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魔女の呪いで男を手懐けられるようになってしまった俺  作者: ウミガメ
第3章 闘技場とハーレム
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真実の鏡

俺は表彰式までを全て終えて、ギルバートの家の自室に戻ってきていた。

ギルバートは治療のために、今晩だけ闘技場の救護室に泊まるらしい。

俺もかなり疲弊していたため、今晩は解散として、明日詳しい事をみんなで話し合うことにした。


時計は22時を指している。


サムはこのキサスの街の宿屋に泊まっているらしい。

ラルフは相変わらず物置きで、ユウリはきっともう眠ってしまった時間だろう。


「サムともう少し話、したかったな」


サムと話した後、闘技場に戻ると俺が居なくなったことで騒ぎになっていた。

審判の人には後でこっぴどく叱られた。


俺がサムを連れ出して闘技場から駆け出す様を見て『まるで王子様を連れ出す王子様のようだった…!』と、一部の人々が色めき立っていたらしい。


―――もちろん男である。

そろそろ、早い所この街を脱出した方が良いかもしれない。


俺はカバンから『真実の鏡』を取り出した。

鏡は手鏡ほどのサイズで、金色の縁に可愛らしい花のデザインが施されている。

優勝の10万ギルはギルバートに手渡すつもりだったが、この副賞の鏡は―――俺の好きにして良いという約束だったはずだ。


本当はこの真実の鏡を、サムの気持ちを推し量るために使うつもりだった。

あの日―――喧嘩別れしたあの時の気持ちが知りたくて。


でも、その必要もなくなってしまった。


俺のサムに「好き」と言った感情は―――おそらく届いてない。

だけど明日からまた一緒にサムと旅ができるんだ。

そう思うと今はそれでもう十分だった。


(あのコの "ヒミツ" を知りたい?)


決勝戦の時に聞こえてきた魔女の言葉を思い出す。


「……もしも、ギルバートの秘密が何なのか知れるんだとしたら」


魔女の言った、ギルバートの秘密が何なのか検討もつかなかった。

ただギルバートが俺を嫌うには、俺の性格だけではない何か別の理由があるような、そんな気がしていた。

それが、その秘密に関係しているというのだろうか。


覚悟を決める。

それを覗き込むなら、鏡を使うなら、今晩しかない。


「ギルバートが、俺を嫌う理由を、教えてほしい」


その瞬間―――鏡から眩い光が溢れ出して、俺の視界を包み込んでいった。


―――何も見えなくなる。


意識を失った。





気が付くと、そこはいつものギルバートの家のリビングだった。

腰には柔らかな感触と、包み込まれるような安心感。


ここは―――よく座っているソファの上だ。この座り心地の快適さは覚えている。


「なんだったんだ?」


リビングを見回す。


すると―――なんとなく違和感があった。


「なんかいつもよりごちゃごちゃしているな。物が多いのか……?」


注意深く部屋を見回していく。


その時カレンダーに目が留まった。

日付を見ると、今日の日付の所に赤く目立つように丸が書いてあり「魔術闘技祭決勝戦!」と書いてある。


―――こんなもの書いてあっただろうか。


しかし次に決定的な項目を見つけた。


「4年前……!?」


カレンダーは現在から4年も前の年号を示していた。

―――どうやら俺は4年前の同日にいるようだった。


座っていたソファはよく見れば、新品同然に綺麗で、掛けられた緑のカバーも少し違うデザインのようだった。

机の上に並ぶ置物たちも少しずつ違って、いつもより可愛らしい小物が多い。


これはタイムスリップ―――なのか?


俺は慌てて家中をバタバタと駆けながら、捜索をしていく。


―――すると、気づいたことがあった。


台所に行けば、食器に2つセットのものが多い。

洗面台には、歯ブラシが2つある。


そして今俺が寝ている部屋は―――そこは、変わっていなかった。


「ギルバートの他に、もう一人、住んでいる人がいた?」


リビングに戻ると、ふと写真立てが目に入った。


―――この写真立てには見覚えがある。


俺が伏せられた写真立てを上げようとして、ギルバートに「いい加減にしろ」と怒られた時のものだ。

そう言えば翌日からあの写真立ては無くなっていたっけ。

ギルバートが片付けたのか、と思っていたけど、あまり気に留めていなかった。


見るな、と心の中で声が響いている。


でも、それこそが何か重要なもののような気がして、俺はそれを手に取った。


「嘘だろ……?」


―――似ていた。


そこに写っていたのは、ギルバートの姿とその隣―――もう一人、俺の姿に良く似ていた。


「いや、どういうことだ……」


詳しく写真を観察しようとしたその時、玄関の方から、扉が開く音がした。


―――まずい。


ギルバートが帰ってきたのかもしれない。


「隠れないと……」


俺は大慌てで、どこかに隠れようと思った。

しかし2階に行く階段は廊下で、今向かえば鉢合わせになってしまう。

このリビングには隠れるところなんて、どこにもない―――!


そうしているうちに、すぐに時間切れになった。


リビングの扉が開かれて、案の定ギルバートが入ってくる。

俺は真正面からギルバートと対峙した。


「ギルバート! ごめん! 事情は説明……」


そう言ってから重大な事実に気が付いた。

ここは4年前。

だとすれば、俺の存在などギルバートが知る由もない。


しかし、ギルバートは俺の存在を気にも留めずに、台所に向かって行った。

どうやら買い物をしたらしく、両手に白い袋を持っていた。


「どういうことだ……?」


それから、ギルバートに再び声をかけたが、やはり応答はない。


「な、なぁギルバート……?」


そして、台所で屈むギルバートの肩に手を触れようとして―――


その手は宙を掴む。


擦り抜けた。


(ここは……鏡が映し出す過去なのよ。もうどこにも、存在のしない世界)


―――ペンダントから魔女の声がした。


過去の世界?

とすれば、タイムスリップではなく、幻というようなこと、なのだろうか。


俺は魔女に詳しく問いかけたが、それ以上説明をしてくれるつもりはないようで、声はまた聞こえなくなった。


「ギル~! 待ってよ~!」


その時、廊下の方からバタバタとまた音がした。

そしてバンとリビングの扉が開いて、誰かが入ってくる。


―――その姿を見て、俺は息を呑んだ。


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