第65話:黄金の衝撃(ゴールデン・インパクト):合体するロマンと絶望
ラース王国、北境平原。
勝利に沸く王国軍の前に、それは音もなく降臨した。
雲を切り裂き現れたのは、全身が眩いばかりの「黄金」でコーティングされた二体の魔導機。
「……ハハッ、驚いたかい、佐藤先輩?
……コピーはただの『負荷テスト』さ。僕がこの世界で、本気で組み上げた『メイン・プログラム』を見せてあげるよ!」
九十九の声が平原に響き渡ると同時、黄金の龍と獅子が咆哮を上げた。
「——システム・プロトコル、『グレート・マージ』開始!!」
九十九が叫ぶ。
龍が分解され、巨大な獅子の全身を覆う「追加装甲」へと姿を変えていく。
魔法回路が火花を散らし、巨大な黄金の剣が右手に握られた。
出現したのは、アヴァロンの三倍近い全高を誇る、黄金の合体魔神──『天叢雲・極』。
「……チッ。合体だと……!? 九十九、お前……、この異世界の魔法で『マルチモジュール・アーキテクチャ』を組み上げやがったのか……!」
カイトはアヴァロンのコクピットで思わず舌打ちをし、額に冷たい汗をにじませた。
目の前に立つその巨大な威圧感は、明らかに今までの敵とは次元が違う。
「……そうだよ先輩! 『合体』は男のロマン……いや、最強の『機能統合』だ!
……見てよこの出力! 以前のコピー機体の百倍以上の魔力を一点に集中させてるんだ!」
「……悪趣味ね。あんなに光っていたら、格好の的じゃない」
スミレが冷徹に言い放ち、量産機のブーストを最大にして斬りかかった。
だが──。
──キンッ!!
「……なっ、……弾かれた!? 攻撃が、……装甲に届かない……!?」
「無駄だよ。……その黄金の装甲は、……あらゆる物理ダメージの数値を『完全無効』にする、……僕特製の最強セキュリティだからね!」
黄金の魔神が、巨大な剣を振り下ろす。
周囲の魔力を吸い寄せ、重力を歪ませる一撃。平原が裂け、土煙が舞い上がる。スミレの機体は、衝撃波だけで後方へと吹き飛ばされた。
「……くそっ! カイト、危ないわ! ……あの出力、……アヴァロンの演算能力でも解析しきれない!」
セレナが焦燥に駆られて叫ぶ。
カイトは冷や汗を拭い、ギリッと奥歯を噛み締めてコンソールを叩いた。
「セレナ、悪いが少しだけ解析をサポートしてくれるか? ……君の正確なパースが必要なんだ」
「……ええ、もちろんよ。任せて」
カイトの信頼のこもった言葉に、セレナの表情がわずかに和らぐ。
カイトは次に、通信機を通じてスミレに呼びかけた。
「スミレ、無理はしないでくれ。……一旦下がって、体制を整えてもらえるか? 奴の攻撃パターンを割り出すまで、君に無茶はさせたくないんだ」
「……分かった。……カイトがそう言うなら。……でも、危なくなったらすぐ呼んで。私が必ず守るから」
カイトは、かつての後輩が作り上げた「黄金のロマン」を睨みつけ、ベテランエンジニアとしての闘志に火をつけた。
「……九十九。……お前は本当に変わらないな。
……『最強の機能を全部盛りにすれば勝てる』。……お前の作るコードは、いつも贅沢すぎて重すぎるんだよ」
カイトの指が、アヴァロンのコンソールを静かに、だが力強く叩き始める。
「——九十九。……合体したってことは、それだけ『依存関係』が増えたってことだ」
「……あ? 何を言っているんだ、先輩!」
「——お前のその『黄金のセキュリティ』。……今から俺が、たった一行の『例外処理』で、……全部剥ぎ取ってやるよ。……協力してくれるか、アヴァロン」
アヴァロンの全身が、黄金とは対照的な、冷たく澄んだ「蒼い光」を放ち始めた。
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