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魔女の呪いで男を手懐けられるようになってしまった俺  作者: ウミガメ
第3章 闘技場とハーレム
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大雨の日

修行を開始して1週間が経った頃。


その日は大雨で、リビングまでその雨音は、ザーザーとうるさく響いていた。

今日の修行は「お化粧が崩れちゃうわ」の師匠の一言で、中止となった。


そのため、俺は特にやることもなく、久しぶりにギルバートの家の中でのんびりと過ごすことに決めていた。

家の中はギルバートと俺の二人だけである。



あれからというもの、今後の活動についてラルフやギルバートとは話し合いをしていた。

ギルバートの家は街から少し外れた薄暗い森の中にあった。

しかし街の中心部まで行けば、キサスの街はコルリに負けず劣らず非常に発展した街であった。

サムへの連絡手段はやはり見つけられず、一ヶ月後にコルリの街にワープで戻る以外、有効な手立てを見つけられそうになかった。


ラルフは、キサスの街で魔女についての調査をしているようだった。

ちなみにラルフは魔術の類とは全くの無縁のため魔術闘技祭には出られず、それもあり何かしら行動を起こしたいようだった。


ラルフは遠慮しているためかギルバート家の中には入らず、相変わらず物置小屋で寝泊まりしていた。

俺は俺で修行で忙しくしていたため、ラルフとは調査の進捗についてはあまり話せていない。

この街は魔女の出身でもあるし、俺の知らない魔女の情報もあるかもしれない。

もしかすると、ラルフは俺の魔力の秘密を知ってしまうかもしれないが、ラルフの行動を止める手段は俺にはなかった。



「本当にすごい雨だな、なぁ、ギルバート」



俺はギルバートに声をかけるも、相変わらず無視を決め込まれている。

一週間が経ってもギルバートとの距離は全くと言っていいほど、縮まらなかった。


ただし、俺とギルバートの毎晩22時の魔力譲渡儀式は毎日欠かさず行われている。

その度ギルバートは眉間にしわを寄せ、冷や汗をかいて俺のことを睨むので、その瞬間だけはギルバートの内側を覗き込んでいるようで、少しだけ嬉しかった。


サムにも会えない。

ラルフとも話せていない。

俺の中のフラストレーションは、次第にギルバートに向けられていた。


―――もっと嫌われてしまえばいいのに。


随分ひん曲がってしまったこの性格ですら、なぜか必要以上に俺への扱いが酷いギルバートのせいだ。

と、そんな気さえしていた。




俺がそんな事を考えていた時、微かに扉を叩くような音が聞こえた。

音はどうやら、玄関からのようだった。

こんな雨の中で一体誰が来たのだろうか。


『コンコン…コンコンコンコンコンコン……』


ノックの音は小さいながらも叩かれ続ける。

ギルバートの方向を見ると、お前が出ろ、と首の動きだけで俺に指図している。


「わ、わかったよ……」


流石にこの雨で、ラルフが物置小屋からこの家に入る気になったかもしれない。

俺は廊下をばたばたと走り、玄関に向かった。


『ゴンゴン……ドン……ドンドンドン!』


玄関で叩かれていたノックの音は、次第に強い音に変わる。

ノックの間隔は短くなり、扉を壊すんじゃないかというその音の大きさに、なんだか背筋がぞっとする狂気じみたものを感じた。


「はいはい」


そして、俺がドアを開くと、そこには。


―――全くもって予想外の人物がいた。




「ユウリ……?」


そこには髪のてっぺんから、足先までびしょ濡れになったユウリがいた。

水色の綺麗な髪からは大粒の水が滴り落ち、前髪でほとんど顔を覆い隠してしまっている。

季節外れのこの気温の中で、ユウリの明らかに薄着な格好がいかにも寒そうであった。


「ユウリ! どうしてここに……? って、びしょ濡れだ」

「お、おにぃ……」


その瞬間、ドン、と胸に衝撃があった。

一瞬、状況を把握するのが遅れて、俺はユウリが泣きじゃくりながら抱き着いてきたんだ、と理解した。

俺はユウリを優しく抱きしめると、その肩が震えていることがわかった。


「落ち着いてユウリ。寒かったよな、中に入ろう」


ユウリは何度も首を縦に振るも、もう自分でもどうしていいかわからないのか、

大きな声で泣きながら俺の胸をずっときつく、抱きしめていた。


 *


その後、少し落ち着いたユウリを部屋の中に入れた。

今はタオルで体を拭いたのち、ソファに座って毛布にくるまっている。

俺が温かいミルクティーを入れて渡すと、硬い表情のまま、ちびちびと静かに飲んでいる。


しかし真っ青だった顔は少しずつ赤みを取り戻し、呼吸も正常に戻りつつある。


ギルバートは家に入れることをてっきり拒むと思った。

しかしユウリを見たギルバートは珍しく驚きの表情を浮かべるだけで、静かに家に入れることを許諾した。


「ユウリ、落ち着いた?」

「……うん」


「どうやってここに来たの? それにどうしてここが分かったんだ?」

「……」


そう問うと、ユウリは俺の顔を見て、また泣き出しそうな顔になった。

俺はその顔にどうすればいいのかわからなくなって、つい慌ててしまう。


俺とユウリの間に流れるピリピリとした空気の中で発言したのは、ギルバートだった。


「今日はもう寝たほうがいい。2階の客間を使え、階段を上った右突き当りだ」


ギルバートのその言葉にユウリは静かに頷く。

手に持っていたミルクティーを机にコトリと置くと、俺の方をちらりと見て部屋を立ち去っていった。


机に置かれたミルクティーの中身は空っぽだった。


「てっきりユウリを拒むと思った。俺を助けてユウリのおじいさんに恩を売ったのに、ここで台無しにするわけにいかないから……か?」


俺は言葉を発してから、我ながら棘のある言い方になってしまった、と自分の中にある悪意のようなものを感じていた。

案の定、ギルバートは不愉快そうな顔を浮かべている。


「お前、俺が最低な奴だと思ってるだろ」

「いや、そこまでは言ってないよ……悪かった」


慌ててそう否定すると、ギルバートは大きくため息をついて立ち上がる。

そしてギルバートは座ったままの俺を見下ろした。

そのギルバートの鋭い目つきに、俺は一瞬ドキリとする。


「俺が嫌いなのはお前だけだ」


ギルバートはすぐに俺から目線を反らして、部屋の時計に目を向けた。

そして軽く舌打ちをすると、そのまま部屋を出て行った。


時計の針は21時半を示していた。


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