第62話:量産型の再定義(リファクタリング):鉄クズを『クラウド』で繋げ
【驚愕】王国騎士団、解散!? ……と思ったら、全員「カイトくん仕様」に改造されちゃいました!【リナch. 収録モード】
「……皆さん、お疲れ様です。リナです!
見てください、この光景! 学院の広場に並んだ王国の旧式機たちが、カイトくんの手で次々と『皮を剥がされて』います。
……あ、スミレさんが凄く厳しい顔で、騎士団の人たちに指導(ダメ出し)してますよ。……あれ、今日はメガネしてないんですね。……あっちの方が、断然可愛いいのに!」
***
──ラース王立魔法学院、第一訓練場。
「……話にならないわね。この出力分布、無駄な魔法銀が多すぎて回路が肥大化しているわ」
スミレは、王国の最新鋭機魔法機甲のコクピットから飛び降りると、吐き捨てるように言った。
かつて潜入時にかけていたサングラスはもうない。
その素顔にあるのは、『紅の閃光』と呼ばれたネオ・ギアス最高峰のエースとしての、射抜くような鋭い瞳だ。
「スミレ様、そこまで言わなくても……。これでも我が国の誇る……」
泣きそうな顔のエルナに対し、スミレは容赦なく端末を突きつけた。
「誇りだけで戦場は通らない。……カイト、この機体……。ハードウェアを全部取り替える予算も時間もないわよ。どうするつもり?」
作業用アームの上で、カイトがスパナを回しながら不敵に笑った。
「ああ、分かってる。だから……『仮想化』する」
「……仮想化? また、あの『箱』を作るつもり?」
スミレの脳裏に、かつてカイトがわずか三千円で直したあのドローンの記憶が蘇る。
あの時、彼女はカイトの「整理整頓エンジニアリング」に、文字通り魂をハックされたのだ。
「ああ。一台一台を強くするんじゃない。……王国中の機体を一つの『クラス』として定義し、俺がデバックした超AIで一括管理する。
……名付けて、魔法機甲量産型:『サカモト・エディション』だ」
カイトがメインサーバー(アヴァロン)のEnterキーを叩く。
その瞬間、広場に並んだ数十台の魔法機甲の瞳が、一斉に青く発光した。
「——いいか、騎士諸君。お前たちの機体は、今この瞬間から独立した個体じゃない。
アヴァロンを『ホスト』とした、巨大な計算ネットワーク(クラスター)の末端だ」
カイトの解説と共に、機体たちの動きが劇的に変化した。
重厚だった足取りは軽やかになり、無駄な排熱は消え、まるで一つの生き物のように完璧な隊列を組み始める。
「……信じられない……。個々の魔力は以前と同じなのに、……動きの無駄が一切なくなっている……!」
エルナたちが驚愕する中、スミレだけは、その光景の「異常さ」を即座に見抜いていた。
「……カイト。……あなた、個々の機体の判断を奪って、……アヴァロンの演算能力で『代行』させているのね? ……一箇所がバグれば、全滅するリスクを抱えてまで」
「——ハハッ、さすがスミレ。……だが、俺のコードにバグはない。……九十九が『パワー』で来るなら、こっちは『効率』という名の暴力で圧し潰すだけだ」
カイトの、38歳のベテランとしての傲慢なまでの自信。
スミレは、かつて三千円の修理で世界を変えられたあの日と同じ、胸の疼きを感じた。
(……なによ、……またそんな顔をして。……ムカつくくらい頼もしいじゃない……)
それを見ていたセレナが、フッと口角を上げた。
「……スミレ、あまり彼を凝視しすぎないことね。……彼のロジックに深く入り込みすぎると、……私のように戻れなくなるわよ?」
「……セレナ、うるさい。……私は、彼の『仕様』を見極めているだけ」
視線を逸らすスミレ。だが、その頬はわずかに赤みを帯びていた。
***
──その頃。ヴァルカス帝国、最前線基地。
九十九は、手元のモニターに映る「王国の魔力波形」を見て、眉をひそめていた。
「……なんだ、この信号? ……数十台の機体が、一ビットの狂いもなく同期している……。
……ふん。……先輩、……『分散オブジェクト』ですか。……相変わらず、……リソースの使い方が変態的だ……!」
九十九の背後で、四本腕の『天叢雲が、主人の苛立ちに呼応して凄まじい熱量を放つ。
「……面白い。……その『完璧なネットワーク』、……僕の量産機軍団で……物理的に引き千切ってあげるよ……!」
帝国軍、数千の魔法機甲が、一斉に国境線へと進軍を開始した。
対するは、カイトが数時間でリファクタリングした、わずか数十台の「コンテナ機」たち。
「——スミレ。……テストパイロットをお願いできるか? ……この『仕様書』を使いこなせるのは、お前しかいない」
カイトの言葉に、スミレは無言で愛機のハッチへと飛び乗った。
「……ええ。……あなたの最高傑作に、……傷一つつかせないわ」
魔法世界の戦場に、かつてない「論理の嵐」が吹き荒れようとしていた。




