し倒された。

 二人でバタバタしている。

 ああ、そんなに動くとスカートの中が見え・・・いや、見ない。

 というか、ミー子は肌を完全に隠すタイプのタイツを履いているため、もとより見えない。

 祈木は危なかったが。

 二人とも起き上がり、ミー子が祈木に化学を教えている。

 さて、教えてもらったとこ、ちゃんとできるようにしとかないと。

「・・・(ふるふる)。」

「あれえ!?」

 おっかしいなあ!?

 前は春姉にも教えてもらってたのに!

『ここを勘違いして覚えちゃってる。』

 ミー子が指差したのは、モルの計算。

『モルと個数は別だよ!』

 びしっ!

 とミー子が俺に指差してくる。無表情で。

「お、おう。えーと、具体的に。」

「・・・(がくっ)。」

 ミー子が肩を落とした。


「あー、ミー子そこ違う。」

「・・・?」

 化学の勉強を終えて、次は日本史だ。

 二人とも、結構間違えている。

「ってか二人とも間違えてるな。日比谷焼打ち事件の時にしかれたのは、徳政令じゃなくて戒厳令だ。意味は全然違うぞ。」

「あら、そうなの?」

「徳政令って言うのは、まあ、一言でいえば借金帳消しだ。」

『戒厳令は?』

「戒厳令って言うのは、非常事態に、限定地域において、一時的に軍の指揮下に置くことだ。」

「武力による鎮圧ってこと?」

「そうそう。分かってんじゃん。」

 何で徳政令と勘違いしてたんだ。

 ・・・ああ、問題に○○令って書いてあったからか。

 なんだかわからないから、適当に書いたわけか。

 二人が次の問題に進む。

「えーっと、なんだっけ・・・、国家・・・。」

「・・・(うーん)。」

 二人が頭を抱えている。

 これあれか。全部教えるのか。

「じゃああれだ。これが流れるときのアラームを聞かせてやろう。」

 ケータイでYourTubeを起動して、検索する。

 ワードは、国家非常事態宣言。

「じゃあ、いくぞー。」

 ケータイからは、とても気持ち悪い音が流れた。

 音質が悪いのも相まって、怖い。

『臨時ニュースヲ申シ上ゲマス、臨時ニュースヲ申s』

 途中でミー子が切った。

『この音やだ。』

「まあ、そうだよな。」

 今のは、太平洋戦争が開戦した時の音。

 国民に知らせるためのアラームだ。

 いやあそれにしても嫌な音だった。

「あたしたちが生きてる間には聞きたくない音だね。」

「まったくだ。とりあえずここは国家非常事態宣言な。」

「あ、うん、わかった。」

「・・・(こくり)。」

 そのあとも、結構教えることになった。


「今日はありがとね。」

「こっちこそ、英語教えてくれてありがとう。」

「どういたしましてー。」

『これでテストも大丈夫そうだね。』

 大丈夫かね・・・。

 覚えてなかったら意味ないし。

「んじゃ、また明日。」

「おう。また明日な。」

『バイバイ。』

 歩き始めたところで、気づいた。

 そういえば、祈木の家から俺たちの住んでるところまで、結構ある。

 鳶ヶ谷から木通まで、歩いて30分くらいだ。

 現在時刻6時半。

「ミー子、高校前発のバスを使おう。木通駅前行の。」

『私もそれ言おうと思ってた。』

 意見が合致したので、高校の方へ向かう。

 あんまり遅くなると夕飯を作るのが面倒になる。

『ねえなっち。』

「なんだ?」

『帰ったら、二人で勉強しようか。』

 ミー子が上目づかいでこちらを見てくる。

 だからそれは反則だと・・・。

「そ、そうだな。忘れないうちに、やるか。」

「・・・(こくり)。」

 バス停に着くと、バスがすでに来ていた。

 やべえ。

「走るぞ!」

「・・・(こくり)。」

 駆け込み乗車、何とか乗れた。

 あぶねえ、あと少しで置いてかれるところだったぜ。


 結局、家でパラロスを起動してしまい、勉強はできませんでした。




「さーお前ら、今日は待ちに待ったテストだ。みんな頑張ってくれ。」

「待ってねえ・・・。」

「お?夏央、勉強してねーの?」

「いやしたわ。テストなんてなくなればみんなハッピーなのに・・・。」

 蚊と同じくらい絶滅してほしい。

 勉強したって、嫌なものは嫌なんです。

「でも、やんなきゃ指定校とかの基準作れないだろ?」

「京介のくせに正論を言わないでください。」

「くせにってなんだよ!」

 普段適当野郎のくせに。

「ほらお前ら、席着け。」

 注意されてしまった。

「えー注意事項は・・・、前言ったからいいか。うん、頑張れよー。」

 説明投げやがったこの人・・・!

「んま、昨日3人で勉強したし、なんとかなるだろ。」

『乗り切ろう。』

「そうだな。」

 そろそろ始まる。

 よし、がんばるぞ。

 今日は2限だけだ。

 科目は数学と化学。

 前までならいやがらせか、と思うが、今はそんなことはない。

 昨日ちゃんとやったからな!化学は。

 数学は・・・まあ、なんとかなるだろう。

 うん、頑張ればいける。

 よっしゃ、この数学を乗り越えて、楽しい夏休みまっしぐらだ!!

 

 うん、前半は中間の範囲なだけあって分かるぞ。

 余裕っすわー。

 ・・・あっ、後半難しい。

 ちょっと待って二次関数嫌い。

 これできない。

 いや座標Xとか言われましても。

 ちょっと待って求められない。

 ああぁ・・・。


「二次関数なんてなくなればいいんや・・・。」

『そういえば勉強してなかったね、期末の数学の範囲。』

「まあ、前半できてたから40点以下はないと信じたい・・・。」

『後半の方が配点高かったよ?』

「・・・。」

 やべえ、不安になってきた・・・。

 夏休み前に大きな壁が立ちはだかる予感・・・!

『あ、今日帰ったら国語教えてほしい。』

「ああ、いいぞ。」

 数学・・・、どうしよう。

 何で昨日パラロスを起動しちゃったんだ!!

 いまだにクリアできてない星降りの丘のクエストをクリアするのに必死になっちゃってた。

 しかもクリアできなかったし。

 神様・・・、こんな罰を下すのはやめてください。


 化学、これはもう大丈夫だ。

 ミー子にも、春姉にも教えてもらった。

 これでできなかったら春姉の強制補習が待ってる。

 多分恐ろしいやつ。

 分かるまで、覚えるまでやって、俺はきっとまた倒れるんだ・・・。

 いや、大丈夫、俺はこのテストを越えて、楽しい夏休みに入るんだ・・・。


 覚悟を決めて問題を開いてみたら、なんかめちゃくちゃ簡単だった。

 いや、きっと簡単なんじゃなくて、俺がちゃんと覚えたんだな!

 あ違う。これ今回本当に簡単なんだ。

 先生が手抜いたんだろうか。

 ちらっと横を見ると、ミー子はもうすでにテストを終えて机に突っ伏していた。

 はやいよ。

 とはいえ、俺もそろそろ終わるし寝ようかな。

 早くテストが終わるっていいね!

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