23/32
第7話 前編
「時間操作……? 何のことだ」
「とぼけても無駄だぞ。お主の肉体を巡る魔力の質が豹変している。洞窟に入る前とはまるで別人だ」
ルカが愉快そうに笑って指摘する。
嘘は決して見逃さない、とその自信に満ちた目つきが物語っていた。
静寂を挟み、観念したリチャードは正直に打ち明ける。
「……死ぬと時間が少しだけ戻る。何度も死ぬ中で剣技を鍛え上げた。どうしてそんな現象が起きているのかはわからない」
「なるほどな……ちなみに蝙蝠の魔神とは何回戦った? 百か? それとも千?」
「六十九万三千四百十一回」
「……ん?」
ルカが首を傾げて固まる。
リチャードは当然のように語り出した。
「六十九万三千四百十一回。毒持ちの蝙蝠が透明になって噛み付いてくるのが厄介だった。最初は回避や防御を試してみたが、まったく通用しなかった。だから攻撃に特化したんだ。洞窟の中ではそれが最適解だった」
「お主……想像以上に狂っているな」
「別にこれくらい普通だろ。何度だってやり直せるんだ。恐れることなく挑むことができる」
リチャードは淡々と述べる。
ルカは、目の前の少年の異常性を理解し始めた。




