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魔女の呪いで男を手懐けられるようになってしまった俺  作者: ウミガメ
第4章 魔女の館と想いの錯綜
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3階 魔女の部屋(1)


扉の先へと一歩抜けると、目の前には、螺旋階段が現れた。

階段が続く以外に通路はなく、後ろを振り返れば赤い扉は消えていた。


「準備万端……だろうな」


俺は階段を一歩一歩上がっていく。

この先が塔の最上階————になるのだろうか。

階段はさして続くこともなく、次の階へと行くと、小さく簡素な扉がお出迎えした。


その扉以外にやはり通路はなく、3階にはこの部屋しかないのかもしれない。

扉は城に似つかわしくない木製の扉で————。


「一体、どこに繋がるんだ? 魔女との最終決戦の部屋、になるんだろうけど、それにしてはお粗末な扉だな」


俺は腰に背負う弓の感触を一度確かめる。

そして慎重にドアノブに手をかけ、勢いよく扉を開いた。




「!」





突然黒い闇に襲われる————



なんてことはなく—————


そこは木の香りに包まれた小さな、部屋だった。

ベッドとや塔の外が見える窓、テーブルとイスが並ぶ————。




「あら、不満かしら。……ワタシの部屋よ」



「!」



奥からこの部屋の主の声が聞こえた。


その声は久しぶりに聞くとはいえ、紛れもなく、ずっと結晶の中で聞いた魔女の声本人そのものだった。


「どこに隠れてる!」


俺は奥に向かって声を荒げる。


「……嫌ぁね。この期に及んで、アナタと戦うような無粋な真似はしないわぁ」


しかし帰ってきたのは、あまりにも緊迫感のない、魔女の声だった。

すると突然————背中に背負っていた重さが消えた。


「!?」


俺は慌てて背中の弓矢————そして、腰と足に隠したナイフを確かめるが、それが一切消失していた。


「……アナタに負けるワタシじゃないけど☆ ……今は落ち着いて話が、したいだけなのよ」


その声音は今までの魔女から想像もしないほど静かに落ち着いていた。

俺は魔女の声がする方へと部屋の奥へと歩みを進める。


そこで魔女はテーブルの前で静かにティーカップで紅茶を飲んでいた。

向かいのイスにも同じように紅茶の注がれたティーカップが置かれている。


「……座って」


俺は逆らう方が危険と判断し、静かに椅子へ座る。

紅茶に口はつけない。


「……どういう趣向なんだ? まさか俺とお喋りするために、わざわざこんな城であらゆる仕掛けを仕込む舞台を作ったわけでもないよな」


「本当にまさかよ。もしも外の4人の誰かだったら、ここはワタシの部屋にしたりしないわ。ここをとっておきの戦場に繋いで、苦痛と苦悩に歪む顔を拝んであげたところよ」


「本当にお前は……知ってたけど、性格最悪だな」


「ま、それは否定しないかしら。でも、まさかアナタが呪いの内容を全員に喋っちゃうなんて……そして、ここにたどり着くなんて……ね」


そう言うと魔女は、紅茶を飲む手を止め、カラン、とティーカップをテーブルに置いた。


「ワタシの…… ”負け” よ」


シン————と、部屋が静まり返る。





(ようやく、俺が————勝った、のか)





「一つ聞かせてくれるか」



「くだらないことだったら、はっ倒すわよ」



そう言う魔女の言葉に、敵意は感じられない。



「どうして嘘を吐いた? 俺の生命が1年だなんて」


それに気づいたのは、この城の中でギルに言われた一言だった。

だからこそ、俺は皆に真実を打ち明ける決意をした。


それに今なら、ラルフがキサスの街で魔女について調べてくれた事実にも合致する。


『例の魔女は他人の生気を吸い取ったり、イタズラめいたことをしてるみてェだが、人間の生命をただ奪って殺す、っつーような残虐な話は聞いたことないってよォ』


あの時、ラルフはそう言っていた。


「なんだ、そんなこと! そう言えば、アナタが必死になってくれると思っただけよ☆」




そう言った魔女の言葉はどこか空虚に感じられて、


————俺はその瞬間、その言葉に何か引っかかりを感じた。


筋は通っているし、魔女の性格を思えばその可能性は十分あるが————。



「……なら、なんでそんな寂しそうな顔をするんだ」






俺がそう言うと、突然魔女はハッと驚いたように顔をあげた。



「……長く一緒にいすぎたせいかしらね、変に勘繰られるのは気に入らないわ」



それから、なぜか残念そうにため息を一つついて、少し笑った。



「生命が1年……確かにワタシはアナタに嘘を言ったけど、全部が嘘じゃないの」


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