サムの失踪
あれから起きてきたラルフに、サムからの伝言を見せた。
しかしラルフは困った顔を浮かべただけで、特段驚きはないようだった。
そして今、2人でさみしく朝飯を食べている。
俺はサムの居ないこの空間に落ち込んでいた。
「あの野郎、きっと直ぐにでも戻ってくるさ。……それにしても昨日はいつも通りだったのになァ。喧嘩でもしたのか?オメェら」
「……別に」
ぶっきらぼうにそう答えると、ラルフは一つため息をついて、少し呆れた表情になる。
俺は昨晩の事を思い返す。
(俺はサムのことが好きだ。なぁ、それじゃダメなのか?)
あぁ、やってしまった―――
どう考えても、俺が告白したから避けられているよな。
だって、どう考えてもこんなタイミングで居なくならなくても良いじゃないか。
なかったことにしてくれないかなー――。
でも、サムはサムで何か抱えているようだった。
俺には言っていることが理解できないところがあったが。
俺なんかでも力になれることがあったらいいのに。
「……でも、こういっちゃなんだがなァ。あいつの気持ち、ちょっとわかるぜ。今のあいつにはオメェを見ているのが辛いんだろ。オメェはすごいからな」
そういうラルフはなぜだか照れ臭そうだった。
俺はラルフが見当違いなことを言っていることと、自分自身に苛立ちを覚えて、思わず机をガンッと叩いた。
「そんなんじゃない」
少し大きな声が出てしまって、周りの宿泊客がちらちらとこちらを見る。
ラルフはしゅんと萎縮して一回り小さくなった。
「わ、悪ィ……、そんな顔させるんじゃなかったな」
ラルフは窮屈そうにスープをスプーンで掬って、ちびちびすすり始める。
俺は自分の苛立ちをラルフにぶつけたのが、流石に申し訳なくなって、話題を変えることにした。
「……ユウリのおじいさんから、こんな紙を渡されたんだ。今日はそこに行ってみようと思う」
ユウリの家でおじいさんからあの日そっと渡された紙を、ラルフに手渡した。
魔女へと繋がる情報を得られると思う、ということだったはずだ。
正直、魔女を探す必要はないのだが、残念ながらこの旅にはイベントというものが必要なのだ。
「ユウリって、あの昨日の朝突然やってきたべっぴんのチビか」
「べっぴんのチビって……」
ユウリに言ったら間違いなく、怒られそうな一言である。
何をしでかすか分からないので、できるだけユウリは怒らせたくない。
ユウリとラルフの相性は―――悪そうな気がするな。
ラルフはちょっとばかり、鈍感というか、無遠慮なところがあるから、2人の間で問題にならないといいけど。
「この住所の所に何かヒントがあるってのか。下のはそのジィさんの名前か」
「あぁ。何があるのかは俺も聞いてないんだ。でもおじいさんの名前を出せば悪いようにはされないだろうって。その住所の人に会えってことなんじゃないのかな」
「……そうか。着々と進展してンな」
どこか落ち込んだ表情のラルフを見て、俺は今日はラルフと出かけようと思った。
サムの居なくなってしまった俺も、1人でいるのは気分が落ち込みそうだった。
「ラルフも一緒に行かないか、今日予定がなければだけど」
そう言うと、その提案は意外だったのか、ラルフは驚いた顔をしていた。
「お、おお。……じゃ、そうさせてもらうぜ」
とどこかラルフの表情は安心したように見えた。
ラルフは皿ごと持ち上げて、残りのスープを口に掻き込んだ。




