13:少しの好奇心
あははうふふと楽しそうに自分の執務室へ戻って行ったフルーさんに、せめてもうちょっと赤い顔が落ち着くまで居て欲しかったなぁなんて思わなくもない。
サイラスさんを見れば、フルーのやつ……と扉の方を睨んでいてやや怖い。その、トーリスさんというのは禁句なんだろうか?仲悪いのかな?まあ、きっとその内会えたりするだろうし気にしない事にしよう。もっと沢山の事を学んで、一人で出歩けるようになったらこの大陸を見て回りたいなぁ。美味しい物きっとあるよね!
「ええっと、さ、サイラスさん。その、明日は何を教えてもらえますか?」
「はい、城を案内しようかと思っています。全てを一日では無理ですので暫く午前は城の案内になります」
「広いですもんね。あ、ならなんとなく覚えたら一人で歩き回ってもいいんですか?」
「まあ、統治者の為の城ですし構いませんよ。勿論私も同行しますけど」
にこにこと、何だろうか。一人でふらふらするんですけど……なんてとてもじゃないが繰り返し言える雰囲気ではないなぁ。笑顔は色んな使い方があるものだ。無言の威圧感とでも言えばいいのかな?仕事出来ます感が凄い。
あれ……そう言えば、今さらだけどサイラスさんの仕事ってなんだろう?偉い地位なのは分かるんだけど、フルーさんやルディさん達のように役職は聞いた事ない。私に世話を焼いてくれているのは、有難いけど書類とか多いってルディさん言ってたし。
「今さらですけど、サイラスさんの仕事って何ですか?」
「私の仕事はスイ様の補佐でごさいます。スイ様がお生まれになる前は、統治者代理と言った所でしょうか」
「え、じゃあその、サイラスさんが日々片付けている書類って言うのはもしかしなくとも私がするべきなやつ……ですよね?」
「はい。ですが、そんな顔をなさらないで下さい。何もかもが分からない状態なのです、まずは知る事をなさるのが今のスイ様の仕事ですよ」
書類一杯だろうなと若干青くなる私に優しい言葉をくれるサイラスさんには、不純な理由で青くなってすいませんと心のなかで謝っておこう。
まだまだ先だろうけど、あの豪華な机で書類仕事するんだなぁと思うとなんかむずむずするかも。
ちょっと軽めに夕食を執務室で食べてから、また自分の部屋へ戻る。流石にもう執務室から自分の部屋までの道のりは覚えたし、一人で帰れますよと言ったら笑顔でお送りしますと返されて押しに弱い私はお願いしますとしか言えないのだ。部屋までほぼ道なりなのに……。
「それではスイ様、本日はこれにて下がります。良い夢を」
「あ、はい。サイラスさんもゆっくり休んで下さい」
今日も変わらず綺麗な所作で退室していったのを見て、私もあれ位出来るようにならないといけないのかな?なんて思うけど、まあ私には無理だろうな。必要なら言ってくれるだろうし今は考えるのよそう。
フルーさんにもらった兎の飴を一つ口に放り込んで、林檎の味だと飴を転がしながらお風呂へ。相変わらずいいお風呂です。
広いふかふかのベッドに寝転がり、今日の事を少し思い返してみる。
守備隊の方に挨拶に行った事やら、フルーさんにペンダントをもらった事。守備隊の皆さんはなんだか愉快な感じだったなぁ、名前……早く教えてもらえるように勉強頑張ろう。勉強なんて学生の時以来だなぁ、まぁあまり優秀じゃなかったけどね。
明日から城の案内ならば、きっと働いている沢山の人達に会えるだろう。なんだか楽しみだ。
ふとした瞬間に家族や友達の事なんかが頭を占める事もあるけれど、この世界で生きていくのもきっと楽しいと思えている自分に少し笑った。サイドテーブルに置いた兎の飴を見て、料理長のフツキさんだっけ?明日会えるかなといつも可愛らしく飾り付けされた食事に癒されているお礼を言おうと決めているのだ。




