46
第46話 世界が揺れる
【世界創造者の存在を確認】
【始原構造が更新されます】
【世界の法則が――再編開始】
その文字が浮かんだ瞬間。
大地が揺れた。
「きゃっ!」
リナがよろめく。
アルベルトがすぐに支えた。
「全員、足元に注意しろ!」
地面に。
無数の光の線が走っていく。
街の建物。
森。
山。
川。
そして。
遠くにある王都までも。
すべてが。
一本の巨大な構造として繋がっていく。
「これは……」
エリスが呟く。
「世界そのものが」
「変わってる?」
俺は【構造解析】を発動する。
【世界構造】
【再編率:0.7%】
【原因:世界創造者の帰還】
「0.7%……」
まだ小さい。
でも。
問題は。
その下だった。
【既存法則との衝突】
【発生】
「まずい」
「何が?」
アルベルトが聞く。
「世界を作ったときの構造と」
「今の世界の構造が」
「噛み合ってない」
「つまり?」
「このままだと」
俺は地面を見る。
「世界が」
「二つの形に引っ張られる」
その瞬間。
遠くで。
轟音が響いた。
山が。
一瞬だけ消えた。
「……!」
そして。
次の瞬間。
元に戻る。
だが。
山頂にあったはずの森が。
別の場所へ移動していた。
「世界が」
「勝手に整理されてる……」
俺は。
ミラを見る。
「止められるか?」
ミラは。
首を横に振った。
「私には」
「もう」
「昔みたいな力はない」
「じゃあ」
「どうして世界創造者なの?」
「作ったのは」
「昔の私だから」
「……」
ミラは。
悲しそうに笑う。
「世界を作ったときの私は」
「もっと大きかった」
「でも」
「願いが分裂して」
「アリアになった」
「……」
アリアが。
ミラを見る。
「私が」
「あなたの願い?」
「そう」
「じゃあ」
「私はあなたの一部なの?」
「最初はね」
ミラは答える。
「でも」
「もう違う」
「あなたは」
「あなた自身」
エリスが。
静かに聞いた。
「じゃあ私は?」
ミラは。
エリスを見る。
そして。
微笑んだ。
「あなたは」
「私が世界に触れた場所」
「……」
「願いが世界に入り」
「世界が願いを受け取った」
「その境界から」
「あなたが生まれた」
俺は。
ようやく理解する。
アリアは。
始原外存在の最初の願い。
ミラは。
その願いから生まれた世界創造者。
そして。
エリスは。
その世界と願いが交わった結果として生まれた存在。
三人は。
似ているけど。
同じではない。
「だから」
俺は言った。
「三人とも必要なんだな」
ミラが頷く。
「そして」
俺を見る。
「あなたも」
「俺も?」
「あなたは」
「全部を繋ぐ」
「……」
その瞬間。
空が黒く染まった。
「来た」
アリアが呟く。
「何が?」
「外側」
亀裂が。
一斉に開く。
第五来訪者。
第六来訪者。
第七来訪者。
そして。
まだ見たことのない存在たち。
世界の外から。
こちらを見ている。
その中から。
一人が降りてきた。
銀色の髪。
長い白衣。
無表情な女性。
「世界創造者」
彼女が。
ミラを見る。
「発見しました」
「……」
ミラが。
俺の後ろに隠れる。
「え?」
「怖い」
「いや、俺も怖いんだけど」
女性は。
俺を見る。
「あなたが」
「現在の保持者」
「始原整理」
「……そうだけど」
「返却してください」
「断る」
即答。
女性は。
少し首を傾げた。
「なぜ?」
「俺の力だから」
「正確には違います」
「またそれ?」
「その力は」
「世界創造以前から存在していました」
「でも」
俺は。
胸に手を当てる。
「今は俺の中にある」
「それが?」
「俺が選んだ」
女性は。
しばらく黙った。
そして。
手を上げる。
「では」
「確認します」
空間が。
一瞬で固定された。
「……!」
俺の身体が。
動かなくなる。
【世界外部干渉】
【行動権限を固定されています】
「レン!」
エリスが叫ぶ。
フェンリオスが飛び出す。
だが。
透明な壁に弾かれた。
「フェンリオス!」
俺は。
【境界整理】を使う。
しかし。
何も起こらない。
【対象構造】
【世界外部】
【権限不足】
「……くそ」
初めて。
整理できない。
女性が。
静かに言った。
「あなたの力は」
「世界内部でのみ」
「完全な効果を発揮します」
「じゃあ」
俺は。
笑った。
「ここが」
「世界の中ならいいんだな?」
女性の顔が。
初めて変わった。
「……?」
俺は。
自分の足元を見る。
今いる場所。
地面。
空気。
魔力。
そして。
俺たち自身。
「世界の外側から来たなら」
「世界の中に入った瞬間」
「お前も」
「この世界の構造に触れてる」
【構造解析】
【対象:第八来訪者】
【世界接続率:0.3%】
【接続点を検出】
「見つけた」
俺は。
笑った。
「お前にも」
「整理できる場所がある」
【始原整理】
【境界整理】
発動。
女性の足元に。
一本の線が現れる。
「……!」
「世界と」
「お前の境界を」
俺は。
ゆっくり整えていく。
「勝手に」
「繋げるんじゃない」
女性の動きが。
止まった。
【世界接続率】
【0.3%】
【0.2%】
【0.1%】
「これは……」
女性が初めて。
驚いた。
「接続を」
「整理している……?」
「そう」
「だから」
「帰るなら」
「自分で帰れ」
俺は。
最後の線を整える。
【世界接続】
【0%】
女性の身体が。
白い光になる。
「……」
消える直前。
女性が。
俺を見る。
「理解しました」
「何を?」
「あなたは」
「始原整理そのものではない」
「……」
「あなたは」
「始原整理を」
「選択できる存在」
白い光が。
消えた。
そして。
空に残っていた亀裂も。
一つだけ。
閉じた。
「……終わった?」
リナが聞く。
「たぶん」
だが。
【世界構造】
【再編率:0.7%】
【警告】
【再編は停止していません】
俺は。
表示を見つめる。
「……まだだ」
エリスが。
俺を見る。
「何が起きてるの?」
「ミラが戻ったことで」
「世界が」
「昔の構造を思い出してる」
「じゃあ」
「どうすればいい?」
俺は。
世界記憶を開く。
すると。
今まで見えなかった。
最深部の情報が。
初めて一行だけ表示された。
【世界再編を停止する方法】
【世界創造者本人による再定義】
俺は。
ミラを見る。
「ミラ」
「うん」
「この世界を」
「もう一度」
「作り直す必要がある」
ミラは。
小さく頷いた。
「分かった」
そして。
その瞬間。
ミラの瞳が。
金色に輝いた。
『――では』
『最初の願いから』
『もう一度』
『世界を整理しましょう』
世界全体が。
光に包まれた。




