表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
23/35

ep23 優しさと理不尽さが入り混じる魔境

 龍我はプロレスラーのようなマスクを被り、シンマオの後ろに立って解答することとなった。


「まずはウォーミングアップ、クイズゥ~!」


 司会者側と解答者側の間に置かれた大きな液晶画面に、問題が表示される。


「最初の問題はこちら!」」

「漢字組み立てクイズです。これらのパーツを組み合わせて、二文字の漢字をお作りください」


 画面には【巾】【ヒ】【ヒ】【ナ】【日】という文字が映し出されていた。龍我はすぐに問題の答えがひらめき、あまりの簡単さにニヤりと口角が上がる。


「それでは、シンキングタイムゥ……スタート!!」


 シンキングタイムでは、席に付いているモニターに書くという形で解答を行う。


「シンマオ、あの問題分かるか? 分からなくても検索機能は使うなよ。分からない場合は何も書かなくていいからな」


 シンマオに小声でささやく。優勝することより、無難にやり過ごすことを目標としていた。


「ワタシ、漢字分かるアル。答えられるアル」


 一方でやる気満々のシンマオ、スラスラと正解である〈昆布〉を書き記す。こういったクイズは得意のようである。


「おや、中道さんそしてシンマオちゃんが早くもご解答! さて大場さんと葉加瀬さんはまだお悩み中! 古加藤さん、ヒントとかありませんか?」


 真ん中の二人は画面をじっと睨んだまま手が動いていない。解答者に合わせて柔軟に助言をすることも、この番組の魅力の一つらしい。


「えー、ヒントは食べ物ですね。私はこれのおにぎりが大好きなんですよ」


 与えられたのはかなり直球のヒントだ。考え方を教えるわけでなく、答えそのものを連想させようとすることも、この番組の魅力の一つらしい。


「おっ、そうですか! 私はお袋の作るこの佃煮が好きでねぇ……!」


 司会二人の会話を聞き、大場と葉加瀬も何とか解答を記す。


「では早速解答を、一斉にオープン!」


 真ん中の画面が問題文から四人の解答に変わる。青い画面に白い文字で、玄麻とシンマオは【昆布】、大場は【のり】、葉加瀬は【サバの味噌煮】と解答。龍我は、大場と葉加瀬の解答に唖然とした。


 そしてすぐさま正解発表。玄麻とシンマオの解答画面のみ赤から青に変わり、正解の音と思われる鐘のなるBGMがスタジオに流れる。


「正解は昆布! 中道さんシンマオちゃんお見事!」


 小楠がこなれた様子で言う。正解したことにより、玄麻とシンマオの得点は10点となった。


「大場さん、海苔って。せめて漢字で書いてくださいよ!」


 小楠が目に付けたのは正解より珍回答のほうだった。はじめに大場の解答に突っ込んだ。


「だっておにぎりと佃煮って言ったら海苔しかないわよ!」


 ヒントだけで答えを無理やりひねり出したようだ。本来の問題がどういうものかは遥か彼方に行っていた。


「葉加瀬さんも……これどういうことです?」


 理屈自体はわかる大場に対し、サバの味噌煮という解答はどこから来たのか、小楠でも全く想像が付かなかった。


「これね、僕の好きな食べ物」


 最早真面目に解答する気があるとは思えない。龍我はフリーダムすぎる空間に、理解が追い付かず、苦笑いをするしかなかった。




 ウォーミングアップクイズはさらに二問続いた。結局シンマオが答えられたのは最初の一問のみで10点。大場と葉加瀬に並ばれてしまい、玄麻のみが全問正解の30点となった。


「クイズ! ノスタルジックルーレット!」


 レトロな雰囲気のチャルメラによる演奏と共に、小楠がタイトルコールを元気よく読み上げた。


「ここではルーレットのスタート、ストップで様々な懐かしい問題にお答えしていただきます」


 中央の大画面に円形のルーレットが映された。均等に八分割された各領域には【懐かし〇〇】【いにしえの〇〇】【不朽の〇〇】など、歴史を感じされるクイズのジャンルが傘連判状にずらりと並んでいて、中には懐かしいという次元じゃないものも存在する。


「それでは現在トップの中道さん、スタートとストップのコールをお願いします」

「はいはい! スタート!」


 古加藤の指示を受け、ノリノリでスタートコール。すると画面上のルーレットが回転し始める。


「どれ狙いますぅ?」


 この僅かな隙間でも小楠は軽いトークを挟む。このコーナーでは、ルーレットを止めた際、上部にある矢印の先の問題が選定される。


「そりゃーもちろん懐かし番組っすよ。テレビっ子だったんで、ええ。ストップ!」


 解答席から前のめりになり、画面を睨みつける。番組の緩さと対照的な真剣な姿勢は、少し滑稽である。龍我は声の出ない、にやけた笑いが浮かび上がった。


「いきなりやな! さぁ何が出るか!?」


 テンションが上がり、大阪弁になる小楠。ルーレットの速度は落ちて行き、どんどんゆっくりとなっていく。玄麻は両手を組んで祈っていた。


「懐かしソングです!」


 残念ながら玄麻の望みは叶わず。イスにもたれかかり悔しそうなリアクションを取った。


「今回の問題はピンキーとキラーズさんの恋の季節、これから曲が流れますので空欄に当てはまる歌詞をお答えください」


 古加藤の簡単な説明の後、すぐに曲のイントロが始まった。


「わ、分かんねぇ……」


 これまでのボケ防止レベルの問題とは全く毛色が異なり、龍我は思わずぼやく。シンマオはなおさら分かるわけがなく、答えられる要素は皆無である。

 この急激な難易度の変化には、ただ呆然とするしかなかった。




 クイズ番組は独特の空気を保ったまま進行していった。


 クイズの難易度はかなりのバラつきがあるが、その割には正解時の得点は一律で10点。途中でほとんど答えのようなヒントを与えたり、答えそのものを間違って司会者が漏らしたりした場合でも、10点。難易度と得点が全くと言っていいほど連動していなかった。


 だがその緩さが、逆に龍我のやる気に火をつけてしまった。きっかけはノルタルジックルーレットで一問も答えられなかったこと。出演者もクイズそのものもガチガチでない環境で、最下位を独走するという結果がとにかく屈辱的だった。


 優しさと理不尽さが混沌している中、続いて行われたのは義務教育で習う内容のクイズであった。真新しい記憶の問題が並び、龍我に有利なものばかりである。ここから傍観という立場をやめ、思いっきり解答に参加するようになった。


 そしてついに最終問題。一位は玄麻の90点で、葉加瀬の60点、シンマオと大場が50点と続く。龍我の介入の甲斐あり、何とか同率三位までこぎ着けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ