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整理整頓しかできない俺、異世界では世界の法則まで片付けられるようです  作者: ももにく


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第66話 三つの扉


三つの扉が。


目の前に並んでいる。


【世界へ帰る】


【地球へ帰る】


【どちらにも属さない】


俺は。


しばらく動かなかった。


地球。


俺が生まれて。


育って。


死んだ場所。


そして。


世界。


エリスたちと出会って。


笑って。


戦って。


守りたいと思った場所。


最後の一つ。


どちらにも属さない。


それは。


誰にも縛られない道。


自由で。


何も背負わなくていい。


「……」


正直。


少しだけ。


惹かれた。


全部を投げ出して。


どこにも属さず。


誰にも責任を負わず。


ただ。


自分だけの場所で生きる。


そんな未来も。


悪くないと思った。


「蓮」


エリスが。


俺を見る。


「選ばなくても」


いいよ。


そう言うのかと思った。


でも。


エリスは。


何も言わなかった。


ただ。


俺を見ている。


リナも。


アルベルトも。


フェンリオスも。


誰も。


俺の代わりに決めようとはしなかった。


「……そうだよな」


俺は。


笑った。


「これは」


「俺の選択だ」


一つ目。


【世界へ帰る】


扉に触れる。


世界の記憶が。


流れ込んでくる。


森。


ミレア。


ギルド。


エリス。


リナ。


フェンリオス。


魔王城。


王都。


仲間たち。


初めて。


自分の力を使った日。


誰かを守った日。


そして。


みんなと笑った日。


俺は。


手を離した。


「……やっぱり」


「ここが好きだ」


次の扉。


【地球へ帰る】


触れる。


懐かしい匂い。


家。


道路。


仕事。


何気ない日常。


あの日。


拾ったゴミ。


雨上がりの空。


そして。


ユナ。


「……」


胸が痛んだ。


地球も。


大切だった。


俺の人生だった。


なかったことには。


絶対にしたくない。


でも。


扉の向こうへ。


戻りたいとは。


思わなかった。


「ありがとう」


俺は。


扉から手を離す。


最後。


【どちらにも属さない】


触れる。


何もない。


静かで。


自由。


誰にも干渉されない。


何も失わない。


何も選ばなくていい。


その瞬間。


ゼロが。


俺の隣に立った。


「蓮」


「ん?」


「それ」


「あなたが」


「一番怖いと思ってるもの」


「……」


「誰もいない場所」


俺は。


黙った。


そうだった。


俺は。


自由が欲しいんじゃない。


一人になりたくない。


世界の外側まで来た理由も。


力を得た理由も。


結局。


誰かを失いたくなかったからだ。


「……」


俺は。


三つ目の扉から手を離す。


そして。


一つ目の扉を見る。


【世界へ帰る】


俺は。


迷わず。


その扉を開いた。


眩しい光が。


溢れ出す。


「帰ろう」


エリスが。


微笑んだ。


「うん」


一歩。


また一歩。


みんなが。


光の中へ入っていく。


最後に。


俺も。


扉をくぐった。


――その瞬間。


世界が。


俺を包んだ。


【所属】


【世界】


【確定】


【帰還】


【完了】


そして。


聞き慣れた音。


風。


鳥の声。


草の匂い。


「……帰ってきた」


森だった。


最初に。


この世界へ来た場所。


俺は。


地面に手をつく。


「懐かしいな」


リナが。


笑う。


「ここから全部始まったんだよね」


「ああ」


フェンリオスが。


森の奥へ走っていく。


アルベルトも。


周囲を確認する。


「異常なし」


ノアが。


空を見上げる。


「世界」


「ちゃんと戻ってる」


ミラが。


目を閉じる。


「うん」


「もう」


「私が全部管理しなくても」


「世界は動いてる」


アリアが。


笑う。


「よかった」


ユナは。


森の木に触れた。


「これが」


「蓮の世界なんだ」


「そうだ」


ゼロは。


少し不思議そうに。


草を触っている。


「普通」


「だね」


「普通だよ」


俺は。


笑った。


そのとき。


エリスが。


少し離れた場所にいた。


「エリス?」


「……」


彼女は。


自分の胸元を見ていた。


世界核。


以前とは違う。


淡い光を放っている。


「どうした?」


「世界核が」


「静か」


「それは」


「いいこと?」


「うん」


エリスは。


笑った。


「今まで」


「ずっと」


「何かを守らなきゃって」


「思ってた」


「でも」


「今は」


「ただ」


「生きてる感じがする」


「……」


「蓮のおかげ」


俺は。


首を振った。


「みんなのおかげだよ」


エリスが。


少しだけ頬を赤くする。


「……そういうところ」


「何?」


「ずるい」


「え?」


「なんでも」


「みんなのおかげにするから」


俺は。


苦笑する。


その瞬間。


空から。


一枚の紙が。


ひらひらと落ちてきた。


「……」


拾う。


見覚えのある文字。


『整理整頓』


その下に。


新しい文章があった。


『世界は』


『もう誰か一人が』


『管理する必要はありません』


『だから』


『あなたは』


『好きなように生きてください』


俺は。


紙を見つめる。


「……」


そして。


その紙を。


綺麗に折った。


「何してるの?」


エリスが聞く。


「記念」


「記念?」


「ああ」


俺は。


ポケットにしまう。


「初めて」


「整理する必要がない紙だから」


エリスが。


笑った。


「それ」


「すごく蓮らしい」


そのとき。


遠くから。


リナの声がする。


「ねえ!」


「これからどうするの?」


俺は。


空を見る。


魔王も。


王国も。


来訪者も。


世界の外側も。


全部。


一度は乗り越えた。


だから。


これからは。


決められていない。


俺の人生だ。


「まずは」


「腹減った」


「……」


みんなが。


一斉に笑った。


俺も。


笑う。


その瞬間。


世界のどこかで。


小さな音がした。


【始原整理】


【継続】


【新規項目】


【日常】


俺は。


その表示を見て。


少しだけ。


嬉しくなった。


世界を救った後に。


待っていたのは。


新しい敵じゃなかった。


新しい日常だった。


――ただ。


その日の夜。


俺は。


一人で空を見上げた。


星の中に。


一つだけ。


見たことのない星がある。


それが。


三回。


瞬いた。


「……?」


そして。


小さな声が聞こえた。


『蓮』


俺は。


空を見上げる。


『次は』


『世界を整理するんじゃなくて』


『世界で』


『何を残すか』


『決める番だよ』


俺は。


笑った。


「……それなら」


「もう」


「決まってる」


星が。


静かに輝いた。


俺は。


みんなが待つ家へ。


歩き出した。

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