第72話:凱旋のパレードと、世界を覆う「違和感」
【神展開】アヴァロン、王都に到着! 伝説の勇者ロボ『ジェイ・ガスト』との並走が熱すぎる件について!【リナch. ライブ中継】
「……皆さん、ついにお目見えです! リナです!
王都ラースの城門が見えてきました! 道を埋め尽くすほどの人、人、人!
全員がカイトくんとアヴァロンを待っていました!
……わわっ! 空から銀色の光が降ってきました! 王国の守護神……ジェイ・ガスト様です!」
──ラース王国、王都街道。
アヴァロンのコクピット。モニターには、リナの配信を通じて流れる「全世界のコメント」が、未だに滝のような速度で流れていた。
『アヴァロン来たああああ!』
『隣の赤い機体もマジで速いw』
『カイト様、王都を救った英雄の帰還だな』
「……ふぅ。……これだけのアクセス数、よくサーバー(地脈)が耐えてるな」
カイトはキーボードを叩き、通信帯域を最適化していく。
隣のサブシートでは、セレナが窓の外を眺めながら、どこか遠い目をしていた。
「……ねえ、カイト。この王都、……初めて来るはずなのに、……なぜか『建物の配置』を知っているような気がするの。……あそこの角を曲がれば、大きな時計塔がある……そうでしょう?」
「——セレナ。……それは、管理者が君に植えつけた『偽の記憶』だ。……騙されるな。君の本当の家は、……俺と一緒にいた、あの世界にあるんだ」
カイトが低く、だが確かな声で告げる。
セレナはハッとしたように自分を抱きしめ、小さく頷いた。
「……ええ。……そうだったわね。……ごめんなさい、少し『同期』がズレたみたい」
その時。
上空から轟音が響き、白銀の巨躯がアヴァロンの隣に豪快に着地した。
「——待たせたな、勇者たちよ! 我は王国の盾、ジェイ・ガスト! カイト殿、貴殿の武勇、我が魂の回路に深く刻まれたぞ!」
白銀の装甲に身を包んだ勇者ロボ。
この世界の伝説的な魔導兵器でありながら、どこかカイトの知る「勇者ロボ」の魂を感じさせる存在だ。
「……うるさいわね、相変わらず。ガスト、カイトの邪魔をしないでもちょうだい」
スミレが量産機で並走し、不敵に言い放つ。
カイトはジェイ・ガストを見上げ、エンジニアとしての冷徹なスキャンを走らせた。
「——ジェイ・ガスト。……君のメイン回路、魔力のリーク(漏電)が酷いな。……今のままじゃ、出力の半分も発揮できていないぞ。……三分で終わる。……じっとしてろ。……リナ、カメラを回しておけ。……『伝説のアップデート』を、全世界に生配信してやる」
カイトの指が、光速でコンソールを舞う。
世界中が見守る配信画面に、ジェイ・ガストの内部構造が「魔法の設計図」として透視され、カイトの手によって蒼い論理回路が次々と書き換えられていく。
「な、なんだこれは……!? 我がコアに直接、未知の術式が書き込まれていく……!?」
『www勇者ロボを歩きながらアップデートし始めたw』
『「三分でいい」って、カイト様マジで格好良すぎだろ!』
沿道で見守っていた王都の魔導技師たちが、腰を抜かして叫んだ。
「嘘だろ……!? 王立研究所が数十年かけても解読できなかった伝説の『聖遺物』を、あんな速度で最適化しているのか……!?」
「——最適化完了。……ジェイ・ガスト、動いてみろ」
次の瞬間。ジェイ・ガストが軽く跳躍しただけで、王都の空気が衝撃波で揺れた。
「……おおおおお!? ……なんだ、この軽さは! ……力が、淀みなく溢れてくるぞ! ……カイト殿、貴殿は一体……何者なのだ!?」
「——ただの、納期に追われないエンジニアだ」
カイトの不敵な笑みが、全世界に配信される。
アップデートされたガストが「最高だ、カイト殿!」とはしゃぐのを、スミレが「ちょっと、カイトの『工数』を独占しないでよ!」と不機嫌そうに牽制した。
だがその直後──アヴァロンのモニターが、不吉な**「漆黒の警告」**で塗りつぶされた。
カイトの表情から、余裕が消える。
【致命的エラー:システム整合性の不全】
対象:セレナ・フォーン・ブレイブ
理由:認証権限の消失(管理者が見つかりません)
処置:孤立したデータの削除を開始します……
「……なっ!? ……管理者を倒したせいで、セレナを維持する『許可』が切れたのか……!?」
カイトは戦慄した。
管理者が消滅したことで、世界を維持する常駐プログラムが次々とクラッシュしている。セレナは管理者が強引にねじ込んだ「イレギュラーな変数」だった。認証サーバー(管理者)が落ちた今、世界が彼女を「不要なゴミ」として消去しようとしているのだ。
「……っ、……カイト……! ……体が、……透けて……!?」
セレナの悲鳴。
見れば、彼女の指先がデジタルノイズのようにパチパチと消えかかっていた。
「——ふざけるな……。あいつがいなきゃ維持できない世界なんて、俺が書き換えてやる……!」
カイトは、パレードで沸き立つ群衆を無視し、禁断の**「管理者権限の強奪」**モードを起動した。
「——スミレ、リナ! アヴァロンの防衛を頼む!
今から俺が……この世界の『新しい神(管理者)』になってやる!!」
カイトの指が、キーボードを破壊せんばかりの速度で叩かれる。
勇者ロボをも凌駕する「エンジニアの意地」が、世界の理をハックし始めた──。




