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第96話:伝説の帰還と、子供を喰らう飢餓ウイルス

地球、新生勇者警察本部。

 かつてカイトを追放した腐敗した上層部は一掃され、真の正義を取り戻したはずの彼らは今、かつてない絶望の淵に立たされていた。


『やめろぉっ! 僕たちの街を壊す悪のロボットめ!!』


燃え盛る都市の空を飛び交う、動物を模した色鮮やかな謎のロボット群。

 そのコクピットから外部スピーカーを通して響くのは、アニメのヒーロー気取りで叫ぶ、あどけない子供たちの声だった。


「くっ……! シールド出力低下! だが、反撃はするな! 乗っているのは民間人の子供たちだ!」

 地上で防衛線を張る勇者ロボの一体が、ミサイルの雨をその身で受け止めながら叫ぶ。

 新生勇者警察は、子供が乗る機体を撃つことができない。


一方、空に浮かぶ『白く輝く宇宙人』のホログラムは、慈愛に満ちた声で子供たちを煽り立てていた。


『おお、選ばれし子供たちよ。その純粋な正義の心で、悪しき機械を打ち砕くのだ……』

『うんっ! 僕たちが地球を守るんだ!!』


子供たちが熱狂し、敵ロボットの出力がさらに跳ね上がる。

 勇者ロボたちの装甲が次々と剥がれ落ち、彼らはかつてカイトのガレージがあった跡地——カイトたちを称える『真っ白な石碑』が建つ広場まで追い詰められてしまった。


「……ここまでか。だが、マスター・カイトが残してくれたこの平和な街を……我々は最期まで護り抜く……!」

 勇者ロボが覚悟を決め、石碑の前に立ちはだかった、その時だった。


——ピィンッ!


絶望に包まれていた勇者警察の全機体の電子回路に、あり得ない『通信ログ』が記録された。

 それはあの日、黄金の大爆発の直前に彼らが検知した、「未知のプロトコルによる正常な接続」を示すシグナル。


『——おいおい。俺が留守にしてる間に、随分と装甲セキュリティが甘くなったじゃねぇか。お前ら』


空から降ってきた聞き覚えのある、少し気怠げで、誰よりも頼りになる大人の声。


「……この声、まさか……!?」

 勇者ロボが空を見上げた瞬間。

 空間をぶち破るように展開された巨大な光のゲートから、三色の極光を纏った圧倒的な威容——『トリニティ・アヴァロン』が飛来した。


「遅くなって悪かったな、地球のみんな。……伝説のチーフ・エンジニア様が、長期出張から帰ってきてやったぜ」


カイトの不敵な笑い声。

 空の中央には、カイトのコア機動を中心に、右腕としてスミレの『ブラッディ・ネイル』、左腕と背面としてセレナの『ホワイト・ヴィクトリー』が三体超合体した究極の機神が君臨している。

 そしてその両翼を固めるように、リュウジの『重装勇者ジェイ・ガスト』と、ナギとリナが乗る巨大な強襲艦が次々と地球の空へと舞い降りた。


「リュ、リュウジ隊長!? それに、あのデータにない三色の未知の機体は……マスター・カイトが作ったのですか!?」

「ああ、そうだ! 待たせたな、お前たち! ここから先は、俺たちが引き受ける!」

 リュウジがジェイ・ガストのキャノンを構え、かつての部下たちを背中で庇う。


『な、なんだ貴様らは!? どこから現れた!』

 予想外の乱入者に、空の『光る宇宙人』が焦ったような声を上げる。


カイトはアヴァロンのメインモニターで、宇宙人と子供たちの機体を瞬時にスキャンした。

 異世界の神をデバッグしたカイトの『管理者権限ルートアイ』は、表面的な事象に騙されない。彼には、システムを流れる「エネルギーの真の動き」がはっきりと見えていた。


「……なるほどな。クソみたいな仕様のカラクリが分かったぜ」

 カイトの瞳に、氷のような冷たい怒りが宿る。


「おい、光る宇宙人。お前、地球の平和なんかどうでもいいだろ。お前の正体は、宇宙の理に寄生して星のエネルギーを喰い荒らす……ただの『巨大な自己増殖ウイルス』だ」


『なっ……!?』


「疑うことを知る大人を排除し、子供にロボットを与えた理由も単純だ。……お前は、子供たちがヒーローごっこで熱狂する時に発する『純粋で莫大な感情リソース』を、コクピット越しにチューチュー吸い上げてるだけだろ。命を削らせてな」


アヴァロンのシステムを共有するスミレとセレナが、息を呑む。

 モニターに映る子供たちの顔は、正義感に高揚しているように見えて、その実、目の下には深い隈ができ、生命力を急速に失っていた。

 正義という名の熱狂に酔わせ、その裏で子供たちの生命力そのものを無慈悲に搾取する、最悪の寄生構造。


「——てめぇ、ふざけんなよ!」

 強襲艦のブリッジから、ナギが激怒してコンソールを叩きつける。

「子供にアニメみたいな幻覚(UI)見せて、自分のエサにしてるってのか!? 吐き気がするぜ!」


「リナ! 子供たちが乗ってる機体のシステム構造、解析できるか!」

「カイトくん、少し待って……いける! 私のアンテナなら、あの宇宙人が子供に見せてる『偽装UI』の隙間に割り込めるよ!」

「上出来だ! スミレ、セレナ、リュウジさん、ナギ! 対象のロボットの『足』だけを狙え! 絶対にコクピット(子供)には傷をつけるな!」


『了解!!』

 カイトの的確な指示のもと、異世界で神を討ち果たした最強のエンジニア部隊が一斉に動き出す。


「おい、クソウイルス」

 カイトはアヴァロンの極光のブレードを展開し、宇宙人のホログラムを真っ直ぐに睨みつけた。


「子供の夢を喰い物にするブラック企業(害虫)は、俺がこの手で完全に駆除デリートしてやる。……全員、強制ログアウトだ!!」


伝説の帰還。

 そして、子供たちを悪夢から救い出すための『大人の残業チルドレン・デバッグ』が、今、圧倒的な熱量で開始された——!

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『光るおじさん』のフリしたハイジャス星人かと思ったら、プラネットエナジー(星の生命力)をチューチュー食うオーボスかっ!   しかも、子供の命でロボを動かすシステムって『ぼくらの』と同じ、1度乗ったら死…
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