表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Please speak!  作者: 長野原春
11/113

停学中はとても暇です

 とても、長い時間が経ったような気がする。

 カレンダーを見ると、まだ4日しか経っていないことに気付かされる。

 俺の横で静かに眠るミー子を見る。

 このまま、これが続くんだろうか。

 この4日間、俺はずっとミー子と一緒に寝ている。

 朝起こして、ご飯を作って、ミー子と一緒に食べて、風呂に入って、寝かしつけた。

 精神的にかなり不安定な状況で、近くにいてやらないとなにをするかわからないそうだ。

 実際、一昨日の夜は寝てるはずのミー子がいきなり起きて部屋を出て行った。

 連れ戻して寝かしつけたが、昨日の夜にも同じことがあった。

「ミー子、朝だぞ。」

「・・・(むくり)。」

 呼びかけると、ミー子はすぐに起きた。

「おはよう。昨日、何で夜中急に起きたんだ?」

「・・・?」

 ミー子は知らないとでもいうように、首をかしげた。

 ・・・昨日と全く同じ反応だった。

「覚えて、ない?」

「・・・(こくり)。」

 ミー子は何も覚えてないという。

 これはなんなんだろう。

 明日病院の先生にでも聞いてみようか。

「朝飯、作ってくるから。待っててな。」

「・・・(ふるふる)。」

 俺が部屋から出ようとすると、ミー子は俺についてきた。

 一人になるのが嫌らしい。

 4日前からずっと、こんな調子だ。

『ごめん、一人が怖いの。迷惑なのはわかってる。でも、怖いの。』

「ミー子・・・。」

『一人になると、思い出すの。冷静な振りしてたけど、すごく怖かった。』

「だ、大丈夫だよ。あの先生はもういない。逮捕されたんだぜ?」

『それでも怖いの!』

 ミー子が俺をにらみつける。

 あの日、俺がミー子から目を離したせいでこうなった。

 祈木の言葉を、ちゃんと守れなかった。

 言い方は悪かったけど、的を得ていたあの言葉。

 ちゃんと、捕まえておいて、俺のそばに置いておくべきだった。

 京介を呼び止めておいてもよかった。

 祈木に待ってもらってもよかった。

 なにより、あの先生はもう大丈夫なんて思ったのがいけなかった。

 吉田がミー子に土下座をしたとき、吉田が笑みを浮かべていたのは知っていた。

 なんで、俺は心を許してしまったんだろう。

 なんで、警戒を解いてしまったんだろう。

 毎日、後悔に苛まれている。

 しかし、今は目先のことを何とかするべきだ。

 ミー子がそばにいてほしいって言うのならそうしてあげるべきだ。

「・・・分かった。悪かったな。朝飯、作るの手伝ってくれるか?」

「・・・(こくり)。」

 朝ご飯の味なんて、分かるわけがなかった。




 ミー子がゲームをしたいと言い出したのでミー子の部屋でゲームをすることになった。

 相変わらず、2人でパラロスをやっていた。

 ミー子の方を見ると、なんだか顔に力が入ってる気がした。

 いつもより、敵を倒すのが早い。

 気づいたら、2000体斬りを達成していた。

「た、楽しいか?」

「・・・(こくり)。」

 いや、多分、今のミー子は楽しんでいない。

 ただのストレス発散だ。

 魅せ技も使わず、ただただ悪魔を斬っている。

 その戦いは、あっという間に終わってしまった。

「・・・終わりか?」

「・・・(こくり)。」

 GS3の電源を切り、ベッドに体を投げ出したミー子が、いきなり服を脱ぎ始めた。

「お、おい。何してんだ。」

 下着姿になったミー子は、俺の方をじっと見つめ、ケータイを見せてきた。

『なっち、お願いがある。』

 お願い。

 今からされるお願いはなんだろうか。

 そんなの、分かっている。

 何で服を脱ぎ始めたのか、そんなの決まっている。

『私を抱いて。』

 ・・・ミー子が、俺に汚されるためにだ。

「な、なんでいきなり・・・。」

『あの日、私はあの先生に汚されそうになった。』

『そんなの私は望んでなかった。』

『とっても怖かった。』

『あんな先生に奪われるくらいなら、』

『私は、なっちに奪ってほしい。』

『だからお願い、私を抱いて。』

 ミー子が、俺に寄りかかってきた。

 つまり、俺を誘ってるんだ。

 でも、でもなミー子。

 今の俺に、そんなことはできない。

 いくらお前の頼みだからと言って、そんなことできるわけがない。

 ・・・そんな、諦めたような、死んだような目で言われても、できるはずがない。

 それは願いじゃない。ただ自暴自棄になっているだけだ。

「なあ、ミー子。自分の体くらい大事にしてやってくれ。自分のものなんだから。」

『いいんだよ。自分のものだからこそ、なっちにあげたいんだよ。』

「そんな悲しそうなミー子からもらっても、嬉しくないよ。」

『なんで。』

「・・・あんなことがあったばっかりで、慰めるために抱いても、幸せにはなれないよ。」

『何で聞いてくれないのさ。』

「今やっても、後悔しかしないよ。だから、今はダメだ。」

 そういうと、ミー子は俺に抱きつき、静かに泣いた。

 これでいいんだ。

 後悔なんて、もうしたくないから。


「・・・もう、大丈夫か。」

「・・・(こくり)。」

「ならよかった。」

 ミー子が泣き止んだのは、あれから1時間経ってからだった。

 自暴自棄になっていたミー子だが、考えを改めてくれたらしい。

『私、バカなこと言ってた。』

「まあ、仕方ないとは言わないけど、やっぱりああいうのはね。」

『なっちのことは大好きだけど、そういうのはちゃんと段階を踏んでね。』

「あ、ははは・・・。そうだな。」

 実際今の俺にその気はない。

 今の俺に、ミー子を抱く権利なんてない。

 俺が、俺自身を許さない。

 ミー子が自身の過去から解放されるまで、俺はこの子を守る義務があるんだ。




『頭痛くなってきた。』

「大丈夫か?」

「・・・(ふるふる)。」

 どうやらきついらしい。

 ミー子は偏頭痛とかは持ってなかったはずだが・・・。

 これも、ストレスが原因なんだろうか。

「薬飲んで寝とくか?」

「・・・(こくり)。」

 薬箱から頭痛薬を取り、2錠出す。

「これ飲んで寝とけ。今は時間はたっぷりあるから。」

「・・・(こくり)。」

 ミー子が寝てる間に、先生からもらった形だけの反省文を書くか。

 内容なんて適当でいい。

 俺は生徒を守ったんだから。

 ただ、教師を殴ったということのためだ。

 まあ、体裁を整えるためだけのやつだ。

「・・・(くいくい)。」

 ベッドに横になったミー子が、俺の服の袖を引っ張ってきた。

「どうした、ミー子?」

『一人は怖い。』

「あ、ああ・・・。」

 ミー子が寝付くまで、15分かかった。




 ちゃっちゃと反省文を書き終え、学校から出された課題も終わらせた。

 本来、停学処分になった時の学校の課題は膨大な量だが、まあ今回は表面上の処分ということで。

 しかし、やることがなくなってしまうととても暇だ。

 一応停学中だからバイトにも出れないし。

 外で遊ぶわけにもいかないし。

 もし1人で外に出ている間にミー子が起きたりしたら大変だし。

「本でも読むか・・・。」

 たしか、まだ読んでないラノベがあったはずだ。


 自分の部屋に戻り、ベッドに腰掛けて本を読む。

 俺のベッドには今ミー子が寝ているので、寝転がって読むことができない。

 ずっと読んでたら腰が痛くなりそうだ。

 まあ、そんな一気に読むもんでもないか。

「すー・・・、すー・・・。」

 ・・・いざ読もうと思うと、ミー子が気になって読めない。

 この4日間、ずっとミー子と一緒にいたが、よく考えると同じ部屋で同じベッドで寝るって問題だよな。

 男女七歳にして・・・なんだっけ?

 ってか、七歳だっけ?

 まあいいや。とにかく、そういう間違いを起こさないためのことわざがあった。

 今そのことわざ完全に無視してるよな。

 同じ部屋どころか同じベッドで寝てる。

 俺のベッド、セミダブルでよかった。

「早く、復活してくれよー・・・。喋れはしないけど、元気なミー子が見たいぞー・・・。」

 小声でミー子に話しかけ、頭を撫でた。

 髪、さらさらしてた。

「っ・・・。」

 触られたことに反応したのか、ミー子が寝返りを打った。

 ・・・枕に顔をうずめ、きれいなうつぶせ状態になった。

「こえーよ。ってか息できんのかそれ。」

 なんか血糊をたらしたら殺人現場に見えそうだ。

 体制を変えてあげようにも起こすと申し訳ないので、うつぶせのまま放置した。




『おはいお。』

「打ち間違えてるぞ。」

『おはよう。』

「おう、おはよう。ずいぶん寝てたな。」

「・・・(こくり)。」

 ミー子が起きたのは、夜8時のことだった。

 5時間も寝てたわけだ。

「腹減ってないか?」

『なにかたべたい。』

「わかった。ちょっと作るから待ってろ。」

「・・・(こくり)。」

 お・・・?

 ミー子がついてくると言わなくなった。

 もう一人でも大丈夫なのだろうか。

「どれくらい食える?」

『そんなに多くは食べられそうにない。』

「そっか。了解。」

 じゃあ手軽に焼きおにぎりあたりでいいか。

 ミー子は俺の後ろに来るようなことはせず、テレビを見ている。

「もう一人でも大丈夫か?」

「・・・(こくり)。」

「そうかそうか。それはよかったな。」

『このままだとなっちにたくさん迷惑がかかっちゃう。それはよくない。』

「そっか。」

『4日間、ありがとう。心強かった。』

「どうってことねーよ。ミー子が困ってるんだから、助けるのは当たり前だろ?」

『前に約束してくれたもんね。でも、カッコよかったよ?』

「別にかっこいいとこなんて・・・。」

 ただ4日間一緒に過ごしただけだ。

『カッコよかったよ。』

「そ、そうですか・・・。」

「・・・(こくり)。」

 そのあと、焼きおにぎりを食べさせて、俺は家に帰った。

 ミー子が少しではあるが、元気を取り戻した。

 このまま完全に復活してくれればいいが・・・。

 そんなことを思っていると、ミー子からラインが入った。

『ゴメンやっぱ一人で寝るの怖い。たすけて。』

 ・・・まだまだ、時間がかかりそうだ。 




「そろそろ停学処分も解けるな。」

 カレンダーを見ると、あれから1週間が経とうとしていた。

『あんま学校行きたくないんだけど。』

「大丈夫だ。あの先生はもういない。」

『社会準備室には当分入れない。』

「うん、まあ、入らなくていいんじゃないかな。」

 別に俺たちは社会係とかそういうのでではない。

 吉田が俺たちを手伝いに指名していただけだ。

「祈木たちも待っててくれてるし、行った方がいいと思うぞ?」

「・・・。」

 ミー子がうつむく。

 まあ、仕方ないよな。

「うーん、まあ、どうしても無理ってんなら気が済むまで休んでいいんじゃないか?その分のノートは取っておくからさ。」

「・・・。」

 ミー子がさらに下を向き、考え込むような仕草をする。

 ミー子はしばらく考えた後、

「・・・(ふるふる)。」

 首を横に振った。

『やっぱり行くよ。なっちにも迷惑がかかっちゃうし、よく考えたら家に一人でいないといけない。』

「そうか。」

『また、一緒に登校しよう。』

「ああ、そうだな。」

 いつものことのような気もするけど。

『なっち、もう課題とか終わったの?』

「おう、全部終わったぜ。」

『することないね。』

「まったくないな。」

 一応停学中だし、外にも出れない。

 家のこともやったりしたけど、もう全部終わった。

 春女さんに頼んでビデオを借りてきてもらったけど、全部見終わった。

 何をしてろって言うんだ。パラロスか。

 いや、この停学中、かなりの時間パラロスをやった。

 前に解禁したセラフィエルやメタトロンはもう限界まで強化したし、新しく解禁したラファエルやガブリエルだって強化した。

 あと残っているのはミカエルとルシファーくらいだ。

 まあ、その2体はいずれ解禁するとして、飽きたとは言わないがパラロスはめっちゃやった。

 さてなにしよう。

『・・・する?』

 そういって、ミー子がちらっと胸元を見せる。

 何考えてるんだこいつは。

 ・・・暇になると、やることがないからだろうか。

「しない。」

『なっちってもしかしてホモ?』

「違うわ!」

 断っただけでホモ扱いかよ!?

 ひどくない!?

 相手は誰!?京介!?

「やべ・・・、吐きそう・・・。」

『大丈夫?』

 ないわー。相手が京介とかないわー・・・。

「ミー子、前も行ったけど、自分の体くらい大切にしなさい。そんなノリでやるもんじゃありません。」

『なっちはちょっと考え方が古いかーちゃんか。』

「なんですと!?」

 いや、興味はあるけどさ!

 そういうのはね?ちゃんと段階を踏んでからやるもんだろ?

 な?

『私は別になっちならいつでもいいんだから。』

「うっさいわ。今のままだと声が聞けないでしょーよ。」

「・・・。」

 ミー子が固まった。

 あ、まずいこと言った。

 治る見込みはがあるとはいえ、100%というわけでもない。

 このまま声が戻らなかったら・・・。

『なっち、変態。』

「え?」

『そっかそっか。なっちは声を聴いて興奮するんだね。喘がせたいんだね、変態。』

「・・・。」

 あー、うん。

 ミー子も怒るところ違うけど、確かに失言でした・・・。

 ミー子にはいろいろ聞かれたけど、その質問全てに俺は答えなかった。


「・・・で、本当にやることないんだけど。」

『寝る?』

「確かに時間は進みそうだけど・・・。」

 起きた時めんどくさい。

 頭が痛くなるのは嫌だ。

「材料無いから新しいお菓子も作れないし、かといって外に買いにも行けないし・・・。何で外に出ちゃいけないんだよ停学はよ。」

『反省の期間。』

「その反省の期間に思いっきしゲームやってるのもいかがなものかと思うけどな。」

『形だけの停学なんだからへーきへーき。』

 じゃあ外に出してくれ。

 いや、遊びに行くんじゃなくて、お菓子の材料買うから。

 あ、ミー子に買いに行かせるならいいか。

 ・・・いや、ミー子を一人で外に出すわけにはいかないか。

 春女さんの帰りに合わせてお願いするとちょっと遅くなるんだよなー、作り終わるのが。

 あ、そういえば録画したアニメがあったんだ。

 それでも見るか。

 ソファに座ってテレビをつけると、隣にミー子が座り、密着してきた。

「ミー子?なんでそんなにくっつく?」

『あったかい。』

「くっつかなくても部屋暖かいと思うんだけど。」

「・・・(ぷー)。」

 そういうと、ミー子がほおを膨らませた。無表情で。

 無表情って何やってもシュールになるんだろうか。

『なっち、分かってないね。』

「なにが。」

『女の子に密着されて土器っ!』

「変換間違ってるぞ。」

『ドキッ!』

「あざとい。笑顔ならなおさら。」

『笑顔のサービス料金は10万円となります。』

「財布すっからかんなるわ。」

 どんだけ高いんだよスマイル。

 まあ、笑顔なんてミー子が見せた覚えないが。

『ごめん、表情の変え方忘れたからやっぱ無理。』

「さらっとすごいこと言ってるよな・・・。」

 頬の筋肉が固まってそうだ。

 さて、気を取り直して、アニメ見るか。


「おうどうするか30分しか時間つぶせなかった。」

『大丈夫、今日だけの辛抱だよ。』

「その今日が大変なんじゃないか。」

 暇って本当に大変だな・・・。

 時間の進みがものすごく遅く感じる。

「しかたねー。あれ持ってくるか。」

「・・・?」

 ミー子が首をかしげる。

 そう・・・。パラロス以外のゲームで、前に流行ったもの!

 今はしまってあるが。

「ミー子、Wiinでスマブラやるぞ。勝負だ。」

「・・・(こくり)。」

 昔はミー子に手も足も出なかったが、今はどうだろう。

 ミー子は相当ブランクあるだろうし、俺はゲーム自体うまくなった。

 今なら、勝てる!


『フッ、まだまだじゃな、小僧。』

 勝てなかった・・・ッ!

「誰が小僧だ誰が。」

『ふぉっふぉっふぉ。ワシに勝てぬようじゃまだまだ小童じゃ。』

「その爺さん口調やめろ。」

 あれな、ただの爺さんじゃなくて相当やり手の爺さんな。

 漫画とかで出てくるめっちゃ強いタイプの。

「もっかい!」

『フフフ、何度やっても結果は同じじゃよ。』


「勝てない!」

「・・・(ぴーす)。」

「美衣ちゃん、強いねー。」

 何度やっても勝てねえ。

 途中から春女さんもまじってきた。

 しかし、一回もミー子には勝てなかった。

 こいつ、強すぎる・・・!

「あ、結構時間立ったな。」

『戦いは時間を忘れさせてくれる・・・。フ、これだから戦いはやめられんよ。』

「まだ続いてたのかそれ。」

『さすがにもう面白くないか。』

 ミー子が普通の口調に戻った。

 変えようと思えがいくらでも変えられるだろうが。

『今日は夕飯私が作る。』

「いいのか?」

『なっちには1週間お世話になったから。』

「あ、じゃあ私も手伝うよ。」

『お願いします。』

 ミー子と春女さんがキッチンに入っていく。

 作ってくれるんだったらその言葉に甘えよう。

 ただ、一つ問題がある。

 ・・・夕飯ができるまでヒマだということだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ