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第89話:美しいコードの再構築

ドォォォォォォォォォォォォッ!!


帝都の空が、赤黒い絶望の光によって二分された。

 『真なる世界兵器』の巨大な砲口から放たれた、帝都全域のリソース(魔力)を注ぎ込んだ極大の殲滅ビーム。

 それは触れるものすべてを分子レベルで分解し、空間そのものを焼き切りながら、カイトたちの防衛線へと迫る。


「——全シールド最大展開! 魔力炉、オーバーロードを許可するッ!」

 カイトの絶叫と共に、超次元強襲艦『ブレイヴ・アーク』の艦首から、幾重にも重なる蒼い魔法障壁ファイアウォールが展開された。


ガガガガガガガガガガッ!!


赤黒い光と蒼い壁が激突し、この世のものとは思えない耳鳴りのような轟音が響き渡る。

 アヴァロン、ジェイ・ガスト、ブラッディ・ネイルの三機がブレイヴ・アークの前に立ち、それぞれの魔力をシールドへ注ぎ込んで必死に耐えるが、敵の出力はあまりにも規格外だった。


「くっ、出力差が大きすぎる……! 論理ロジックで相殺しようにも、相手は生データをそのままぶつけてきてやがる!」

 アヴァロンのコクピットで、カイトは歯噛みする。コンソールには『シールド耐久値低下』のアラートが赤々と明滅していた。


『ハハハッ! 無駄だ、無駄だ! この要塞の前では、貴様らの小手先の対抗など無意味! 帝都のリソースを全て食い尽くすまで、この砲撃は止まらんぞ!!』

 ゼノンの嘲笑が空から降り注ぐ。


事実、要塞から伸びた黒いケーブルは、今も帝都の街から膨大な魔力を吸い上げ続けていた。

 光を失い、崩れ落ちていく幾何学的なビル群。九十九が心血を注いで構築した、美しきオブジェクト指向の都市が、管理者の身勝手な食料リソースとして蹂躙されていく。


その光景を、地上で機能停止していた『天叢雲アマノムラクモ』のコクピットから、九十九は血を吐きながら見上げていた。


「……僕の、街を……。僕が、先輩に見せるために作った……この美しいコード(世界)を……ッ!!」

 九十九の瞳に、絶望を超えた、管理者への明確な『殺意』が灯る。


「——誰が、勝手に僕のソースコードを使っていいと言ったんだ、ゼノンォォォッ!!」


機能停止していたはずの天叢雲が、九十九の怒りに呼応するように不気味な黒い光を放って再起動した。

 九十九は、自身の脳を直接、帝都のメインサーバーへとダイレクト・アクセス(直結)させる。


「——システム、リファクタリング(再構築)開始!!」


九十九の指が、破壊された天叢雲のコンソールの上で、神速の演算を刻む。

 彼がやろうとしているのは、管理者が行っている『ドレイン(吸い上げ)』のロジックそのものへのハッキングだった。


「僕の作ったオブジェクト(ビル群)の『所有権』は、まだ僕にある! 勝手に参照アクセスしてんじゃない! ——参照先ターゲットを、書き換えるッ!!」


【System Notification:リソースのドレインパスを書き換えました】

【新たな参照先:ブレイヴ・アーク(味方プロセス)】


——ピカッ!!

 要塞へと繋がっていた黒いケーブルの魔力の流れが、一瞬にして反転した。

 帝都から吸い上げられた莫大な魔力が、要塞ではなく、空中で耐えるブレイヴ・アークへとダイレクトに流し込まれたのだ。


「な……っ!? 何が起きている!? 魔力の供給が……止まっただと!?」

 ゼノンの驚愕の声。


「——なっ!? カイト、ブレイヴ・アークの魔力炉が、突然見たこともない出力で回り始めたぞ!!」

 ナギからの驚愕の報告が飛び込んでくる。


「チッ、あの野郎(九十九)……! 地上で動けねぇクセに、最高の尻拭い(サポート)をしやがるじゃねぇか!」


カイトは九十九の意図を一瞬で理解し、ニヤリと笑った。

 泥臭いパッチ(カイト)と、美しいオブジェクト(九十九)の、奇跡の共同作業マージだ。


「——全リソースを主砲へ回せ! スミレ、ガスト、道を空けろ!!」


カイトの号令で、アヴァロン以外の二機が左右へ展開する。

 九十九によって供給された、帝都全域の魔力を充填したブレイヴ・アークの艦首主砲が、極限まで輝きを増した。


「——これが、泥水を啜ってきた俺たちの……根性の『最適解』だッ!! ブレイヴ・バスター、全開照射ッ!!」


ドォォォォォォォォォォォンッ!!


ブレイヴ・アークから放たれた、要塞のビームを遥かに凌駕する極大の光条。

 それは、出力が低下した要塞の赤黒い光を正面から完全に圧殺し、そのまま真っ直ぐに『真なる世界兵器』の巨大な砲身へと突き刺さった。


世界の理が砕け散るほどの閃光。

 土煙が晴れた後、そこには、主砲を根本から粉砕され、黒い煙を上げる超巨大要塞の姿があった。


「……勝った……のか?」

 スミレが呆然と呟く。


だが、カイトの瞳はまだ、闘志を失っていなかった。

 彼のエンジニアとしての直感が、まだエラーがクローズされていないことを告げていたのだ。


『……フハ、フハハ、フハハハハハッ!!』


粉砕された要塞の中から、ゼノンの狂気に満ちた笑い声が再び響き渡った。

 要塞の表面にあった赤黒い魔法陣が、より禍々しい『黒いノイズ』へと変貌し、砕け散った砲身の破片を吸い寄せていく。


『——素晴らしい! まさか我が『城』にダメージを入れるとは! やはりカイト、貴様と九十九は殺すには惜しい……ッ!』


要塞全体が、不気味な音を立ててその形態を変え始めた。

 主砲という『攻撃端末』を失った要塞が、より直接的に世界をフォーマットするための『真の姿』へと——。


『さあ、第2ラウンドだ。イレギュラー共! 世界のシステムそのものとなった我が力に、どこまで耐えられるかな!!』


砲身を失った要塞は、巨大な「黒い腕」を持つ、禍々しい巨神の姿へと変貌を完了させた──。

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