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魔女の呪いで男を手懐けられるようになってしまった俺  作者: ウミガメ
第4章 魔女の館と想いの錯綜
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1階(2)

(俺が……魔女に言われたことは)

(……ああ)


ギルバートが頭の中で返事をする。

俺の頭の中で伝えようとした言葉が、伝わっていることがわかる。


————これはチャンスだった。

————魔女の思い通りにならない、そしてこのゲームに俺が勝つために。


(……俺の生命を1年残して吸い取ったこと)

(ただそいつは、嘘だった)

(ああ……それから)


俺の呪いを解く方法は『”真実の愛” を手に入れる』こと。

俺の生命が吸い取られていないとすると、その方法も嘘かもしれない、怪しいものだ。

ただ俺が今するべきことは、ありのままのことを伝えること。


いずれ話す時がくるのかもしれない、そう思っていた。

でもそれは————俺の呪いが解けないまま、生命を落とす。そういう時だと思っていた。

まさか、こんなタイミングとは。


————俺は、決意を固める。


(ある……別の呪いをかけた、と)

(!)


ギルバートが息を飲む音が聞こえる。



俺にとってこのゲームの勝利条件は、実は————2つある、そう思っていた。


1つ目は簡単————『誰よりも早く石を5つ集めてゴールすること』。

これなら呪いを解く方法を誰にも知られなくて済む。

もちろん誰かが先にゴールした時点で、言わずもがなゲームオーバーだ。


そして2つ目————『呪いを解く方法を、俺にかけられた呪いを、自ら皆に告白すること』。

これは魔女のゲームを根本的なところから覆す、魔女への裏切りだった。

こうなった以上、もう誰にも後ろめたい隠し事はなく、俺にとっては誰がゴールしようが関係なくなる。

ただ当たり前だが、 ”真実の愛” を手に入れることからは遠ざかる。


————当たり前の話だ。


魔女と以前からやり取りしていたことが、皆にわかってしまう。

ここまでずっと呪いを解くために俺に協力してくれていたのだ。

それを知ったら皆はどう思うだろう?


それに、こんな馬鹿げた呪いを、更に俺が利用したとわかれば、きっと————いや、どう考えても俺のことを軽蔑するだろう。


————それでも、俺の生命が1年でないとするのなら。


————俺は死なない。


もう魔女に従わなくてよくなる————そして、何よりこれ以上は皆を巻き込まなくてすむ。

ただそれは魔女への裏切りであると同時に、慕ってくれた皆への裏切りかもしれない。


————それでも、俺は。


————それでも、俺は。


目を開くと、ギルバートが真剣な表情でこちらを窺っている。


————みんなと真摯に向き合いたい。


それなら。

まずは一番冷静で、かつ魔法に関しても知識の深いギルバートに話すのが、勝利への可能性が高くなる、と判断した。


だから。


————ギルバートに伝える。たとえ、それが間違いだとしても。


(ギルバート。呪いを解く方法は…… ”真実の愛を手に入れること” だ。

……その呪いの効果は、相手に触れている間)


俺は自身の心臓がバク、バク、と音を立てていたのを感じていた。


(自分のことを……『好き』にさせること)


————今まで抱えていた”秘密”をついに明かしてしまった。


この心臓の鼓動が伝わっていないことを願う。

額はくっついたまま。

ギルバートは沈黙していた。


「……なんだそれは?」


その時、呆れ果てたギルバートの声が聞こえた。

この緊張感にそぐわないほどの声音で。


(ギルバート、声に出てるぞ。……本当のことなんだ。魔女に言われた、そのままだ)

(……馬鹿げている。お前の生命は取られてない。その呪いが事実だという証拠はどこにある)


証拠なんてない。

それでもこの呪いは本物だと確信を持って言えた。


————ここまでの事を思い出す。

————俺が皆に触れて、おかしいと思う瞬間がいくつもあったはず。


(……ないよ。ギルバートがそう感じていてくれていないなら)


俺はだらんと垂らしたままだった両手を持ち上げて、そっとギルバートの両の頬に添える。

するとギルバートは「ン……」と声を漏らして、肩を小さく震わせた。


そのまま俺はギルバートの頬に触れ続ける。

少しだけその両手に力を込めて。

ギルバートの頬から伝わる————柔らかな感触と、確かな体温を感じていた。


触れている額が熱を帯びていた。

それが、自分のものなのか————ギルバートなのか————次第にわからなくなる。


(……くそっ)


そう声が聞こえると、俺の頭を抑えつけていた両手が外された。

そして、その両手は俺の手首を掴むと、ゆっくりとギルバートの頬から外された。


(……確かに、お前の異常な魔力の量も……それなら、納得できる)

(じゃあ信じてくれる、ってことでいいんだな)


ギルバートは何も言わなかった。

認める、とも、認めない、とも。


(ごめんな、ギルバートは俺を嫌いだというのに)


(……)


(……俺はこれまでギルバートに意地悪をしてた)


(……ッ)


ギルバートは不服そうに何かを言いかけたが、口を噤んだ。

その言葉を多分、聞くことはできない。

そう直観した俺は、これからのことを話すことにした。

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