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のぞみとゆうの物語 ~こんな恋をしている二人が羨ましい  作者: 播磨 颯太
第十一部-8章 ボブスレー北海道編 -8日目
541/543

501号室

札幌アートホテル 501号室 のぞみとゆうの部屋 20:00


部屋のドアが静かに閉まる。


カチャリ、と小さな音がした。


それだけで、外の世界と切り離されたような感覚があった。


札幌の夜の静けさが、カーテン越しに淡く差し込んでいる。

部屋の照明は柔らかく、どこか落ち着いた色をしていた。


二人はしばらく、何も言わずに立っていた。


この部屋。


ベッド。


机。


窓。


すべてが見覚えのある場所なのに、どこか遠い場所のように感じる。


それもそのはずだった。


たった十日前。


この部屋を出たとき、二人はこんなことになるとは夢にも思っていなかった。


そのとき、ゆうがぽつりと呟く。


「……なんか」


少し笑いながら。


「久しぶりだね、この部屋」


懐かしむような声だった。


のぞみはゆっくり頷く。


「……うん」


その一言の中に、いろんな感情が詰まっている。


十日前の朝。


二人は普通に部屋を出た。


「朝ごはん行こう」


そんな軽い会話をしながら。


のぞみは、そのときスマホを部屋に忘れていた。


それに気づいたゆうが言った。


「ちょっと取ってくるね」


ほんの数分。


そのわずかな時間。


その間に。


体調不良を装った“りほ”に付き添ったのぞみは、

そのままゆうと離れることになった。


それがすべての始まりだった。


のぞみはベッドの端に座る。


ゆうはその少し前に立っている。


しばらく沈黙。


そして。


のぞみが、ゆっくり口を開いた。


「……ゆう君」


その呼び方。


それだけで、ゆうは顔を向ける。


「うん?」


「どうしたの?」


柔らかい声。


のぞみは少し視線を落とす。


そして言う。


「……大学の話」


その言葉に、ゆうが少し驚いた顔をする。


ゆうは、のぞみと同じ大学を受けていた。


神泉大学。


のぞみが通う大学。


ゆうは、その大学に行きたかった。


理由は単純だった。


のぞみと同じ場所にいたかったから。


でも。


結果は——


不合格。


その事実を、のぞみはクヨとの会話の中で知った。


ゆうは、それをのぞみに言えていなかった。


ゆうは少し頭を掻く。


「あー……」


苦笑する。


「ごめん」


照れくさそうに言う。


「のぞみさんには、ちゃんと言えてなかったよね」


一度息を吐く。


そして素直に言った。


「僕さ」


「のぞみさんと同じ大学行きたくて」


少し笑う。


「神泉大学、受けたんだ」


そして肩をすくめる。


「でも……ダメだった」


その言い方は、どこか健気だった。


のぞみの胸が、ぎゅっと締め付けられる。


「……ゆう君」


その声には、いろんな感情が混ざっていた。


嬉しさ。


申し訳なさ。


愛しさ。


そして、少しの痛み。


のぞみは言葉を探す。


でも、何と言えばいいのか分からない。


代わりに、こんな言葉が出てきた。


「……ゆう君」


ゆっくり聞く。


「私と同じ大学に行けなかったら」


少し間を置く。


「……私から、気持ち離れちゃう?」


ゆうは一瞬、目を丸くする。


「え?」


そして慌てて首を振る。


「そ、そんなわけないよ!」


声が少し大きくなる。


「あるわけないじゃん!」


ゆうは続ける。


「だってさ」


少し落ち着いて言う。


「この一年だって」


「のぞみさんは大学で、僕は高校だったけど」


のぞみを見る。


「僕の気持ち、何も変わってないよ」


のぞみはゆっくり聞く。


「……本当?」


その声は、とても不安そうだった。


実は。


ゆうは、この十日間。


ずっと心配していた。


のぞみの気持ちが離れてしまっていないか。


でも。


今の言葉で分かった。


そんなことはない。


ゆうの胸の中に、ほっとした安心が広がる。


ゆうは少し笑う。


「そりゃそうだよ」


そして、少し照れながら言う。


「むしろさ」


「逆に」


「のぞみさんが僕から離れちゃわないか、心配だったんだ」


のぞみの胸が揺れる。


その言葉。


その優しさ。


のぞみの頭の中には、りほの姿が浮かんでいた。


りほの笑顔。


無邪気な仕草。


真っ直ぐなのぞみへの想い。


そして。


別海町でのキス。


りほは、のぞみを本気で好きだった。


その気持ちに触れて。


のぞみの心は揺れた。


惹かれていた。


でも。


それは、ゆうに対する恋とは違う。


異性に向ける感情とは違う。


不思議な感覚だった。


それでも。


あのキスを許したことを——


ゆうには言えなかった。


のぞみは、ゆうを見る。


「……ゆう君」


ゆうはすぐ答える。


「うん?」


のぞみの唇が震える。


「……ごめんなさい」


小さな声。


ゆうは苦笑する。


「まだ言ってる」


少し冗談めかして言う。


「のぞみさん」


「もう謝らなくていいって」


のぞみは首を振る。


「……そうじゃなくて」


ゆうが少し首を傾げる。


「え?」


「どうしたの?」


のぞみは言葉を飲み込む。


キスのこと。


りほのこと。


全部。


言おうと思えば言える。


でも。


言えなかった。


胸が苦しくなる。


のぞみは、もう一度言う。


「……ううん」


小さく首を振る。


そして。


「……ごめんなさい」


声が震える。


「ゆう君……許して……」


ゆうは少し困ったように笑う。


「もう」


肩をすくめる。


「許すも許さないもないよ」


優しく言う。


「僕たち」


一歩近づく。


「また元通りなんだから」


その言葉を聞いた瞬間。


のぞみの胸がいっぱいになる。


「……うん」


小さく頷く。


そのとき。


ゆうがそっと腕を伸ばした。


そして。


のぞみを抱き寄せた。


ゆっくりと。


優しく。


逃げないように。


確かめるように。


のぞみの体が、その腕の中に収まる。


挿絵(By みてみん)


十日間。


離れていた距離。


そのすべてを埋めるように。


二人は静かに、抱き合っていた。


◾️◾️◾️◾️◾️

ここからは、

清楚系、松山弁コメンテーターなっちゃん

ピチピチ系、関西弁インフルエンサーカナちゃんの振り返り番組“なっちゃんカナちゃん”


なっちゃん

うわー、なんか帰ってきたで。


カナちゃん

ほんまやなぁ…やっとここまで戻ってきたかって感じやわ

なんか安心する場所やのに、ちょっと緊張もあるんよなこの部屋


なっちゃん

もう何日ぶりなんや


カナちゃん

体感もっと長いやろこれ

十日っていうか、もう何ヶ月分も詰まっとるやんあの旅


なっちゃん

あの時、のぞみちゃんがスマホを忘れてさえなかったらな


カナちゃん

それな!!!全ての分岐点そこやでほんま

あの「ちょっと取ってくるね」が運命変えすぎやねん


なっちゃん

確かに。どんな展開になってたんやろ


カナちゃん

普通に朝ごはん食べて、普通に合宿して、普通にボブスレーして終わってたんちゃう?

でもそれやったらクヨともあんな仲になってへんし、りほも出てきてなかったかもしれん


なっちゃん

そう考えたら…この遠回り、必要やったんかもしれんねぇ


カナちゃん

せやなぁ…しんどいけど、二人の関係めちゃくちゃ深くなっとるもんな


なっちゃん

ちょっと待ってや。挿絵見てみ!ゆう君のぞみちゃん抱きしめたで!


カナちゃん

ホンマや!ダブルのベッドに二人腰掛けて!


なっちゃん

いやこの流れよ!完全に来とるやろこれ!


カナちゃん

あの距離感からの抱き寄せ方な、優しすぎるねん

ガツンといくんやなくて、「もう離さんで」って感じのやつやん


なっちゃん

ってことはやで?この後は?


カナちゃん

いやもうそれしかないやろ展開的に!


なっちゃん

お待ちかねの、超ピッタンコしかないやろ?!


カナちゃん

ノーカットでやってや!ノーカットで!


なっちゃん

いやほんまそれよ!ここでカットとか許されんけんね!全部見せるんやで!


カナちゃん

しかもやで、この二人ただのイチャイチャちゃうねん

十日間のすれ違いと罪悪感と寂しさ全部抱えた上でのピッタンコやで?


なっちゃん

重みが違うわいね…ただの恋愛やないもんなぁ


カナちゃん

そうそう、のぞみちゃんまだ心にりほ残っとるし

それを言えんまま抱きしめられとるんやで


なっちゃん

それがまた切ないんよねぇ…


カナちゃん

ゆう君は「元通り」って言うてるけど、ほんまはまだ完全には戻ってへんのよ

でもそれでも抱きしめるっていうのがええんよな


なっちゃん

言葉より先に、体で安心させる感じやね


カナちゃん

せやねん

「大丈夫やで」って言葉より、「ここにおるで」って抱きしめる方が伝わるやつや


なっちゃん

うわぁ…これ続き絶対やばいやつやん


カナちゃん

しかもダブルベッドやで?配置完璧すぎるやろ


なっちゃん

シャワーも浴びずに、もうこれやこれ!


カナちゃん

作者も分かって配置しとるやろこれ絶対


SNSの声いくで


「スマホ忘れたのが全ての始まりってエグい」


なっちゃん

ほんまやねぇ…あの数分で人生変わっとるけん


カナちゃん

日常のミスが運命変えるやつな


「抱きしめるシーン優しすぎて泣いた」


なっちゃん

あれは泣くわ…静かすぎて逆に刺さる


カナちゃん

大声の愛情表現ちゃうのがええねん


「ダブルベッドきたあああ」


なっちゃん

みんなそこ見るよねぇ!


カナちゃん

視聴者正直すぎるやろ


「りほのこと言えないのリアルすぎる」


なっちゃん

あれは言えんよ…


カナちゃん

言ったら全部壊れる可能性あるもんな


「ここで超ピッタンコ来なかったら暴動」


なっちゃん

分かるけど落ち着きや!


カナちゃん

でも気持ちは分かるでほんまに


なっちゃん

いやぁ…ここまで来たらもう見届けるしかないね


カナちゃん

せやな、二人がほんまの意味で元に戻れるかどうかや


なっちゃん

次の一手で全部決まる感じやね


カナちゃん

これは…来るで


なっちゃん

来るねぇ


カナちゃん

次回覚悟しときやほんまに

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