第71話:世界が俺を呼んでいる……というか、コメント欄がうるさすぎる
──ラース王国、北境平原・特設中継拠点。
九十九との激戦から一夜。
カイトはアヴァロンの脚部に腰掛け、携帯端末(魔法通信機)の画面を眺めていた。
「……よし、通信プロトコルは安定。パケットのドロップも許容範囲内だな」
カイトがそう呟いた瞬間、リナの周囲に展開された「魔法スクリーン」が、爆発したかのような勢いで文字に埋め尽くされた。
『うおおおお! 本当に書き込めた!』
『カイト様、見てるー!? 王国最高!』
『昨日の戦い、マジで神でした! 抱いて!』
『リナ様マジ天使! 投げ銭(魔力)送らせて!』
それは、この世界の人々が初めて体験する「リアルタイムの双方向交流」だった。
あまりの勢いに、隣で見ていたセレナが目を丸くする。
「……凄いわね、カイト。……民衆の『熱量』が、そのまま目に見えるデータになって流れていく。……これ、情報の流れそのものをあなたが変えてしまったんじゃないかしら?」
「——情報の民主化、って言っただろ。……これまでは王族や教会が独占していた『発信』を、名もなき民衆に開放したんだ。……まあ、予想以上にノイズ(うるさいの)が多いけどな」
カイトは苦笑しながら、流れるコメントをフィルタリングしていく。
すると、画面の端で一際大きく輝く「黄金の文字」が流れた。
『【ラース国王より】カイト殿、そしてリナ。王都にて最高の宴を用意して待っている。この奇跡の技術に、国を挙げて感謝したい』
『えええっ!? 王様からコメント来たー!!』
『公式が最大手www』
コメント欄がさらに加速する。カイトの技術は、一国の王すらも「リスナー」に変えてしまったのだ。
「ふふっ……。相変わらず、世界をひっくり返すのが好きね、カイト」
後ろから、呆れたような、それでいて誇らしげな声が聞こえた。
赤い軍服をなびかせて歩いてきたのは、スミレだ。彼女はカイトの隣にどっかと座ると、流れるコメントを物珍しそうに眺める。
「……私のことも書かれているわね。……『スミレちゃん、カイト様にデレすぎw』? ……なっ、なによこれ! 誰がデレたっていうのよ!」
「——はは、スミレ。……全世界にバレてるみたいだぞ。……ほら、こっちのコメントは『スミレとセレナ、どっちが正妻か議論』だってさ」
「……はぁ!? ……そ、そんなの、議論するまでもないわ! 私が彼の『剣』で……その、……特別な存在なんだから……っ!」
スミレが顔を真っ赤にして叫ぶと、コメント欄には**「スミレちゃんチョロ可愛いw」「顔真っ赤www」**という文字が滝のように流れる。
「……あら、スミレ。若さに任せて勢いだけじゃ、カイトの『仕様』は理解できないわよ? ……ねえ、カイト?」
セレナがカイトの腕にそっと自分の腕を絡め、挑発的に微笑む。
「……っ、セレナ! あなた、ドサクサに紛れて何を……!」
ヒロインたちの火花散るやり取りが、リナの配信を通じて全世界に「生中継」される。
それは、戦いよりも平和を実感させる、賑やかで幸福な光景だった。
だが、そんなお祭り騒ぎのコメント欄に、一つだけ異質な書き込みが混ざった。
それは一瞬で流れ去ったが、カイトのエンジニアとしての目は、そのログを逃さなかった。
『【Unknown】アヴァロンの論理構造を確認。……素晴らしい。……だが、そのOSは「魂」の負荷に耐えられるかな?』
「……魂の負荷?」
カイトの指が止まる。
この世界の魔法技術には、まだカイトの知らない「レガシーシステム」が眠っている予感がした。
意思を持つ伝説の魔法兵器、あるいは「勇者」と呼ばれた個体たち……。
「——面白い。……未知の仕様があるなら、デバッグしてやるまでだ」
カイトは不敵に笑い、新たなコードを打ち込む。
平和な日常の裏で、次なる物語の「歯車」が、カイトの技術によってゆっくりと動き出していた──。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
第6章の開幕は、新機能「双方向コメント」が世界を震撼させる様子を描きました。
王様からのコメントや、ヒロインたちの「正妻争い」が生配信されるノリ、なろう読者にはたまらないカタルシスになったでしょうか?
ラストには、何やら意味深な「Unknown」からのコメントも……。
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