表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女の呪いで男を手懐けられるようになってしまった俺  作者: ウミガメ
第4章 魔女の館と想いの錯綜
72/75

2階(10)

突然の地響きに視界がグラグラと揺れる。

思わずよろめきかけたサムの右腕を俺は掴んで、その場で支える。


目の前にあった4つの扉————緑、黄色、紫、青の扉。

緑と黄色の2つの扉は左に、残りの2つの扉は右に。

まるで中央の空間を開けるように、部屋の隅へと地面ごと移動していく。


そして開いた中央の空間に、下から地面が湧き上がってくる。

その空間に現れたもの、それは新しい————真っ赤、な扉だ。


「これは……」


足元の揺れが収まる。


今端へと移動した扉の色の意味する所はおそらく————みんなの石の色だった。

緑、黄色、紫、青。

それは順番にラルフ、ユウリ、ギル、そしてサム。


だとすれば、今現れた赤い扉は———。


呆然と見つめる俺の腕の中でサムは自身の左腕を見る。

その顔には、ある一種の納得のような表情が浮かんでいた。



「エルの……優勝、ってことだね」



サムはそういうと、左腕にはめた腕輪を触る。

カラン、カラン、と音がして、その腕輪から石が外れる。

サムはその石を右手に握りしめる。


「サム……?」


サムは抱きかかえた俺の腕をゆるりと解くと、赤い扉の前にたった。

そして、その大きな扉を上からゆっくりと下へ眺めた。


「……やっぱり、エルには適わないな」


サムは扉の前で振り向いて、俺の顔を見てニコリと笑った。

そして、俺の眼前へと右手を向けたかと思うとその手を開いた。


————その右手には、綺麗な3色の石が並んでいた。


青いサムの石、紫のギルの石。

それから————ギルに一度奪われた、俺の赤い石だ。


俺の左手に揃う石は、黄色いユウリの石と、ユウリに一度奪われた緑のラルフの石だ。

躊躇う俺の右腕をサムがそっと持ち上げる。

そしてゆっくりと俺の右手を広げると、サムはそこに自身が持っていた3つを置き、俺の手を閉じる。

俺は————確かに、拳の中に3つの石が握らされたことを感じていた。



「これで5つが、揃うね」

「サム……いいのか?」


サムは静かに頷く。


俺は左腕にはめた2つの石をとる。

そして、赤い扉の前に立った。



ここで、俺が魔女に会う権利を得るのは、きっと————魔女の望む展開ではないだろう。



近くで見るとその扉には、何やら複雑な文様が描かれていて、正直あまり居心地のいいものではない。

しかし、この部屋と扉の仕掛けといい、改めて魔女の力量との差を見せつけられるようだった。


(だけど……この、赤い扉は現れた)


俺は5つの石を扉に一つずつ、はめていく。


緑。


黄色。


紫。


青。


そして————中心に赤い石をはめた。


「!」






その瞬間————扉が、ガタリ、と音を立てて中央から二つに分かれた。



「やっぱり、開く……か」




扉の中は光に包まれていて、その先は見えない。



俺は最後に、サムの方へ振り返った。




「俺は魔女の真意を知るために行くよ。そしてこの馬鹿げた呪いを解く」


その俺の声にサムは真剣な表情で頷いた。


「……うん。きっと、エルならやり遂げて帰ってくると信じてる。そしたら……」


しかし、サムは直ぐに少し不安げな表情を覗かせる。

俺はすぐにそれに気づいて、サムの前に一歩近づいた。


そして、何かを言いたげなサムの口を塞ぐように、その唇に人差し指を一本当てる。


「ちゃんと村に帰れたら、さっきの続き、しような」


「!」




————決まった!


俺は心の中でガッツポーズをする。





だけど、そんな悪ふざけを取る俺の態度にサムはきっと怒りだすはず————。



「あれ……?」



しかし目の前のサムは顔を真っ赤にして、自分の唇を左手の指の背で押さえている。

そして恥ずかしそうに俺をチラリと一瞬盗み見て、直ぐに視線をそらした。



「う、うん……」







————完敗だ。



サムの可愛さに心がこれ以上持たないと判断した俺は、サムの頭をよしよしと撫でると、直ぐに扉の前へと歩みを進めた。


「……いってらっしゃい」


背後でサムの声が聞こえる。





「……ああ、行ってくるよ、サム」




そして、俺は赤い扉の向こうへと一歩、踏み出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ