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第79話:共有された神の意識(クラウド)と、君の本当の「定義」

「……カイト? なにを、言っているの? 私の魔力波長が、帝都の古代兵器と同じ……?」


通信画面越しに見えるセレナの顔は、幽鬼のように蒼白だった。

 王都の空に浮かぶ『トリニティ・アヴァロン』のコクピット。勝利の歓声が響く眼下の広場とは裏腹に、機内には冷たい沈黙が落ちていた。


「——落ち着いて聞け、セレナ。これは推測じゃない。システムログに残された、動かぬ『事実ソース』だ」


カイトはキーボードを叩き、二つのデータを空中に並べて表示した。

 一つは、先ほど『ロゴス・オーバーライド』で喰らった古代兵器テュポーンのシステムコード。もう一つは、セレナが持つ「魔力波長」のデータ。

 ディレクトリの構造から、魔力の変数名まで……完全に一言一句の狂いもなく、同じコードで書かれていた。


「そんな……嘘よ。だって私は、第5章で転移者だって判明した後も、この世界で生きていくために……魔法学院にまで通って、必死に学んできたのよ……っ」

 セレナの悲痛な声が響く。彼女は自分が転移者であると受け入れた上で、前を向いて努力してきたのだ。


「ああ。お前が努力してきたことは知ってる。……だが、俺たちは大きな勘違いをしていたんだ」

 カイトは忌々しげに舌打ちをした。


「第4章で、俺たちは勇者警察世界の『管理者(神)』を倒した。だが……あいつらは単一の存在じゃない。並行宇宙マルチバースごとに無数の端末として存在し、意識を共有している『分散型システム』だったんだ」


「意識を、共有……!?」


「そうだ。勇者警察世界の神も、この魔法世界の神も、根本のOSは同じ。……だからこそ、この世界の管理者は、別宇宙の自分から『転移者(俺たち)の受け入れ処理』を丸投げされた時、とんでもない手抜きをした」


カイトの言葉に、スミレとセレナが息を呑む。


「あいつは、地下で休眠状態だった古代兵器の『使われていないデータ』をコピーし、お前のダミーの魔力波長としてペースト(流用)したんだ。……お前が必死に制御してきたその魔力は、世界を滅ぼすバグ兵器と、全く同じシステムなんだよ」


——カチャンッ。

 セレナの手から、操縦桿が滑り落ちる音が響いた。


「ああ……あぁ……っ。じゃあ、私の魔法は……私が魔法学院で学んできた力は、この世界を守るためのものじゃなくて……あんなバケモノと同じ力だったの……?」


自分の存在そのものが、世界にとっての『爆弾』であるという事実。アイデンティティが崩壊し、過呼吸のように肩を震わせるセレナ。

 その時。右腕部の『ブラッディ・ネイル』から、スミレの温かい魔力が流れ込んできた。


『……バカね、セレナ。あんたの魔法がバケモノと同じわけないでしょ』

「スミレ……」

『私がこの世界で、あんたと何度背中を預け合って戦ったと思ってるのよ。……あんたの魔法は、いつも私たちを助けてくれたわ』


不器用だが優しい相棒の言葉。

 そしてカイトは、アヴァロンのコンソールから「管理者権限」のマスターキーを引き抜き、それを強く握りしめた。


「スミレの言う通りだ。……セレナ、よく聞け」

 カイトの低く、静かな声がコクピットに響く。それは神としての威圧ではなく、ただ一人の大人の男としての、確かな体温を持った声だった。


「お前に植え付けられた『仕様(魔力波長)』がバグ兵器のコピペだろうと、そんなものはどうでもいい。大事なのは、その力を誰が、何のために使ってきたかだ」


カイトは、画面越しのセレナを真っ直ぐに見据える。


「お前は、俺と一緒に転移してきて、隣で戦い続けてきた『ホワイト・ビクトリー』のパイロットだ。……お前の努力も、戦う意志も、俺のシステムが『本物(TRUE)』だと認識している。……それ以上、何か定義が必要か?」


「カイト……っ」


波長コードの出処なんか気にするな。……お前のこれからの未来は、俺が隣で一緒にデバッグしてやる」


その言葉に、セレナは両手で顔を覆い、子供のように声を上げて泣きじゃくった。

 彼女を縛り付けていた「呪い」が解け、真の自分として救われた、産声のような涙だった。


「——泣き止んだら、再起動リブートしろ、セレナ。……帝都の技術長ゼノンから、また迷惑メールが届いたぞ」


カイトの視線の先。

 完全に沈黙したはずのテュポーンの残骸から、一本の通信ケーブルが空へ向けて伸び、ゼノンの狂気に満ちたホログラムを投影していた。


『……素晴らしい。まさか我がテュポーンのデータを喰らい、貴様らの中にある『オリジナル』の鍵を解き明かすとはな……』

「……鍵、だと?」


『そうだ。カイト……お前が隣に置いているその小娘セレナの波長こそが、我ら帝都が数百年探し求めていた、真なる世界兵器の『起動キー』なのだからな!』


ゼノンの哄笑が空に響く。

 セレナの魔力の秘密は、ただの「兵器の流用」では終わらない。彼女の存在そのものが、帝都の本国に眠る真の超兵器を起動させる「最後のパスワード」だったのだ。


「——寝言は回線ルーターを切ってから言え。……俺の仲間システムに、二度と勝手なアクセスをするな!」


カイトの怒声と共に、帝都本国との真の決戦の火蓋が切って落とされた──。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

明かされた「複数宇宙の管理者の意識共有」という絶望的な真実。そして自分の魔力の正体に打ちのめされるセレナでしたが、カイトとスミレの絆が彼女を救い上げました!


そしてゼノンからの不吉な宣告。セレナの魔力波長は、なんと帝都の本国に眠る『真の世界兵器の起動キー』でした!

いよいよ敵の懐へと攻め込む準備が始まります。


「設定のスケールがヤバい!」「カイト様イケメンすぎる!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ページ下部の【★評価】と【ブックマーク】で応援をよろしくお願いいたします!

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