始まりの場所 西元山駅
神野市 西元山駅 15:00
低く響くブレーキ音。
レールの上を滑るようにして、急行列車がゆっくりとホームへと入ってくる。
——難法駅発急行。
長い旅路を終えた列車だった。
ドアが開く。
プシュー、という空気の抜ける音とともに、乗客たちがぱらぱらと降りてくる。
日常の光景。
何も特別なことなどない、ありふれた駅の午後。
その中に——
ひときわ大きな荷物を持った、ひと組の男女。
のぞみとゆう。
札幌からの長い長い旅を終えて、ようやく帰ってきた。
——西元山駅。
どれくらいぶりだろうか。
たった数週間。
それなのに。
まるで何年も帰ってきていなかったような感覚。
二人はホームに降り立つ。
足元の感触。
見慣れた景色。
駅の空気。
そのすべてが、どこか懐かしく、そして遠く感じる。
この二ヶ月。
それは、あまりにも濃すぎる時間だった。
栂池高原。
白い雪の中でのスノボ旅行。
初めて触れた唇。
互いの温もりを知った夜。
——甘くて、少しぎこちない初めての時間。
ゆうの「一緒にいたい」という気持ち。
それがきっかけで始めたボブスレー。
素人同然の二人が、東京の選考会を突破し。
手にした、スイス・サンモリッツへの切符。
しかし。
待っていたのは華やかな世界ではなかった。
トテモチュ国、キーエア皇太子誘拐事件。
張り詰めた空気。
そして——雪崩。
すべてを飲み込む白い恐怖。
二人は失意のまま帰国した。
だが、終わらなかった。
すぐに始まった北海道合宿。
そこで。
のぞみは——
“りほ”に扮したクデに、九日間も連れ去られる。
何も知らないまま。
ゆうと引き裂かれたまま。
——それでも。
ゆうは追い続けた。
クヨとともに。
北海道を駆け回り。
そして、取り戻した。
まさに、激動の二ヶ月。
だが。
それも、もう終わる。
のぞみが、ゆっくりと周りを見渡す。
駅の風景。
変わらない日常。
そして、ぽつりと呟く。
「……帰ってきたね」
その声は、どこかほっとしたようで、少しだけ寂しさも混ざっていた。
ゆうも周囲を見ながら頷く。
「うん」
静かに言う。
「僕たちの始まりの場所に」
その言葉に、のぞみは少しだけ笑う。
「ほんとだね」
少し歩きながら、続ける。
「なんにも変わってないね」
ゆうも頷く。
「そうだね」
そして、少し考えるように言う。
「まあ……まだ一ヶ月くらいだし」
のぞみがくすっと笑う。
「それもそうだね」
あまりにも普通の光景。
何事もなかったかのような、西元山駅。
それが逆に、二人の歩んできた時間の異常さを際立たせていた。
二人はコンコースの階段を上がる。
一歩一歩。
ゆっくりと。
そして改札を抜ける。
日常へ戻る扉を通り抜けるように。
さらに、出口へ向かう階段を降りる。
外の光が見える。
見慣れた街の入り口。
その前で、二人は立ち止まった。
のぞみが、ゆうの顔を覗き込む。
「……ちょっと疲れた?」
優しい声。
ゆうは苦笑する。
「そうだね」
肩を軽く回しながら。
「さすがに長旅だったし」
それでも。
二人はその場から動かない。
離れない。
何かを言おうとして。
でも言葉が見つからない。
ゆうが先に口を開く。
「……のぞみさん」
少しだけ照れながら。
「ゆっくり休んでね」
その言葉には、これまでのすべてが込められていた。
のぞみは頷く。
「うん」
そして微笑む。
「ゆう君もね」
ゆうが小さく笑う。
「ありがとう」
沈黙。
風が少し吹く。
でも。
次の言葉が出てこない。
のぞみが、少しだけ視線を逸らす。
そして。
「……じゃあ」
ほんの少しの間を置いて。
「また、LINEするね」
ゆうも頷く。
「うん」
「僕も送るよ」
それだけ。
たったそれだけのやり取り。
でも。
そこに込められたものは、あまりにも大きかった。
のぞみは、ゆっくりと歩き出す。
ロータリーの方へ。
ゆうは、その背中を見送る。
離れていく距離。
少しずつ小さくなるのぞみ。
そのとき。
一台の車が、ゆっくりとのぞみに近づいてくる。
LEXUS RX 500h。
黒く艶のあるボディ。
静かに滑るように止まる。
中には——
父と、妹の夏美。
窓が開く。
夏美が身を乗り出す。
「お姉ちゃん!」
明るい声。
「おかえり!」
その一言。
それだけで。
のぞみの胸が、いっぱいになる。
「……夏美……」
言葉が詰まる。
夏美が手を振る。
「早く乗ってよ!」
無邪気な笑顔。
「待ってたんだから!」
のぞみは小さく頷く。
「……ありがとう」
その声は、少し震えていた。
ドアを開けて、乗り込む。
シートに体を預ける。
ドアが閉まる。
外の空気が遮断される。
車が、ゆっくりと動き出す。
のぞみは、窓の外を見る。
そこには——
まだ、ゆうが立っている。
こちらを見ている。
距離が、少しずつ離れていく。
ゆうが小さくなる。
それでも。
お互い、目を逸らさない。
夏美が不思議そうに聞く。
「お姉ちゃん?」
「どうしたの?」
のぞみは、はっとする。
「……え?」
そして、少し笑う。
「ううん」
「なんでもない」
でも。
その声は少しだけ揺れていた。
車は信号で止まる。
赤信号。
一瞬の静止。
のぞみは、そっとスマホを取り出す。
画面を開く。
指が、少し震えている。
そして。
メッセージを打つ。
「ゆう君、愛してる」
送信。
小さな音。
遠くに見えるゆう。
ポケットからスマホを取り出す。
画面を見る。
そして。
すぐに指を動かす。
数秒後。
返信が届く。
「僕だって。のぞみさんを愛してる」
その文字を見た瞬間。
のぞみの胸が、いっぱいになる。
スマホをぎゅっと抱きしめる。
まるで。
その中にゆうがいるかのように。
信号が青に変わる。
車が動き出す。
ゆっくりと加速する。
交差点を右折する。
その瞬間。
ゆうの姿が、視界から消える。
でも。
のぞみは目を閉じる。
胸に手を当てる。
そこには、確かにゆうがいる。
離れても。
見えなくなっても。
心の中には、ずっといる。
これからも
◾️◾️◾️◾️◾️
ここからは、
清楚系、松山弁コメンテーターなっちゃん
ピチピチ系、関西弁インフルエンサーカナちゃんの振り返り番組“なっちゃんカナちゃん”
なっちゃん
いやー、ついに最終回やね
カナちゃん
来てもうたなあ…ほんまにここまで来るとは思わんかったわ
なっちゃん
西元山駅に帰ってきたわ
カナちゃん
うわあ…最初の場所やん…ここから全部始まったんやもんな
なっちゃん
なんか胸いっぱいやわ。出会いの場所が最終回なんて
カナちゃん
いや構成うますぎるやろそれ!最初と最後つなげてくるん反則やて!
なっちゃん
長かったよねー。もう色んなことがありすぎて
カナちゃん
ほんまやで!ちょっと思い出すだけでもやばいで!?
なっちゃん
出会いに、のぞみちゃんの進学に、百年に一人の女神の悠依に、スノボ旅行に…
カナちゃん
出たな悠依!あのインパクトやばかったやろ!完全にヒロイン食いにきてたやん!
なっちゃん
スノボ旅行もよかったよねぇ…あれで距離ぐっと縮まった感じやったし
カナちゃん
あそこから完全に“ただの知り合い”ちゃうくなったよな
なっちゃん
もうこれでのぞゆう終わりなん?
カナちゃん
そんな、終わらんで。今度は新しいタイトルでつづくけど、ちょっと休憩するって
なっちゃん
え、ほんま?終わりやないん?
カナちゃん
終わりちゃう終わりちゃう!ただの一区切りや!
なっちゃん
よかったぁ…ほんまに終わる思うてヒヤヒヤしたわ
カナちゃん
この二人の物語、ここで終わるわけないやろ!
なっちゃん
この次はどんな話なん?
カナちゃん
実はもう作ってるやつあるねん。整形して投稿するだけやねん
なっちゃん
あ、あののぞゆう異世界転生のやつ?
カナちゃん
あかん!言うたら!ネタバレになる!
なっちゃん
いやでも気になるやろそれ!どうなんの!?ボブスレー持って異世界行くん!?
カナちゃん
いやそれはさすがに意味わからんやろ!でもやりかねんのが怖いねんこの作品!
なっちゃん
剣と魔法の世界でピッタンコするんかもしれんね
カナちゃん
いやもうそれはジャンル迷子や!でもちょっと見たいわ!
なっちゃん
今まで読んでくれた人ありがとー!
カナちゃん
ほんまにやで!ここまで付き合ってくれた読者さんすごいで!
なっちゃん
543話、118万文字やで!
カナちゃん
バケモンやろ!普通の小説何冊分やねん!
なっちゃん
わしらのトーク除いてやからな!トーク入れたら200万文字行ってるわ!
カナちゃん
もう作品というより人生やでそれ!読んでる側も旅しとるレベルや!
なっちゃん
んじゃ、何ヶ月後かの新のぞゆうを待っててなー!
カナちゃん
絶対帰ってくるからな!その時はまた一緒に騒ごな!
なっちゃん
アデン国編で!
カナちゃん
コラ!言うたらあかん!!
なっちゃん
あっははは!言うてもた!
カナちゃん
もう完全にバレとるやんけ!でもまあええわ、楽しみ増えたしな!
なっちゃん
ほんまにこの物語、最後まで見届けられてよかったわ
カナちゃん
うん、最初の出会いからここまで、ちゃんと繋がっとった
なっちゃん
のぞみちゃんとゆう君、ほんまにええ二人やったね
カナちゃん
不器用やけど、真っ直ぐでな
なっちゃん
ほいじゃ最後にSNSの声いこか
カナちゃん
絶対泣いとる人多いでこれ
なっちゃん
「西元山駅で終わるのズルい。泣いた」
カナちゃん
それな!最初思い出してまうやろあんなん!
なっちゃん
「543話完走した自分を褒めたい」
カナちゃん
いやほんまにそれ!読者も主人公やでこれ!
なっちゃん
「のぞゆう終わらないって聞いて安心した」
カナちゃん
みんなそこ一番気にしとるからな!
なっちゃん
「異世界編めっちゃ気になる」
カナちゃん
ほらもう食いついとるやん!さっきのネタバレ効いとるで!
なっちゃん
「こんなに長くて濃い物語初めて」
カナちゃん
これはほんまに唯一無二やと思うわ
なっちゃん
「また戻ってくるの待ってます」
カナちゃん
これは作者冥利に尽きるコメントやな
なっちゃん
いやー、ええ最終回やったね
カナちゃん
うん、寂しいけど満足感もすごい
なっちゃん
ほいじゃみんな、また次ののぞゆうで会おやね
カナちゃん
ほなまたなー!待っといてやー!




