名前はちゃんと考えるべきだよね
「ただいまー。」
『お疲れ様。』
家に帰ると、リビングにいたのはミー子だけだった。
『秋穂さんも、そろそろ帰ってくるってさ。』
「ん、了解。」
春女さんは、部屋にいるだろうか。
「春女さん、帰ってきてる?」
『帰ってきてすぐ、部屋に入っていったよ。なにかあったの?』
「んー、どうだろう。」
『なにそれ。』
「すまん、ちょっと春女さんと話すことがあるから、夕飯お願いしてもいいか?」
『うん、分かった。』
さっきのこと、確認しなきゃいけない。
あのギャルが来てから、春女さんの様子がおかしかった。
ティアラちゃんというのも、気になる。
「春女さん、夏央だけど。入ってもいい?」
「あ・・・、うん・・・。いいよ・・・。」
春女さんの声には元気がなかった。
部屋に入ると、ベッドの上で春女さんが体育座りでうずくまっていた。
「聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」
「わ、私ティアラちゃんなんて知らないよ!?うん、知らない!」
「・・・まだ何も言ってないよ。」
「あっ・・・。」
春女さんがベッドにうつぶせになった。
「はー・・・。聞かれちゃったかー・・・。」
「聞いちゃった。」
「口封じしかないかなー。隠しておきたかったし。」
その言葉は、一瞬本気かと思うくらい、力ない言葉だった。
「嘘だよ。聞きたい?」
「・・・うん、春女さんも、家族だから。血が繋がってなくても。」
「・・・そうだよね。夏央くんだけ知らないってのも、ひどい話だもんね。」
え、俺だけなの。
冬姉とかも知ってるの?
「夏央くんさ、私の歳、知ってるよね?」
「21でしょ?」
以前、春女さんが母さんと一緒に酒を飲んでいるのを見た。
「うんそう。今年で22。」
「・・・あれ?」
「気づいた?」
「春女さん、今年大学2回生だよね?」
「そうだよ。」
おかしい。
普通だったら、春女さんは今年で4回生のはず。
春女さんが留年していたという話は聞いていない。
どういうことだ・・・?
「実はさ、私、高校卒業してないんだ。」
「えっ!?」
春女さんと一緒に暮らし始めて2年目。
中学卒業前に、母さんが再婚した。
その時、春女さんは20だった。
最初に、絢駒春女です、と名乗ったのは覚えている。
「高卒程度認定試験に受かって、大学に合格するまで、2年かかっちゃった。」
「な、なんで!?」
なんで、高校を卒業していないんだ!?
「今から話すことは、全部本当のこと。」
「私の前のお母さんはね、すごく見栄っ張りな人でね、平気で嘘も言うような人だったんだ。」
「結婚して、私が生まれた時に、名づけはお母さんがするって言ってきかなかったみたい。」
「子どもが生まれて、ハイになったテンションのまま考えた名前が、輝冠。」
「輝いて、人の上に立つような子になってほしい、って意味だったんだって。見栄っ張りなお母さんらしいよね。」
「もちろん家族で反対したらしい。でもお母さんは絶対その名前にするって、嫌なら離婚するって言って、仕方なくその名前にしたんだって。」
「私は近所の人から、一時のテンションで名づけられたかわいそうな子、って言う扱いを受けた。」
「もちろん、名前をネタにされて学校ではいじめられてたよ。」
「それを知って、お母さんはだんだん私を嫌い始めた。」
「いっつも、ひどい扱いを受けた。」
「私の分だけご飯はないし、人から好かれないなんてあなたは私の子じゃないなんて言われて、家から出されたこともあった。」
「暴力は当たり前だったし、その時まで貯めてたお年玉も全部取られた。」
「中学校に上がってもいじめはなくならなくて、お金もないし、やることもなくて、毎日自殺することばっかり考えてた。」
「その時、お父さんがしびれを切らしてお母さんと離婚したんだ。」
「私はしばらく、お父さんと2人暮らしをしてた。」
「でも、高校に上がってもいじめられて。さっきいた2人が、一番私に突っかかってきた。」
「嫌になった私は、自殺しようと思って、自分を刺した。包丁で。」
「でも、お母さんからひどい扱いを受けて弱虫になっていた私は、死ねなかった。お腹を刺しただけだったんだ。」
そこまで言うと、春女さんは着ている服を脱いだ。
「な、なにしてるの。服着なよ。」
「目を逸らさないで。こっちを見て。」
そういわれて、春女さんの方を向くと、左腹に大きな傷跡があるのが見て取れた。
刺した後、思い切り横に引いたんだろう。
傷跡は、脇腹まで続いていた。
「病院に運ばれて、入院することになってさ。その時に、お父さんが言ってくれたんだ。」
「嫌なら、逃げてもいいんだ。無理していく必要なんてないんだ。って。」
「それで、私は高校を辞めた。」
「でも、中卒なんて恥ずかしいからさ、必死に勉強して、高卒程度認定試験に受かったよ。」
「そのころかな、お父さんがお付き合いしてる女の人がいるって言ってたの。」
「あんまり信じてなかったんだけど、その女の人に会うことにした。」
「それで会えた人が、秋穂さん、今のお母さん。」
「お母さんはさ、私の過去の話も聞いてくれて。名前が嫌だって言ったら、じゃあ変えちゃいなさいって言われた。」
「すごくびっくりしたんだけど、20になったら変えられるんだよね。あんなにあっさり言ってくれて、無関心なのかな、って思ったよ。」
「でも、違った。」
「これから私の家族になる子だから、私が名前を付けるって言ったの。」
「秋穂、冬華、夏央。あと、春が足りないっていって、私の名前は春女になった。」
「お父さんも、喜んでたよ。いい名前を付けてもらったって。」
「でも、ちょっと悲しんでたなあ。俺だけ仲間はずれだって。」
たしかに、父さんの名前は清松だもんな。
かっこいいと思うけど。
「その時は19歳だったけど、もう春女って名乗ってたよ。」
「その時だったかなー、夏央くんと初めて会ったの。」
「最初、新しい家族ができるって言われてすごい戸惑ったよ。」
「また、嫌がらせとかされたらどうしようって。」
「でも、秋穂さんがああいう人だから、私は信じて会いに行ったよ。」
「そしたら、夏央くんに、俺の姉は冬姉だけだ!って言われちゃってさ。」
あれ、俺そんなこと言ったっけ。
「本当は、今でも心配だったんだよね。いつまでたっても春女さんとしか呼んでくれないし、まだ、姉として、いや、家族として、認められてないかなあって。」
「だから、さっきの言葉はすごくうれしかったよ。ありがとう。私を家族と認めてくれて。」
「それで、20歳になって、大学に合格して、私は前の名前を完全に捨てた。20歳以前の記憶を、なくそうとしたよ。」
「でも、あんなので、簡単に思い出しちゃうんだよね。弱いね、私。」
「もともと理系の高校ではなかったし、薬学なんて行った同級生はいなかったから安心してたんだけどねえ。」
「やっぱ・・・、一回思い出すと・・・。ダメだなあ・・・。」
そういって、春女さんは静かに泣きだした。
俺には何もできることがなくて、ただ、春女さんのそばにいた。
春女さんに、そんな過去があったなんて。
俗にいう、キラキラネームってやつか。
親が過剰な期待を持って、後先を考えずにああいう名前を付けるのは、とてもよくないことだと俺は思う。
そうならないように、もし子供ができた時のためにあらかじめ名前をいくつか考えている。
まあ、今はその話はいいとして。
「さて、こんな話をしちゃったわけだけどさ、今まで通り、夏央くんは私を家族として接してくれる?」
春女さんは微笑んで、俺に問いかけた。
そんなの決まってる。
むしろ、家族というくくりでなく―――
「もちろん、家族なんかじゃなくて、春女さんは、俺の頼れる姉だよ。」
「そっか。ありがとう。」
春女さんの笑顔には、涙が流れていた。
「さ、そろそろ飯だし、リビング行こうか?」
「うん、そうだね。」
ミー子が作ってくれた夕飯が並んでいるであろうリビングに向かおうとして、春女さんの部屋のドアを開けた。
「・・・(びくっ)。」
ドアのすぐそばには、ミー子がいた。
「・・・(あわあわ)。」
よくわからないが、両手を動かしている。
身の潔白を証明しようとしてるのかな?
『ごめん。立ち聞きするつもりだった。』
「だったのかよ!?」
『ほんとはなかった。』
「え?」
『ご飯できたって呼ぼうとしたら、部屋から声が聞こえてきた。なんか、聞き捨てならないような話な気がして。勝手に聞いて、ごめんなさい。』
ミー子は頭を下げた。
俺は何ともいうことはできないけど、春女さんはどうだろう。
さっき、俺に口封じするとか言い出した。
もしかしたら、いや、それはないだろうけど、もしかしたら。
春女さんは、ゆっくりミー子に手を伸ばした。
そして、
「・・・!」
ミー子の頭を、優しくなでた。
「美衣ちゃんにも、聞かれちゃったね。私はこんなんだけど、それでもいい?」
「・・・(こくり)。」
「そっか。」
『私にとっても、春女さんはお姉さん的存在。』
「うん、そっかそっか。」
『それに、誰にだって辛いことくらいあるよ。でも今はもうそれとは関わりはないんでしょ?じゃあ、春女さんは春女さんだと思う。』
「ん?つまり?」
『輝冠は過去の人。二年前に死んだ。そうでしょう?今は絢駒春女なんだから、前を向こう。』
「・・・うん、そうだね。思い返してもいいことないし、いっそのこと、全部気にしないほうがいいよね。」
「うん、俺も、それがいいと思うよ。」
今さら、過去のことを思い返す必要もない。
それは、絢駒春女の記憶ではないから。
春女さんの人生は、20歳から始まってるんだ。
ちょっと生まれるのが遅れただけだ。
「春女さん、大学は楽しい?」
「うん?楽しいよ?」
「じゃあ、それでいいんじゃないかな。春女さんのスタートは、大学からってことで!」
「うん、そうだね!二人とも、ありがとう!」
「アンタたち!ご飯冷めるから早く下りてきなさい!」
「「はーい!」」
いっそいで階段を下りて、4人で夕飯を食べた。
春女さんが母さんに、過去のことを話したといった。
母さんは、まだ話してなかったのかと驚いた。
もう知ってるものだと思ってたんだ・・・。
夕飯を食べ終わった後、ミー子が春女さんに突然告げた。
『私、これから春女さんのことをハルさんと呼ぶね。』
「え?あ、うん。」
『いいかな?』
「うん、もちろんいいよ!じゃあ、私もミー子ちゃん、って呼ぼうかな!」
『あっごめんなさい私のことをミー子って呼んでいいのはなっちだけなんで。』
「夏央くーん!美衣ちゃんが私の好意をむーげーにーしーたー!」
春女さんが泣きついてきた。
「は、はは・・・。」
残念でした。春女さん。
・・・俺もそろそろ、違う呼び方にしようかな。
『夏央くんと春女さん、じゃあまだまだ距離感感じるぜ。』
いつだか、先輩が言ってたことだ。
もう距離を感じる必要はない。
俺たちは家族だ。
姉と、弟。
血は繋がってないが、家族だ。
「じゃあ、俺も、呼び方を変えようかな。」
『おおっ?』
「おおおっ?」
二人がこっちを向いた。
春女さんと呼び始めて2年。
変えるのは少し慣れないけど、俺たちは家族だから。
「これからは、春姉って呼ぶね。」
「・・・!うん!うれしいよ!じゃあ私は、なつくんって呼ぶ!」
二人して笑った。
ミー子も笑っていると表現したかったんだろう。
ケータイには、
『wwwwwwwwwwwwwwww』
そう表示されていた。
「いや、その笑い方やめろ。」
思わず噴き出した。
次の日、朝起きた時に、春姉の姿はなかった。
まあ、バイトがない日は俺は遅くまで寝ているので、大概誰もいないが。
『相変わらず休みは起きてくるの遅いね。』
「起こされねえと起きれねえからな・・・。」
『あ、起こせばよかった?』
「いや、別にどっちでもよかったかな。」
何もない休みだからゆっくりしたかったっていうのもあるし。
『秋穂さん、今日はお母さんと出かけたよ。』
「お、珍しい。」
母さんと那空さんは仲がいい。
それは俺たちが生まれたころからの話だけど、2人とも仕事が忙しいのでなかなか一緒に休みが取れない。
毎年、夏休みは2人でどこか旅行に行っているみたいだが。
まあ、母さんが旅行会社勤務だし、いろいろプランでも立ててるんだろう。
『お母さんが、いい商談先と出会えたって言ってご機嫌だった。』
「取り入って信頼を得る仕事だしな。」
那空さんは広告代理店で働いている。
持ち前の明るさとトーク力で、営業成績はかなりいいみたいだ。
『仕事辛くないのって聞いたらとっても楽しいわって言われた。』
「那空さん、人と話すの好きだもんな。」
おそらく会話に必要なスキルがそろってる人だ。
「あ、そうだ。」
『どした?』
「夏休みに出かけたいって言ってただろ?」
「・・・(こくり)。」
「じゃあ、行く場所のお勧めのところを、母さんに教えてもらおう。」
『いいね。』
おそらくいい情報を持ってきてくれるはずだ。
情報を得るために、世界中どこにでも出張に行くような人だし。
そして旅行雑誌の編集もやっている。
あまり母さんの仕事の話は聞かないけど、腕利きの人なんじゃないかな、と思う。
『楽しみになってきたよ。』
「いろいろ乗り越える壁があるけどな・・・。」
『目標があるから大丈夫。』
「ま、確かにそうだな。」
目標がないと、どうしても一定以上のやる気にはなれないからな。
自分へのご褒美、とかそういうのは結構いいのかもしれない。
『というか、なっちご飯食べなくて平気?』
現在時刻、13時半。
起きてから10分しか経ってない。
朝飯はもちろん食べていない。
・・・腹減った。
「いただくわ。」
『座って待ってて。』
まだ起きたばっかりで少しぼーっとするので、ミー子にすべて任せることにした。
ケータイを見ると、着信が一件入っていた。
春姉からだ。
着信時刻は、6時間前。
起きてねーよ。いや、起きれねーよ。
かなり時間が経ってしまったが、とりあえず春姉にかけなおす。
『あ、もしもしなつくん?』
「ごめん、今起きた。」
『うん、そうだよね、なつくん、ねぼすけさんだもんね。』
低血圧だし仕方ないでしょーよ!
「今どこにいるの?」
『中崎。』
「遠・・・くもないか。」
電車で2時間くらいだったかな。
『あ、ちょっと待って!』
「えっ、」
春姉が通話口から離れ、ゴーッという音がする。
それに合わせて、カメラのシャッター音もした。
何してるんだろう。
『ごめんね、お待たせ。』
「なにしてたの?」
『ちょっと、撮り鉄を。』
「撮り鉄?」
春姉にそんな趣味あっただろうか。
『そっちで走らなくなった古い電車がこっちで走っててさ。友達がその写真がほしいらしくてね。ちょうど出かけてるし、代わりに撮影してるの!』
「へー。」
友達の代わりにか・・・。
中崎って、木通からだと往復で3000円くらいするよな・・・。
写真は金取るのかな?
「あ、そうそう。さっき何で電話したの?」
『ああ!そうだった!あとで宅配便が届くはずだから、サインしといて!』
「春姉が通販で買ったやつ?」
『違う違う!お父さんからだよ!』
「父さんからか。」
父さんは、世界中を飛び回っている考古学者で、普段は家にいないので、時々手紙と一緒に様々な贈り物をしてくれる。
変な仮面とかが送られてきて困るときもあるけど。
『よろしくね!ちゃんと夜ご飯までには帰るから!』
「ん、了解。」
どうやらまた電車が来たみたいなので、俺は通話を切った。
『ご飯できたよ。』
「おう、ありがとう。」
『洗い物はやってね。』
「オーケー。じゃあミー子も一緒に食べるか。」
「・・・(こくり)。」
二人で、食卓を囲む。
家を空ける家族が多いこの家では、よくある光景だ。
たまに家族で食べるのもいいけど。
「いただきます。」
「・・・(もぐもぐ)。」
ま、静かな昼飯っていうのも、いいかもしれない。
「これが父さんからの贈り物か・・・。」
『使うの?これ。』
「俺にはよく分からん・・・。」
父さんから贈られてきたものは、古そうな本と、辞書だった。
タイトルは見たこともないような字で書かれている。
開いてみると、おそらくはタイトルと同じ言葉で書かれている文がずらっと並んでいた。
読ませる気ないだろ。
絵もついているが、何してるのかもわからない絵だ。
なんだよこれ。
そして辞書にはこう書いてあった。
【アリンガ語、ルグバラ語辞典】
「聞いたことねーよこんな言語。」
『いや分かったら逆にすごいよ。』
調べてみると、ウガンダの農耕民のようだ。
だからなんだということではないが。
「手紙にはなんて書いてあるんだろう。」
『読んでみよう。』
【今回の地方の贈り物は買えなかった!また来月期待しててくれ!その本はルグバラ族の伝記みたいなものらしい。小さな村の村長にもらったんだ。貴重だろ?父さんの部屋に置いておいてもらえると助かる。もちろん、読みたいなら読んでもいいぞ?あ、そういえば、来年あたりからしばらく日本での研究に入るから、来年は家にいるぞ!秋穂、春女、夏央、楽しみだな!】
「・・・。」
『よかったね。』
「そうだな。」
父さんが、しばらく日本にいてくれるのか。
来年からだけど。
母さんと結婚してからも、交流が少なかった父さん。
少ない交流の中でも、父さんは俺にやさしく接してくれた。
日本に戻ってきたら、もっと、父さんと仲よくなりたいと思っている。
家にはいないけど、父さんだって、家族だから。
『もう一枚あるね。』
「あ、ほんとだ。」
一枚目より紙のサイズが小さい。
なんだろう。
【夏央へ
母さんから聞いたぞ。停学になったんだってな!父さん笑っちまったよ。でもな、夏央。父さんはよくやった!と思う。女守るために、停学の一つや二つ気にしちゃいけないぞ!まだまだ高校生のガキなんだから、やりたいことやりゃいいさ。あ、犯罪だけはダメだからな!とにかく、夏央が周りの目より、自分の女を守れる男で父さんはうれしく思うぞ!】
「父さん・・・。」
『よかったね。』
「ふ、へへっ・・・。」
褒めてくれた。
やったことは決していいこととは言えないけど、それでも父さんは褒めてくれた。
なんだかうれしいぞ。
『確かにあの時、なっちかっこよかったなー。』
「ふへへっ、そうか。」
『あとなっち照れた時の笑い方気持ち悪いよね。』
「なんだとう!」
悪かったな気持ち悪くて!
・・・俺どういう笑い方してるんだろう。
「ただいまー!」
「あ、春姉おかえり。」
『おかえりなさい。』
「うんただいまー。お、お父さんから来てるね!」
春姉が中身を確認しようと配達箱の方へ向かおうとした時、
ぴーんぽーん
家のチャイムが鳴った。
「ん?」
モニターを確認すると、若い感じの女の人が立っている。
「あ!なつくん、私が出るよ。」
春姉がマイクをオンにした。
「はーい!」
『あ、はるさめー?取りに来たよ。』
「ちょっと待っててねー!」
春姉が家の外に出た。
「・・・春姉って、大学ではるさめって呼ばれてるんだ。」
『まあ、1文字足すだけだもんね。』
だったら普通に名前で呼べばいいんじゃないか。
まあ、友だち同士のあだ名だし、俺らが入り込むことじゃないけど。
「じゃあ、また明日!」
「うん、ありがとねはるさめ。」
春姉が家に戻ってくる。
「いえーい1000円ゲット。」
「1000円で売れるのか。」
「まあ、頼みこまれたやつだし、いい感じに撮れるまで何回も撮影したからね。」
『取り鉄って大変そう。』
「うん、結構体力使うね。」
外でずっと待ってないといけないしな。
「よし、もう6時半だし、お父さんからの贈り物は後にして先に夕飯を作ろう!今日は私が作るよ!」
この姉、体力あるな。
まあ、休日歩き回ってる人だし、普通の女子大生よりは体力あるか。
「さーなつくんも美衣ちゃんも手伝って!」
「あ、俺らもやるのね。」
『まあまあ、一日中歩いてたんだし、それなりに疲れてるはずだよ。』
体力無尽蔵な人じゃなかった。
でも、みんなで協力して作るのは楽しかったし、なにより美味しかった。




