21/31
第6話 後編②
魔神が血飛沫と肉片となって飛び散る。
それら一つひとつが無色透明の蝙蝠となり、必殺の毒を牙に込めてリチャードへ襲いかかろうとする。
しかしリチャードは冷静だった。
何万回と己を死に至らしめた攻撃だったが、膨大な試行錯誤の果てに対処法を確立していたのだ。
リチャードは短剣にすべての魔力を込める。
そして、目にも留まらぬ速度で連撃を繰り出した。
圧倒的な密度で放たれたそれは、もはや斬撃とも呼べない力の奔流だった。
それらが岩壁を削りながら突き進み、無尽蔵に増えた蝙蝠を一掃する。
透明化や毒も意味をなさなかった。
魔神の死を確認したリチャードは膝から崩れ落ちる。
乱れた呼吸で短剣を握った腕を見やる。
腕は血だらけで所々が裂けていた。
人体の限界を無視した高速斬撃の代償である。
リチャードは悔しそうに唸る。
(くそ、失敗だ……完璧な振り方なら反動なんてないはずなのに……)
その時、赤い煙が彼の腕を包み込んだ。
裂傷が蠢きながら塞がり、ほどなくして出血も止まって痛みが鎮まる。
リチャードが顔を上げると、そこには不敵に笑うルカの姿があった。
「合格だ。よく倒せたな」
ルカは愉快そうに言った。




