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第47話 最初の願い
世界が。
光になった。
地面も。
空も。
山も。
街も。
すべてが白く染まっていく。
「エリス!」
俺は彼女の手を掴んだ。
「蓮!」
強く握り返される。
「離さないで!」
「ああ!」
リナとアルベルト。
フェンリオス。
アリア。
そしてミラ。
全員が光の中に包まれていく。
だが。
不思議なことに。
怖くなかった。
【世界構造】
【再編率:3.2%】
【7.8%】
【15.4%】
数字が。
急速に上がっていく。
「このままだと」
俺は呟く。
「全部が作り直される」
ミラが。
静かに頷いた。
「うん」
「昔の世界に?」
「違う」
「じゃあ?」
ミラは。
俺を見る。
「私が作った世界じゃない」
「……」
「今の世界を」
「残す」
「じゃあ」
「何を変える?」
ミラは。
答えなかった。
代わりに。
俺の胸に手を当てた。
「あなたが決めて」
「俺が?」
「うん」
「世界を作ったのはミラだろ」
「そう」
「なら」
「あなたが決めればいい」
「でも」
ミラは首を振る。
「昔の私は」
「一人だった」
「だから」
「自分の願いだけで」
「世界を作った」
「今は?」
ミラが。
俺たちを見る。
「今は」
「たくさんいる」
エリス。
リナ。
アルベルト。
フェンリオス。
アリア。
そして。
ミラ。
「だから」
「一人で決めたくない」
その言葉に。
俺は少し笑った。
「それなら」
「みんなの願いを聞けばいい」
【始原整理】
【世界再定義の条件を変更】
【単独決定】
↓
【共同決定】
世界の光が。
少しだけ弱くなる。
「……止まった?」
アルベルトが驚く。
「完全には止まってない」
俺は答える。
「でも」
「俺たちが決めるまで」
「待ってくれてる」
ミラが。
小さく笑う。
「世界は」
「願いから始まった」
「だから」
「新しい形も」
「願いから決められる」
最初に。
リナが手を挙げた。
「私は」
「普通に暮らせる世界がいい」
「普通?」
「うん」
リナは笑う。
「魔物が襲ってきても」
「突然世界が壊れたりしなくて」
「村のみんなが」
「安心して暮らせる世界」
「それなら」
アルベルトが続く。
「人間も」
「魔族も」
「勝手に敵と決めつけられない世界がいい」
フェンリオスが。
「グルル」
「……フェンリオスは?」
リナが聞く。
フェンリオスは。
エリスの隣に座る。
「守る」
「……それだけ?」
俺が聞く。
「グルル」
エリスが笑った。
「私を守るんだって」
「なるほど」
そして。
エリスが。
俺を見る。
「私は」
「自分で未来を決められる世界がいい」
「……」
「誰かの器でも」
「誰かの願いの一部でもなく」
「私自身として」
「生きたい」
ミラが。
静かに頷く。
「それが」
「あなたの願いなんだね」
「うん」
アリアも。
続いた。
「私は」
「誰かが一人にならない世界」
「でも」
「一人でいたい人まで」
「無理に一緒にしない」
俺は笑った。
「それ、結構難しいぞ」
「だから」
アリアも笑う。
「蓮がいるんでしょ?」
「俺任せかよ」
全員が笑った。
そのとき。
俺の中の【始原整理】が。
大きく反応した。
【願いを確認】
【複数の願いに矛盾を検出】
「……やっぱり」
俺は空を見る。
みんなの願いは。
完全には一致しない。
でも。
それでいい。
「ミラ」
「うん」
「世界を」
「一つの願いに合わせる必要はない」
「……」
「いろんな願いがあるから」
「世界なんだろ?」
ミラは。
しばらく黙って。
そして。
頷いた。
「うん」
【世界再定義】
【単一願望による構築:拒否】
【複数願望による共存構造:採用】
光が。
再び動き始める。
だが。
今度は違った。
壊れていない。
消えてもいない。
今あるものを残したまま。
その周囲に。
新しい構造が重なっていく。
「……すごい」
リナが呟く。
世界が。
整理されていく。
山は山のまま。
海は海のまま。
街は街のまま。
人も。
魔物も。
魔族も。
それぞれの場所を失わない。
そして。
最後に。
空へ一本の線が伸びた。
【世界外部との境界】
【再構築開始】
「来訪者対策か」
アルベルトが聞く。
「ああ」
俺は頷く。
「今までの境界は」
「閉じることしかできなかった」
「でも」
【境界整理】
【新規構造を構築】
「今度は」
「選べるようにする」
「選べる?」
「入ることも」
「出ることも」
「でも」
俺は空を見る。
「勝手には入れない」
その瞬間。
世界の外側から。
巨大な衝撃が加わった。
「っ!」
光の壁が。
大きく揺れる。
【外部干渉】
【高出力】
「誰だ!」
俺が叫ぶ。
答えは。
すぐに返ってきた。
『――世界を』
『人間の願いで再構築するだと?』
黒い声。
聞き覚えがある。
「……整理者」
黒衣の男。
亀裂の向こうに。
その姿が現れる。
だが。
今までとは違った。
身体の半分が。
黒い光になっている。
『そんな世界は』
『また乱れる』
男が手を上げる。
『だから』
『今度こそ』
『全部』
『分解する』
【分解】
黒い波が。
世界へ向かって放たれた。
「――来る!」
俺は。
エリスの手を握った。
そして。
初めて。
自分から前へ出る。
「今度は」
「俺が」
「世界を守る」
【始原整理】
【境界整理】
【構造再配置】
三つの権能が。
同時に。
光を放った。




