第66話:論理の死角:超魔導論理干渉砲(ハイパー・マギア・ロジック・キャノン)
黄金の合体魔神『天叢雲・極』が放つ重力波が、ラース王国の北境平原を蹂躙していた。
かつての敵幹部であり、今は俺の相棒であるスミレの部隊も、その圧倒的な破壊力の前に近づくことすらできない。
「……皆さん、大変です。リナです!」
アヴァロンのコクピットに設置された外部カメラから、リナの悲痛な声が響く。圏外のスマホを片手に、彼女は命がけで『収録』を続けていた。
「黄金の魔神の攻撃で、平原がボロボロです。スミレさんの部隊も近づけません。
でも、カイトくんのアヴァロンが……蒼く光り始めました! ……え、何ですか、あの巨大な大砲!? コンテナから急造したみたいだけど……もの凄い魔力を感じますっ!!」
リナの実況を余所に、俺のアヴァロンのコクピットは蒼い光に包まれていた。
「……ハハッ、どうしたんだい先輩! 自慢の最適化は終わりかい? 僕の黄金のセキュリティは、この世界のどんな魔法も物理も受け付けない! 『無敵』という名の完璧な仕様書なんだよ!」
メインモニターの向こうで、九十九が勝ち誇ったように笑う。
俺は、冷静にコンソールを叩き続けた。モニターには、セレナが解析した黄金装甲の複雑な魔導回路図が映し出されている。
「……無敵、か。九十九、お前、エンジニアのくせに『完璧』なんて言葉を信じてるのか?」
「——セレナ。君が見つけてくれた『依存関係』のバグ、今から利用させてもらう」
「……ええ。黄金の装甲と、内部の魔力炉をつなぐインターフェース……。
そこに、この世界の古代魔法の記述を流し込めば、論理的に『例外エラー』を起こせるわ」
セレナがキーボードを叩くと、アヴァロンの背後にマウントされたコンテナが展開した。
中から現れたのは、無骨な巨大砲──『超魔導論理干渉砲』だ。
この世界の高純度魔法結晶と、アヴァロンの超科学部品を、俺が現地でマージ(統合)して作り上げた、急造のシステムである。
「なんだ、あの鉄クズは。そんなもので、僕の黄金の装甲が……」
「——九十九。これは『武器』じゃない。お前のガバガバな仕様書に、『強制パッチ』を当てるためのツールだ」
俺はEnterキーを叩いた。
干渉砲の銃身に刻まれた魔導回路が蒼く発光し、地脈から吸い上げた莫大な魔力がアヴァロンの『ロゴス・イーター(概念変還器)』へと流れ込んだ。
「——仕様変更の時間だ。……『完全無効』の概念を、……『強制有効』に上書き(パッチ適用)する!!」
アヴァロンが放った蒼い光の濁流は、黄金の魔神に直撃した。爆発……ではなく、装甲の表面を蒼い紋様(古代魔法の記述)で激しく侵食し始める。
「……なっ、何だこれは!? 装甲の魔力循環が……、書き換えられて……バカな、僕の完璧な完全無効プログラムが……フリーズした……!?」
黄金の装甲が蒼く変色し、輝きを急速に失っていく。
『完全無効』という理不尽なルールが、俺の『例外処理』によって強引に剥ぎ取られたのだ。
「——今だ、スミレ! ……任せてもいいか?」
「……ええ! 待っていたわ、カイト!!」
スミレの機体が、音速を超えて加速した。装甲を失った九十九の機体に向けて、彼女は全ての魔力をブレードに集中させる。
『……ターゲット確認。……物理法則、強制有効。……排除開始!!』
スミレの一閃が、蒼く変色した黄金の装甲を粉砕した。
──ドォォォォォンッ!!
黄金の合体魔神の右半身が爆散し、合体が強制解除され始める。
黄金の龍と獅子が分離し、平原へと墜落していく。その土煙の中から、ボロボロになりながらも立ち上がる、九十九の「真の本体」──『天叢雲』が姿を現した。
「……先輩。まさか、この世界の原始的な魔法で、僕の最強セキュリティを破るなんて……。……ハハッ、……あはははは! 面白い、面白いよ先輩!! だったら、こっちも“概念”で相手をしてあげるよ!!」
九十九の機体が、黒いオーラを放ち始める。それは、アヴァロンの『ロゴス・イーター』と同系統の、世界の法則を書き換える力だった。
「……ロゴス・イーターの共鳴!? ……アイツ、自分も概念変還器を……!」
俺のアヴァロンもまた、敵のオーラに呼応して、かつてないほど激しい『蒼い光』を放ち始めた。
世界の「仕様」を賭けた、エンジニア同士の概念戦争が、ここから始まる──。
「カイトさんの『仕様変更の時間だ』、痺れた!」「現地技術のハック展開、熱い!」続き読んでもいいなと思っていただけましたら、評価、感想、ブックマークなどで応援いただけると嬉しいです!




