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魔女の呪いで男を手懐けられるようになってしまった俺  作者: ウミガメ
第2章 召喚術師と黒魔術師
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放たれる悪意

あれから宿屋を出て、ラルフと手紙の住所に向かって歩いていた。

今日の天気はすっきりとせず、空は厚い雲に覆われていた。


「それにしても、えらく外れた所にあるんだなァ」


目指す住所は今まで行った範囲よりも、ずっと遠い所にあった。

街の中心部とはかけ離れており、今歩いているこの通りも、人影はほとんどない。


「こんな所に本当におじいさんの言う人が住んでるのかな」

「道が狭くて随分薄暗ェな。正直、この近辺に住んでる奴は趣味がいいとは思えねェな」


確かにこの辺りに住みたいとは、とても思えない。

道を照らすランプもよく見るとかなり少ない。

夜は更に暗くなりそうだ。


「目的の住所は、もうそろそろかな」

「あぁ、そうだなァ」


そのまま、しばらくラルフと歩き続けた。

その間、俺は昨日のサムとのやり取りを思い出していた。


「なぁ、もし仮の話なんだけどさ。俺が、ラルフのこと、好きだ……って言ったらどうする?」


「……なんだそれ。そりゃオメェに言われるのは光栄だな。……でも、誤解を生む言い方はやめた方がいいと思うぜ」


で、ですよね。

ラルフは万に一つも俺が本気とは思っていないようだ。

これが普通の反応ということだ。


「もしかしたら、サムにも伝わってないのかな」

「……それ何の話なんだ?」


まずい、声に出していた。

ラルフは怪訝な顔でこちらを見つめる。


「いや、なんでもないんだ」

「……そうかよ」


サムが戻ってきたら、もう一度昨日のことを話してみようと思った。

そして俺の告白が伝わっていたのか、勇気を出して聞かなくては。




「なぁ、ところでラル……」




―――その瞬間、背後にピンと張った殺気のようなものを感じた。

隣のラルフを慌てて見ると、ラルフは目を見開いて固まっていた。


「な……ンだ、……う、ごかねェ」


ラルフの足元が黒く覆われていた。

おそらく魔法の類のようなものが発動している。

しかし俺の身体の自由は奪われていなかった。


―――これはラルフを狙っている?


辺りを急いで見回す。

すると背後の遠くの家屋の屋根上に、魔術師のローブを纏う男と、隣に"弓矢"を構える男が2人見えた。

その矢が放たれようとしている。


―――考えるより、身体が先に動いていた。


「ラルフ……!」


矢がラルフに当たる直前で、俺はその直線上に割って入った。

脇腹に何かが突き刺さった衝撃が走る。


「ざっ……けんな」


俺はそのまま咄嗟に背負った弓を構えて、相手に向かって矢を放つ。

―――手元が狂い、大きく外した。

しかし威嚇にはなったのか、男たちは慌てて立ち去って行く。


「エル!!!」


これ以上俺は立っていられず、身体が傾いて地面に倒れた。


ラルフの覗き込む顔と、その向こう側に曇り空が見える。

余りの痛みにその箇所を見ると、そこには矢が突き刺さっていて、血がどくどくと流れ出していた。

突然のことに声も出なかった。


「待ってろ」


すると身体がふわっと宙に浮いた。

ラルフに抱きかかえられて、俺の身体はどこかへ運ばれていく。

手足に全く力が入らない。


「死ぬんじゃねェぞ…!頼む」


全速力で走るラルフの振動が伝わる。

あぁ、なんだか気持ちいいな―――。

全身が温かく包まれている心地良い感覚があった。


段々と視界がぼやけてきて、朦朧としていく。

心地良い揺れの中で、俺は意識をそのまま手放した。


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