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第48話:管理者撃破:デバッグの終焉

【最終決戦】神様の『仕様書』を書き換えろ! カイト&セレナ、最強の共闘ハック!【リナch.】


「……皆さん! 世界の裂け目から、見たこともない巨大な『文字の奔流』が……! これが、この世界の正体なんですか!? 怖い、でも……目を離せません!」


“おいおい、あれが伝説に聞く**『全能なる仕様書マスター・スペック』かよ……”

“文字が……空から降ってくる文字だけで、付近のビルがデータ分解されて消えてるぞ!?”

“演出だろ!? 演出だと言ってくれよリナちゃん!”

“画面が砂嵐で真っ赤なんだけど。私のスマホ、バグった?”

“違う、バグったのは世界の方だ。管理者が本気でカイトたちを消去デリートしに来た。……終わったな。神様に逆らえる人間なんて、いるわけねえ”

“……いや、見ろ。……カイトの隣に、ヴィクトリーが立ってる。……セレナちゃんが戻ってきたぞ!!”


 ***


 遺跡拠点の天井は完全に消滅し、俺の視界を埋め尽くしたのは、天を覆い尽くすほど巨大な「黄金の壁」だった。

 いや、それは壁ではない。

 虚空に浮かぶ無数の、そして膨大な実行命令コードの集合体。


『——不純物カイト。および離反ユニット・セレナ。

 ……存在の論理消去デリートを確定。……この世界に、仕様外のバグの居場所はありません』


 空から響くのは、もはや感情すら排除された無機質な「システム警告音」。

 奴が——管理者の本体が指を掲げた瞬間、黄金の文字列が巨大な槍となって、俺たちの頭上へと降り注いだ。


「カイト! 正面に展開された論理防壁ファイアウォール、あと20秒で抜かれるわよ! 何か打って、早く!!」


 通信ウィンドウでナギが悲鳴を上げる。

 俺は血走った目でコンソールを叩き続けたが、相手は世界のルールそのものだ。こちらが防壁を一万行書く間に、相手は「その防壁は無効である」という一行で全てを無に帰してくる。


「……っ、クソが! 権限パーミッションが違いすぎる……。……現場の苦労も知らないで、……上から目線の仕様変更ばっかり押し付けやがって……!」


 前世のデスマーチの記憶が、怒りとなって指先に宿る。

 だが、俺の限界を察したのか、不意に隣から温かな、しかし凛とした魔力の波動が流れ込んできた。


「——落ち着きなさい、カイト。……そんなにキーを叩き散らしては、入力に無駄が出るわよ?」


 その声に、俺は息を呑んだ。

 ホワイト・ヴィクトリーのコックピットから通信を送ってきたのは、セレナだった。

 彼女の瞳には、先ほどまでの迷いも、管理者による汚染も微塵もない。


 そこにあるのは、坂本重機のガレージで俺を値踏みした時の、あの傲慢なまでの「天才設計士」としての輝きだ。


「……セレナ? お前、……戻ったのか?」


「半分、といったところかしらね。……でも、今の私が誰であるかは重要じゃない。

 ……重要なのは、目の前のこの『仕様書』が、あまりに退屈で、冗長で、……虫唾が走るほどに醜いということよ」


 セレナが不敵に微笑む。その瞬間、トリニティ・アヴァロンのシステム・ログに、見たこともないほど洗練された並列演算プログラムが流し込まれた。


「——カイト。あなたが最前線で管理者の注意を引きなさい。……その隙に、私が内部からシステムをリファクタリング(再構築)してあげる」


「……リファクタリングだと? ……相手は神様だぞ」


「神様? ……笑わせないで。……仕様書に穴がある以上、それはただの『欠陥品』よ。……行くわよ、カイト!!」


 セレナの宣言と共に、ヴィクトリーの白銀の翼が、物理法則を嘲笑うような複雑な軌跡を描いて展開された。

 俺は、彼女が作り出した一瞬の「論理の隙間」を見逃さなかった。


「——了解ラジャーだ、セレナ!! ナギ、スミレ、リュウジ! 全リソースをセレナの演算に回せ!!」


「……はぁ!? ……もう、あんたたち二人とも狂ってるわよ! ……分かったわよ、付き合ってあげるわよ!!」


 ナギが叫び、スミレがネイルの全出力をアヴァロンへとバイパスする。

 リュウジとガストが、降り注ぐ黄金の槍を物理的に弾き飛ばし、俺とセレナへの道を切り開く。

 俺は脳をアヴァロンと限界までシンクロさせ、管理者の本体へと肉薄した。

 目の前に広がる、巨大なプログラムの壁。


「——見つけた。……セレナ! 第3階層、ポインタ256番! ここに俺たちの裏口バックドアを作る!!」


「……いいセンスね。……そこに私の魔導コードを流し込むわ。……世界を支配しているつもりなら、……その奢りごと上書き(オーバーライド)してあげましょう!」


 俺とセレナ。

 二人の天才エンジニアの指先が、空中に投影された仮想キーボードの上で残像となって踊る。

 

 黄金の文字列が、俺たちのハッキングによって次々と蒼い「修正パッチ」に塗り替えられていく。

 管理者の世界から、少しずつ「自由な意志」という名のバグが広がっていく。


***


“おい……見てろよ、黄金の空が……青く塗り替えられていくぞ!?”

“何が起きてるの!? 二人とも、戦ってるっていうより……タイピング大会してない?”

“違う、あれは『世界の書き換え』だ。

 神様の書いた運命という名のプログラムを、カイトたちがリアルタイムで修正してやがるんだ!”

“……そんなの、人間にできることじゃねえ。……でも、あいつらなら……!”

“いけえええええええええ!! 神様のバグを、全部直してやれ!!!”


 ***


「……バ、カな……。……完璧な、……仕様であるはずだ……。……不完全な個体が、……理を凌駕するなど…………」


 管理者の声が、初めて「ノイズ」を吐き出した。

 黄金の文字列がボロボロと崩れ、その奥にある実体──巨大なクリスタルのような核が剥き出しになる。


「——完璧な仕様なんて、この世にはねえんだよ! ……いつだって現場でバグに泣かされ、それでも動かしてきた俺たちの執念を舐めるな!!」


 俺はトリニティ・アヴァロンの右腕に、全魔力を収束させた。

 それは、ロゴス・イーターによって喰らい尽くした管理者のエネルギー。それを、俺たちが新しく定義した『未来への仕様書』として撃ち出す。


「——これで最後よ。……あなたの世界プログラムは、ここで終了シャットダウンよ」


 セレナの声と共に、ヴィクトリーから放たれた白銀の光が、俺のアヴァロンの黒い一撃と重なった。


「──トリニティ・オーバーライド(全能なる上書き)!!」


 虹色の閃光が、管理者の核を真っ向から貫いた。

 爆発的な光が遺跡拠点を、荒野を、そして空全体を飲み込んでいく。

 神様が作った「世界の終わり」というシナリオが、二人のエンジニアの手によって、物理的に、そして論理的に粉砕された瞬間だった。


「…………Build……Successful…………」


 最後に聞こえたのは、管理者の敗北を告げるシステム音声。

 

 黄金の空が割れ、そこから本来の、そしてあまりに脆い青空が覗き始めた。

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