第8話 前編
激烈な痛みと共に、リチャードは世界が傾いていくのを知覚した。
拳を受けたことで脳を揺さぶられた弊害である。
さらに視界の半分ほどが暗闇に染まり、彼は片目が潰されたことを理解する。
リチャードは堪らずよろめいた。
そこに騎士が容赦なく二撃目を見舞おうとする。
「くっ……」
リチャードは追撃を短剣で受けようとする。
刹那、放たれた騎士の拳が眩い紫色の光を発した。
(あれは――)
拳と短剣が接触した瞬間、リチャードの全身に強い電流が走った。
目の前が真っ白になり、彼は勢いよく吹き飛ばされる。
「――ッ!」
地面を転がったリチャードは立ち上がることができない。
四肢に痺れが残り、彼の命令を拒んでいた。
すかさず騎士が接近してきた。
電流を纏う蹴りが顔面に命中する寸前、リチャードは冷静に考える。
(また死んでやり直すか。何万回か食らえば対策できるはず……)
死が目前に迫る中、リチャードに恐怖はなかった。
代わりに過ぎったのは、一つの疑問だった。
(――本当にそれでいいのか?)
疑問が彼の身体を動かした。
騎士の蹴りはリチャードの右肩を掠めて肉と骨を削り取る。
しかし彼を即死させるには至らなかった。
「アアアアアアアアッァッ!」
叫ぶリチャードは、全身の魔力を活性化させる。
痺れを振り切って肉体を無理やり動かし、短剣を騎士の腹部に突き刺した。




