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第49話:世界崩壊:希望へのマイグレーション

「……皆さん、聞こえますか!? 映像、届いていますか!?」


ノイズ混じりの画面越しに、リナの悲痛な叫びが響く。


「拠点の周りの地面が……次々と消えて、真っ暗な『虚無』に飲み込まれてます! 建物も、岩も、空も……全部が、四角いブロックみたいにバラバラになって崩れていく……!」


足元から、ふっと重力が消えていく感覚。

トリニティ・アヴァロンのメインモニターには、無数の【Fatal Error(致命的エラー)】が血のように真っ赤な文字で埋め尽くされていた。


「……カイト! 空間の整合性インテグリティが完全に死んだわ! あと2分……いや、1分で、ここにある全ての存在が『未定義データ』として抹消される!!」


通信ウィンドウ越しに、ナギが必死に叫ぶ。

彼女の乗る支援機も、周囲の虚無に侵食され、機体の端から光る数字バイナリデータの粒子となって削り取られていた。


「……分かってる。……だが、俺たちが生き残るための『引っ越し先』は、もう確保してある」


俺は、前世の記憶から完全に解読した「最深部の隠しコード」を実行した。

それは、管理者が万が一の際、自分たちだけを別環境へ逃がすために用意していた超次元避難命令マイグレーション・コマンド


「——ナギ、スミレ、リュウジさん、そしてリナさん! 全員の機体座標を、アヴァロンの演算領域に固定しろ!」


俺はメインスロットルを力強く押し込む。


「俺たちが今持っている全ての質量、記憶、……魂のデータを! 別宇宙のサーバーへ丸ごと移行マイグレートする!!」


「……はぁ!? ……引っ越しって、……そんなの物理的にありえるの!?」


スミレが呆然と呟く。

だが、その隣でホワイト・ヴィクトリーを操るセレナが、凛とした声で遮った。


「理屈は通っているわ、カイト。……この世界の『理』が崩壊している今、論理的に存在を再定義できるのは、その管理者権限コードを持っているあなただけ」


一瞬見せた、あの「天才設計士」としての傲慢で、頼もしい視線。

セレナは再び、俺を信じ切った「健気な助手」の表情に戻り、俺の機体の腕を優しく、しかし強く掴んだ。


「……迷っている暇はないわ。さっさと私たちを、次の職場(世界)へ連れて行きなさい。……あなたが直してくれたこの命。最期まで、あなたにお預けします」


拠点の格納庫は、すでに半分以上が真っ暗な「無」に飲み込まれていた。

俺はアヴァロンの右手に、リナの配信ドローンを優しく掴み寄せた。

 

レンズの向こう側には、俺が転生したこの世界で、俺たちのドタバタな戦いを見守り続けた数千万人の視聴者がいる。


「……リナさん。配信、まだ繋がってるか?」


「……うん。ノイズだらけだけど……まだ、みんな見てくれてるよ……!」


リナは涙声で答え、カメラを俺のコックピットへと向けた。

俺は、血の滲む唇を歪め、不敵に笑って見せた。


「——いいか、画面の向こうのアンタら。……これが、俺たちからの最後のメッセージだ」


画面上のチャット欄が、凄まじい速度で滝のように流れていく。


「……神様が決めたクソみたいな仕様書シナリオなんて、無視して構わねえ。

 ……自分の人生がバグだらけだと思っても、理不尽な納期に追われて絶望しても、……絶対に投げ出すな」


俺は、かつての「社畜だった自分」と、今を生きる彼らに向けて言い放つ。


「……俺たちが証明した。……どんなに理不尽なシステムだって、……執念ひとつで書き換えられる(デバッグできる)んだってことをな!!」


世界が、ガラスが割れるような凄まじい音を立てて崩壊していく。

俺の視界も、黄金の粒子に包まれて真っ白に染まっていく。


「——さよならだ、こっちの世界のみんな。

 ……俺たちは、新しい世界サーバーで……また一から、最高の機体システムをビルドしてやるよ!!」


***


“カイトおおおおおおおおおお!!!”

“行くなああああ! 戻ってこいよ!!”

“……あばよ、最強の社畜エンジニア。……最高のデバッグだったぜ”

“配信者:リナ

 ……皆さん、今まで、……本当に…………ありがとうございました…………っ!!!”


***


ピツッ。


その瞬間。

リナの配信画面は、永遠に続く真っ暗な砂嵐へと切り替わった。


漆黒の次元の狭間。

俺たちは、黄金の糸のようなデータ(ロジック)の奔流に身を任せていた。


隣を飛ぶスミレの機体。

リュウジとガストを必死に支えるナギ。

そして、俺の手を意識の中で強く握りしめる、セレナの確かな体温。


「……が、あああああッ!!」


脳が焼き切れるような、規格外の演算負荷。

数千、数万のデータ項目を、一文字の欠落もなく次の世界へ転送しなければならない。

 

前世のブラック企業時代。

徹夜三日目、朦朧とする意識の中で巨大システムのサーバー移行を一人で完遂させた、あの時の極限の集中力が。

今、次元を超えて俺の指を動かしていた。


[データ移行率: 98%... 99%...]


「——ふざけたマニュアル(仕様書)なんて、……もういらねえッ!!」


俺は、キーボードの『Enter』キーを、ありったけの魂を込めて叩きつけた。


ターンッ!!!


[移行完了]

[目標:並行宇宙・アースマギア]


まばゆい虹色の光が俺たちを飲み込み。

次の瞬間、俺の意識は深い、深い、深い闇の底へと落ちていった——。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

第49話、世界の終焉と「マイグレーション」の決行でした。

配信が途絶える寸前のカイトの言葉、そしてリナの「さよなら」……執筆しながら私自身も胸が熱くなりました。

次話、元の世界で彼らがどう語られるのか。そして、新天地「別宇宙の地球」での目覚め……。

第4章のグランドフィナーレとなります。


面白いかも、続きを読んでもいいかもと思って頂ければ、ブックマークや↓のいいねと★★★★★を入れていただけると、執筆のやる気が加速します!

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