ep21 はじめてのテレビ番組
「う~ん。どうしよっかなぁ~。本番直前だよぉ? 今から予定空いてる人探せる?」
出演者が抜けたことにより頭を悩ませていたのは、番組のプロデューサーである玖伊豆作。自身がプロデューサーであると主張するように、桃色のカーディガンを背負い、両袖を結んでいた。
玖伊豆はMCの小楠、アシスタントの古加藤、そして玄麻に対し、代役を探せないか募っている最中である。
「いやぁ~、俺はアテないっスねぇ」
と、玄麻が言った。彼だけではなく、他の二人も代役のアテはない。直前すぎる出演者の抜けに対応できず、悩み抜いていた。
「何の話をしてるアルか?」
シンマオが彼らに興味を持った。初対面である玖伊豆たちは、機械が滑らかに動き、話しかけてきたという事実に震え上がっていた。
「あぁ、出演者が一人足りなくて困ってるって話」
「っておいおい!? 中道君! その子は何だい!?」
玄麻に尋ねる玖伊豆。当たり前のように会話をしたことに疑問を持たないわけが無かった。
「ロボットみたーい」
古加藤が率直な感想を口にする。
「ワタシ、アンドロイドアル。名前はシンマオというアル」
それを聞き、シンマオは訂正。ロボットとアンドロイドの違いは何なのかを分かっているかは不明だが、本人は〈アンドロイド〉という区分にこだわりがある模様だ。
「名前、なんていうカ?」
「俺が教えちゃる。左からプロデューサーの玖伊豆さん、MCの小楠さん、アシスタントの古加藤さん」
チャラチャラしていても先輩の共演者やスタッフにさん付けは忘れない。一応、礼儀もある程度は持ち合わせているようだ。シンマオへの驚きが上回っているのか、三人は自ら再度名乗ることはなかった。
「玖伊豆さん、この子いけませんかね……」
小楠はアンドロイドのシンマオをじっと見つめ、玖伊豆に小声で尋ねた。
「う~ん。確かにね~、いけるかも!」
「え、行けるって……シンマオを出演させるってことですか?」
龍我はシンマオの背後で一連の話をずっと聞いていた。それでも驚きを隠せない。効き間違えか、もしくは夢か。現実であることを直視できなかった。
「そゆこと」
「何でですか?」
「そりゃ~もう外見のインパクト、特徴的な話し方、天真爛漫なふるまい、爆発したらすっごいことになるからね~!」
玖伊豆は番組の盛り上がりに貢献すると睨んでいるらしい。
「ワタシ、何に出演するアルか?」
「クイズワイドジェネレーションって番組よ」
古加藤が落ち着いた口調で答える。名前の通り、毎週幅広い世代の解答者を揃えてクイズを行う番組で、そのジャンルも多岐に渡るという。そのワイドさが番組の魅力であり、地上波放送しているわけではないが、コアのファンの多いものとなっている。
「分かたアル。ワタシ、テレビに出演するアルな」
各単語の意味が分かって文章が理解できれば、シンマオはそれ以上の疑問を持たない傾向がある。普通ならどんな番組か気になるはずだが、シンマオの場合は番組名を聞くだけで満足してしまっている。
「そう……だけど、大丈夫なんですか? こんな突然、人間でもないのに出ちゃって」
龍我はトントン拍子で決まることに、違和感しかなかった。
「平気だと思うわ。この番組、大型犬が解答者になったこともあるし」
「霊媒師に幽霊出してもらったり、宇宙人が来訪したこともあったねぇ~!」
古加藤や玖伊豆からサラッと出てきた単語の数々は、簡単に飲み込めるものではなかった。
「リューガ、何を言てるカ?」
「俺にもわからん……」
理解の追いつかない龍我。
玄麻の言っていた通り、クイズワイドジェネレーションは非常にフリーダムな番組なのだ。
息つく間もなく、テレビ番組の収録が始まってしまった。
あやこテレビの第三スタジオ。セット全体は青と白のグラデーションで彩られていて、異空間へ来たような感覚に陥らせるパワーがあった。一方、作りは非常にシンプルで、正面から見て右側に解答者席が四つ、左側に司会台が一つ、その間に巨大なモニターが一つ、のみである。解答者席と司会台の色は共に黄色一色であり、壁や床のグラデーションと対比させると非常に目立つ。
スタジオのイメージは時空移動、タイムマシンとタイムトンネルを意識しているらしい。幅広い世代の人物が解答するというコンセプトから転じてこのようになったと思われる。
「クイズゥ! ワイド!! ジェネレエエエエエッション!!」
小楠は司会者として、ハイテンションに番組タイトルコールを行った。収録前は暗く、殆ど喋らなかったのが嘘のようである。本業はお笑い芸人なので、こういった類のものが得意なのだろう。
「さぁ今週もはじまりましたぁ! クイズワイドジェネレーション!」
古加藤も負けずに大きな声で進行を始める。彼女もアナウンサーとして、番組が盛り上がるように小楠に合わせている。
「本日のゲストはこの方々です!」
古加藤は向かい側にいる解答者のほうに手を向ける。小規模な番組であるために解答者は四人。解答者席は横一列に並んでいて、司会から見て左端に玄麻、右端にシンマオがその座に付いていた。
そして龍我はカメラの影に隠れ、シンマオの席の裏に潜んでいた。




