最後の夜
札幌アートホテル 501号室 のぞみとゆうの部屋 22:00
部屋の照明は落ち着いた暖色だった。
カーテンの向こうには札幌の夜が広がっている。
遠くで車の音がかすかに流れているだけで、部屋の中はとても静かだった。
ベッドの上。
白いシーツが少し乱れている。
その上で、のぞみとゆうは並んで横になっていた。
二人とも、まだ呼吸が完全には整っていない。
胸がゆっくりと上下している。
十一日ぶり。
長い時間、離れていた二人がようやく取り戻した時間だった。
互いの体温が、まだ肌に残っている。
のぞみは仰向けになりながら、ゆうの方へ顔を向けた。
少しだけ息を整えてから、小さく笑う。
「……ねえ、ゆう君」
声は少しかすれていた。
ゆうも横になったまま顔を向ける。
「ん?」
のぞみはゆうの胸元を見つめる。
そして、少し照れながら言った。
「なんだかさ……」
一度言葉を探す。
「ゆう君、前よりたくましくなった気がする」
その言葉に、ゆうが目を丸くする。
「え?」
一瞬考えて、顔が赤くなる。
「え、えっと……」
慌てた声。
「それって……」
ゆうは少し身を起こしながら言う。
「もしかして……そういう意味?」
完全に勘違いしていた。
ゆうの頭の中では、今の出来事の話だと思っていた。
のぞみの頬が赤くなる。
「ち、違う違う!」
慌てて否定する。
「ち、違うくないけど…そういう意味じゃなくて……」
少し身体を起こしながら続ける。
「なんて言うか……」
ゆうを見る。
「昨日からずっと思ってたんだけど」
のぞみの声が少し柔らかくなる。
「ゆう君、ずっと私を守ってくれてたでしょ」
その言葉には、深い実感がこもっていた。
宗谷岬までの道。
軽トラでの追走。
吹き付ける風。
そして、ゆうの必死な表情。
のぞみは続ける。
「なんだかね」
少し笑う。
「ゆう君が別の人になったみたいに感じたの」
ゆうは驚いた顔をする。
「そ、そうなの?」
少し戸惑ったように聞く。
確かに、この十一日間。
ゆうはずっと走り続けていた。
クヨと一緒に北海道を駆け回った。
列車。
車。
飛行機。
そして宗谷岬。
すべては——
のぞみを取り戻すためだった。
その気持ちが、ゆうを変えたのかもしれない。
のぞみはゆっくり頷く。
「うん」
そして続ける。
「でもね」
ゆうの目を見る。
「別人って言っても」
少し微笑む。
「ゆう君はゆう君だよ」
その言葉には安心があった。
「私の気持ちは変わってない」
一度息を吸う。
「むしろ……」
のぞみの声が優しくなる。
「もっと強くなったかも」
ゆうはその言葉を聞いて、ほっとしたように笑う。
「そ、そっか……」
少し照れながら言う。
「それは……良かった」
心から安心している声だった。
少しの沈黙。
ベッドの上で、二人の体温がゆっくりと落ち着いていく。
そのとき。
のぞみがぽつりと言う。
「……ねえ、ゆう君」
ゆうが顔を向ける。
「うん?」
のぞみは少し真剣な顔になっていた。
「私」
ゆっくり言う。
「ボブスレー辞めたいって言ったでしょ」
ゆうは少し驚いた顔になる。
「……うん」
あの時の言葉。
宗谷岬で。
のぞみは確かにそう言った。
のぞみは続ける。
「もし私が辞めても」
ゆうの目を見る。
「ゆう君は続けてね」
その言葉に、ゆうは慌てた。
「えっ?」
体を少し起こす。
「いやいや!」
思わず声が大きくなる。
「そ、それはないよ!」
ゆうは慌てて言う。
「さっきも言ったけど、のぞみさんが辞めるなら、僕も辞めるよ」
のぞみが驚いた顔をする。
ゆうは続ける。
「だって」
真剣な声だった。
「僕にとってボブスレーって」
一度言葉を止める。
そして言う。
「のぞみさんと一緒にやれるから意味があったんだって」
ゆうの視線はまっすぐだった。
「のぞみさんじゃない相手となんて」
小さく首を振る。
「とても出来ないよ」
のぞみはその言葉を黙って聞いていた。
そして、小さく言う。
「……そう」
それ以上、何も言わなかった。
その沈黙の中には、少し複雑な感情があった。
少しして、のぞみが言う。
「明日」
静かな声。
「副委員長の藍さんに言わないと」
ゆうも頷く。
「そうだね」
少し申し訳なさそうに言う。
「迷惑かけちゃうけど……」
肩をすくめる。
「仕方ないよ」
その言葉で、話は一区切りついた。
すると。
のぞみが、突然ゆうに抱きついた。
ぎゅっと。
ゆうの胸に顔を近づける。
距離がぐっと近くなる。
のぞみはそのまま言う。
「ねえ、ゆう君」
ゆうが少し照れる。
「な、なに?」
のぞみは顔を近づけたまま聞く。
「ゆう君は大学なんでしょ?」
そして続ける。
「大学行ったら、どうするの?」
ゆうは少し考える。
そして答える。
「うーん」
「クラブとかサークルはやらないかな」
のぞみが少し驚く。
ゆうは続ける。
「ずっとのぞみさんの近くにいたいし」
少し笑う。
「バイトくらいにしておくよ」
その答えに、のぞみがいたずらっぽく聞く。
「じゃあさ」
「バイト先に可愛い子がいたらどうする?」
ゆうはすぐ答える。
「いないよ」
即答だった。
「そんな人」
そして真顔で言う。
「のぞみさんより可愛い子なんていない」
少し照れながら続ける。
「僕は」
「のぞみさんしか見ないよ」
のぞみの目が少し揺れる。
「……本当?」
ゆうは頷く。
「本当だよ」
そして少し笑う。
「それよりさ」
のぞみを見る。
「なんか最近、のぞみさん甘えん坊になった気がする」
のぞみが目を丸くする。
「え?」
「そう?」
ゆうは頷く。
「うん」
少し笑いながら言う。
「僕はたくましくなって」
「のぞみさんは甘えん坊になった」
のぞみがくすっと笑う。
「ふふ」
そして少し意地悪そうに聞く。
「……だめ?」
ゆうは首を振る。
「だめじゃないよ」
少し考える。
「なんか変な感じだけど」
小さく笑う。
「悪くない」
そして優しく言う。
「むしろ……」
のぞみを見る。
「好きな感じ」
その言葉のあと。
ゆうはのぞみをゆっくり抱き寄せた。
距離がさらに近くなる。
そして——
キスをした。
静かな部屋の中で。
二人の時間が、ゆっくりと重なっていく。
◾️◾️◾️◾️◾️
ここからは、
清楚系、松山弁コメンテーターなっちゃん
ピチピチ系、関西弁インフルエンサーカナちゃんの振り返り番組“なっちゃんカナちゃん”
なっちゃん
おい!終わってるやんか!超ピッタンコ終わってるやんか!
カナちゃん
ホンマや!全カットか!なんでやねんおい!いやここ一番の見せ場やろ普通!なんでスパーンいったん!?
なっちゃん
いやもうさっきまでの流れからして、これは来る思うやん!あの抱きしめ方、あれ完全に流れ来とったやん!
カナちゃん
ほんまそれな!あの“十一日ぶり”ってワード出た時点で、視聴者全員覚悟決めとったで!?
なっちゃん
でも挿絵見てみ!
カナちゃん
うわ!これは超ピッタンコ終わった直後のピロートーク!これは攻めたんちゃうか?
なっちゃん
そうやよ!二人とも肩見えてるやん!もうシーツの下はスッポンポンやん!
カナちゃん
いやもう完全にそういうことやろこれ!逆に想像力かき立ててくるやつやん!
なっちゃん
最終回前にBAN覚悟か!
カナちゃん
いやほんまに!制作側のギリギリ攻めた感がすごい!シーンカットして挿絵でぶち込んでくるってどういう戦略やねん!
なっちゃん
しかもよ、シャワーも浴びんと超ピッタンコしとってんでホンマに!
カナちゃん
そこな!旅の帰りやで!?六時間バスやで!?普通一回整えるやろ!
なっちゃん
でも逆にリアルやけんね。もう我慢できんかったんやろなっていう…
カナちゃん
感情爆発型やな完全に!あの流れは止まらんわ!
なっちゃん
シーンは全カットやったけど、この挿絵で許す!
カナちゃん
うん、これは許す!むしろ想像の余地残してくれた分、ええ仕事しとるまである!
なっちゃん
でもゆう君勘違いしてるねん。“ゆう君たくましくなった”って、アッチの方や思ってるねん!
カナちゃん
そこやねん!完全にそっち受け取っとるやろあれ!顔真っ赤にしてる時点でアウトや!
なっちゃん
のぞみちゃんもあわてて訂正するけど、“違うくないって”否定しとらん!それはそれで良かったんや!
カナちゃん
あれ絶妙すぎるやろ!否定しきらんのがリアルやねん!
なっちゃん
「違う違う!」言いながら「違うくないけど」って、もう認めとるようなもんやけんね
カナちゃん
あれはあかん、ゆう君の脳内完全に変な方向に補完されとるで
なっちゃん
でもさ、その後の会話よ
カナちゃん
ああ、“守ってくれてた”ってやつな
なっちゃん
そうそう。あれで一気に意味変わるやん
カナちゃん
一気にロマンチックに戻すの上手すぎるやろ
なっちゃん
ゆう君の“たくましさ”って、ちゃんと中身の話やったんやね
カナちゃん
でもその前の流れが強すぎてな、どうしても二重の意味に聞こえるねん
なっちゃん
それがまたええんよねぇ…
カナちゃん
ほんでさ、最終的にまたキスで締めるやろ?
なっちゃん
うん、あれがまた静かでええんよ
カナちゃん
激しさの後の、あの落ち着いたキスな
なっちゃん
なんかさ、“取り戻した時間”って感じがしたよね
カナちゃん
わかる。最初のピッタンコは爆発で、最後のキスは確認って感じやな
なっちゃん
ほんまにこの二人、ようここまで来たわ
カナちゃん
長かったなあ…ほんまに
なっちゃん
ほいじゃSNSの声いこか
カナちゃん
いこいこ、絶対荒れとるでこれ
なっちゃん
「全カットで逆に想像力試されてるの草」
カナちゃん
それな!制作側の掌の上や完全に!
なっちゃん
「挿絵だけで全部察せるのすごい」
カナちゃん
いやほんまに。情報量エグいねんあの一枚
なっちゃん
「ゆうの勘違いがリアルすぎて笑った」
カナちゃん
男子そのまんまやからなあれ
なっちゃん
「違うくないって言ってるの最高にかわいい」
カナちゃん
あれは名シーンやで。女子の曖昧さの極み
なっちゃん
「ピロートークの温度感がちょうどいい」
カナちゃん
あの余韻な、めっちゃ大事やねん
なっちゃん
「ここでボブスレーの話に戻すのうまい」
カナちゃん
そうそう、ちゃんと物語も進めてるんよな
なっちゃん
「最終回前にやりきった感すごい」
カナちゃん
ほんまそれ。もう一山越えた感じある
なっちゃん
いやー、ええ回やったね
カナちゃん
うん、これは語りがいあるわ
なっちゃん
次どうなるんやろね
カナちゃん
もう最終回前やで?どんな終わり方なんやろ?
なっちゃん
ほやねぇ…長かったわ。542話まで来たで
カナちゃん
楽しみすぎるやろほんまに




