第5話 後編
リチャードとルカは森の中を進んでいく。
ルカは宙を漂いながら尋ねた。
「次の行き先は決めているのか?」
「いや、まだ……」
「ならば我が定めてやろう! 光栄に思うがいい!」
自慢げに宣言したルカは鼻を動かして何かを探る。
やがて進路からややずれた右方を指差した。
彼女は指し示した方角へと進み出す。
「ふむ、こっちだ。魔神が潜伏しているな。我の気配に気付いて隠れているようだ」
「臭いで見つけたのか?」
「そうだ! 我ほどの強者になると、それくらいは容易いのだ。お主も魔力による探知はできるようだが、まだまだ拙いようだな」
「…………」
指摘されたリチャードは黙り込む。
何か言い返したかったが、図星だったので歯噛みすることしかできなかったのだ。
そうして移動すること暫し。
二人の前に現れたのは苔だらけの洞窟だった。
ルカは躊躇なく内部へと踏み込み、リチャードも少し遅れてついていく。
リチャードは魔力で五感を強化して、闇夜の中でじっと目を凝らした。
天井からぶら下がっているのは、巨大な蝙蝠だった。
尋常ならざる魔力の圧を感じ取ったリチャードは咄嗟に短剣を構える。
「蝙蝠の魔神……?」
「久しぶりだなァ。臆病なところは変わっていないようだ!」
ルカは煽るように笑ってみせる。
蝙蝠の魔神は甲高い声を発して威嚇していた。
それを無視するルカは、リチャードの背中を押して命じる。
「ほれ、早く倒してこい」
「標的を譲ってくれるのか?」
「違う。お主の実力を確かめさせてもらう。我の見立てだと厳しいだろうが、上手く切り抜けてみろ」
「……わかった」
リチャードは短剣を握り締めて、蝙蝠の魔神を注視する。
そして伝わってくる力から相手の実力を推し量る。
(感じる魔力量はゴブリンの魔神より少ない。正面突破でいけるか?)
そう判断したリチャードは疾走し、蝙蝠の魔神を短剣で切り裂く。
魔神の肉体が真っ二つになり、その断面から大量の小さな蝙蝠が噴き出した。
予想外の結果にリチャードは目を見開く。
「何ッ!?」
無数の蝙蝠がリチャードに群がり、彼の血と魔力を根こそぎ吸い始めた。
リチャードの肉体は急速に枯れ果てていく。
「く……そ……っ」
リチャードの視界は暗転した。




