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第97話:強制ログアウトと、暴かれた飢餓ウイルス

ドォォォォォォォンッ!!


地球の空に、三色の極光が乱舞した。

 カイト、スミレ、セレナの三人が一つの機体で完全に同期した究極の機神『トリニティ・アヴァロン』は、異世界の神すら凌駕した神速の機動で敵ロボット群の懐へと潜り込む。


『な、なんだこいつ!? 速すぎるよ!』

『ええい、地球の平和を乱す悪者めっ! ミサイル全弾発射!!』


子供たちが操る敵ロボットから、無数のミサイルが放たれる。

 だが、アヴァロンは回避すらしない。


「カイトの機体ここには、指一本触れさせないわ!」


アヴァロンの左腕と背面システムを担うセレナが、白銀の『絶対防壁』を展開。ミサイルの雨を無効化しつつ、敵の機体を物理的に押し留める。


「——そこねッ! 関節部ジョイント、もらうわよ!」


すかさず右腕のシステムを司るスミレが、極光のブレードを閃かせた。

 狙うのはコクピットを完全に避け、機動力を奪うための『脚部』のみ。鮮やかな三連撃が敵ロボットの足首と膝の駆動系を寸分違わず切り裂き、機体を空中で機能停止させる。


『わわっ!? 動かないぞ!?』


「リュウジさん、ナギ! 落ちる機体を頼む!」

『応ッ! フルバースト・キャノン、出力三〇パーセントに限定! 撃てェッ!』


リュウジのジェイ・ガストが放つ精密な牽制射撃が、敵の姿勢制御バーニアを的確に撃ち抜く。

 さらに、ナギの指揮する強襲艦から電磁ネットが射出され、落下する敵機を空中で柔らかく捕獲していった。

 子供の乗る機体を一切傷つけず、ただ『兵器としての機能』だけを無力化していく、熟練のエンジニアたちによる神業のデバッグ作業。


『オ、オノレェェッ! 悪シキ機械共メ! 子供タチヨ、モットエネルギーヲ出スノダ! 正義ノタメニ!!』


エサ(子供)を奪われそうになった光る宇宙人が、焦燥に駆られた声で叫ぶ。

 ホログラムが不気味に明滅し、子供たちの生命力をさらに強引に吸い上げようとした、その瞬間だった。


「——カイトくん! 敵のシステムにバックドア開けたよ! 今なら『偽装UI』の奥底に直接アクセスできる!」

 強襲艦から、リナの弾むような声が響いた。


「上出来だ! よくやった、リナ!」

 カイトはコンソールに指を滑らせ、アヴァロンの魔力炉をフル回転させる。

 異世界で獲得した『管理者権限ルートアクセス』を、リナが開いた通信経路を通して、敵ロボット全機のメインシステムへと叩き込んだ。


「おい、子供たち。よく聞け。……遊び(ゲーム)の時間はおしまいだ」


カイトの気怠げだが、圧倒的な安心感を持つ『大人の声』が、全てのコクピット内に響き渡る。

 次の瞬間。子供たちの目に映っていた、自分たちが正義の味方だと思い込ませるための「アニメのような派手な幻覚画面(UI)」が、ノイズと共にパリンッ、と砕け散った。


「「「え……っ?」」」


偽装されたモニターが晴れ、外部カメラが捉えた『現実の光景』が映し出される。

 そこにあったのは、悪の怪獣などではない。自分たちの放ったミサイルで燃え盛る故郷の街と、ボロボロになりながらも市民を守るために盾となっていた『勇者警察』の姿だった。


『……う、うそだ。僕たちが、街を壊してたの……?』

『僕たち、正義の味方じゃ……なかったの……?』


真実を知り、コクピットの中で子供たちが絶望と恐怖に泣きそうになる。

 だが、カイトは通信越しに優しく、しかし力強く告げた。


「泣く必要はねぇ。お前たちは何も悪くない。……ふざけた仕様のシステムに騙されて、ただ利用されていただけだ」


カイトがエンターキーを強く叩き込む。


「大人の責任バグを子供に押し付けるようなクソみたいな世界は、俺たちが全部叩き直してやる。……お前らはもう、安全なベッドに帰って寝てろ」


【System Command:Force Logout(強制ログアウト)】

【全コクピット・ハッチ、外部より強制開放】


プシューッ! という排気音と共に、全ての敵ロボットの胸部ハッチが開き、内部の射出シートが一斉に作動した。

 子供たちはパラシュートと共に、ゆっくりと地上へ降下していく。

 それを待ち受けていたのは、満身創痍の勇者ロボたちだった。彼らは巨大な両手でパラシュートをそっと受け止め、子供たちを安全に地面へと降ろしていく。


『よく頑張りましたね、小さな勇者たち。……あとは我々、大人の勇者警察にお任せを』

 勇者ロボの温かい音声に、子供たちが安堵の涙を流してしがみついた。


「——よし、これで人質リソース全員救出デバッグ完了だ」


カイトがアヴァロンの操縦桿を引き絞り、空に浮かぶ光る宇宙人を睨みつける。

 極上のエネルギー源であった子供たちを完全に奪われた宇宙人のホログラムは、みるみるうちに光を失い、醜いノイズへと変貌していく。


『ア……アァァ……腹ガ、減ッタ……。我ノ、極上ノ『リソース』ガァァァァッ!!』


慈愛に満ちていた顔が縦に割れ、神々しかった宇宙人の姿が崩壊する。

 その内側から現れたのは——どろりとした赤黒い触手を無数に生やし、星のエネルギーを喰らい尽くすためだけに肥大化した、醜悪な『巨大ウイルス』の真の姿だった。


「……化けの皮が剥がれたな。ようやくデバッグの『対象ターゲット』を直視できるようになったぜ」


カイトは不敵に笑い、スミレとセレナと意識を深く同調させる。

 アヴァロンの放つ三色の極光が、飢えた巨大ウイルスを照らし出した。


「さあ、お前ら。俺たちの故郷を荒らした害虫駆除だ。……最高の『残業』にしようぜ」

「ええ、もちろんよ。この汚いウイルス、跡形もなく消去してやりましょう!」

「うん! カイト、私たちの本当の力、見せてあげよう!」

『——勇者警察、反撃開始だ! マスター・カイトに続けェッ!!』


リュウジの号令と共に、地上で耐え忍んでいた勇者ロボたちの瞳にも再び力強い光が灯る。

 子供たちを悪夢から解放した最強の大人たちが、宇宙の理を狂わせる最悪のウイルスへと、一斉に反撃の牙を剥いた——!

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